戦時標準船R型・レ型と、戦前日本の冷蔵船の歴史
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天翔 @Tensyofleet

戦時標準船という単語で大体どのようなモノか想像がつく人は、世の中にそれほど多くないとは思うけれど、その中でもこれが戦時標準船だ、と言われると、さてなんだったかなとなる気がする。 pic.twitter.com/stpR0se74W

2017-12-30 13:29:22
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天翔 @Tensyofleet

第三十六播州丸(998総トン,大洋漁業)、下関の林兼彦島で建造された戦時標準船R型で、2型式が計画された冷蔵運搬船のうちの大きい方である。竣工年月日が3つの資料ですべて異なる(1944/7/31,1945/10/??,1946/11/??)という謎な船でもある。

2017-12-30 13:37:30
天翔 @Tensyofleet

ちなみに戦後の南氷洋捕鯨船団に数回運搬船として参加しているので、例の駄文に追加すべきだった船。

2017-12-30 13:37:49
天翔 @Tensyofleet

R型は5隻計画されて2隻未成、というような形式なので、果たして戦時標準船という区分が適当かどうか。

2017-12-30 13:42:23
天翔 @Tensyofleet

では2型式の冷蔵運搬船のうちの小さい方は何か、というと、戦標レ型である。これに限らず型式の命名者のセンスを疑うが、レ型そのものの写真は見つけられていないので原型となった東興丸(522総トン,金指造船)。こちらも計画2隻の未成1隻と惨憺たる有様であるが。 pic.twitter.com/atT2dm6ecr

2017-12-30 14:05:35
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天翔 @Tensyofleet

冷蔵運搬船榛名丸(手前)と秩父丸(奥)。1923(大正12)年に横浜船渠(のち三菱横浜)で建造された1,462総トンの冷蔵運搬船で、同所で建造された同型・準同型計8隻の最終グループ。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/pdeb4dozSt

2019-11-14 21:16:27
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天翔 @Tensyofleet

本船は冷凍設備を持つ冷凍冷蔵船で、中央の船橋楼に冷凍室があり、船倉はすべて冷蔵倉となっている。それまでの姉妹船が空気冷凍法(冷却した空気を吹き付ける)であったのに対し、ブライン(冷媒,本船は鹹水=アルカリ塩水を用いている)冷凍法を採用している。 pic.twitter.com/d90W4i7b5m

2019-11-14 21:25:36
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天翔 @Tensyofleet

このブライン式、要するに冷やした濃い塩水の水槽に冷凍するものをドボンと漬け、蓋をして4時間ほど置いておく、といったものである。なお、ブラインを冷やす冷凍機はアンモニア圧縮式で、ブライン水槽の中に冷却のためのアンモニア蒸発管が通っている。

2019-11-14 21:33:06
天翔 @Tensyofleet

両船は共に太平洋戦争で失われており、秩父丸は1942(昭和17)年3月御蔵島沖で被雷沈没、榛名丸は1944(昭19)年1月パラオ沖で衝突沈没している。

2019-11-14 21:38:28
天翔 @Tensyofleet

横浜船渠で建造された姉妹船の一覧。最後の氷室丸のみ小型だが、実は同型船氷川丸が建造されていたものの、いかなる理由か建造途中で売船され、貨物船田子浦丸(近海郵船)として竣工している。 archive.hnsa.org/doc/id/oni208j… pic.twitter.com/97QedAiQXw

2019-11-14 21:44:19
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天翔 @Tensyofleet

これらのうちもっとも有名なのは満光丸ではなかろうか。fold3.comより、1943(昭和18)年11月2日のラバウル空襲で沈没しつつある満光丸(日魯漁業,1,503総トン)。南方に生鮮食料を輸送していたのかもしれない。 fold3.com/image/46947256 pic.twitter.com/325LmV7F0K

2019-11-14 21:47:49
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天翔 @Tensyofleet

まあ冷蔵船とかマイナーだしな。。。戦前この8隻より大型の冷蔵船って2隻しかいないと思うんだけども。 1923(大正12)年には冷蔵庫冷蔵船の建造奨励のため、「水産冷蔵奨励規則」なる法律が出来ていたりします。 lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con…

2019-11-14 21:55:21
天翔 @Tensyofleet

この冷蔵船グループは、「葛原冷蔵」という会社の設立が深くかかわっています。わずか3年ほどで倒産してしまうのですが。。。 ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B…

2019-11-14 21:59:36
天翔 @Tensyofleet

駿河丸(992総トン,1938(昭和13)年竣工,日本水産)。トロール漁船としては戦前最大ではないかと思う。 pic.twitter.com/Y6zwDuccOC

2019-12-31 14:47:26
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天翔 @Tensyofleet

なぜ本船が戦時中に特設運送船(給糧船)になったかというと、漁獲物の冷凍設備と冷蔵倉を持っているため。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/FfgxCLbwLb

2019-12-31 14:50:51
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天翔 @Tensyofleet

1939(昭和14)年には、駿河丸ほか3隻のトロール船と9 隻の以西底曳網漁船がメキシコ西岸カリフォルニア湾に出漁している。以西底曳網漁船は冷凍設備を持たなかったため、漁獲されたエビは冷蔵・冷凍船の役割を担った駿河丸で凍結されたようだ。写真はこちらの方が綺麗かな。 pic.twitter.com/2xfljZfB8R

2019-12-31 14:54:17
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天翔 @Tensyofleet

トロール船は明治末~大正から規制があって、東経130 度以西の東シナ海・黄海(いわゆる「以西漁場」)で操業する以西トロールは許可隻数70隻、総トン数200以上だったりする。

2019-12-31 15:27:05
天翔 @Tensyofleet

漁場が被る以西底曳網も規制はあるのだけれども、昭和10年代あたりから大手漁業会社がこの規制に該当しない遠洋トロールに進出し始める。これが300総トンを越えるトロール船なのだけれども、航海日数が伸びることもあって、冷凍・冷蔵設備を持つようになる。

2019-12-31 15:30:04
天翔 @Tensyofleet

なので開戦までに整備された遠洋トローラーはそこまで数は多くない。昭和一桁台後半あたりから遠洋トロール船が増えだすのが分かる。 汽船「トロール」漁業ノ現況 昭和11年3月 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/pgRjHrGb2a

2019-12-31 15:41:43
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天翔 @Tensyofleet

とはいえ、戦時中も時折船団の中にこれら遠洋トローラーの名前が連なっていることがあり、ヒ86船団やサイパン脱出第4611船団にもそれと思しき船名が顔を覗かせている。 pic.twitter.com/svLE0Azs3O

2019-12-31 15:47:29
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天翔 @Tensyofleet

これら戦時標準型漁船のうちで、まだしも多少なんとかなってるかな、と思うのがト型で、最終的に500トン型に絞られつつも320トン型2隻と500トン型13隻が計画に残り、320トン1隻と500トン2隻が未成となっている。写真は500トン型未成のうちの1隻で、戦後完成の利根丸(533総トン,日本水産)。 pic.twitter.com/A7SBF1uKKN

2017-12-30 14:16:47
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天翔 @Tensyofleet

建造が軌道に乗ったら乗ったで戦火の中に消えていくのが当時の日本の状況で、なんとも寂しいところですけれども。竣工にこぎつけた戦標ト型うちの1隻、ヒ86船団の第六十三播州丸(533総トン,大洋漁業)、推定ですが上側の炎上中の船がそれ。 history.navy.mil/our-collection… pic.twitter.com/swykSERgVf

2017-12-30 14:23:54
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天翔 @Tensyofleet

本船はヒ86船団の9番船。なおトロール船ながら搭載物件は漁獲物ではなく重油その他430トン、うち250トンがドラム缶で甲板積み。(44/59~) 昭和19年12月以降 大東亜戦争徴傭船舶事故報告綴(17) jacar.archives.go.jp/das/image/C080… pic.twitter.com/0bOZh4qkmi

2017-12-30 14:32:17
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