大学から一緒にパイロットになろうと目指し、同じ航空会社のパイロット養成コースに入ったものの、道だけパイロットになれず、グランドハンドリング(地上スタッフ)になる話
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泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

パイロット晴と、グランドハンドリングでマーシャラーの道の航空パロでもいいですか? あ、道はヘッドセットオペレーターでもいいです。機内のパイロットと無線でやり取りしながら誘導路までプッシュバックする人……

2021-06-03 21:02:51
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

@meshitarooo93 道と晴は大学からの同期で、晴はパイロット養成コース首席で卒業して、道は体調的な問題でパイロットなれなくてグランドハンドリングに異動した感じですかね。

2021-06-03 21:24:05
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

晴は最優なので、最短で副操縦士になって、長い社歴の中でも最速で機長にまでなる。 道は同期が機長までなったのを見て「儂はどうして」と思い詰めるんですが、先輩(きいち殿)がそれを見て「どーまん、お前、そろそろオペレーターやるか?」って言われて、初めてオペレーターやる。

2021-06-03 21:30:30
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

大学の時から、晴とは一緒にパイロットになろうと言い合ってて、運良く同じ航空会社に入れて、養成コースで切磋琢磨してたんですよ。資格試験の前の身体検査で、血液系の疾患が見つかる。パイロットになれないことが決まってしまった訳です。

2021-06-03 22:10:21
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

皆が資格試験を受けにいくのを見送りながら、道は養成コースの寮を出て行くために荷造りしてるんですね。今までパイロットになるんだと頑張ってきたのに、その試験を受ける前になれないことが確定した。試験を受けて落ちるのなら、まだ納得できたのに、病気として発症してないものの疾患が見つかって

2021-06-03 22:12:50
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

それで未来を閉ざされた訳です。寮母さんにだけ挨拶して、仲間にも友人にも晴にも。何も言わず寮を出て行く道。 パイロットになれない、どうあがいてもなれない。その絶望が繰り返し耳元で囁くんですよ。「もう、いろんな事をやめてしまいなされ」と。 「晴には一生勝てませぬぞ」と。

2021-06-03 22:15:21
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

荷物はたったボストンバッグ1つだけ。ずっとパイロットになるための勉強しかしてこなかったから、大した私物もなかったわけです。ぼうっと歩いてたら、空港に来てたんですよ。いつの間にかバスを乗り継いで、大好きな空港に来てた。 フェンス越しに飛行機が離着陸するのを見て、ああなりたかったなぁと

2021-06-03 22:17:51
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

他人事のように呟いたら、ぼろぼろと涙がこぼれはじめて、止めようとしても止まらなくてわんわん泣いてしまう道。 パイロットになりたかった。ずっとずっと子供の頃からの夢で、それを叶えるために一生懸命勉強してきた。勉強して、あと一歩で、どうしようもできない事で諦めなくてはいけなくなった。

2021-06-03 22:20:05
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

わんわん泣いていたら、気がついたら隣に小柄な男性が立っていたんですよ。青いシャツを着た柔和な笑みを浮かべてる男性。 「君は飛行機が好きかい?」 「は……?え、ええ……好きです……」 「うん、そうか。なら、こっちにいらっしゃい」 そう言って、手招きされたところは小さな事務所だった。

2021-06-03 22:22:32
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「グランドハンドリングの事務所なんだ」 「誘導などをなさってる……」 「そうそう」 柔和な男性が好きなところに座りなさいと指し示すので、手近のパイプ椅子に恐る恐る座る道。 「コーヒーでいいかな?インスタントなんだが」 「あ、いえ、その……お気遣いなく……」 何で連れてこられたんだろう

2021-06-03 22:28:31
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

コーヒーを受け取って、ぼうっとしてたらその男性がにこにこ笑いながら見てるわけです。何で泣いていたとかも聞かない。ただ静かにコーヒーを飲んでる。コーヒーの温かさと室内の静寂、飛行機の離着陸の音がだんだん道の心を落ち着けていく訳です。 やっぱり、儂は飛行機が好きだ。

2021-06-03 22:30:21
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

パイロットになれなくても、飛行機が好きなことには変わりないなと改めて実感した道。会社辞めて、どこかの空港近くで職探しと住処を探しますかねと思ってた。そうしたら、先程まで静かだった男性がにこにこ笑いながら話しかけてきたんです。 「君、マーシャラーやってみないかい?」

2021-06-03 22:32:09
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「え?マーシャラー?」 「まあ、就職してすぐという訳にはいかないけど、先輩もいるし勉強すればできるようになるよ。それにうちは大手会社だから近くに寮もあるし」 「し、しかし、そんなすぐ……!」 「大丈夫、大丈夫。だって、君。飛行機好きなんだろう?」

2021-06-03 22:33:55
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

大丈夫と笑ってる男性に、ふと止まってたはずの涙がまたぽろりと落ちて、こくりと頷いた。 「私はここの所長でふじわらのあきみつと言うんだ。よろしく」 「よろしくお願いいたしまする、藤原所長」

2021-06-03 22:35:28
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そのグランドハンドリングの会社は、たまたま自分が所属していた航空会社のグループ会社で、そこからスムーズに異動になった道。養成コースの仲間にも晴にも伝えず、ただ今は静かに過ごしたくて晴たちの連絡先をブロックした。急に新人として入ってきた道を、事務所の皆は温かく迎えてくれる訳です。

2021-06-03 22:41:54
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

試験が終わった晴が、道の部屋を訪れたら鍵がかかってて、出かけてるのかな?と思ってたんですが、次の日の朝になっても戻ってこないから、さすがの晴も不審に思って寮母さんに道が戻ったか聞く訳です。 「あしや君は退寮しましたよ」 「……え?」

2021-06-03 22:44:09
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

どうしてと言えば、寮母さんは言いにくそうにしながら、道に血液系の疾患が見つかったこと、発症してないがパイロットになれないことを伝えた訳です。 身体検査で見つかったこと。試験すら受けれず、パイロットの夢を閉ざされたこと。 そして、試験に向かう自分を笑って見送ってくれたこと。

2021-06-03 22:46:51
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「道はどこに?!」 「すみません、退寮後の行き先は聞いていなくて……」 慌てて道へ電話をかけるんですが、すぐに切れてしまって繋がらない。メッセージも送ったけれど既読にならない。ばくばくと心臓が激しく鳴る。どこに。どこに行ったんですか。どうか、無事で。どうか早まらないでいてほしいと。

2021-06-03 22:50:54
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

次の日の出勤で、道が養成コースを辞め、グループ会社へ異動になったことを教官から知らされて、ほっと胸を撫で下ろす晴。よかった。生きてた。生きててくれた。 試験は一発合格。養成コースも首席で卒業。晴はエリートコースを進むんですが、ただ少しだけどこか空虚になった気がした。

2021-06-03 22:55:04
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

最年少機長になった晴なんですが、顔がいいこともあって会社の広告塔みたいなこともするんですね。主にパンフレットやHP。晴のファンクラブみたいなのが出来てて、航空会社の普通のパンフレットなのに高額取引されるわ入荷待ちだわととんでもない人気になった晴。

2021-06-04 00:30:07
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

新しいパンフレットが刷れたら、グループ会社のこの事務所にも届くんですけど、それ見て道は晴がもう機長になったことを知る訳です。 「さすが晴。もう機長か……」 飛行機に関われる仕事だし、皆いい人で仕事はきついが楽しくしているんだけど、晴がどんどん出世していくのを見ると辛くなってしまう。

2021-06-04 00:33:10
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

真面目で勉強家なのでマーシャラーにもかなり早く任されるようになったんだけど、晴が操縦する飛行機にはまだ当たってない。元気そうだと思いつつも、少しだけ空虚で、ため息ばかりの道に、先輩のきいちさんががばりと肩を組む。 「おおい、道。最近溜め息が多いじゃないか!一体どうした?!」

2021-06-04 00:35:24
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「何でもありませぬ」 「ふーん」 そうやってきいちが手元を見れば、道はまた晴の載ったパンフレットを見ている訳です。なるほどなるほどと頷くきいち。 「そういや、うちの会社の御自慢の最年少機長殿。最近は溜め息が多くて憂いがちらしくてなぁ。グランドスタッフの女の子が胸をときめかせてたぞ」

2021-06-04 00:37:54
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「憂いがち?」 「ああ、何せあの顔だ。機長としての仕事だけじゃなく、広告塔としてパンフレットやHPやーと引っ張りだこらしくて疲れてるんじゃないかぁ?顔のいい男は大変だな!」 「……そうですか」 いや、そもそもそういう事には慣れていたはずだ。顔で騒がれることは学生時代からずっと。

2021-06-04 01:32:50
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……道、そろそろヘッドセットオペレーターやろうか」 「はっ?!いや、ですが儂はまだ……」 「顕殿ともそろそろ練習をと言ってたんだ。オペレーションは頭の中入ってるだろ?」 「た、確かに入ってはいますが……」 「ならいいだろ。明後日、とりあえず1便だけやってみよう。僕がついているから」

2021-06-04 02:10:30
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「えー!もうオペレーター?!スゴいじゃん、どまぴ!」 「どまぴはやめてくだされ……いや、しかしまだ経験もそんなにないというのに……」 「それだけ皆から信頼されてる証じゃんよ!」 同じ会社のグランドスタッフであるなぎこ殿に、夕食を一緒にと誘われた際にオペレーターの話をすれば、

2021-06-04 02:14:40
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

まるで自分のことのように喜んでくれた。すごいすごいと言われてほっと胸を撫で下ろす。晴のように昇進はしていないが、少しは並び立てられるだろうか。いや、あいつはきっと自分など見向きもしていないだろう。だから、これは自己満足にすぎない。 「なぎこ殿はグランドスタッフでございますな」

2021-06-04 02:17:10
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「うん、そーだよ。何々?グランドスタッフなりたくなっちゃった?どまぴなら、大歓迎だよ」 「なりませぬ。いえ、晴をご存知かなと思いまして……」 「あー……晴殿ね……うん、顔は知ってるかな。仕事で一言二言くらいは会話したことあるけど、顔見知りに含めちゃだめなやつだね」

2021-06-04 02:19:17
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

ほぼ一方的に顔知ってる程度だよと言われて、ほっと胸をなで下ろした。なぎこ殿は幼顔とはいえ可愛らしい顔立ちである。プライベートで知り合いと言われたらと、なぜか不安になっていたのだ。いや、なぜほっとした? 「……きいち殿が、その、晴殿が最近憂いがちだと言ってまして……」 「あーね」

2021-06-04 02:22:00
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

もぐもぐとご飯を咀嚼し終わってから口を開くなぎこ殿に、自分はどう映っているのだろう。もはや立場も雲泥の差だというのに。 「確かに仕事の時って顔暗いよね、晴殿。パンフレットの時はめっちゃ笑顔だけどさー。ま、それだけ機長って責任重大だし、そんなもんじゃない?」 「そうですか……」

2021-06-04 02:24:55
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

あの豪胆なやつが?と思ったが、確かに最年少機長として重責を果たすのは大変だろう。それにパイロットの仕事以上に、広告塔の役割もしているのだから。 「ねーねー!今度さー、知り合いのキャビンアテンダントがここから離陸するんだけど、どまぴのオペレーターお祝いに呼んでいい?」

2021-06-04 02:27:24
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「ンンンン?!オペレーターお祝いなどいりませぬ!!」 「しよーよー!お祝い!どまぴの初めてのオペレーター業務じゃん!ね!お祝いさせて!」 「そう言いながら、あなた、飲みたいだけでしょう?!」 「バレたか」 「バレまする!」

2021-06-04 02:29:07
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

その日の夕食は賑やかに終わった。

2021-06-04 02:29:34
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

ヘッドセットを頭につける。昔は有線だったが、今は安全のため無線で行うことが多くなった。深呼吸をしていれば、隣に立っているきいち殿がぱちりとウインクした。  「オペレーションは頭に入ってるな?」 「はい」 「よし!じゃあ、道、ヘッドセットオペレーターデビューと洒落込もうじゃないか!」

2021-06-04 02:32:04
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

客が全員搭乗完了した。ヘッドセットがコクピットと繋がる。 『グランド コックピット』 ひゅっ、と息をのんだ。 コックピットに座っているのは、自分がこれからプッシュバックするのは晴が操縦する飛行機だ。

2021-06-04 02:34:01
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……コックピット グランド」 声が震えそうになるのを抑えながら、機内からの声に答える。はっと息を呑んだ音がした。 『……プッシュバック アプルーブド、ランウェイ○○、ヘディングノース(機種を北に向けてプッシュバックしてください)』 「ヘディングノース、ラジャー(北向き了解)」

2021-06-04 02:38:16
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「リリース パーキングブレーキ(パーキングブレーキを外して下さい)」 『パーキングブレーキ リリースド(外しました)』 「パーキングブレーキ リリースド、ラジャー」 隣のきいち殿を見て、そして整備士の方を向いて頷く。整備士が飛行機を牽引する車の運転手に合図を出した。

2021-06-04 02:41:29
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「コメンシング プッシュバック(プッシュバック開始します)」 飛行機の周囲を確認する。問題なし。 「グランドクリア フォーエンジンスタート(機体周囲は安全です。エンジンをスタートしてください)」 『……ラジャー』 晴の声が震えていた。

2021-06-04 02:45:01
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

『エンジンスタートシーケンス ライト ゼン レフト。スタート エンジンライト(右から左の順番でスタートします。右エンジンスタート)』 右のエンジンが回った。 「スタート ライト。グランドクリア(右スタート。周囲問題なし)」 『スタート レフト』 左エンジンが回る。

2021-06-04 02:49:15
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「スタート レフト。グランドクリア」 全てのエンジンが安定して回り始める。牽引していた車を見れば運転手がこくりと頷いた。プッシュバック完了だ。 「プッシュバック コンプリート。セット パーキングブレーキ(プッシュバック完了しました。パーキングブレーキをセットしてください)」

2021-06-04 02:51:56
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

『パーキングブレーキ セット(パーキングブレーキセットしました)』 晴の声を聞いて、整備士に合図を出す。牽引車と連結させていた棒を取り外した。 「トーバー ディスコネクト(連結棒外れました)」 『ラジャー』 これで晴からヘッドセット外すよう指示が出たら完了である。ふう、と息をついた。

2021-06-04 02:55:13
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

少し間が空いて、震える声をまるで絞り出すように晴がささやく。 『……ディスコネクト ヘッドセット(ヘッドセットを外して下さい) …………行ってきます、道』 ふ、と笑みがこぼれた。

2021-06-04 02:56:59
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「ヘッドセット ディスコネクト(ヘッドセット外します)。 …………行ってらっしゃい、晴」 機体から離れる。スタッフが離れたのを確認して飛行機が進み始めた。泣きそうになるのを必死にこらえながら、乗客に向けて手を振った。 行ってらっしゃい!よい空の旅を!

2021-06-04 02:59:09
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

パイロット晴とオペレーター道は、くっついた後、地上勤務とフライトとの休みがなかなかあわなくて、せっかく帰ってこれたからセッしたい晴とフライト後は寝かせたい道でベッドの上で攻防戦してそうですよね。 晴「嫌です!寝ない!!」 道「早処寝!」

2021-06-04 17:40:52
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

流されて途中までセッしてるけど寝落ちする晴のパターンか、帰ってきた晴のために洗って干してふかふかになったお布団に押さえつけられて、晴が寝るパターン(どっちも寝る)

2021-06-04 17:42:10
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まとめたひと
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

腐垢。成人済。 その時々にはまったCP吐き出し用。現在fごの晴道と神陛にはまっています。晴道や神陛吐き出し中。 道受も道攻も好きですが、晴道固定派。 吐き出したネタは定期的にプライベッターやminへ移しています。 マシュマロ→marshmallow-qa.com/v4v7mv9ckziiws…