コチ @cochi203 リンク限定
TLに放流したSSを溜めていきます。シリアスもラブもごった煮。全年齢。↑New ↓Old
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原作軸

蛇がいる

コチ @cochi203

蛇がいる。 泥濘に落ちた彼を助けたいのに蛇がいる。 でも、蛇が嫌いだなんて子供じみた我儘と、相棒の命を天秤にかけるほど愚かではない。 来るな、と彼は腰まで泥に沈みながら叫んだ。 蛇は嫌うべきだ。 子供だなんてとんでもない。君の判断は正しい。それはいつか、言葉巧みに君を唆すだろう。

2021-07-17 01:20:06
コチ @cochi203

君の親を沈めたくせに、君と食事を共にして、やがて君をも泥に招き入れようとする。ろくでもない地獄の遣いだ。 だから、どうかこちらに投げて。 俺が一緒に沈めてしまうから。 意味が分からないし、蛇を想い人にも投げたくはない。 だから私は、ありったけの勇気をもって蛇を熊に投げ 目が覚めた。

2021-07-17 01:20:07

髪飾り

コチ @cochi203

彼は気に入るだろうか、と言うと、ふたりは意味ありげに目を合わせた。 何つけてもアイツは褒めるだろうよ、と面白ヒゲ坊主は笑うし、面白ヒゲ長髪は意地悪くニヤニヤしている。 でも… 一度も見た目を何か言われたことは無いから、興味無いんだろうな、と髪飾りを戻す。 悪かったな寄り道して。

2021-07-17 01:15:07
コチ @cochi203

と。 アイツは本人に言わないからなあ、それがかっこいいと思ってんだよガキ臭ぇ、なんて言いながら長髪が購入してしまった(坊主は金がないんだろう)。 俺からもらったって言いな。今までよかマシな反応が見れるさ。 そういうものか? そうさ。俺たちはゆっくり帰るから、先に帰って見せてやんな。

2021-07-17 01:15:08

期限付きの契約

コチ @cochi203

限を設けたのは俺だった。そしてその判断に今は救われている。 何人も彼女を害するべからず。手前の領分を超えた身勝手な庇護欲がいつしか心に巣くい、今では自分の原動力にまでなってしまった。あの子を食い物に生きているのは、他ならぬ俺だ。 彼女が大切だからこそ、期限付きの契約で正解だった。

2021-07-17 01:10:59

再会後のあの子

コチ @cochi203

再会後のあの子は、殺人を咎めなくなっていた。 流氷の上で弓を持ち震えるあの子を見た限り「慣れた」わけでは無さそうだ。しかしそれではますます道理が通らない。 でも、好都合だ。 と一瞬、思ってしまった。結局俺はあの子の制止に一度も応じたことはなかったのだから。 つくづく自分が嫌になる。

2021-07-16 00:48:19

風邪ひきあの子

コチ @cochi203

あの子は悪い風邪をもらってしまったらしい。咳き込んでは水を飲み、しかし飲み込みきれず戻してしまう。 薬屋に行ってこい。 不意に坊主頭が俺に言った。なんでだよ、俺が看病するからお前が、と返そうとして、あの子の咳が遮る。問答してる暇はねえだろと押し切られ、渋々山を下りる準備を始めた。

2021-07-12 18:45:53
コチ @cochi203

ありがとう、とあの子は言った。 アイツを追い払ってくれて。 良いってことよ。アイツにあんまりこういうとこ見せたくないでしょ。 …お前はよく見てくれてるな。 まあ、この中で一番のオニーサンだからねぇ。 さぁ、寝た寝た。ずっと病人起こしてお話してたなんてバレたら、アイツに殺されちゃう!

2021-07-12 18:45:53

「沢は無いかな」

コチ @cochi203

沢は無いかな、と彼は言った。 木々のざわめきや野鳥の声に混じって、せせらぎが遠くに聞こえる。もう少し行けば下るだろうから、あるとしたらその辺りだろう。 ありがと。 彼は微笑んで銃剣を腰に戻し、さっきまで人間だったものの皮を適当に畳む。 こんな手じゃ君と手を繋げないから、と彼は笑った。

2021-07-12 18:15:20

「俺を、」

コチ @cochi203

ゆるゆると優しく抱きしめられる。が、一線を越えさせてくれることは一度もない。 「そういうのは将来、旦那さんに言ってあげな?」と引き剥がされる。 ではなぜ肌の触れ合いまでは許すのか。中途半端な甘さがいちばん残酷なことは、教えたはずだが。 彼は昏く笑う。 「俺を、忘れないでいてほしくて」

2020-10-20 00:29:47

凍土の土葬

コチ @cochi203

神様が替われば生活も変わる。土葬を示す木碑は、天葬という文化の墓標でもあった。 「カタカナのキだ」と往路にいなかった男が言う。復路に不在の人の話を伝えると「へえ」と彼は私たちに共感してくれる。 「墓を掘る方が大変だろうに。凍土を二メートルも」 私は寄り添えるだろうか、彼の過去に。

2020-07-15 01:18:17

大人になる方法

コチ @cochi203

人を殺すだけが大人になる方法じゃないよ、と杉元は言った。 生かすことも、産むことも、教えることも、導くことも、きっと大人にしかできない。自覚的にはね。 燃やしたり、撃ったり、刺したりして大人になってしまうのは、あまり素敵な道じゃないと思うな。 赤いけもの道の先で、杉元は首を振った。

2020-06-22 20:59:15

大雪山のふたり

コチ @cochi203

こんな近くに他人を許したことはなかった。 仕方がないんだ。彼は怪我をしている。雪山で一人にしたらどんどん体温を失ってしまうだろう。 会話で意識をつなぐ。彼はなんだか眠たそうだった。過去の話をずっとしている。共感はできないが、話したいならそうさせておこう。眠られるよりはずっとましだ。

2018-11-05 18:53:33
コチ @cochi203

「…なんか食べてる?」 バレた。 「シカの肝臓だ」 あとふたつ、あいつらの鹿の方からももらっておいてあるぞ、というと、気配が和らいだ。じゃあ、いただこうかな。振り向けないから表情までは分からないけれど、ややあってむちむちと咀嚼音が聞こえ始めた。

2018-11-05 18:55:48
コチ @cochi203

繰り返しになるが、振り向けないほどの近距離に誰かを許したことはないんだ。父も、物心ついたときには一定の距離を置いて入眠していた。 「北海道には柿の木が無いんだっけ」 だからこの距離はとても心地がいいんだということを、初めて知った。 後頭部に彼の心音を確かに感じる。 心臓の匂いもする。

2018-11-05 18:58:49
コチ @cochi203

こんな特別を知ってしまったら、 もう二度と元には戻れないような気がした。 でも、親はいなくなり、兄弟も山に消えたように、 「春だから無かったんだよ」 彼もいつかどこかに消えるのだろう。 すごく甘いホシガキなるものがある地に。 それに、わたしは耐えられるのだろうか。

2018-11-05 19:01:40
コチ @cochi203

「…干し柿を食べたら、戦争に行く前の…に戻れるのかな」 今夜、わたしは初めて約束をする。 今まで、相棒の未来を縛るようなことを互いに言ってこなかったけれど、その線を越えようと思った。 だってこの距離はひどく居心地がいい。 もう二度と失いたくない、なんて、思ってしまったんだ。少しでも、

2018-11-05 19:04:38
コチ @cochi203

「故郷へ連れていけ」 こころとからだが血塗れになる前のお前を見てみたいんだ。 けれど、返事はなかった。 出すぎたことを言いすぎてしまったのかもしれない。やっぱりわたしたちは相棒だから。 未来にも過去にも干渉しない、という暗黙の了解は、やはり破ってはいけなかったのかもしれない。

2018-11-05 19:07:39
コチ @cochi203

でも、本当のことを言うと、すごくドキドキしているんだ。 お前もさっきから震えているし、おんなじきもちなのかもしれないって、期待してしまったのだけれど。 親よりも兄弟よりも近い距離に彼を感じながら、初めての血の香りに少しだけ酔いながら、その夜は結局眠ってしまったのだった。[終]

2018-11-05 19:12:23

明日の力になるために

コチ @cochi203

普段は離れて寝るけれど、寒い夜は添い寝もする。火の近くは彼女に譲って、健やかに上下するお腹を擦りながら自分も眠りに就く。 この柔らかな腹の中で、いま内蔵は頑張っている。さっきのオハウが熱に変換されている最中なのだ。彼女の明日の力になるために。 少しだけ、羨ましい。 (01:お腹を触る)

2018-08-05 02:15:44

手練手管

コチ @cochi203

テレンテクダを覚えたい。 「そんなことしなくてもいいよぉ。君が好いてる奴も君にぞっこんなんだから」 対等になって一泡吹かせたいんだ。 「もう吹いてるよ、ぶくぶく」 おまえ、ひどく自信家だな。 「え、俺の事じゃなかったの」 おまえのことだ。 「……対等になりたいのは、俺の方だよ」

2018-07-22 01:26:32

「おなかすいた」

コチ @cochi203

「おなかすいた」 なんて、腹をさすって言う子じゃない。空腹を感じれば、自分で仕留めて、自分で料って、俺たちにも食わせてくれるような子だから。 だから言われたとしたらそれは 「…いっぱい、食べてね?」 俺を食べたいという、ささやかで獰猛でいじらしくていやらしい、お誘いのお言葉なんだ。

2018-07-22 01:03:40

血染めの葡萄酒

コチ @cochi203

死は穢らわしい。鉄と腐敗と蛆の臭いがする。同じ場所にいながら生き延びた俺も大差ない。 でも、同じく血で手を染めながら、彼女はぶどう酒のような芳しい香りを放つ。清らかなのになまめかしい。 最初はその神秘を守りたかった、 が次第に、果実酒を啜りたい、と卑しくも願うようになってしまった。

2018-07-14 15:11:11

燻り始めた熱

コチ @cochi203

熱くて、くるしい。燻った熱を持て余して、汗ばむ。 たぶんこの熱は、目の前の男も抱えていて、その男にぶつければ解決するんだろうな、ということは分かった。けれども、私より前から自覚しながら、黙っている彼を困らせたくはない。 私を撫でる手にもどかしさを感じたのは、その夜が初めてだった。

2018-07-14 10:43:09

「酒は毒なんだよ」

コチ @cochi203

酒は毒なんだよ。彼女の手から瓶を取り上げる。胡乱な視線が、酒瓶と俺の顔の間の中空をさまよう。 まあた子供扱いかあ!舌足らずな罵倒は素面との落差が際立つ。潤んだ青い眼も上気したもちもちの頬も、目の毒。愛らしさしか感じない。 毒だと分かってても飲み干したくなるよね。奪った瓶を呷る。

2018-07-14 10:01:56

私の知らないことば

コチ @cochi203

彼は私の知らないことばを使う。存外読書家なのだ。 読書は苦手だけど、同じ地平で物を見てみたい。頭蓋にキリで穴を開け、脳みそをすくって、ちゅるりとひとさじ舐めてみれば、彼の一部が、私の口からも出るようになるのだろうか。 「グロテスクなことを考えるね」 ああほら、また、知らないことば。

2018-07-14 02:08:19

指を食む

コチ @cochi203

妙な音がする。 目を開けると、杉元が私の指をちゅぱちゅぱしていた。寝惚けてんのか。 不規則に咥えたり吸ったり。赤ちゃんのようで見ていて面白い。 でも、この強靭な顎で噛まれれば、私の細っこい指なんて即座に呑み込まれる。不用意に獣に手を出してはいけない、と自戒し、ちゅぷんと指を抜いた。

2018-06-06 00:24:41
コチ @cochi203

微かな水音に薄目を開けた。 ぐでっと投げ出した右手の指の先を、相対して寝ていたアシリパさんが寝惚けながらまむまむと食んでいる。人差し指はかなり奥まで咥えこんでいた。 く、と指を曲げてみると、咥内の獲物を逃すまいと言わんばかりの甘噛み。 まあ、美味しく食べてくれれば、構わないけどさ。

2018-06-05 23:59:30

「舐めると治るよ」

コチ @cochi203

毒なし蛇ぐらいなら、舐めると治るよ。何かで読んだ知識を話すと、彼女は嫌そうながら股引を脱ぎ、右脚を抱え込んでおずおずとふくらはぎを舐めようとした。が、蛇の触れた患部。抵抗があるらしく、なかなか舌が届かない。 脚がつりそうだ、と苦悶の声。何なら俺が舐めようか。片膝をつく。

2018-05-30 02:25:15
コチ @cochi203

彼女のなまっちろい素足を膝に載せ、屈んでそっと舌で触れる。 と、脚気検査よろしく脚が跳ね上がった。顎を強かに蹴られ、舌を噛む。みぎゃっ。わ、悪い、ひやっとして…足を抑えてくれないか。 ひくりと痙攣する脚。白魚のように滑らかだけど、皮膚の裏にはしなやかな筋肉がある。何度も舐めても、

2018-05-30 02:25:15
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コチ @cochi203

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