第31回深夜の真剣140字60分一本勝負

RAY/※※※ @growler_ray

どうして私が、毎回天狐のお面を買っていくのか教えてあげようか 家でこのお面を被っているとね、お面の向こうの景色が変わっていくの。そう、綺麗な家で、綺麗な光の中で、私と貴女が楽しそうに話し合っている景色に …天狐のお面は神通力、未来を見る力を与えてくれるって話、貴女は信じてくれる？

大橋電光 @79DEnko

｢あ～｣ 思わず声が出た。冷たいおしぼりが、外回りで火照った顔に染み渡る。 ｢課長、おじさん臭いですよ｣ ｢馬鹿野郎、正真正銘のおじさんだよ｣ 生意気な軽口も今日は心地いい気分だ。 ｢さぁお前ら、今日は無礼講だ！ 飲むぞ！｣ 平成最後の夏くらい、役職のお面を外して飲もうじゃないか。

花滝ちかる @chikaru_toka

夏祭りの日だけ会える、狐面の男の子。 「貴方はだあれ？」 「僕は僕だよ」 大人になっても、クスクス笑う貴方。 「お面のままでも、私は貴方が好きよ」 その瞬間、狐面が割れて、カランと地面に落ちた。 「呪いを解いてくれる人は、君だったんだね」 笑顔の貴方も、やっぱり貴方だった。 #140字小説

くーか @kuhkatzen

今日は友人と居酒屋。おごりだというので喜び勇んでやってきた。 いやー持つべきものは親友だな。 席についておしぼりをもらう。俺はおっさんだから顔拭いちゃう。 顔に当たる感触が気持ちいい・・・いや何も感じない。なんで？ 向かいの友人がおれに声をかける。 「お前、なんでお面被ってんだ？」

宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

「知り合って、30年だっけ？ いい歳じゃない、私達。このまま終わるつもりなの？」 離婚した傷心の私を口説くなら今よ、と彼女は言った。 そうして僕らは、間接照明の照らすレストランで手を拭き、ゲェムを始める。 鉄面皮の下、先に言わせた方が負けのゲェムを。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

月兎 葉音 ｰｺﾄﾉﾊｰ @Tuki_To_Ha_Ne_

高鳴る胸の音。 額には汗の粒。 隣には俯く君。 出された其れに、手を伸ばす。 同時に伸びた手。触れる指先。 視線が合う。ふふっと笑う君。 離れないままの手。 そっと絡みあう指。 心臓が踊りだした。 . #深夜の真剣140字60分一本勝負 お題 ｢おしぼり｣

松村 善十朗 @juro_matsu

おしぼりで顔を拭くな。そう伝えると彼女はきょとんとしながらビールを喉奥に押し込んだ。ごめんねぇと笑う彼女に溜め息をつく。不意に伸びてきた彼女の手が僕の頬をつまんだ。努めてかぶっていたしっかり者のお面が外れる。へにゃと頬を緩める彼女に、僕はいつも惚け顔で返してしまう。 「笑って」

∫ MatoP @_Mato_P_

平成最後の月が、また終わる。 刻一刻とまた時間は続いていく。 鬼のような、でも仏のような、時の流れが。 まるでお面をかぶってるみたい。 そんなことを思いながら、カフェの隅で、おしぼりで手をふく。 なんだかんだで、いつも通りの日常。 何も変わらない。 私の気持ちも、君の気持ちも。

津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

「何でもかんでも『平成最後の』って！」SNSをチェックしていた様子の彼女が、そう叫んでスマホを放り投げた。 二人きりの教室は馬鹿みたいに暑い。窓からの風が、彼女の後れ毛をふわり揺らした。 ああ、困ったな。僕は思う。「平成最初のキスをしませんか」なんて、到底言い出せなくなってしまった。

ロク @Roku_Sei_

平成最後の夏。僕はとあるお祭りに来ていた。 金魚掬いに林檎飴…境内までの道を赤い提灯が照らしている。 ふと、隣を見ると、そこには狐のお面をつけた君がいた。 「…久しぶり。」 彼女はいつも通り何も言わずにお面を外し、とても嬉しそうに笑った。 今日は、年に一度の逢瀬の日。

野馬仁 @dou_8823

屋台で買ったひょっとこのお面をつけると君は笑った。そのまま強引に手を取り歩き出すと、お面の向こうで君が顔を赤くした気がした。すると向こうからやってくるのは友達とりんご飴を食べる君。なにあれー、ってひょっとこのお面を笑われて、僕もお面の内側から笑った。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

月兎 葉音 ｰｺﾄﾉﾊｰ @Tuki_To_Ha_Ne_

君の誕生日 僕の誕生日 同じ誕生日 平成最後の おめでとう 今年は特別 ケーキ入刀 . #深夜の真剣140字60分一本勝負 お題 ｢平成最後の｣

竜虎 @btbticc_org

あの時からずっと、私のヒーローはただひとり。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 参加させていただきます。改行含まずで140文字です。 pic.twitter.com/A1pblFxZ0u

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月兎 葉音 ｰｺﾄﾉﾊｰ @Tuki_To_Ha_Ne_

縁日に　並ぶお面を欲しがって 駄々こね　地団駄　泣きわめく その手に乗らぬと　素知らぬ母 どちらが勝つのか　夏の根比べ . #深夜の真剣140字60分一本勝負 お題 ｢お面｣

秋月蓮華 @akirenge

「平成最後の大量殺人事件……？」 彼女は彼から来た連絡を読んで呟く。その直後に通話が来た。 『君にも協力して貰うよ』 「一回こっちに来る？　おしぼりいる？」 『軽食が欲しい』 きれる。お面のように様々な顔を使い分ける彼は今日も今日とて 世界を守っている。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

平成最後の夏。 思えば貴方と二人、平成の世を見てきたわ。 顔を隠してたお面は顔を拭くおしぼりに、甘い冷やし飴は苦いビールに変わったわね。 でもじっとりくる暑さは今も昔も変わらない。 ……私達の関係も昔のまま変わらないのかな。 「なぁ、大事な話があるんだけど」 「奇遇ね、あたしもよ」

Altair @_altair_73

補修が終わった帰り道。何気無い会話でさえもいつも以上に胸が高鳴るのは、覚悟を決めたからだ。君との別れ道まであともう少し。「あのさ」話を遮る声に君の瞳が丸くなる。照りつける太陽は立ち止まる僕の背中を押すようだった。言いたいことは一つだけ。平成最後のこの夏を、片想い最後の夏にしよう。

色糸 @IRO_Iroito_

平成最後の夏だとかは僕にはあまり関係無いけれど、この胸中に秘めたる想いは、抱え続けるには些か大きくなり過ぎた。 お祭りに誘って、別れ際。 想いを言葉にした直後、往来する人々の雑踏も、蝉達の残響も、鼓動に搔き消された。 狐のお面に隠された僕の表情は、きっと君には見えていないだろう。