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どーる @doll046

561 無意識に、涙が零れていた。 幻想の中のあの人は... 「調子はどうですか?」 お医者さんの診察。 「あ、えっと...」 その幻想が離れず、答えはしどろもどろ。

2022-12-07 20:59:54
どーる @doll046

562 四六時中襲うこの胸の痛みが、私は今生きているんだと実感させる。 痛い。 でも、そんな泣き言は言っていられない。 私は、この心臓をくれた誰かの命を背負って生きなければならない。 そして、私の想像の範疇を出ないが、その心臓は恐らく。

2022-12-07 20:59:58
どーる @doll046

563 「暇だな...」 診察も終わり、病室に一人。 ベッドの傍ら、机の上にメモ帳とペン。 私は、おもむろに空に浮かぶ雲をそのメモ帳にしたためた。 「あれ...?」 私、こんなに絵、上手かったっけ?

2022-12-07 21:00:02
どーる @doll046

564 次は、窓の外に見える住宅街を... さらさらと、ペンは進み、ものの数分で描きあがる。 おかしい。 こんなに、ペンを走らせるのに迷いが無いなんて。

2022-12-07 21:00:08
どーる @doll046

565 記憶転移という現象がある。 レシピエントに、ドナーの記憶や趣味趣向が移ったと感じる現象だ。 「食事、持ってきましたよ」 私は居ても立っても居られず、 「あの、私のドナーってどんな人なんですか?」 看護師さんに問い詰めた。

2022-12-07 21:00:14
どーる @doll046

566 「私は、詳しいことはわからないので...」 「じゃあ、次の診察はいつですか?」 この心臓について、私はどうしても知りたい。 知らなきゃいけない。 そんな気がしてならない。

2022-12-07 21:00:21