1 これは、私が高校時代のお話。 朝、いつもより少し早く学校に着いたので自分の席で本を読んでいると、後ろから声をかけられる。 ○○:おはよ。 さくら:おはよう。
2021-02-24 17:36:153 ○○:―――好きなの? さくら:えっ!? ○○:…本。いつも読んでるなと思って。 さくら:ああ…うん。面白いよ。筒井くんも読んでみる? ○○:俺はいいや。本読むの得意じゃないし。
2021-02-24 17:37:205 ○○:遠藤、数学の宿題やって来た? さくら:やって来たよ。 ○○:ごめん…!見してくんない?忘れちゃって…。 さくら:もう…!しょうがないなぁ。
2021-02-24 17:38:097 先生:よし、じゃあまずは宿題の答え合わせからやるぞー。じゃあ1問目は…筒井! いきなり当てられる筒井くん。 忘れてきたままだったら、危なかったね。 でも、私が見せてあげたから大丈夫。 ふふ、筒井くんの役に…立てたかな。 pic.twitter.com/ZvoApGOCTQ
2021-02-24 17:41:488 ○○:はい。えっと…246です。 先生:…残念。正解は8だ。全然違うぞ。 えっ…! 間違えちゃった…。 どうしよう…。 筒井くん、怒ってるかな…。 怖くて筒井くんの方を見れない私。 はぁ…。
2021-02-24 17:42:209 全く集中できないまま、気づいたら授業は終わっていた。 授業が終わると、筒井くんはすぐに教室を出て行った。 ああ、やっぱり怒ってるんだ…。 憂鬱な気分になる私。
2021-02-24 17:42:3810 ○○:遠藤。 さくら:…!! ぼーっとしていたところに急に声をかけられて、思わずびっくりしてしまう。 ○○:これ、宿題のお礼。 筒井くんが持っていたのは、みたらし団子。 もしかして、これを買いに行ってたの…?
2021-02-24 17:43:1411 ○○:売店で買ってきたんだ。たしか…好きだったよね。 ……覚えてくれたんだ。 さくら:お礼なんて…いいのに。 ○○:まあそう言うなよ。ほい。 私の机の上にお団子を置く筒井くん。
2021-02-24 17:43:3612 さくら:筒井くん…! ○○:なに? さくら:…ごめんね。 ○○:えっ…何が? さくら:宿題…間違えちゃった。 さくら:ほんとは怒ってる…よね?
2021-02-24 17:44:0213 私がそう言うと、筒井くんはケラケラと笑う。 ○○:見せてもらっといて怒るわけないだろ?全然違ったから笑っちゃったけど。 さくら:うぅ…。 ○○:でも当てられたのが遠藤じゃなくてよかったな。 さくら:え…? ○○:今日はありがと。また、よろしくね。 さくら:…うん。
2021-02-24 17:44:3716 遥香:今日からこのクラスに入ることになりました、賀喜遥香です。よろしくお願いします。 私たちのクラスにやって来た転校生の名前は、賀喜遥香ちゃん。 今では、私の大切な親友。 pic.twitter.com/r3rXXNlp0H
2021-02-24 17:47:0518 かっきーは、またたく間にクラスの人気者になった。 休憩時間になると、かっきーの周りにはいつもたくさんの人がいた。 私とは…大違い。
2021-02-24 17:47:5520 さくら:筒井君は行かないの? ○○:なんか、乗り遅れたというか…。 ○○:遠藤はもう話したの? さくら:私…人見知りだから。 ○○:あはは、遠藤っぽいな。
2021-02-24 17:48:2821 そう言って、いつもと同じ笑顔を見せてくれる筒井くん。 後からかっきーが言ってた。 私と筒井くんだけ話しかけに来てくれないから、私たちのことが、すっごく気になってたって。
2021-02-24 17:48:5323 でも、そこから先は…あっという間だった。 私の知らないところで、筒井くんとかっきーはどんどん距離を縮めていった。 そして、“その日”がやってきた。
2021-02-24 17:50:0024 遥香:ねぇ、さく…? さくら:どうしたの、かっきー。 遥香:筒井君と…付き合うことになった。 pic.twitter.com/QF7U7B69xo
2021-02-24 17:51:5026 さくら:…おめでとう。 そう…言うことができた。 遥香:ありがとう…さく。 本当は、辛かったけど 大好きな人と、大親友の幸せをお祝いしてあげることができた。 pic.twitter.com/7IzmzyZxdA
2021-02-24 17:55:5528 それから私は高校を卒業し、乃木坂大学に入学した。 筒井くんとかっきーも同じ大学に通っている。 他にいくつかの大学を受験したけど、なぜか合格したのは乃木坂大学だけだった。 神様は、どこまで意地悪なんだろう。
2021-02-24 17:57:1629 大学に入って新たな出会いもあったけど、 筒井くんもかっきーも、私とずっと仲良くしてくれている。 2人は、私にとって本当に大切な存在。 でも、たまに思うことがある。
2021-02-24 17:58:2030 もし、かっきーが転校してくる前に 私が筒井くんに思いを伝えていたら 今、私たちはどうしていたのだろう。 だけど、その答えはもう…出ることはない。
2021-02-24 17:58:4632 さくら:筒井君、これ。 ○○:チョコレート? さくら:ちょっと早いけど、バレンタイン。 ○○:なんで今日? さくら:どうせ当日はかっきーと楽しく過ごすんでしょ? pic.twitter.com/vUX78h4Twh
2021-02-24 17:59:5233 ○○:まあ…そうかな。 さくら:ほらね。かっきーには内緒だよ? ○○:うん。 さくら:あ!も、もちろん義理だからね!? ○○:…わかってるよ。ありがとう。
2021-02-24 18:00:1135 今年、私が唯一お父さん以外の男の人に渡したそのチョコレートは、 もちろん義理なんかじゃない。 照れ隠しで義理って言っちゃったけど… それは、紛れもなく…本命のチョコレート。
2021-02-24 18:00:54