特に曹操の評価修正を盛り上げたのは毛沢東で、彼の主導の下、曹操再評価運動が大々的に行われた。郭沫若が戯曲において曹操を肯定的に評価したのもこの頃である。また、文化大革命の時の批林批孔運動でも、曹操は反儒教の人物として肯定された。
2023-07-24 23:12:14なお、「反儒教」とはマルクス主義に基づくイデオロギーの運動である。マルクス主義を始めとする共産主義では帝国主義の骨格となる伝統を否定し、人々の精神である文化を破壊し再教育(洗脳[注 33])することで、真に革命が成功すると考える。
2023-07-24 23:13:03このため暴力で政権を奪い、恐怖政治によって人民を支配した後も、“精神の革命”である文化破壊と再教育が続けられる。中国など東アジアでは人々の精神文化の根幹となっていた儒教・仏教・道教が“啓蒙”こと破壊のターゲットとなった[注 34]。
2023-07-24 23:13:27『三国志』は特に蜀漢が儒教的であるとの烙印を押され、共産革命による攻撃のターゲットとなった。従って中国共産党が大躍進政策などで政権基盤を固めていた1950年代から、蜀漢を貶めて曹魏を称揚するための歴史修正議論が噴出している。
2023-07-24 23:13:42「曹操は黄巾乱を承継して中国統一を果たすための礎を築いた」「曹操は民族主義で中国を守った」「曹操の屯田、新税制は農民を地主の圧政から救い、飢民を消失させた」とする郭沫若を始めとする曹操称揚の説は『曹操論集』にまとめられ、その後の三国時代解釈の教本とされた。
2023-07-24 23:14:12当記事中「曹操の大躍進」も『曹操論集』の踏襲だが、これは毛沢東の大躍進政策を曹操に投影して称賛しているものと見られる。好並隆司もこの件について『曹操論集―曹操論争よりみた中國「中世」史の理論―』(1960.09,洋学報 : 東洋文庫和文紀要 / 東洋文庫 編)のなかで
2023-07-24 23:14:27“所で、この論争(引用者注:郭沫若を発端とした曹操評価変更の議論)の背景には極めて大きな思想斗争が含まれ、政治的な問題が介在していると思われる。先ず、その事情について概略ふれておこう。新中國が解放以来、八年間に、ブルジョア思想の批判、反右派斗争はほぼ所期の目的を達したが、
2023-07-24 23:15:07なお一部の知識人には革命の実践を避けて、古代史研究に名をかり、中國の建設をサボタージュする分子が存在するという痛切な批判が中共中央宣伝部の陳伯達から問題にされた。これが五八年三月上旬のことであり、彼の報告をきつかけに“厚今薄古”の必要性が問題となり、歴史の研究の大勢が、
2023-07-24 23:15:25五四運動以降の近代史重點という風に理解されたのである。これ以降、中國史學界は急激な左翼志向を生じ、…(略)” と解説している。 批林批孔運動では、儒法闘争史観が主張された。これは中国思想を儒教の系譜(孔子・孟子などが中心)と、
2023-07-24 23:16:25道家・法家・兵家・墨家(老荘・韓非子・孫子・墨子等)や王充の二つに分け、儒家を悪の権化として法家を善玉とする史観である。中国共産党からすれば、これら二つの思想は「革命」の段階的進行であった、と説明されている[45]。
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