秘密で連れ出した病院の屋上で空を見上げる。「私のことは大丈夫だから」「でも、君の傍を離れられない」「うん、ここにいて」二人、手を繋ぐ。雲が徐々に切れ、星が顔を覗かせた途端、君の顔色が悪くなり、倒れる。「息が…ない」星合の夜。七月六日から七日に変わった瞬間。君は星になってしまった。
2019-07-06 22:01:00机に置かれたミルフィーユ。私は上からフォークを突き刺した。カスタードが横から漏れて、皿を汚す。「あなたの願い事はなあに?」先刻にテレビから聞こえた少女のセリフが脳で再生された。向かいの席に置かれた水は減ることなく、そのまま。「最後に会いたかっただけ。」崩れたミルフィーユを眺めた。
2019-07-06 22:02:36「好きです!」 七夕の日、星が降る中で私は告白をした。あの人は最初こそ戸惑ってたけど、次第に柔らかい顔になりながら、返事を返します 「いいよ、よろしくね」 叶わないはずの恋がここに実る。私の願いを書いた短冊は、どこかに飛んでいく …そんな妄想をする、7月6日の私なのでした
2019-07-06 22:03:517月6日の深夜、空の大三角を見たせいでコンビニへと歩いた。さくりと切りそろえられた三角形のミルフィーユ、二つ入り388円。二つの頂点が再会すると星合の空と呼ばれるらしい。けれど私には関係が無いことだ。二日に分けて食べるのだから。青い街灯の並ぶ一本道は、天の川と呼ぶには寒々しかった。
2019-07-06 22:04:02色とりどりの短冊に、明日は七夕かと気付いた。 「私の想いが好きな人に伝わりますように…?無欲だな」 両想いは願わずに。 「私…子供だもの」 コイツの想い人は大人の男か。俺も短冊に書いた。 「お前の本当の願いが叶いますように」 あの日から10年。俺は7歳年下の花嫁を迎えたのだった。
2019-07-06 22:04:14#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) お題「星合」「ミルフィーユ」「7月6日」3つとも使ってみました。 pic.twitter.com/iCWzWF6s72
2019-07-06 22:04:17衛星を砕いたクリームを使い、明日に備えて作ったミルフィーユ。彗星から絞ったワインも包み、私は眠りに就いた。廻る星々に思いを馳せると、明日貴方に逢える事が心より待ち遠しくなる。数億後年にも広がるこの宇宙で、貴方という唯一に逢えた幸福を噛み締められるから。#深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/GJYKOxxmfm
2019-07-06 22:04:297月6日に地上へ降りた彦星は、牛車いっぱいに竹を乗せて天へと戻った。そうして竹の葉と短冊を毟ると、ミルフィーユのように重ねて紐で結んでいく。「何をしているのですか?」不審に思ったカササギが尋ねると、彦星は笑顔で答えた。「星合の空に橋を架けるんだ。そうすれば雨が降っても会えるだろ?」
2019-07-06 22:04:56催涙雨が降り始めた頃、空から何かが落ちてきた。駆け寄ると、ずぶ濡れの天女が白黒の鳥と口論をしている。「一羽で無理ならミルフィーユみたいに重なって飛んで頂戴!」「無理ですよ!」鳥が悲鳴を上げると、天女は苛立ちながら天に向かって叫んだ。「彦星の馬鹿!嬉し泣きなら朝まで我慢してよ!」
2019-07-06 22:09:15「北海道は七夕を八月にやるんだって」 「陰暦計算か。星合だな」 七月六日、私は幼なじみのアイツとアイツの部屋で話す。 何処かで聞いた話題をすれば彼は知らない言葉を出してくる。 「夏休みはほっかいどーで七夕とかどう?」 「行けるならな」 ミルフィーユを食べる。夏休みの予定は、決定だ。
2019-07-06 22:33:01○星合商店街 商店の脇に笹の葉と短冊。その前に立つ琴音と奈津子。 奈津子「願い事何書いたの?」 琴音「お父さんが毎日、コタロウの散歩に行きますように」 奈津子「犬の散歩、毎日は厳しくない?」 琴音「彦星は毎日、牛の世話してる」 奈津子「琴音、結構ブラックね」 と苦笑いの奈津子。
2019-07-06 22:38:03濃厚なキスシーンを求めてみた、布団の中、見下ろしてくる彼女へと。 去年の星合の時節、浴衣を一緒に選んだ日から始まった。お揃の浴衣で夏だねーって笑ったっけ。 唇が離れ、声が降ってくる。 「七夕だね」 「一年…たったね」 いつまでもこのままでいたい。 そう、二人で短冊へ書いたんだ…。
2019-07-06 22:47:41