『WATCHMEN』へのポエミーな感想。「世界終末時計編」
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阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

『WATCHMEN』には嘘がある。『WATCHMEN』最大の嘘は世界終末時計の進退が円形の黄色い盤の時計で暗示される事だ。これは明らかに実態にそぐわない。何故なら実際のそれは45分を示す9から12=0までのクォーターしか持たないから。

2022-12-19 09:34:38
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

然しこの偽りによりムーアはある偉業を成し遂げた。時計に円盤としての機能を取り戻したのである。詰まり時計に0=12という再帰的な機能を、即ち午後の終わり(世界の終末)が午前の始まりになる(新世界の開始)という皮肉な円環構造を復活させたのだ。

2022-12-19 09:48:34
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

事実、最終章の最後のコマの時計は0時0分を指しているのだが、この意味が果たして新世界の始まりなのかそれとも事実との遠からぬ心中の暗示なのか、それとも隠蔽されたジェノサイドで齎された新世界は破滅的な地獄であるとするかは読者に委ねられていると言っていた人がいた。これは従前の世界終末時計

2022-12-19 10:12:02
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

には見られなかった事だ。何故なら現実のそれには始まりが無いからだ。

2022-12-19 10:12:04
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

上記で『WATCHMEN』に於ける世界終末時計がアイロニー、批判対象として描かれている可能性について述べた。そしてアラン・ムーアがそれを行った理由を私は、それが現代社会(科学技術産業)批判の一環だからだろうと考える。敢えて言わせて貰えば個人の殺人(小宇宙の崩壊)では毫毛も動かない癖に

2022-12-19 10:42:10
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

さる国の為政者の好戦的な発言(或いはそれは帝国からの独立の意図を含む)では大きく動く、そういう一面的な尺度が恰も支配的に世界のあり方の認識を規定する様は核抑止力の発想と軌を一にしており、終末時計はそれへの批判どころかその威力の賛美にすらなる嫌いがある。詰まり人間は核と一蓮托生、

2022-12-19 10:42:11
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

それ以外の生き方は疎か生きる価値なんてあり得ない、だから、この終末時計に従って生きよう、と言う共生関係を築いているとすら言えてしまうのだ。

2022-12-19 10:42:12
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

詰まり核兵器を筆頭にする巨大産業社会を批判するにはそもそもそれが唯一の世界観、社会観であるという認識、その象徴とも言える世界終末時計の批判こそ必要であり、ムーアは実際にそれの批判的な再構成を成し遂げたのである。

2022-12-19 10:50:41
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ) @R0noFIFdiKiJjA4

そういう世界の交絡から最も強大な弱点を暴きたて、一打で新たな世界観を構築してみせたアラン・ムーアは巧みな職人、又は予てよりのマジシャンである。

2022-12-19 10:54:01