芋くてダサい長谷部くんが超絶美女燭台切さんに告白される話

カコ🐙 @3nasubi31

ダサくて芋いばっかりに学生時代はパリピに振り回されさんざんな思いをした長谷部くん、新入社員の超絶美女燭台切さんに告白されるもまた新手の弄りだと警戒してぜったいに首を縦に振らないどころか冷たく当たるやつ。

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超絶美女燭台切さんは長船グループの末娘の更に末娘で、親戚中から蝶よ花よと愛でられて育ったので、育ちも見た目も性格もいい本物のおっとりお嬢様。だからまさかお断りされるなんて思ってなかったので、ショックを受けつつも「お話すれば分かってくれるにちがいない」と毎日話しかけに来る

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職場のアイドル燭台切さん(しかもうまくいけば玉の輿)に毎日毎日「お弁当一緒に食べませんか？」「今日もいいお天気ですね」「お茶でも飲んで休憩しませんか？」と話しかけられ、コミュ障に片足突っ込んでる長谷部くん大変迷惑。しかも回りからのやっかみの視線もすごい

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「申し訳ないですが」と、ある日ついに堪忍袋の尾が切れた長谷部くんが公衆の面前で爆発。「貴女のご好意は一度お断りしたはずです、これ以上俺に関わらないでくれ！」滅多に出さない大声を出してゼイゼイしちゃう長谷部くん。目の前で、超絶美女燭台切さんは綺麗な顔のまま涙をぽろぽろ。

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「ごめんなさい…ただ…貴方と仲良くなりたくて…」自分が関わることが迷惑だという発想がない超絶美女燭台切さん、戸惑いで泣いてしまう「急にお付き合いを申し込んでしまって困惑させてしまったから…せめてお友だちになりたかったんです」でも、お友だちもご迷惑だったんですね、と泣きながら微笑む

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女の子を泣かせてしまった罪悪感から「……友だちなら」と言ってしまう長谷部。すると燭台切さんぱあっと笑顔になって「嬉しい！ありがとう長谷部さん！…お友だちなら、長谷部くんって呼んでもいいかな？握手もいいよね？」なんてニコニコ。長谷部は、やっぱり断ればよかったと大後悔

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それから何かあるたびに「長谷部くん、長谷部くん！」「あのね長谷部くん、さっきこんなことがあってね」「長谷部くん一緒にお弁当食べよう！」「これパリのお土産だよ長谷部くん、長谷部くんみたいなトワレがあったの」「明日はお休みだから長谷部くんに会えないね…」とかなんとか。

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初めはやっかんでたまわりも、燭台切さんのあまりのなつきっぷりに見守りモード、でも長谷部の塩対応にはカチムカ。長谷部もまだ誰かの罠か美人局かを疑いつつ、なついてくる燭台切さんがキラキラした目でこちらを見るのでほだされそう

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ある週の水曜日、いつも通り長谷部の席のとなりにお弁当を持ってやってきた超絶美女燭台切さんが「長谷部くん、今度の週末って空いてないかな……」とモジモジ。「行きたい映画があるんだけど、１人って苦手で…」「映画は女友達と行け」どうせイケメンだらけの恋愛映画だろうと思いバッサリ

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「…女の子の友達を誘いにくい映画なんだ。これなんだけど、知ってる？」センスのいいカバーのかかったスマホの画面にうつしだされたのは、A級とB級の境目にあるような古典アクション大作のリバイバル。端的に言うとMMFR的なやつ。「アクションで吹き替えってなかなか一緒に観てくれる子いなくて」

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小綺麗なスマホとその画面の中の泥臭いポスターと目の前の超絶美女とが繋がらなくて目を白黒させる長谷部。「やっぱりダメかな、ごめん」燭台切さんが残念そうにスマホをさげるも、長谷部は「土用の午後、夕方までなら」と。とたん、燭台切さんの顔がぱあっと明るくなる。

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「…それで、その女とデートするのか」「デートじゃない、映画だ」「映画はデートだ」夕飯時。ダイニングで向かいに座っている妹は不満そう。一回り年下の妹の伽羅はJK、３年前に両親を亡くしてから二人暮らし。「夕方には別れるから、約束通り焼き肉は行こう」だから模試がんばれよ、と長谷部

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土曜日。待ち合わせの駅に行くと遠巻きの人だかりが出来ている。人だかりの視線の先はもちろん超絶美女燭台切さん。ベールピンクのトレンチが春らしくて美女っぷりに拍車がかかっている。そわそわとしているから明らかに待ち合わせ、まだ10分以上あるのに。

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長谷部はまだ疑っているので、隠れてみているやつがいないかとか人混みに知った顔がいないか警戒しつつ燭台切さんの様子を探る。そわそわしている燭台切さん、腕時計を見たりスマホをみたり、1分ごとにキョロキョロしたり。

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すると、通りがかりのDDっぽいパリピが燭台切さんに声をかける。初めは笑顔で対応するも、しつこく食い下がられて燭台切さん涙目に。ついにパリピが腕を掴んだところで、見兼ねた長谷部がパリピの肩を掴む。

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パリピには嫌な思い出しかないけれどDDに怯むほど若くもない。「俺の連れになにか」というと唾を吐きながらパリピら去っていく。駅ビルの壁際に追い詰められていた燭台切さんは今にも泣きそうで、でも長谷部の顔を見て必死に微笑もうとしている。

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これが芝居ならアカデミー賞ものだろう。「遅くなってすまない、怖い思いをさせたな」なんていうと、微笑もうとしている瞳から涙がぽろり。「……怖かった」と。でも、長谷部くんが来てくれたからもう平気。そう言ってまた笑おうとするのが健気に思えて、長谷部は糊のきいたハンカチを差し出した。

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「怖いときに無理に笑うことないだろう…次からは俺も早く来るようにする」「…次があると思ってていいの？ 嬉しい！」燭台切さん、吃驚したあと今度は満面の笑み。「ありがとう、やっぱり長谷部くんって頼もしいや」受け取ったハンカチで涙をきれいに拭き、燭台切さんはいつものニコニコ顔になった

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映画はネットの前評判通りのなかなかに暑苦しい出来映えで長谷部は大満足。つい隣に燭台切さんがいることを忘れて没頭してしまい、エンドロール後にようやく思い出す。ハッと隣を観ると、同じタイミングでこちらを向いた燭台切さんも頬を赤らめ大興奮。「凄かったねぇ、ああ、とっても凄かった！」

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怖い思いをさせたお詫びにと売店でパンフを買って渡すと、燭台切さんはニコニコとそれを嬉しそうに抱き締める。「嬉しい、パンフレット買いたかったんだ！」そのまま近くの喫茶店で映画の感想を言い合う。ようやく、燭台切さんは本当にこの映画が見たかったららしいと長谷部も信じることにした。

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約束の時間を少し過ぎてから駅へ送りにいく。「長谷部くん、今日は本当にありがとう」長谷部の両手を両手でぎゅっと握りながら燭台切さんがニコニコ。腕の中にはパンフレットの入った映画館のショッパーが。「本当に楽しくて、あっという間だったよ。あの、本当に、また誘っていい？」

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「…ああ。次は早く行く」「ありがとう」またぎゅっと手を握って、それから改札へ。振り返り振り返り、エスカレーターに乗ってもまだ手を振っている燭台切さんが見えなくなるまで見送ると、脛にガツンと衝撃が。 「……国重、顔、すっごい緩んでる」「伽羅……」

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模試を終えた伽羅がショーパンの脚で長谷部の脛を蹴っている。「なんだよ、蹴るなって」「…さっきのが『燭台切さん』か」「あ、ああ」「美人だな」「まぁ、そうだな」「美人の癖に悪趣味だな、国重がいいなんて」「おまえなぁ……」

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尤もだ、なんて思いながらしばらく伽羅に蹴られる。もし燭台切さんが寄せてくる好意が本物であったら？……まさか、と長谷部は首を振る。「からかわれているだけだ」「……カルビ」「は？」「カルビ食べたい。いいやつ、10枚くらい」「おまえなぁ……」伽羅にぐいぐい腕を引かれて約束の焼き肉屋へ。

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裏路地にある平屋の煙もくもくの焼き肉屋は昔からお気に入り。カルビとかいいつつホントはタンが好きな伽羅が幸せそうに白米とタンをがつがつしてるのをもくもくの煙の向こうから見ながら、燭台切さんはこういう店には来なさそうだな、と思った。

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週明け。出勤するやいなや「長谷部くん、土曜日はありがとう」と燭台切さんが小さな包みを持ってくる。「日曜日にケーキを焼いたんだ。よかったら食べて」「あ、ああ…」手作りには過去何度も嫌な目に合わされているせいで、つい渋い顔になる。

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その顔に気付いた燭台切さん、悲しそうな顔になって「ごめん、もしかして…」「ああ、苦手だ」「…そっか、確認もせずにごめんね」と言ってケーキを下げながら「コーヒーもブラックだったもんね、ごめん、気付かなくて」「は？」

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「甘い物苦手なのにケーキなんて迷惑だもんね、次はしょっぱいもの作るから！」「は？」「野菜たっぷりのキッシュとかね、海老やサーモンのタルトもあるの」さっきまで悲しそうな顔だったのに、またニコニコ。「長谷部くん、海老とサーモンどっちが好き？」「え、海老…かな…」「なら海老ね！」

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「……で、この海老のタルトを貰った、と」「ああ……」数日後のダイニング。殺風景な部屋に似つかわしかない可愛らしいラッピングの箱に入ったオシャレなタルト。海老とサーモンがそれぞれ１つずつ。「国重が食べないなら私が食べる」「いや、その」「食うのか」「…感想を聞かれたら困る」

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それでも躊躇う兄を見兼ねて、伽羅は包丁を取り出すとタルトを２つに切り分けた。断面からはとろりとしたクリームがあふれる。「しょっぱいクリームだ…」「…塩辛すぎるとか」「旨い。大丈夫そうだぞこれ」伽羅がぱくりといったので、長谷部も恐る恐る口に運ぶ。

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サクサクのタルト生地にとろりとした濃厚クリーム。生地の絶妙な塩味と海鮮のクリームがたまらない。「旨い…」「よかったな」二つ目を食べながら伽羅が言った。

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翌日、廊下で見かけた燭台切さんに「タルト旨かった、ありがとう」と告げると、目をぱちくりさせたあと「本当！？」と飛び上がりそうなほど喜ぶ。「よかった！あのね、ホントはしょっぱいタルトってあんまり作らなくて、心配だったんだけど、よかった！今度はキッシュを作るね！もちろんしょっぱいの！

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「あ、ああ、よろしく…」「待っててね！腕によりをかけるね！！」スキップしながら手を振る燭台切さんを見送りながら、そういえば長谷部から声をかけたのは初めてだったことに気がついた。

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金曜日にもらったホウレン草のキッシュも絶品。土曜日のブランチに伽羅と分けて食べると、伽羅が目をキラキラさせた。化粧っ気もまるでないけどやっぱりJK、オシャレで美味しいものは嬉しいらしい。

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「国重、燭台切さんにお礼はしてるのか？」「旨かったと言ったら喜んだぞ」「ﾊｧ……」伽羅が心底あきれたため息。「嫌われても知らないからな」「は？」「バカ兄貴…」伽羅はため息をつくと部屋に戻り、部屋着からお気に入りのショーパンに着替えてくる。

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「ほら、早く」「？」「買い物、お礼買いに行くぞ」「お礼？」「早く来い財布」「おまえなぁ…」促されるままに連れ出され、繁華街へ。「お菓子も作るならクッキーとかじゃないよな…ハンドクリームとか…ぬいぐるみとか…」「？？？」

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伽羅につれ回されるがままにふわふわキラキラしたショップを回り、言われるがままにファーのポーチに入ったバニラの香りのハンドクリームとリップクリームを買う。「これ、燭台切さんへお礼」「？？？」「月曜日に渡せよ」「あ、ああ…」

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「…伽羅」さっさと店を出ようとする伽羅を呼び止める。「ありがとう、助かる」「別に…私も食べたし」そっぽを向いたままの伽羅に包みを渡す。「今日の礼だ」店内を見回っているときにチラチラと見ていたウサギのぬいぐるみ。「…バカ兄貴」ぎゅっと抱き締めるしぐさは、妹ながら可愛らしい気がした。

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また週明け。伽羅に持たされたラブリーな紙袋を持って社内を歩くのは所在がなさすぎて、長谷部は自ら燭台切さんの部署へ。「すまないが燭台切さんは…」「ははははしぇべくん！？ふぇっ、え、ま、まって、前髪、前髪大丈夫？大丈夫、は、長谷部くん！おはよう！？」「お、おはよう…」

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やはり自分なんかが訪ねたのはまずかったか。つい絆されそうになっていたが、やはりからくりがあるのだろう。慌てた様子で出てきた燭台切さんに紙袋を突き出し「キッシュの礼だ、旨かった、だが、もう結構だ」と。「えっ……」燭台切さんびっくり。

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「ご、ごめんなさい、キッシュ口に合わなかった？焦げたり半生だったりした？」「いや、旨かった、本当に旨かった」「じゃあ、なん、で」「…これ以上は、迷惑なんだ」押し付け突き放し、部署のあるフロアへ。

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もうこれで超絶美女とその取り巻きに弄ばれることもないだろう。ホッとしたはずなのに心臓は激しく打っていて息切れがする。そして何より、心が痛い。洗面所で顔を洗っても、脳裏に燭台切さんの顔がこびりついていた。

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帰宅した伽羅にお礼を渡したことと次からは断ったことを伝えると、めちゃめちゃに脛を蹴られる。「サイテー。国重、まじサイテー」脛どころか肩や背中もばんばん叩かれて、最後にはあの時買ったぬいぐるみで何度も頭を殴られる。「おい、やめろ、伽羅、おい、伽羅！」

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語調を強めるとようやくやめるが、伽羅の目には涙が浮かんでいる。「…国重なんか知らない、臆病者、わからず屋、バカ兄貴！」「お、おい…」部屋にこもってしまった伽羅は、翌朝まで出てこなかった。小さな声で「…叩いてごめん」と言った伽羅の悲しそうな顔に、なぜか燭台切さんの顔が重なった

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翌日、燭台切さんは体調不良で仕事を休んだらしい。長谷部が用事で部署のそばを通ると向けられる視線が痛い。覚えのある好奇と苛立ちの視線に胃が痛くなる。弄りに気が付いたからつまらないと思われているのだろう。吐きそうになりながらそそくさと出ていこうとすると、燭台切さんのデスクが目にはいる

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綺麗に整理されたデスクの隅にある可愛らしいトレイに、見覚えのあるリップ、とハンドクリームがファーのポーチに寄り添うように置かれている。その隣には、この前行った映画の半券が小さな写真立てに入れて飾られている。映画を見たあとの嬉しそうな顔を思い出して胸が痛んだ。

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その日の夕方は泣かせたお詫び(？)に伽羅と待ち合わせて外食。制服から着替えた伽羅を連れて、女子に人気の和カフェへ。伽羅は特大あんみつパフェ、長谷部もあんみつ。伽羅は機嫌を直したようでぽつぽつと友だちの話をしたり嬉しそうにパフェを食べたり。

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「……国重は、もっと自信を持ったらいいと思う」「は？」突然なにを言い出すのかと思ったら。「少なくとも私には、とてもいい、兄貴だ」「？？？何か欲しいものがあるのか？」「そうじゃない！」ガンガン、とまた脛を蹴る伽羅の顔は真っ赤。

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でもその日は伽羅の行きたかったショップの買い物に付き合い(ついでにクラッチバッグを１つ買わされ)ファミレスで夕飯を食べて帰宅。

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翌日、デスクに桜色の封筒が。『長谷部国重様』と書かれた美しい文字だけで差出人は見当がつく。裏面に書かれた名前は、やはり、燭台切さんのもの。恐る恐る封をあけると、優しい桜の香りとともに上質な白い便箋が三枚。