ふはっ、とんだ茶番だ。階段を上ってホームに出ると、今吉は彼女()と別れを惜しんでる最中だった。 視線がぶつかる。お互い微笑み合う。 「今吉さん、見送りに来ました」 「7年前もこうして来てくれたなぁ。ほんま花宮はええ後輩やで」 「寂しくなりますが、大阪に帰っても頑張ってください」
2014-03-31 05:45:04「なんて言うわけねェだろバァカ! 増税前に消費してやる!」 今吉をホームから蹴り落とした。 妖怪並みにしぶとい男だ。このくらいじゃ死なねぇだろ。 案の定、線路でも今吉は余裕の笑みをはりつけたままだった。 「わっはは、花宮は変わらんなあ」 「ふはっ、アンタは落ちぶれたな」
2014-03-31 05:50:09今吉のツレを見た。オレ達のノリに付いていけずおたおたしている。 「オイオイ、んなとこで突っ立ってて大丈夫? さっさと駅員呼んでこねーとミンchへぶっ!」 なんつークイックリリース。彼女()は助けを呼ぶより先に、オレの顔面に一発入れてきやがった。 痛ぇ。メチャクチャ痛ぇ。
2014-03-31 05:55:07_
15卒NNTの皆さん、森山さん @Entry2Heart の代わりに今日からオレと一緒に頑張って行きましょう!
2014-06-03 00:00:21なんて言うわけねェだろバァカ。オレは内定なんて腐るほど持ってんだよ。 明日の内定通知で就活辞めるつもりなんで。一人で就活自殺でも何でもご自由にドーゾ。
2014-06-03 00:05:06“厳正なる選考の結果、花宮真さんの採用が内定いたしましたので、ここにご連絡いたします。” ふはっ。どこが厳正な審査だよ。就活なんざクソゲーだな。 今日で30内定。これだけありゃ充分楽しめんだろ。さて、どう蹴ってやろうか…内定者面談が楽しみだなぁ。人事のクビいくつ飛ばせるかなぁ。
2014-06-03 10:00:10_
サイトのメンテをしていたら、玄関のベルが鳴った。宅配便だ。伝票を見ると差出人は“今吉翔一”。あまり良い予感のしねェ名前だが、好奇心に負けて受領印を押した。
2014-06-03 18:10:11恐る恐る梱包を解くと、蜘蛛のモチーフが付いたネクタイピンが入っていた。針で刺すタイプのものだ。今吉とはもう十年来の付き合いだ。完璧にオレの趣味を把握してやがる。プレゼントってことか…? スマホを確認したが、特に奴から説明は届いていない。気味が悪い。
2014-06-03 18:20:06気になって電話をかけようかと思ったが手を止めた。電話代のムダだ。こういうとき、絶妙なタイミングでかけてくるのが今吉という男だ。待ってればあっちからかけてくんだろ。ふはっ。もうオレだっていちいちビビっちゃいないぜ!
2014-06-03 18:25:08_
今頃になって今吉から電話かかってきた。 「もしもし花宮〜? 元気しとる〜?」 「電話してくんの遅ェよ!」 「ちょw 何怒っとるんw 禁煙でもしとんの? タバコは百害あって一利なしやで〜」 「違ぇよ! お前にオレの気持ちなんてわかんねぇよ!!」 「花宮の思春期なかなか終わらんなぁ」
2014-06-03 21:00:10「知るかいな。社会人なんやからしゃーないやろ。ワシかて人並みに生活を営んどるんやで?」 「西日本には誕生日の人間からプレゼントを送る習慣があるんですね、知りませんでしたよ」 「花宮ワシの誕生日覚えててくれとったん、おおきにw」 「頭が良すぎて。忘れたくても忘れられないんですよ」
2014-06-03 21:05:06「去年はよくも眼鏡割ってくれたなぁ?」 「今年はよくも髪剃ってくれましたねぇ?」 「おかげさまで新しい眼鏡好評でなぁ」 「おかげさまで髪が生まれ変わりました」 「わっはっは。ええやん」 「ふはっ。先輩こそ」 「わっはっは」 「ふはっ」 togetter.com/fav/Entry2Hurt
2014-06-03 21:10:10「花宮っぽいわーw思て買うただけやし就活するときにでも使い。これでヅラ代チャラな。ワシこれから彼女と電話やから切るd 「オレ就活やめるけど」 「そうなん」 「30内定ありゃ十分だろ」 「そん中のどこ行くん」 「さぁ。来年3月の経営状態で決める」 「花宮は昔から頭ええけどアホやな」
2014-06-03 21:15:03「大企業に行くだけが勝ちちゃうで」 「大企業に就職キメたアンタが何言ってんだよ」 「せやから言うとるんや」 「ふはっ。説教かよ」 「まぁ騙された思うて続けてみーや。花宮バスケ辞めてからただのオタクみたいになっとったけど、就活は外出て楽しそうにやっとったやん。日光浴びた方がええで」
2014-06-03 21:20:06確かに。最後に外出したのは一週間も前のことだ。このところ就活以外は家でゲームしかしてねぇ。ZuckerbergよろしくウチもCoursematchを作ってから、わざわざ授業に出る必要がなくなったのが大きい。こんなんじゃダメだ。何やってんだ、悪童・花宮真! ゼノギアスを放り投げた。
2014-06-03 21:25:04「今吉さん、オレ間違ってました!」 「自分、合ってたこと一度もないで」 「世界にはまだまだオレに潰されるのを待っている人が大勢いる…」 「待っとらんと思うで」 「大切なことを忘れていました」 そうだ、苦くて甘いリアルのゲームの味を忘れていた。 「…わっはっは。それでこそ花宮や!」
2014-06-03 21:30:05「花宮は花宮のままでええ。そのままで世界の頂点に立つことだってできるかもしれんし、そのネクタイピンが役に立つ日もくるかもしれん。内定はなんぼあってもええしな〜」 電波な台詞を残して今吉は電話を切った。 しょうがねぇ。ネクタイピンは使ってやるか。今度、針で隣の学生でも刺してみよう!
2014-06-03 21:35:03