螺鈿本丸の源氏が揃った頃。
兄者が錬度40くらいの頃に弟丸が来ました。
「兄者……! お会いしたかった!」 「うんうん、僕もだよ」 邂逅を喜ぶ二振りだけれど、弟は数日間審神者と近侍の加州を見て眉を潜める。 「……兄者。訊きたいことがある」 そも、この本丸に来るのが遅かったのは、加州に敬遠されていたからだった。ようやく源氏の重宝が揃ったというのに。→
2019-07-02 00:30:25→ 審神者は気を効かせて弟の練度上げに勤しんだ。早く兄弟揃って同じ部隊で戦えるようにだ。そう、審神者は一見問題無いように見える。しかし。 「加州清光。何故ああも審神者にくっついている?」 「そりゃあ、一番刀だからさ」 「だからと言って、……些か過保護に過ぎるのでは?」 兄は笑う。→
2019-07-02 00:34:18→ 「兄者。……加州だけではない。短刀達や他の刀も、どうしてああも主を気に掛ける。彼女は疾うに成人しているのだろう。まるで子供を甘やかすように」 「……っふふ。よく見ているね」 「兄者!」 二度抗議の声で呼ばわれ、兄は苦笑した。 「まったくお前は素直だね。随分主に引きずられている」 →
2019-07-02 00:39:13→ 「素直? 小言を言われてもへらへら笑って聞き流す主が?」 「ふふ、違う違う。素直なのはお前だよ。主の意思に強く引きずられている」 弟は謎かけのようだと首を傾げた。 「主はね、あれで結構無茶をするんだ。霊力が切れそうだと思っても、手入れを惜しまない。それが軽傷に満たなくてもね」 →
2019-07-02 00:44:15→ 「は……あの、魂で?」 傷だらけの体が血を流すように、傷を負った魂は霊力を垂れ流す。審神者の魂は決して豊富な霊力を循環するのに適さないと、彼女の霊力に触れた誰もが認識しているはずだ。そして、霊力の枯渇は則ち生命力の枯渇を意味する。 穏やかに微笑む兄の次の言に、弟はおののいた。 →
2019-07-02 00:51:08→ 「霊力切れで倒れたのは、一度や二度じゃないんだよ。意識を失ったのは最初の一回だけらしいけれど」 「あああ兄者ぁ……!」 「ふふ。うん。不安になるよね。でも大丈夫、回復役がいるんだ」 「……それが近侍か」 弟へにこやかに頷いた兄は、だからね、と首を傾げる。 「皆もどかしいのさ」 →
2019-07-02 01:31:28