意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
「何かお探しでしょうか」 突然、背後から声をかけられて驚いた。 「バスケ関連の本、置いてますかね?」 2週間の研修を終えた帰り道、意識の高い新入社員であるオレは、もっと勉強しようと、職場の近くの本屋に立ち寄ったところだった。
2014-04-11 19:30:05
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
「この辺りがオススメですよ」 スポーツのコーナーに案内するや否や、店員はテキパキと数冊の本を棚から取り出した。 「詳しいですね。好きなんすか、バスケ」 受け取った本を重ねながら尋ねてみた。 「ええ。このあたりの本は昔全て読みました」
2014-04-11 19:35:04
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
「壁にぶつかったとき、手を差し伸べてくれるのは知識ですから」 店員は最後に、少し離れた棚に置かれていたものを、オレが抱えている本の上に置いた。 「がんばってくださいね」 表紙には、“モテる男の技術”と書かれていた。
2014-04-11 19:40:02
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
つまり、オレは一目で分かるほど女性への飢餓感を漂わせているということか!? それはない。さすがにない。見かけだけは爽やかな好青年のはずだ。不安になって新品のジャージの臭いを嗅いだ。うん、いつも通りトイレの芳香剤()の匂いだ。
2014-04-11 19:45:07
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
「キミ、どこかで会ったことない…?」 男相手にまるで陳腐な口説き文句だ。しかし、袖から顔をあげ視線を向けた先、店員の姿は影も形もなかった。
2014-04-11 19:50:07
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
閉店前のアナウンスが流れる。蛍の光に急かされて、オレはレジへと向かった。会計を待っている間、会場でカワイイ女の子を見つける要領で店内を見回した。あの店員はちょうど“STAFF ONLY”と書かれた扉へ入っていくところだった。名札を確認しようとしたが、光が反射してよく見えなかった。
2014-04-11 19:55:05
意識の低い就活生だった森山bot
@Entry2Heart
今日で研修は終わり。きっとこれから残業も増える。20時閉店の本屋だ。平日のこの時間に来ることは二度とないだろう。
2014-04-11 20:00:10_