お題「花火」「栞」「ホワイトレディ」
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七草すずめ @suzume_nanakusa

口をべたつかせながら、あまったるい綿菓子を溶かす。髪をゆらしてシャンプーを香らせても「浴衣ならまとめればいいのに」なんて言うし、なんにも気にせずお好み焼きほおばってるし。もう、ひとの気持ちも知らないで。つぶやいた言葉は花火の音と歓声と、お好み焼きの味で簡単にかき消されてしまった。 pic.twitter.com/As9kg2oDs9

2018-06-23 22:00:06
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荻野千影 @ChikageOgino

黄昏時の青い時間が好きだし 机の上に親友から貰った青い髪飾りもあるけど 今だけは青を想起したくなくて 私にだけ見える本の表紙は緋色にした 次の頁から主人公の名が変わるから 花火大会の後のサプライズを知らない 去年の私の浴衣姿の写真を栞に挟んで 顔を上げたら 白いドレスが不意にぼやけた

2018-06-23 22:00:42
水城弥生 @mizukiyayoi8484

読んでいた本に栞を挟み、ホワイトレディをグラスに入れる。窓側の椅子に腰掛け、一口飲む。夜空には大きな花が。ふと彼と行った花火大会を思い出す。手を繋いで綺麗って言い合った夜。鼻腔をくすぐった硝煙の香り。花火の音に紛れて好きって言ったっけ。再び口に含んだお酒は先程より甘酸っぱかった。

2018-06-23 22:00:45
津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

四年前にやり損ねた線香花火を栞に挟んだ本は、この部屋のどこかに埋もれているだろう。積み上げられた雑誌もあれから更新されないまま、表紙を覆う埃は羽布団のよう、見るたび豆の上で寝たお姫様を思い出す。豆粒みたいな違和感が、君の気を違わせてしまった。平成三十四年の夏、僕はまだここにいる。

2018-06-23 22:00:57
RAY/※※※ @growler_ray

人の心は本だと思う。記憶を留め、生ある限りそのページを増やし続ける唯一無二の本。時折1人で静かにページをめくっては、そこに綴られている様々な感情に思いを馳せてみたり。 でも、たまにいるの。1人で見ていたはずのその本を横から盗み見て、難なくストンと栞を残して去っていくような人が……

2018-06-23 22:00:59
くーか @kuhkatzen

俺くらいの天才にもなれば栞がなくてもどこまで読んだか覚えているんだよ、とつぶやいてみても返事はない。 大きな音で窓に目を移すと空に大輪の花火が見えた。 俺くらいの天才にもなれば火がなくとも空に大輪の花を咲かせられるんだよ、と言ってみると、にゃーと返事が来た。 今日もいい一日だった。

2018-06-23 22:01:55
夢夜 @ruya_reve

手の中で栞を弄ぶ。 絨毯を織る手法で作られたそれには細かな模様が描かれていた。 色遣いも模様のパターンも日本のそれとはだいぶ違う。 この栞が作られた国に想いを馳せた。 白い三日月と星に見守られた、東西文明の交差点。どことなく哀愁が漂う悠久の国。 ──トルコ。

2018-06-23 22:03:17
花滝ちかる @chikaru_toka

人間は、十中八九望みはないと思っていても、何もせずに無事でいるより玉砕した方がいいなどと、精神的自殺衝動を持っているものだ。 未練を引きずって陰気な人生を送るより、打ち上げ花火の如く潔く散りたい。 「好きだ」 「私も貴方が好きです」 意外にも、俺は生き長らえたようだ。 #140字小説

2018-06-23 22:04:14
はごろもとびこ@低浮上気味 @peeUsausa

最近カメラを始めた。思い出を形に残したいと思ったからだ。今夜はベランダでカクテルを撮影。が、中々うまくいかない。深いため息をつく。ドーンドーンという空の鼓動が聴こえ、同時に幼い頃の夏の日差しが見えてきた。そうか。私はカメラを置いて、白いカクテルとともに遠く花火を眺めることにした。

2018-06-23 22:04:28
夢夜 @ruya_reve

──今夜返事がもらえなかったら、お前への想いは封印しよう 打ち上げ花火を眺めるお前を後ろから抱き締める。 「……好きだよ」 沈黙が返ってくる。 お前を離そうとした次の瞬間、お前が俺の方に向き直った。 「私も……愛しています」 新たな花火が映り込んだ瞳は、今まで見た中で一番綺麗だった。

2018-06-23 22:04:41
宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

「はい、おめでとう」 本が好きな彼への、誕生日プレゼント。 初デートで見た花火をあしらった栞。 「はい、おめでとう」 カクテルが趣味の彼が差し出す、白いお酒。ホワイト・レディ。 「これは?」 「僕らのこれからの記念日に」 グラスには、指輪が1つ沈んでいた。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/yosPaEM8tQ

2018-06-23 22:05:20
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行木しずく @gloom_tree

#深夜の真剣140字60分一本勝負 お邪魔します。 「花火」「栞」「ホワイトレディ」 pic.twitter.com/MsgmiEIteT

2018-06-23 22:05:56
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夢夜 @ruya_reve

「……好きだよ」 今まで何度となく言われたその言葉に、今までとは違う響きがあった。 ──ここで応えなければ貴方は離れてしまう 精一杯の勇気を振り絞って貴方の目を見る。 「私も……愛してます」 貴方が私を抱き締めて私の名前を呼ぶ。 「愛してるよ」 初めてのキスは、花火が咲く夜空の下で。

2018-06-23 22:06:30
夜詩アリア @Youta_Aria

私に許されたのは、待つ事だけでした。遠くで上がる花火の音を聞きながら、去年もここで彼を待っていたことを思い出す。あの時は少し遅れて「待たせた?」なんて笑ってきてくれたけれど、もう、そんなことは有り得ない。それでも。 「花火、終わるぜ? 早く来いよ」 もう一度、私の手を引いて欲しくて

2018-06-23 22:07:28
電光&トラメ@電光電稿株式無社 @79SPark

「静かな花火だ」 「…ごめん」 車内は運転手のすすり泣く声をBGMにひた走る。助手席の相棒は半分吹き飛んだ機械の頭を揺らしながら、割れた瞳で景色を楽しんでいた。 「お互い無事で何よりさ。ね、街灯が花火みたいだよ。…万華鏡のが近いかな」 そう笑う相棒に、直すからねと言うのが精一杯だった。

2018-06-23 22:09:04
さくらん @picture_11ne

「今日は楽しかったよ」 優しげに笑う先輩。彼と一緒に来た花火大会はもう終わる。その前に伝えなければ。 「あのっ……!」 2人の間で光の花と私の口が同時に開いた。 そこまで読んでパタンと本を閉じる。 今日はお終い。頁の間に栞を挟む。 彼女の物語は、言葉を伝えること無く時を止めた。

2018-06-23 22:15:38
きぃ @key_habataki

ぱっと輝き、黒に溶けてゆく花火に君との想い出を乗せる。一つ…二つ…。全部全部消えて無くなってしまえ。私の嗚咽もその轟音でかき消して。 涙の染みた浴衣。君に見せるはずだった。未練がましく空に漂う煙は、きっと私の心。君の温もりと匂いが完全に消えるにはあとどれだけの時間がかかるだろう。

2018-06-23 22:19:32
色糸 @IRO_Iroito_

「どっちが長くできるか、勝負ね!」 花火を同時にろうそくに近づける。 先端に火が点いて、朱く丸まり蕾がついた。 松葉牡丹が咲いて、君の笑顔もふわり咲いた。 この瞬間に栞を挟めたら……。なんて思いスマホのカメラを向ける。 シャッターを切る寸前、柳の様にしな垂れた火玉はぽとりと落ちた。

2018-06-23 22:35:40
日引 @hibiki_ost

早く大人になりたくて、こっそり飲んだお酒は花火の味がした。ちかちかして、苦くて、ほんのすこしだけ甘い。今は強いカクテルだって平気。自然を装った相槌、仕草、演出、営業スマイル。散るために生まれた華。青春時代の一頁に栞を差し、溜息。思い出に浸り酔うことしか出来なくなってしまった。

2018-06-23 22:36:11
潮音@ドール、石、水彩画🟦 @gloriliy

#深夜の真剣140字60分一本勝負 パッと花火が消える。 思い出が一冊の本になったら栞を挟んで君との思い出がいつでも見られるのに。 「…花火、綺麗だね。」 君の方が綺麗だと言えない。 女同士、揃いの浴衣を着て最後の夏祭り。 「ねぇ、貴女のことが…。」 その言葉の先は爆音に消されてしまった。

2018-06-23 22:52:57