歌うま女子とピアノ男子

ナナシ @darkmoon_souji

「あなたのことがずっと前から好きでした。付き合ってください」 それを言うのに、どれだけの勇気がいることか。 「え？ マジで？ お前が？」 驚いた顔をする、彼。 もしかしてこれは。 と、一瞬可能性を感じた。 「あー……ごめん。嬉しいんだけど、何か近寄りがたいっていうか」 は？

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「高嶺の花って言うのか？ 凡人は近づくなオーラみたいなのが出てるっつーか」 は？？？？ 「てっきり相棒と付き合ってんのかと思ってたし。ごめんな」 爽やかに手を振って、憧れの彼は私の前から去って行った。 私の恋は、呆気無く散っていった……

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「ぎゃはははは！ お前、街宮君にフラレたって？」 「……」 その、相棒とやらに私の失恋はすぐにバレた。 「……何で知ってる」 「街宮君が3組のあのやたらと歌上手い女子に告られたっつってたのをきいちゃってー」 名前すら覚えられていなかった。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「んで、学校一の歌姫から告られたとか一つのステータスじゃねって喜んでた」 「……」 これまでどうようもなく好きだったのに、途端に殺意が芽生え始めた。 人が勇気をだして告白したのに、デカイ声で言いふらしてんじゃねぇよ！ 「ん？ どこ行くんだ？」

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「街宮を殺しに行く」 「待て待て待て」 「んぐっ」 制服の襟を捕まれて、変な声が出た。 「お前はどんだけ俺を待たせる気なんだ？ この待ち時間が非常に無駄なんだけど。あれだけの時間があれば、細かい調節ができてもっと完成度が……」 うるさいなぁ。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「わかったわかった……練習すりゃいいんでしょ。はいはい」 「というか、何で街宮君に彼女がいるって知らないわけ？」 「……は？」 今、何つった？ 「え、本当に知らなかった？ マジ？ あんなに有名なのに？」 わざとらしく「可哀想」という顔をする。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 「それじゃあ、始めから。通して」 錆びれた譜面台の上に、よれよれになった楽譜を置く。 そして肩幅に足を少し開く。 楽譜は念の為に置いているだけ。 歌詞はもうとっくの昔に頭に入っている。 文化祭まで7ヶ月。 高校生活最後の挑戦はもう始まっている。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji ひねくれ歌うま女子とピアノラブな男子のなんかよくわからない話。 二人の目標は学校の文化祭で行われる歌うま決戦みたいなので勝つこと。というか、100パー勝つのはわかってるから、2年目から見せびらかせるために全力を尽くしている。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 何の為にそれを始めたのか。 女子の場合、性格がきつすぎて、何かとひがまれたり嫌われたり、入学して早々いじめっぽいものを受けて馬鹿にされたので見返すために始めた。 ピアノ男子の方はあんまりその辺りは固まっておらず。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 出会いとしては、一年のときに選択していた音楽の授業内で行われた歌のテスト。 一人ずつ歌わされる形式のやつで異様に歌が上手い女子がいて、それで誘う。 天の川学園の文化祭で賞金が出る的なイベントが開催される設定にするか、

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 何がしたい話なのかはよくわからないが、BLとGLを同時に書きたいと

ナナシ @darkmoon_souji

石打律夏 鳳琴葉

ナナシ @darkmoon_souji

鳳琴葉 オオトリ コトハ 高2 学校一の歌姫。 しかしおしとやかさなどない。 わりと美人だが、そのことを隠さないので人望がない。 気も強いので孤立しやすい。 友だちは一応いるらしい。 入学早々クラスの女子から敵視される。 男子からも敬遠されている。 憧れの人がいる。

ナナシ @darkmoon_souji

石打律夏 イシウチ リッカ 高2 鳳の伴奏役。 普段は地味系男子。 大人しくしてるだけ。 目がものすごく悪い。遠くが見えない。 近くは見えるのでピアノ弾くときは眼鏡を外す。 仲良くなければ男子のことは君付けする。鳳ですらさん呼び。これまでピアノで色んな挫折を味わってきた。

ナナシ @darkmoon_souji

家族で音楽をやっている人間は自分だけだった。 気がつけば、母の知り合いである音大出身の人の元でピアノのレッスンを受けていた。 幼い頃は言われたままに弾くだけで、楽しさややりがいみたいなものは見いだせなかった。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji むしろ、ピアノを習っているのは女の子ばかりで、小学校低学年の時は辞めたくて仕方がなかった。 クラスメイトにからかわれることが多かったからだ。 恥ずかしながら、そんなことばかり当時は気にしていた。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji しかし、辞めることもできず惰性で続けていた。 というのも、惰性のわりには小さなコンクールで地味に優勝し続け、それなりの実力があったからだ。 自分の実力に過信したことなど今も昔もなかったが、周りがピアノを辞めさせてくれなかった。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji そんな惰性だらけの習い事を本気にさせたのは、小学校3年生のある日。 いつも通りのコンクール会場。 自分の出番も終わり、普段なら観ないのにそのときはどういう理由だったか、他のください参加者の演奏も客席に座って耳を傾けていた。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji そして、出会ってしまったのだ。 5つ年上の、当時中学生だったあの人に。 運命の出会いというやつかもしれない。 中学生といえども、彼も僕と同じ子どもだ。 にも関わらず、彼の演奏は大人達を感嘆させた。 堂々とした美しさ、そして何より楽しそうだった。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 他の誰よりも、弾いている本人が一番楽しそうだったのだ。 それに感化され、僕も真面目にピアノに取り組み始めた……というのは、容易に想像がつくだろう。 まさにその通りだった。 その日から僕は時間さえあればピアノを弾いた。 もちろん、勉強だってした。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji もう誰から何を言われても気にならなくなった。 そんなことよりも自分がいかに上手くなれるかが重要だった。 全ては、あのとき観た彼に追いつくために――。 追いついて何をするかはわからかないが、とにかく彼を超えたかったのだ。 それだけを目標としていた。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji 驚いたことにその彼は、僕と同じピアノ教室に通っていたのだが、結局今に至るまで一度も教室で顔を合わせることはなかった。 というのも。 間違いなく将来有望だった彼は、海外へ行ってしまったからだ

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji この国にいては、せっかくの才能も埋もれてしまう…… 彼が海外へ行くのは当然のことのようだった。 日本にいなくなっても、すっかり彼のいちファンと化してしまった僕は、彼を追いかけ続けた。 そして。 あの日。 とてつもない失望感を味わった。

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji コンクールの最終選考まで彼は残っていた。 優勝候補とまで言われていたくらいだ。 それなのに。 彼は最終選考の日、会場に現れなかった。 忽然と姿を消してしまったのだ。 僕はひどく落ち込んだ。 目標としていた人がコンクールをすっぽかしたのだ。

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 大学生作家で、僕の憧れの人、川中翡翠。 僕より５つ年上で、現在22歳。 大学卒業を控えている。 彼はいつも、突拍子もない行動にでる。

ナナシ @darkmoon_souji

舞台の上で演奏するその姿は、いつもの君とは違った。 険しい顔で、練習する顔しか知らない。 心から演奏することを楽しんでいるような、そんな表情。 俺にも見せたことないくせに、見ず知らずの人間には見せているのか？ 何だろう、この、もやもやとした感情は──…… twitter.com/bucher_wurm/st…

傾いだ空bot @bucher_wurm

君のそんな顔、僕は知らない

2017-02-09 12:33:40

ナナシ @darkmoon_souji

@sousakuTL 「律夏はさぁ！」 気に食わなかったのか、彼は机を叩いて立ち上がった。 「俺とピアノ、どっちが大事なわけ！？」 日中のファミレスで成人男性が何を言ってるのだろう。 というか、私達は何を見せられてんだ？ 「……ピアノ？」

ナナシ @darkmoon_souji

「ハッピーバレンタイン！にゃー！」 ２月１４日。バレンタインデー。 浅海さんが僕と鳳さんに手作りチョコをくれた。 「二人にはとーっても感謝しているにゃ！そのお礼にゃ！」 「ありがとう、浅海さん」 僕はにこやかに受け取るが、なぜか鳳さんだけぽかんとしている。