twitter.com/i/events/15961… “別に、アンタなんて心配してないし…” #齋藤飛鳥 #妄ツイ
2022-12-01 14:55:351 白い天井が視界に入った。 ん…? ここは… “お…目を覚ましましたね” そう呟いたのは、白衣に身を纏った男性。 ひと目で医者だと理解する。 あぁ…そうか。 ○:僕…確か事故にあったんでしたっけ… “事故当時の記憶もはっきりしているようですね”
2022-12-01 14:39:462 確か通勤途中に目の前で、女性が車に轢かれそうになったのを身を挺して庇った… “腕と脚の骨折だけで済んで良かったです。まぁ、全治3ヶ月ですかね” ○:なるほど… “庇った女性の方も、命に別状はありませんでした” ○:それは、良かったです… 身体を張った甲斐があった。
2022-12-01 14:39:463 身体が不自由であるが、命が助かったのだから何の問題も無い。 ただ… 1つ問題があるとするならば。 ○:あの…後ろに立っている女性って… “あぁ、●●さんの担当看護師です。あとは、彼女の方から詳しい説明がありますので、私はここら辺で…”
2022-12-01 14:39:474 ○:え…あ…ちょっ…ちょっと! “元カノ”と2人きりにしないで! 気不味いから! ○:ひ、久しぶり…飛鳥… いたたまれない空気になって堪らず名前を呼ぶと、彼女の肩がピクッと動いた。 腕を組み、高圧的な雰囲気で僕を見下ろす…いや、睨み付けている元カノの飛鳥。
2022-12-01 14:39:485 飛:どうして、私がアンタなんかの世話をしないとイケない訳? ○:世話じゃなくて、看護でしょ。 口を開いたかと思えば、出てきたのは文句。 心配するような素振りは無い。 飛:私に会いたいからって、コールボタンを連打するのはやめてね? ○:そんなことしないから。自惚れないで。
2022-12-01 14:39:486 飛:あっそ。ところでさ、脚に軽くパンチしてみても良い? ○:ダメに決まってるでしょ。 飛:痛いのかなぁ…って… ○:痛いよ!やられなくても痛い! 動けない僕に、なんて仕打ちをしようとしてくるんだ… そんな嫌がらせをしようとしてくるとは、どれだけ僕のことが嫌いなのか、想像に容易い。
2022-12-01 14:39:497 飛:脚にパンチがダメなら、腕をつねるとかは… ○:どうして、僕の身体にダメージを蓄積させようとしてくるんだよ。 飛:んー…愛情表現? ○:歪みすぎだろ… 飛:お願い!1回だけ! ○:嫌だ。 空いてる手で、飛鳥が伸ばしてきた手を弾く。 飛:意外と力強い…
2022-12-01 14:39:498 そんな攻防を繰り広げていると、突然病室のドアが開く。 “失礼します!私の命の恩人がここにいると聞いて…って、お姉ちゃん⁈” 飛:さくら…もう歩いて大丈夫なの? さくらと呼ばれたその人は、僕の記憶が途切れる前に見た顔と一致。 さ:うん。擦り傷で済んだから、全然平気!
2022-12-01 14:39:509 と言うか、今…飛鳥のことをお姉ちゃんと呼んだか…? さ:あの…!初めまして…ではないと言うか…でも、こうしてお話しするのは初めてですよね!姉の飛鳥がお世話になってます!妹のさくらです! ほぉ… 天使… 元カノの飛鳥がサディストな悪魔なら、妹さんはピュアッピュアな天使。
2022-12-01 14:39:5110 妹の存在は知っていたが、お目にかかるのは事故以来である。 ○:いやいや、お世話になるのは僕の方というか… 飛:ほら、やっぱりお世話じゃない。 余計な揚げ足取りは、無視しておくことにする。 さ:それで…お見舞いに来たんですけど…えっと…
2022-12-01 14:39:5111 僕と飛鳥を交互に見るさくらさんは、手に持ったお花と果物をどこに置くか悩んでいる様子。 ○:ここのテーブル、使って良いよ。 さ:ありがとうございます!リンゴを持って来たんです。リンゴは好きですか? ○:うん。 さ:では、皮を剥いて食べさせてあげますね! 飛:え…
2022-12-01 14:39:5212 鼻歌を唄いながら、リンゴを片手に病室を出て行ったさくらさん。 飛:なんか…妹がうるさくてごめん… ○:飛鳥よりは、全然マシ。 鋭い睨みを利かされる。 ○:妹さんの話は聞いたことがあったけど、まさかあんなに可愛いなんて…知らなかったよ。
2022-12-01 14:39:5213 飛:そうね。あの子は、私と違って素直で天真爛漫で女の子らしくて…○○は、そう言う子が好きなんだもんね…知ってるし… なぜか、落ち込む飛鳥。 飛:そうだ…姉の私からもお礼を言っておかなくちゃ。妹を助けてくれてありがと…
2022-12-01 14:39:5314 ○:どういたしまして。偶然助けたのが元カノの妹だなんて…こんなことってあるんだね。 飛:元カノ… さ:じゃーん!ただ今、さくらが戻りました! ○:お、おかえり… 彼女のテンションの高さに気圧される。 さ:えっと…○○さんって呼んでも良いですか? ○:良いけど…どうして、僕の名前を…
2022-12-01 14:39:5315 さ:んふふ…病室の入り口に患者さんの名前が書いてあるからです。 ○:なるほど。 さ:それから、姉から良く話を聞いていたので。 ○:え…? 飛:さーくーらー?余計なことは言わない。○○も勘違いしないで。アンタに対する愚痴とか文句を聞いてもらってただけ。
2022-12-01 14:39:5416 さ:え?いつも、○○さんがカッコ…んぐぐ…惚気て…むぐ… 飛鳥が、さくらさんの口を封じにかかる。 さ:うぐ…ぷはぁ…確かに、○○さんはカッコ良いです…へへ…私の命の恩人が姉の恋人だなんて…ちょっと複雑ですけど… ○:あー…1つ訂正するところがあるね。 さ:…?
2022-12-01 14:39:5517 ○:飛鳥は僕にとっての恋人ではなくて、”元”恋人だよ。 さ:えぇ⁈今カノではなく、元カノ⁈ 飛:元カノ… さ:でも…姉は、ただ遠距離なだけだって…え…でもそれは…未練がタラタラなだけで…思い込みが…あわわ… 飛:さーくーらー? さ:ひぃ…ごめんなさい!
2022-12-01 14:39:5518 飛:っ…うぅ…!私、もう他の患者さんの所に行くから!アンタだけに構っていられるほど暇じゃないんだからね! 目を真っ赤にして、病室を出て行ってしまった。 さ:あ…お姉ちゃん… ○:…
2022-12-01 14:39:5619 さ:しょうがないなぁ… ○:…? さ:今からは、2人きりの時間ですね? ○:…⁈ ベッドに腰掛けてくるさくらさん。 さ:私の…運命の王子様。 ○:え… さ:私の命の恩人…好きにならないはずがないじゃないですか。 ズイッと顔を近付けてくる。 さ:そんな○○さんに聞きたいことがあります。
2022-12-01 14:39:5720 ○:僕に答えられることなら。 さ:どうして、”元”が付いてしまったのでしょうか…? ○:んー…自然消滅ってやつかな… さ:そうですか… 大学生の時、バイト先のカフェに客として来ていた飛鳥に声を掛けたのが僕。
2022-12-01 14:39:5721 仲良くなっていくうちに、ツンデレの中から垣間見える遠回しの思いやりに惹かれていった。 しかし看護師と言うのは多忙で、いつ緊急の呼び出しがあっても良いように、デートをする時は病院の近場で済ませていた。 実際に呼び出されることもまぁまぁあって、2人の時間が確保出来ないことも。
2022-12-01 14:39:5722 心が未熟だった僕は、そんな所が不満で… 飛鳥と一緒なら、どこへ行っても、何をしていても楽しいはずなのに… そして社会人になると、会う頻度がうんと減っていき、次第に連絡も取らなくなっていった。 それでそのまま…
2022-12-01 14:39:5823 まさか、この病院で再会することになるとは思わなかったけど。 でも、彼女には嫌われているみたいだから、早く完治させて退院したいところだ。 さ:なるほど…では、嫌いになって別れたとか、他に好きな人が出来た訳ではないと?
2022-12-01 14:39:5924 ○:うん。だから…僕は…その…さくらさんの気持ちには応えられない… さ:むぅ…まだ告白してないのに…ふふ…でも、運命の人…と言うのは冗談です。 ○:…? さ:姉の好きな人を…横取りする訳ないじゃないですか。 姉の…好きな人…? それって…飛鳥はまだ…
2022-12-01 14:39:5925 さ:先程出て行った姉ですが、恐らく病室のドアの外にまだいます。 ○:え…? さ:匂いと気配で分かります。 犬並みの嗅覚⁈ さ:私がこうして○○さんの耳元でお喋りしてるのは、姉に嫉妬させるため。 ○:は? さ:嫉妬した姉は…とっーても可愛いので、お気を付け下さいね?
2022-12-01 14:40:0226 さくらさんの発言は、果たして本当なのだろうか… さ:この度は私を助けていただき、本当にありがとうございました。私に出来るアシストは、これぐらいですかね。 ではでは〜と、手をヒラヒラと振って病室を出て行ってしまった。 … … …
2022-12-01 14:40:0427 飛:おい、○○。食事を持って来てやったぞ。 色の薄い病院食を差し出される。 ○:食べたくない… 飛:は?食べろ。 ○:だって、美味しくないでしょ… 病院食には、そう言うイメージがある。 飛:それは、食べてから言って。 ○:味が薄いって言うし、今からコンビニにでも…
2022-12-01 14:40:0528 飛:その脚で何を言ってるの。外出許可なんて出る訳ないし、私も連れて行ってあげないから。 ○:えぇ… 飛:良い?病院食は、身体に負担をかけない消化しやすいメニューで組まれてるの。 ○:負担も何も、僕が怪我したのは脚と腕であって、内臓系じゃない。
2022-12-01 14:40:0529 飛:アンタねぇ…車に轢かれたってことは、それなりの衝撃が身体に加わってるの。ダメージがないはずないでしょ。身体に無理させないで…お願いだから… 唇を震わす飛鳥。 ○:でも… 飛:でもじゃない!それに…私が作ったやつだから…食べてもらわないと困る… ○:飛鳥の手作り…
2022-12-01 14:40:0630 飛:一応、調理師免許を持ってるから… ○:どうして、僕の為に… 飛:これでも…ほんの少しだけ、心配してあげてるの。感謝なさい。 ○:分かったよ…食べるよ… 飛:まぁ…腕が不自由なら、食べさせてあげないこともないけど…? ○:別に、利き手は元気だから…
2022-12-01 14:40:0631 飛:じゃあ、利き手も折って自分では食べられないようにしてあげようか? ○:なんてことを言うんだ… そう言いつつ、味噌汁をひと口。 飛:ど、どう…? ○:ん…味が…薄い… 飛:だから、そう言うものなんだってば。 ○:でも、食べられなくはない。 飛:無理にでも完食させてやる。
2022-12-01 14:40:0732 箸で煮物を掴むと、僕の口へと運んでくる。 飛:ほら…口…開けなさいよ… ○:魔法の言葉がないから、開けたくないな… 飛:魔法…っ…あ、あーん…? 耳を赤くして恥じらっている。 慣れてないのは、相変わらずか。 飛:は、早く食べてよ…いつまでこうさせる気?
2022-12-01 14:40:0833 ○:ん…うん…少しだけマシになった。 飛:アンタも大概素直じゃないよね… ○:元カノの前だと、意地っ張りになっちゃうんだよ。 飛:その、時々元カノって言うのやめてくれない? ○:だって、事実だし。 飛:ぁ…うぅ…○○は…今、好きな人とか…いるの…? ○:いるよ。
2022-12-01 14:40:0934 飛:本当に…? ○:うん。 飛鳥のことが、まだ… なんて、重いと思われそうだから言えないけど。 飛:そ、そっか…でも、入院している約3ヶ月、○○は私のものだから…その誰かさんに渡してあげないんだからね…!
2022-12-01 14:40:1035 どうしてか、飛鳥のライバル心?に着火させてしまったらしく、ムキになって次々にご飯を口元へ運んでくる。 ○:ケホッ…飛鳥、まだ口の中に残って…んぐ… 飛:ほら…早く口を開けろ。 ちょっとキレてるじゃん… だから、嫌がらせみたいにこんな真似を… ○:待って…本当にもう入らない…
2022-12-01 14:40:1136 飛:私の愛が詰まったご飯を残す気? ○:多分、その愛が重いからかな…胃もたれが… 飛:でも、さっき味が薄いって言ってたけど? ○:… 飛:観念して、大人しく私に食べさせられてれば良いの。はい、あーん…
2022-12-01 14:40:1137 微笑を浮かべているが、今だけはそれが怖い。 悪魔にしか見えないよ… こんな調子で、僕の入院生活は大丈夫なのだろうか… … … …
2022-12-01 14:40:1238 入院して、数日。 甲斐甲斐しく、飛鳥は毎朝、毎昼、毎晩僕のところへやって来る。 食事を運んできたり、包帯を取り替えたり、軽口を交わしたり。 ○:あのさ… 飛:ん? ○:ご飯は自分で食べられるから、トレーだけ置いてくれたら、仕事に戻って良いんだぞ? 飛:これも仕事だから。
2022-12-01 14:40:1339 ○:お世話してるつもり? 飛:看護だけど?はい、あーん… 相変わらず味は薄いが、日に日に甘味を感じるのは気のせいだろうか。 飛:こんなことするの、○○にだけだから。 ○:僕以外にやられると困る。 飛:…その心は? ○:そうだな… プルルルル! 飛:あっ…ごめん、緊急の呼び出しだ。
2022-12-01 14:40:1340 慌ただしく病室を出て行った。 デートしていた時も、こんなことがあったっけ。 仕事の合間に、わざわざ僕と会う時間を作ってくれていた飛鳥。 果たして僕は、彼女の安らぎとなれていただろうか。 今は、こうして僕の看護をしてくれている訳だけど、それが負担になっていないか… … … …
2022-12-01 14:40:1441 結局、飛鳥は戻って来ることなく消灯時間を迎えた。 とっくに電気を消したけど、眠れない夜と言うのは誰にでもあるだろう。 カーテンの隙間から見える欠けた月をぼんやりと眺める。 ガララ… ふと病室のドアが開いたので、咄嗟に目を瞑って眠ったフリをする。
2022-12-01 14:40:1442 飛:○○…もう寝ちゃったよね… なんだ、飛鳥か… ベッドに腰を掛けたのか、身体の左側が少し沈む。 飛:ごめんね…すぐに戻ってこれなくて… 謝ることじゃないのに… 飛:デートの時、何回もこう言うことがあった。寂しい思いをさせちゃったよね…アンタが寂しく思ってたかは知らないけど…
2022-12-01 14:40:1443 後悔なのか、反省なのか… 自嘲気味にふっと笑った。 イケないのは、僕の方なんだ… 飛:ふふ…可愛い…スースー寝息立てちゃって… 2度、3度、僕の頭を優しく撫でる。 飛:温かい…生きてる…○○が生きてる…良かった… なんだ…? もしかして、涙ぐんでるのか?
2022-12-01 14:40:1544 飛:○○がウチに運ばれて来た時、生きた心地がしなかった…だから…本当に良かった…大好きな人をこんな所で看取りたくないじゃない… 鼻をすする音が聞こえる。 飛:○○…○○… ○:ん… 飛:ヤバ…起きちゃう…また明日ね。いっぱい意地悪してあげる。 それは、やめてくれ…
2022-12-01 14:40:1545 チュッ… 一瞬、頬に柔らかい何かが触れてすぐに離れた。 … … ○:え… 今宵は、本当に眠れそうにないかも… 左頬をさすりながら、悶々とするのだった。 … … …
2022-12-01 14:40:1646 飛:おい、起きろ。 家じゃないのに、朝から布団を剥がされた。 ○:ん…あとちょっと… 飛:早く起きないと…私も一緒に寝ちゃうぞ? ○:どう言う因果だよ… 飛:嫌なら早く起き…きゃっ… 飛鳥の細い腕を引っ張る。 彼女を抱き寄せるのは、空いてる片手で十分だった。
2022-12-01 14:40:1647 飛:え…ちょっ…はぁぁ⁈ ○:どうせ、飛鳥も疲れが溜まって眠いんだろ?だったら寝ようよ。 飛:いや…えっと…えぇ…⁈ 真っ赤にした顔が、僕を見上げている。 飛:誰かに誤解されたらどうするのよ…! ○:嫌なら、早く離れたら?僕は片手しか使えないんだから、余裕でしょ?
2022-12-01 14:40:1748 飛:○○は嫌じゃない訳? ○:別に。 飛:え…それって… ○:この姿が、他の看護師さんに見つかって怒られれば良いとは思ってる。 飛:なっ…コイツ…そう言うことか… ムクッと起き上がって、僕の左頬を全力でつねってくる。 ○:痛い痛い痛い!患者にする仕打ちじゃないから!
2022-12-01 14:40:18