昨日だいぶ怒ったtweetをした後にまたがっかりする案件が来たので、種明かし的に怒った背景について書いたら、自分なりの参与観察・質的研究ガイドができましたのでおすそわけします。(元tweetのスレッドが一列に並ばなかったことに気づいてしまったというのもある)。
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tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

編集の仕事がゼロ。2020年08月のジャンプ編集部並み。 twitter.com/cakes_pr/statu…

2020-11-16 19:35:43
cakes(ケイクス) @cakes_PR

11月16日17:06に著者からのコメントを追記いたしました。 cakes.mu/posts/31615

2020-11-16 17:06:41
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杜撰な「言語化」をしている責任は著者にあり、それは(原理的には)いくらでもただしていけるが(その見込みが実際には薄いとしても)、それに賞を出し、社会的に必要な編集部としてのエクスキューズも何もなくただノリして炎上させているのがどこの組織なのか、何一つ理解していない。

2020-11-16 19:38:30
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

お ま え ら が 旗幟を鮮明にするんだよ。 「ご不快に対する」「謝罪」などではなく、「社会的包摂」と「貧困の撲滅」という公共性の高い課題に対してどうすれば一企業として関わっていけるか、少なくともそれを邪魔しないで済むようふるまえるか、それを考えろよ.それがコンプライアンスだよ。

2020-11-16 19:41:15
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

どうして自分がこんなに怒れるのか、当事者研究ってどういうものなのか、一応いくつか本並べておくからね。私の怒りがわからない人の幾人かは、読んでくれるかもしれないから。

2020-11-16 19:58:39
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ハワード・ベッカー『完訳 アウトサイダーズ』 amzn.to/36LvzGq

2020-11-16 20:03:20
リンク www.amazon.co.jp 完訳アウトサイダーズ 完訳アウトサイダーズ
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アーヴィング・ゴフマン『スティグマの社会学:烙印を押されたアイデンティティ』amzn.to/3nrrVIj

2020-11-16 20:05:23
リンク www.amazon.co.jp スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ 10
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グレーザー&ストラウス『死のアウェアネス理論と看護―死の認識と終末期ケア』amzn.to/35wgSYe

2020-11-16 20:06:04
リンク www.amazon.co.jp 死のアウェアネス理論と看護―死の認識と終末期ケア 死のアウェアネス理論と看護―死の認識と終末期ケア 5
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ポール・ウィリス『ハマータウンの野郎ども』 amzn.to

2020-11-16 20:07:23
ハマータウンの野郎ども (ちくま学芸文庫)

ポール・E. ウィリス,Willis,Paul E.,誠, 熊沢,潤, 山田

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岸政彦『マンゴーと手榴弾: 生活史の理論』 (けいそうブックス) amzn.to/35zhFaG 以上が「生活史研究」とか「エスノグラフィー」とか「参与観察による質的調査研究」と言われるタイプの古典(岸さんだけ新作なので古典化するかどうかはもう少し先の話になるけど)です。

2020-11-16 20:09:46
リンク www.amazon.co.jp マンゴーと手榴弾: 生活史の理論 (けいそうブックス) マンゴーと手榴弾: 生活史の理論 (けいそうブックス) 258
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ベッカーはジャズ音楽家の麻薬常用の共同体を、ゴフマンは精神病院を、グレーザー&ストラウスはがん患者等の終末期医療の現場を、ウィリスは教育水準が低いまま労働者になった英国の若者共同体を、岸は沖縄や釜ヶ崎などの沖縄人コミュニティを、それぞれ参与観察して、モノグラフを書いた。

2020-11-16 20:12:31
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これはどれもノンフィクションライターが「ルポルタージュ」として潜入取材し、ある種のノンフィクション文学を書いても、てもそこまでおかしくないような現場です。しかし、彼ら(女性のフィールド系研究者の仕事を取り上げなかったのは今片手落ちだと気づいた、後で補います)は研究として仕上げた

2020-11-16 20:15:09
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

またこうした参与観察・民族誌・質的調査については、ベッカー『社会学の技法』amzn.to/3kByOoG ;エマーソンほか『方法としてのフィールドノート』amzn.to/2Uy168M ;パーカー『ラディカル質的心理学』amzn.to/35AcG9L 等、やるべきこと、技法と貢献についての論があります

2020-11-16 20:19:28
リンク www.amazon.co.jp 社会学の技法 社会学の技法
方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで

エマーソン,ロバート,ショウ,リンダ,フレッツ,レイチェル,Emerson,Robert,Shaw,Linda,Fretz,Rachel,郁哉, 佐藤,富秋, 山田,裕明, 好井

リンク www.amazon.co.jp ラディカル質的心理学―アクションリサーチ入門 ラディカル質的心理学―アクションリサーチ入門 4
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そしてそのなかには、「少なくともこういうことは、底が浅いし、ステレオタイプ的な偏見を増強するだけだし、やってはいけないよ」というようなことが、必ず論じられます。学部の社会学や人類学のゼミの学生たちは、時に実践の中で困り、泣きながら、なぜいけないかを、習得していきます。

2020-11-16 20:21:36
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

社会学・人類学の質的研究系のゼミで学士を取るということは、その後どこで活躍するにしても、そうした偏見や誤謬をいたずらに再生産することから距離を置き、言説のワクチンをその場で拵えられるだけの最低限の訓練をした、ということになります(全員ができるわけじゃないかもだけど、それを目指す)

2020-11-16 20:25:37
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

そしてそれは、実利的には、治部れんげさんが企業コンプライアンス本『炎上しない企業情報発信』booklog.jp/users/f51ab8c0… で述べたような、企業の典型的失敗例……それらをあらかじめ回避させられるような、そんな企業経営陣にとって福音となるような知恵を、質的調査系の学生たちに提供するものです。

2020-11-16 20:29:04
リンク booklog.jp trickenさんのレビュー trickenさんの治部れんげ『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である』についてのレビュー:197...
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

当事者の方々の当座の問題の解決には、directには結びつけられないかもしれない。けれどそれでも、そこで本当は何が問題なのか、長く居続けることでしか明かせない、そんなファクトを見出すために、参与観察・民族誌という技術はここ百数十年、磨かれてきました。人類学と社会学、その他の社会科学で。

2020-11-16 20:31:15
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

そうした百数十年の営為は、しかし、優秀な選ばれし学生だけが、高い学費と4年間の修行時間を経なければ身に着けられないものではない。論文1本から、方法論書1冊から、誰でもそろりそろりと参入していける。2020年の今なら読書猿『独学大全』booklog.jp/users/f51ab8c0… だってある。

2020-11-16 20:32:53
リンク booklog.jp trickenさんのレビュー trickenさんの読書猿『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』についてのレビュー:... 2 users
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

なんなら今なら、(コロナで大変だけど)社会調査に詳しい大学研究者にメールで尋ねることだってできる。そんな開かれたやり方で、社会調査の世界に参入したのが、社会学者の上野千鶴子にコンタクトを取った遥洋子さんでした(『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』amzn.to/2H3MStc

2020-11-16 20:35:37
リンク www.amazon.co.jp 東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫) 東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫) 260
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いいですか。これは象牙の塔の知識では、半世紀前くらいから、すでになくなっている、そういうたぐいの知識です。なら、アマチュアのノンフィクションライターだろうがなんだろうが、いつでもアクセス可能な技法であり、知識なんです。

2020-11-16 20:37:50
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

もちろん、本当の意味での習得は難しいし、時間も金もかかるでしょう。しかし、現代におけるスキルや職能や免許や資格は、どれもそうです。量的/質的社会調査など、(専門社会調査士などの取り方の限定された資格に比べれば)門戸は広い。いつでも学べるし、身に着けられるわけです。

2020-11-16 20:39:55
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

なら、参与観察/民族誌/モノグラフ/質的調査/(優れた調査法だけど自分がいうと面倒な個人が来るのでここでは書かないあの技法)/会話分析、なんと呼んでもいいし、どんなサブカテゴリを選んでいいですが、観察者が偏見を作文から除く業務をサボる言い訳は、もはや非研究者でも、通用しないんですよ。

2020-11-16 20:44:41
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

研究ではないのだから、調査した内容、および文章のクオリティは問いますまい。しかし、それでも、社会階層の(主に上方への)流動性があることが望ましいことは議論の余地がないこの社会において、貧困層の方々を特定のカテゴリに閉じ込めるのに加担することは、少し学べば、作文から除けたでしょう。

2020-11-16 20:46:54
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

「ホームレスの方々から特定の生きる技術や文化様式を抽出することの何が悪い?」それをいつ私が否定しましたか? とはいえ、その程度の話、坂口恭平の「モバイルハウス」のような試みが、既に別方面から掘下げてます。本人自身の建築力・生活力で。その種の話の組立に当事者は、どこまで必要ですか。

2020-11-16 20:53:15
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

さて、本を紹介し、背景にある技法や営為を紹介しました。そしてそうした営みが社会的なカテゴリづけ、或いは人を特定の不幸にじんわり閉じ込めようとする「言説」の不自由さをキャンセルし、互いに社会的に共栄する方向へ一歩でも歩みだそうとする技術であることを、紹介しました。

2020-11-16 20:55:38
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

もしかすると、「社会階層」であったり「社会的流動性」であったりといった、社会階層論系の社会学モデルの話も、多少は押さえておいたほうがいいかもしれません(参考:浜日出夫ほか『社会学』amzn.to/3nrja0S )。貧困の撲滅やスラムの解消は、都市社会学以降の社会学の主課題でもあります。

2020-11-16 20:59:23
リンク www.amazon.co.jp 社会学 新版 (New Liberal Arts Selection) 社会学 新版 (New Liberal Arts Selection) 55
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

別に貧困層に限らず、どんな場所、どんな地域、どんな共同体に飛び込んで、どんな突撃取材したって、構いません。けれど、その帰結が、どんな人をどれだけ幸せにするか、知的関心以上の何らかの「貢献」をどこに出口として置くか、くらいは、ハッタリでもいったほうがいい。本人の身を守るためにも。

2020-11-16 21:03:15
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

文章でも、どんなサービスでもプロダクトでもいいんですが、「この調べ物が、結局誰をどの程度、どのようにハッピーにするのか」「何がうれしいのか」。それを何度でも練り直す力を磨いてきたのが、各学問領域であり、調査系研究においては、社会学と人類学(量的研究では心理学統計学等も入る)です。

2020-11-16 21:04:49
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

文章には力があります。これは夢の話ではなく、悪夢の話です。ずさんな言葉が、人の属性をどんどん固着させる。それは言説の話であると同時に、社会政策の話でもある。 その中で、「ここにある問題を解決する」ことに限定して何事かを明らかにする素振りが……その短期的案成否を問わず……重要です。

2020-11-16 21:07:20
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

「それを知ると、私が嬉しい」は、知的好奇心としてはいいものです。けれど、「それがわかって、私以外も、このように嬉しい」にも、可能な限りプレゼントを作ろうとするのが、調査系の営みの、かなり蘊奥にあるものかと、私は考えています。残念ながら、件の文章にはそれが希薄でした。

2020-11-16 21:09:31
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

そろそろ私は説明責任を果たしたでしょうか。時に社会的流動性を押しとどめ、不幸にするタイプの文章を、個人が書き散らすなら、“大きな”咎はない。

2020-11-16 21:11:10
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

しかし、誰でも手に入り、実践できるはずの、省くと倫理面で糾弾される種類の、ありうべき手順を怠った個人の文章に、おもしろがって拡声器をつけ、賞を与えたのは、企業です。それがどんなに企業として無策であったかをいまだに理解しているように思われない企業への、説明になったでしょうか。

2020-11-16 21:12:27
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

後半に出したパーカー『アクション・リサーチ』(批判心理学の潮流)がそうですね。その前にもホルスタイン&グブリアム等が構築主義的インタビューアクティブインタビュー論)なども提出しています。ただその話は社会哲学的に入り組んでおり、今回やむなくオミットしました。もう1投触れるべきでした twitter.com/mjqag/status/1…

2020-11-17 00:27:28
高島鈴🏴単行本発売中! @mjqag

cakesの炎上記事に関して、参与観察の観点が必要であった、という議論も出ているが、そもそももう参与観察という手法自体批判されており、今はインフォーマントを共同研究者として考える方向性の研究が多く出ているのではなかったか……

2020-11-16 23:57:28
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

ただ、これは私なりに半端に訓練を積んだ人間の私見ですが、20世紀後半の良質な(言説分析的、知識社会論的、相互行為論的な知見を踏まえた、という含みを自分はここの「良質」に持たせる)古典的質的調査論は、2010年代以降に通用しないわけでなく、マイナーパッチを当てる程度でまだ現役と考えます。

2020-11-17 00:31:45
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

ポスト構築主義の文献として、やや古いですがホルスタイン&グブリアム『家族とは何か: その言説と現実』あたりと置いておきます。amzn.to/3nnAKCS 現代家族の実態をめぐり質的調査をする研究者たちが、「家族を語る言葉」それ自体の構築性そに内省的であろうとする様子が収録されてます。

2020-11-17 00:37:01
リンク www.amazon.co.jp 家族とは何か―その言説と現実 家族とは何か―その言説と現実