しおんの過去作まとめです。 見てもらえたら喜びます。
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しおん @sionsion01031

夕暮れの淵を歩いている。 もうみんな帰る時間だよ。ひとり、ひとりと自分の家に帰って行く。 「私、お家がないの」 最後に残った女の子が俯いて言う。 大丈夫だよ、と私はその子に伝える。その子は顔を上げた。 「大丈夫、一緒に帰ろうね」 一緒に、夜の海に帰ろう。 私の愛しい子。 #140字小説

2020-12-14 20:42:58
しおん @sionsion01031

黒々とした物が腹の中に溜まっていく。 ドロドロしたもの、怨嗟、憎悪、その他の嫌なもの。 こんなモノを腹に溜めておくなんて、どうかしている。 「貴方は醜い、悍ましい」 私はそれを勢いよく吐き出す。 その黒いモノが、他人の心を突き刺して傷付けるのは知っていた。 #140字小説 『悪口』

2020-12-18 23:31:03
しおん @sionsion01031

からからと風車が回っている。 風も強くなってきた。日も随分と低い。 「君は帰らないの?」 あの子が僕に聞く。 「僕は帰らないよ」 あの子に僕は言う。それを聞くと、あの子は走り出す。ソレに追いつかれない様に。 僕はここで待っている。 だって、いつもそばに居たのだから。 こんにちは、夕闇。

2020-12-19 13:58:23
しおん @sionsion01031

アンティーク調の店内。 止まった時計と壊れたヴァイオリン。 部屋の端から此方を見つめる人形達。 店内で丸くなっている猫。 まるで御伽噺から出てきた様な店員さん。 今日もここで待ち合わせ。 あなたと一緒に、取り止めもない話をして時間を費やしていくのだ! #140字小説 ある喫茶店にて。

2020-12-19 18:21:10
しおん @sionsion01031

じわり、とインクを垂らした様に黒が広がっていく。 (ーあぁ、嫌だな) この感覚には、いつになっても慣れない。 ドロドロに煮詰まった嫉妬、どす黒い憎悪、殺意染みた思い……。 一度知ってしまったら戻れない。 真っ白だった頃の私には、戻れない。 #140字小説 『灰色の私』

2020-12-20 13:59:30
しおん @sionsion01031

『君の事なんてー』 大嫌いだ、とその心に言葉のナイフを突き付けた。 その瞬間、跳ね起きた。 どくどくと激しく脈打つ心臓、全身にかいている冷や汗。 のろのろと辺りを確認する。 何の変化もない、自分の部屋。 はぁ、と重々しい溜息を吐く。 ……君を傷付けなくて済んだことに安堵した。

2020-12-20 22:39:14
しおん @sionsion01031

#140字小説 『好きと嫌いの狭間で』 好きと嫌いは両立するんだよ。

2020-12-20 22:41:12
しおん @sionsion01031

恋とは何と厄介なものだろう。 一緒に幸せになろうなんて思わない。 あなたの心にずっといられるなら。 一生の傷になって、わたしという毒が回って、あなたが死に絶えてしまっても。 わたしはそれで、満足なのです。 わたしはあなたに恋をしているのだから。 #140字小説 『恋は猛毒』

2020-12-23 17:32:49
しおん @sionsion01031

君も私の事を見捨てるんだろう、と君は泣きながら言う。 僕は見捨てないよ、と伝え君を慰める。 心に澱が溜まって行く。 積もった感情が折り重なっていく。 僕が君を突き放さない限り、君は僕から離れられない。 ゆっくりと、黒い糸で君を絡め取って見せるとも。 #140字小説 『蜘蛛と片想い』

2020-12-25 21:07:14
しおん @sionsion01031

カラン、とグラスの氷が鳴る。 店内に流れるアップテンポの音楽に、きらきらと輝く夜の街。 少し奮発したディナーは美味しいし、これから運ばれてくるスイーツは楽しみで仕方ない。 「メリークリスマス!!」 自分の為に使う、自分だけの時間。 他人に邪魔なんてさせないわ。 さぁ、夜はこれからだ。

2020-12-25 21:12:33
しおん @sionsion01031

真昼間、友達の顔面にプレゼントを投げつけた。 これにはちょっとした理由がある。 正規のサンタなら、深夜にちゃんと煙突から入って、寝静まった良い子にプレゼントを配るだろう。 そも、私はサンタじゃないし、昨日お前が約束破った事は忘れてない。 掛け声はこうである。 「お前が悪い、許さん」

2020-12-25 21:32:15
しおん @sionsion01031

「ねぇ、ここのお店って何売ってるの?」 「見ての通り、喫茶店なんだが」 「そうじゃなくて。他にも何か売ってる時あるじゃん」 「そりゃあ、代表的なのは愛を売ってるな」 「愛?」 「そう。真実の愛ならぬ偽物の愛」 そう言って、店主は笑った。 「偽物なら手頃で、傷つかないだろ」

2020-12-28 22:16:02
しおん @sionsion01031

#140字小説 『偽物の愛』 「うちの店の偽物の愛は、結構評判良いんだぞ」 そう店主は嘯いた。

2020-12-28 22:17:21
しおん @sionsion01031

ねぇ、知ってる? 物に込められた気持ちは、受け取った人の心に溶けて。 その記憶は、物に宿ってるの。 そう語る彼女の手にある指輪は、彼女にとってかけがえのない物だと。 そう、僕は知るのだった。 前略、名も知らぬ彼女の大切な故人。 あなたの思いと記憶は、今も彼女と共にあります。

2020-12-30 18:18:18
しおん @sionsion01031

#優しい言の葉 『かけがえないもの』 #140字小説 「そんな彼女を、僕は愛しております」

2020-12-30 18:23:02
しおん @sionsion01031

長くはない髪。 レースのついたブラウス。 ピッタリとした細身のジーンズ。 足元は、高さのあるシックなヒール。 着たい服、履きたい靴を身につけた私は。 自分で言うのはなんだけど。 かなり、かっこいいのだ。 #140字小説 『みんな、着たい服を着て、履きたい靴を履こうぜ!』

2020-12-30 20:57:42
しおん @sionsion01031

目を瞑ると、宇宙が見える。 宇宙の中を、大きなクラゲが漂っている。 あぁ、宇宙じゃなくて海なのか。 緩やかな微睡の中、私は沈んでいく。 深い深い深海へと落ちていく。 また明日、光さす浜辺に打ち上げられて目を覚ますまで。 それまで、おやすみなさい。 #140字小説 『緩やかな微睡』

2020-12-30 22:35:07
しおん @sionsion01031

影の中で魚が泳いでいる。 いつからそれを知覚したかは覚えていない。 大概の彼等は、影から影へ移り泳いでいくだけだ。 ……たまに、彼等とは別の奴を見かける。 奴は、影を食べるのだ。 影を食べられると、あまり良くない事が起きる。 気をつけた方がいい。 ほら、足元に、 #140字小説 『影魚』

2020-12-31 11:29:28
しおん @sionsion01031

鈍い音を立て、空調が動いている。 ゴミ溜めの様な部屋、そこはかとなく鼻につく異臭。 あぁ、そういえば最後に和室にいる妹が言葉を発したのは、いつだっただろう。 人の出入りが途絶えてから、何日経ったのかわからない。 (あぁ、誰かー……) その先の言葉は、部屋に溶けて消えた。

2021-01-01 01:43:22
しおん @sionsion01031

#140字小説 『助けて欲しいが言えなくて』

2021-01-01 01:43:48
しおん @sionsion01031

雑多な雰囲気。 その中で、色濃く匂う異国の気配。 香ばしい珈琲の匂いと、それを立てる音。 あぁ、好きだなぁ。 とある一軒の喫茶店に迷い込んだ。 偶然だけど、そんな出会い。 これだから、散策はやめられないのだ! #140字小説 『偶然の出会い』

2021-01-02 09:13:45
しおん @sionsion01031

『人間は夜を見ない』 そう言っていたのは誰だったか。 祖母だったか、叔母だったか。 夜。人ではないモノの時間。 あまり目を凝らしてはいけないと教えて育てられた。 人が無意識に、目に下ろしている帳を上げる。 太陽の様に輝く月。 昼と見まごう明るい世界。 あぁ、夜はこんなにも美しいのに。 pic.twitter.com/93EjVygicy

2021-01-02 22:09:19
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しおん @sionsion01031

白、黄、橙、赤、桃色。 青、群青、薄緑。 それから透明。 ペンキ塗りは何もない空間に器用に色をつけている。 塗ったそれは、まるで星の様。 「お兄さん」 通りがかった少女が尋ねる。 「毎日何を塗っているの?」 ペンキ塗りは少女を一瞥し、素っ気なく答えた。 「……明日の希望に色を付けてる」

2021-01-03 00:50:57
しおん @sionsion01031

#140字小説 『明日の希望に色を付ける職業』

2021-01-03 00:51:39
しおん @sionsion01031

あぁ、酷い。 言葉で表すなら、そう。 こんな悲惨な中で、どうしろと。 ……いや。 こんな状況だからこそ。 この舞台から降りることはできない。 むしろ、降りない。 さぁ、踊ろう。 この瞬間を、最悪の舞台を。 楽しもうじゃないか!!! #優しい言の葉 「最悪の舞台」

2021-01-03 10:31:31
しおん @sionsion01031

#140字小説 『さぁ、踊ろう!』 なんか言葉の端から漂う悪役感……(・∀・)

2021-01-03 10:32:44
しおん @sionsion01031

「どうして色を付けてるの?」 少女は尋ねる。 だって、少女の目にはキラキラとした透明の星が、そこらかしこに見えていたから。 「大人になるとな、」 ペンキ塗りは目を伏せて言った。 「お嬢ちゃんみたいに、しっかり希望が見えることが少ないんだ」 だから、色を付けないといけないんだ。

2021-01-03 18:13:50
しおん @sionsion01031

君は物が捨てられない。 君は、物にはたくさんの記憶が詰まっていると言う。 だから、君は捨てずに片付けるだけ。 宝箱へ、大切に、大事に。 私は、それをとても尊い行為だと思った。 だから。 そんな君を、とても愛おしく思う。 #140字小説 『君は物が捨てられない』

2021-01-04 21:48:51
しおん @sionsion01031

眩い光の中。 それは、あなたを見ていた。 こちらからは見えない何か。 ふと視線を感じて辺りを見回すが、せせらぎの音しか聞こえない。水面の反射で目を細める。 あなたは気のせいだと思う事にした。 ……それは、確かにいたのだ。 日向の向こう側で、あなたと目を合わせるのを、ずっと待っている。

2021-01-04 22:55:26
しおん @sionsion01031

音が聞こえている。 お祭りのお囃子。 騒めく人の声。 子どもの声が遠くから聞こえている。 「いいなぁ」 思わず、呟く。 『だが、もう戻れはしないさ』 隣から声がする。 「わかってるよ」 もう見えない神さまがいう。 だって。 私は七つを過ぎている。 私は大人になってしまった。

2021-01-06 06:41:54
しおん @sionsion01031

街灯が仄暗い夜を照らしている。 「やあ、いい夜だね」 その下で、黒マスクの女が嗤っている。 「どうしたんだい、家で喧嘩でもしたかい?」 私は首を横に振る。 「いい夜だから」 その答えを聞き、女が笑いを深める。 「そうだねぇ。夜にも出たくなるさ!」 #140字小説 『暗い夜の待ち合わせ』 pic.twitter.com/CJEnZi19vs

2021-01-07 19:32:18
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しおん @sionsion01031

落ちてきた星を拾う。 輝いてもいなければ、ただの石の様に見えるそれを、女性は拾い続ける。 「なぁ、姉ちゃんは何で星を拾ってんの?」 通りかかった少年が聞く。 「星をもう一度、お空に帰してあげる為だよ」 『星は空に帰ると、また輝くからね』と女性ははにかんで答えた。

2021-01-10 07:38:47
しおん @sionsion01031

外は寒い。 バケツに溜まった水は氷になっているし、雪も降っている。 今だから、家に篭ってごろごろしても怒られない。 「君と一緒だねぇ」 隣に座る相棒に声をかける。 君はゴロゴロと喉を鳴らして、にゃあ、と答えた。 さぁ、今日は君と2人でお家に籠城といこう! #140字小説 『ある冬の日』

2021-01-11 00:23:12
しおん @sionsion01031

雨戸を閉めている。 外は天気が良い。 本来なら、開けた方がいいのだが。 あえて、閉めている。 ……窓から、何かがこちらを見ている気がするから。 雨戸を閉めていれば安心なのだ。 ふと、障子が少しだけ空いている。 雨戸を閉めた時に、閉め忘れたのだろう。 閉めようとして、それと目が、あう、

2021-01-11 15:34:35
しおん @sionsion01031

#140字小説 『こちらを覗くモノ』 …………雨戸を閉めても、ずっとこっちを見ていた。

2021-01-11 15:35:52
しおん @sionsion01031

「ねぇ、何で黙っててくれたの?」 彼女がボソリと呟く。 あたりは暗い。白い息が吐き出される。 「全部知ってたから」 「……あーあ、君は優しいなぁ」 彼女は困ったように笑う。そして、駆け出す。 「君のせいだよ。私、自分が死んだのに気づけなかったのは」 振り向いた彼女は夕闇に溶けていった。

2021-01-11 21:45:51
しおん @sionsion01031

#140字SS 『彼女は夕闇に溶けていく』 しおんさんは『全部知ってたよ』をお題に、140字でSSを書いてください。 #shindanmaker shindanmaker.com/386208 pic.twitter.com/U5IQdmkpo5

2021-01-11 21:48:47
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しおん @sionsion01031

届かない手紙を書いている。 拝啓で始まり、次に季節の挨拶。 いかがお過ごしですかと続ける。 季節ごとに一通。 届かないから、引き出しにたまる一方。 「おじいさん、天国でいかがお過ごしですか」 長年連れ添った相手である。 根は優しくて、ぶっきらぼうだった。 また季節が巡り、手紙が増えた。

2021-01-12 19:05:22
しおん @sionsion01031

雨が降っている。 辛い、憎い、羨ましい。 そんな負の感情が、雨となって降り注いでいる。 幸せは一時(いっとき)のもので、傘としては頼りがない。 体温が奪われて、とても寒い。 あぁ、世界はこんなにも、冷たい。 『だれか、たすけて』 人知れず、何処かの誰かに呟いた。

2021-01-12 20:09:43
しおん @sionsion01031

#140字小説 『雨降る世界』 しおんへの今日のお題は《世界はこんなにも、冷たい》です #unhappy140ss #shindanmaker shindanmaker.com/558664 pic.twitter.com/RafcTg2iPy

2021-01-12 20:11:51
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しおん @sionsion01031

蝋燭が灯されている。 薄暗い室内。 集まったモノたち。 人の形をしているモノもいれば、そうでないモノもいる。 ざわざわと、声とも判別のつかぬ音が揺れている。 「皆様方、お静かに」 誰かが言う。 水を打ったように鎮まりかえる。 ニンマリと嗤い、声は続けた。 「今宵も百物語を始めましょう」

2021-01-13 04:08:46
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まとめたひと
しおん @sionsion01031

気が向いたときに、書き(描き)ます。創作アカです。リハビリに1日1回140字(目標)。無言フォロー失礼します!ハッピーエンドも好きだけど、バッドエンドも生きていればあるのです。気軽に絡んで貰えると嬉しいです! #明けない夜に揺蕩う で同じ世界線の話を書いてます。