第32回深夜の真剣140字60分一本勝負

大橋電光 @79DEnko

俺の予報通り、夕立が降った。突然降る雨ですら予報できるようになったこのご時世、雨で濡れた人が今日も誰一人としていないことに感慨を覚える。まぁ、酷いのに当たると濡れただけで溶けて死んでしまうんだからみんな必死に避ける。だから俺は予報を出す。 『 次の雨は一週間後、色は紫！』

七草すずめ @suzume_nanakusa

「紫鏡」って言葉を、はたちまでに忘れられないと、死んじゃうらしいよ。みくちゃんにささやかれて怯えた夏祭の夜。泣きじゃくる私に、「白い水晶」って言葉もいっしょに覚えていれば大丈夫、ってあわてて教えてくれたっけ。みくちゃん、私、一週間後に二十歳になるよ。花を手向け、そっとつぶやいた。 pic.twitter.com/VzKQkd6Hl0

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水城弥生 @mizukiyayoi8484

僕らを濡らした夕立も去り、空が紫になる。「ちょうど一週間後の花火大会は晴れるといいね」「きっと晴れるよ」白いワンピースで笑う彼女の顔は向日葵のよう。「そしたらさ、たまやーって言えるね」「言う人いないけどな」「それでもいいのー」濡れた黒髪を少し揺らしながら抗議するも幸せそうだった。

津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

晴天に紫の煙がたなびき君は去る。「一週間後に夕立が降るよ」だからそれまでは泣かないで、という意味なのを、私はすでに知っている。恋人を置いていくくせに、別れ際に泣かせてもくれない。君の予言が当たったから、私は雨に紛れ頬を濡らす。はやくはやく、また一年が巡りますように。どうか。

花滝ちかる @chikaru_toka

『捜さないで下さい』などと、捜して欲しいと同義だろう。 夕立の中で見つけたお前の、頬に伝うのは雨なのか涙なのか。 「貴方に必要とされているのかわからなくて…不安だったの」 ずぶ濡れになりながらお前を抱き締めて、我が侭のようなプロポーズをした。 「必要だ。一生、お前でなくてはイヤだ」

RAY/※※※ @growler_ray

祭りの最中に降り出した夕立は、容易く人々を散らしてしまった 木陰へ建物へとみんなが去っていく中で私は、1人だけその夕立の中で立っている人を見てしまう 銀の髪に魅せられ、よせばいいのに私はその人に近づいていく。あと少しまで接近すると、不意に私の手が掴まれた 「その…皆さんはどこへ？」

きぃ @key_habataki

お題：紫 #深夜の真剣140字60分一本勝負 #140字小説 pic.twitter.com/oqrs1b3BPF

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宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

煙草の煙が揺れ、じめつく空気に上下左右前後、波の様にたなびく。 煙の昇るその先に、紫と橙に染められた夕焼け空が広がっていた。 夕立が降った後特有の、冷めた空気が鼻をつく。 来週もまだ、同じ景色を見て涙を流せるだろうか。 たった一人荒野に立つ私は、まだ。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/YnPIyFU4OX

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ポッキー（山野千鶴） @lilianne0523

迷いはあった。しかし、自分の心に嘘をつくことは、どうしてもできなかった。稲光。激しい夕立が降る。止んだ後は、どこか気持ちもすっきりとしていた。一週間後の紫色の空を見上げながら、この訣別は間違ってはいなかったのだ、とはっきりと感じた。おたがいの、これから進むべき道のために。 pic.twitter.com/DbYAr1JakP

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賀茂柚樹 @tanka_uta_575

「いつまで待たせるの？」夕立の後の一本の電話。君の声は僕をせめるでもなく、ただただ悲しい声が僕の耳をふるわせる。「ごめん、、」そんな謝罪の言葉しか出ない自分がとてもみじめに思えた。「いつまで待てばいいの？」淡々と言葉を紡ぐ君に僕はまたいつもの答えを返す。「、、一週間後に、また、」

夢夜 @ruya_reve

ふと顔に当たった水滴に驚いて空を見る。 「一雨来そうですね」 「……うん」 その直後、雨が降ってきた。 夕立を遮る場所はどこにもない。 「ついて来て！」 お前の手を引いて走り出す。 こんな時だけど、俺のそれより少しだけ体温の低いお前の手を離さなければどこへでも行けるような気がしていた。

夢夜 @ruya_reve

貴方に手を引かれて夕立の中を駆け抜ける。 雨足が強くなり、濡れた服が肌に張り付いて思うように走れない。 振り返った貴方が目を見開き、近くの建物に飛び込んだ。 「これ以上は無理だね」 「どうしてです？」 私の問いに貴方はため息をついた。 「無自覚なのは罪……か」 どういうことだろう？

はろ（葉露) @c_to__b

一週間後に結論を出すから。 そう言われてから一週間経った今は夕立だった。やっぱり、終わりだった。そんな気はしていた。気づかないふりして毎日を過ごしていたけど、やっぱりだめだった。 夕立が上がって、夕顔の紫が光っている。 あ、と思って伝える相手はもういない。そのことが、一番悲しい。