シンデレラのラーと弟のダと王子様のヒュとその他もろもろ。ヒュンラーとちょっぴりダポ。
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コージ@頭痛 @koji_hunter

あ・ろんぐ・たいむ・あごー。あるところにラーとダィという血の繋がらない兄弟がおりました。兄のラーはもらい子でしたが、両親に優しく育てられ、年の離れた弟のダィのことがちょっと強火なくらい大好きでした。数年前、両親が事故で亡くなり、兄は弟を何不自由なく育て上げると墓前に誓いました。

2021-06-22 19:23:39
コージ@頭痛 @koji_hunter

兄のラーは襤褸を纏い家事を一手に引き受け、弟のダィにはぴかぴかの服をこさえてやり、大きいほうのパンはダィに譲りました。むしろ自分の分のパンも弟に食べさせようとしました。 「兄さん、おれはもういいから自分の服を作りなよ。あとパンも食べて。外で草むしって食べてるんじゃおれ心配だよ」

2021-06-22 20:33:59
コージ@頭痛 @koji_hunter

「俺にはお前を立派に育て上げる義務が」 「おれはもう大丈夫だって。兄さんもいい歳なんだから、そろそろ結婚も考えたら?」 「お前をきちんと婿に出せたら考えよう」 「もぉ〜。いつもそうなんだから…」

2021-06-22 21:12:20
コージ@頭痛 @koji_hunter

さて、お城で年に1度の舞踏会が開かれる時期になりました。ラーはやる気満々です。ダィを行かせるために。 「ダィ、今年も新作のドレスができたぞ。これを着て舞踏会に行って王子様を射止めてこい。ここの刺繍とかすごく力作」 「もぉ〜。たまには兄さんが行きなよぉ」 「俺はお前を婿に出せたら…」

2021-06-22 21:58:12
コージ@頭痛 @koji_hunter

「来年は兄さんね! 絶対行きなよ!!」 「フッ…お前がドレスを作ってくれるなら考えよう…」 「できないの分かっててそう言うのずるい!」 ダィはラー渾身のドレスを身に纏ってしぶしぶ舞踏会に出かけて行きました。 「さて…俺は今年もダィの部屋にエロ本が無いかどうか確認せねばな…」

2021-06-22 22:16:26
コージ@頭痛 @koji_hunter

「そういうの良くないと思うな〜」 独り言に返事がありギョッとしてラーが振り返ると、ハデハデの鳥人間とでっけぇトドがいました。 「な…なんだ貴様らは…!」 「魔女のガルでーす」 「魔女のボラです」 「「2人合わせて、フェアリ〜・ゴッドブラザーズでーす」」 「ギリギリを攻めてくるな…」

2021-06-22 23:14:22
コージ@頭痛 @koji_hunter

「女ではないではないか」 「そういうお前もドレス着てるじゃん」 「む…それもそうだな」 魔女の2人はどこからともなくステッキを取り出しました。 「「ヒャド・ヒャダルコ・ヒャダイン・ルード〜」」 魔女の2人が謎の呪文を唱えると、ラーは光に包まれました。

2021-06-23 20:55:25
コージ@頭痛 @koji_hunter

眩しさに目をつぶったラーがそろそろと目を開けると、襤褸のドレスはぴかぴかのシルクに、1週間お風呂に入ってない肌はツヤツヤになりました。 「お前の因果律を書き換えて、ドレスはこれ以上なく美しく、お肌はお風呂から上がりたて、石けんのいい匂いもするようにした。これで男子はイチコロ」

2021-06-23 21:44:26
コージ@頭痛 @koji_hunter

「いんが…なんだって?」 「なんでもないなんでもない。あとサービスでナチュラルメイクもしておいてやったぜ。キャン●イクで」 「デパコスではないのか…」 「魔女の台所も苦しくてな」 ボラがラーの背中をぐいぐい押します。 「これで王子様のハートを射止めてこい」 「しかし王子様とはダィが…」

2021-06-23 21:56:49
コージ@頭痛 @koji_hunter

「王子のハートはお前が射止めるの! そう決まってるの!!」 ガルが床をドンドンと蹴ります。 「俺もボラも前世でお前に世話になった(意味深)から、王子様とくっついてもらわないと困るの!!」 「ぜん…なんだって?」 「「なんでもないなんでもない」」

2021-06-24 15:03:58
コージ@頭痛 @koji_hunter

ラーがしぶしぶ家のドアを開けるとヒヒンといななく馬がいてビビりました。 「今から城まで徒歩で行くのは難しいから乗り物を用意しておいた。お前の家にあったキュウリの精霊馬くんだ」 「これは父と母の乗り物だぞ!」 「今日くらい許してくれるって〜」 ガルはヘラヘラと笑いながら言いました。

2021-06-24 15:07:43
コージ@頭痛 @koji_hunter

「そのドレスとうるつやお肌と精霊馬くんな、今日のきっかり12時に魔法解けちゃうから、それまでに帰ってきたほうがいいぞ。12時に帰れない状況(意味深)ならそれはそれでこちらとしては願ったり叶ったりだけど」 「どういう意味だ?」 ボラの言葉にラーは首を傾げます。

2021-06-24 22:12:49
コージ@頭痛 @koji_hunter

「なんでもないなんでもない。早く精霊馬くんに乗った乗った」 ガルに追い立てられ、ラーは馬上の人となりました。 「では…不肖ラーハル卜、推して参る!」 初めて乗るはずの馬を手足のように操り、ラーは城の舞踏会へと向かいました。

2021-06-24 22:27:15
コージ@頭痛 @koji_hunter

後に残されたガル魔女とボラ魔女はやれやれと肩をコキコキさせながら呟きました。 「これでループ何回めだっけ?」 「たしか…128回…」 「…そろそろ成功して欲しいよなぁ…」

2021-06-24 22:45:58
コージ@頭痛 @koji_hunter

この国の王子様は勇猛果敢な戦士として知られていましたが、数年前の魔王討伐で重傷を負い、今は1日の大半を床の中で過ごしています。そんな王子様をお慰めするため、また結婚相手を探すために、年に1度、お城で舞踏会を開くようになりました。

2021-06-25 14:16:11
コージ@頭痛 @koji_hunter

さて、舞踏会に着いたラーですが、ひたすら料理を食べていました。普段ダィに譲っていた分、やはり飢えていたのです。ダンスに誘う手を威嚇し、1年分をかっこむのに夢中です。ムシャりながらラーは会場の上座に目をやります。一段高くなったそこには王子様の豪奢な椅子がありました。そこは空でした。

2021-06-25 19:21:54
コージ@頭痛 @koji_hunter

ふとラーが時計に目をやると、11:50。ヤバイ、と思い持参したタッパーに料理を詰め込むと、舞踏会を後にして精霊馬くんの元へ走ります。結局ラーは豪華な料理をムシャァしまくっただけでした。長いドレスに慣れないラーは、よりにもよって城の入口の大階段の前でドレスの裾を踏んで蹴つまずきました。

2021-06-25 19:29:16
コージ@頭痛 @koji_hunter

タッパーが宙を舞います。ラーは死を覚悟して目をつぶりました。この高さから落ちたらさすがに死ぬ、俺でも死ぬ、ダィよ…預金通帳は仏壇の裏に隠してある…。 その時、彼を抱き止める細くも力強い腕がありました。 「怪我はないか?」

2021-06-25 23:31:35
コージ@頭痛 @koji_hunter

俺は生きているのか? とラーが目を開けると、まずふわふわの銀髪が目に入りました。そろそろと相手の顔を見ると、ふわふわの銀髪に大理石の肌、孔雀石のような瞳をした青年がラーを見ておりました。ラーの脳に電撃が走りました。一目惚れです。 「やはり怪我をしているのか? 中で手当を…」

2021-06-26 15:24:10
コージ@頭痛 @koji_hunter

青年がそう言ったときに、カチ、と城の大時計が進む音がしました。ばっとラーが時計を仰ぎ見るともうすぐ12時になろうとしていました。ヤバイ。このままだと密着して1週間風呂に入ってない俺に戻る。襤褸よりもそれが問題でした。

2021-06-26 15:39:58
コージ@頭痛 @koji_hunter

ラーは青年を振り解くと、散乱したタッパーを拾い集めましたが、1つ蓋がどこかへ行ってしまいました。しかし蓋を探している時間はありません。ラーは3段飛ばしで階段を駆け降りました。  「あっ、待ってくれ!」 青年はラーを呼び止めようと叫びましたが、ラーの背中はどんどん遠くなるばかりです。

2021-06-26 15:44:50
コージ@頭痛 @koji_hunter

ため息をついた青年の目の端に映るものがありました。タッパーの蓋でした。

2021-06-26 15:47:03
コージ@頭痛 @koji_hunter

翌日、城下町にお触れが出されました。 〈急募〉金髪に紫の肌、目の下に模様あり。蓋に合うタッパーの持ち主。待遇:王子の花嫁。 花嫁と聞いて町はざわつきました。ワンチャン狙った年頃の娘はこぞって肌を紫に染め、オキシドールで髪をブリーチし、マッキーで目の下に思い思いの模様を描きました。

2021-06-30 15:13:38
コージ@頭痛 @koji_hunter

そして、これはと思うタッパーを持参して面接会場に向かいました。 しかし、染めにムラがあってバレてしまったり、目の下の模様が★💧でそれ別のマンガじゃね?だったり、タッパーが合わなかったりして全員不採用になりました。

2021-06-30 16:09:21
コージ@頭痛 @koji_hunter

さて、その頃のラーはというと、あの孔雀石の瞳の人が忘れられずになんだか掃除の手にもやる気が出ません。町中へ行くなんてもってのほかで、騒ぎには気付かないでいました。 ある日、そんなラーの家にやってくる者がおりました。 「こんちはー。ここに紫の肌をした人がいるって聞いたんスけど」

2021-06-30 17:12:10
コージ@頭痛 @koji_hunter

緑の官服を着た少年でした。 「あ!ポプ!」 「ありゃ?ダィの家ここ?」 「そいつは誰だ、ダィ」 「ポプだよ!舞踏会で毎年一緒に踊ってるんだ」 ほうほうとラーは少年を値踏みします。緑の官服は文官ではそこそこの位です。かなり将来有望。王子様とまではいかないまでもやるなダィ、さすが俺の弟。

2021-06-30 22:09:08
コージ@頭痛 @koji_hunter

「えー金髪はOKと。ちょっと失礼しますよっと」 ポプはラーの顔を布で擦りました。 「目の下の模様、天然紫肌もOK…。あんたこれに合うタッパー持ってたりする?」 ポプは懐からタッパーの蓋を取り出しました。 「それ!これの蓋だ!なくてちょっと困っていた!」

2021-07-03 02:22:48
コージ@頭痛 @koji_hunter

「えータッパーの蓋もOK…。あんたちょっと城まで来てくれない?」 「え…?出頭…?」 ラーは怯えました。 「そんな大層なもんじゃねえって。ダィ、お前の兄貴ちょっと借りてくぜ」 「ちゃんと返してね」 「なんか顔が怖いぜ、ダィ…」 弟もまた兄に対してちょっと強火でした。

2021-07-03 02:25:04
コージ@頭痛 @koji_hunter

文官に連れられて城に着くと、城の召使いに引き渡されました。そのままラーは風呂でわしわし洗われ、次の部屋ではいい匂いのする油をすつかり塗られました。ラーは戦慄しました。これ知ってる…昔母さんが聞かせてくれた…俺はこのまま食べられてしまうのだ…。

2021-07-04 22:13:13
コージ@頭痛 @koji_hunter

ラーはその次の部屋でやはりいい匂いのする粉をはたかれ、裾の長い寝巻きを着せられました。そのまた次の部屋には重たいビロードのカーテンのようなものがありました。召使いに勧められ、それをかき分けて中に入ると、ベッドの上にあの孔雀石の人がいました。手にナイフを持っています。

2021-07-04 22:31:16
コージ@頭痛 @koji_hunter

ラーは、俺はあのナイフで切り分けられて食われるのだ…とその場に崩れ落ちました。 「きみはあの時の…!?なぜここに…!?ど…どうしたんだ!?」王子様はラーに駆け寄ろうとしましたが、咳き込んでそれは叶いませんでした。 「そのナイフで俺を切り刻んで食うんだろう…?」

2021-07-04 23:01:37
コージ@頭痛 @koji_hunter

「食わない!いや最終的に別の意味で食うかもしれないが今は食わない!それよりもきみはどうしてここに…その格好は…?」 王子様は手入れをしていた愛用のナイフをベッドの横のテーブルに置くと、テーブルの上にあったベルをけたたましく鳴らしました。

2021-07-05 22:43:14
コージ@頭痛 @koji_hunter

「はいはい王子様なんでございましょう」 目玉の半分飛び出たゾンビの従者がやってきました。 「モルグ!これはどういうことだ!」 「王子様が先日の人をご所望だというので」 「だからといってこんな野蛮な真似を…それに俺は話がしたいと言っただけだ!」 「話だけで済みますかな?」

2021-07-05 22:49:19
コージ@頭痛 @koji_hunter

「モルグ!いいからこの方に上着と椅子と温かい飲み物を!」 「王子様がベッドで暖めて差し上げれば良いですのに」 「モ!ル!グ!!!!」 「はいはい仰せのままに。もーうちの王子様ってば奥手なんだから」 ほどなく椅子とふかふかのガウンと、温かいココアがふたつ運ばれてきました。

2021-07-06 22:46:22
コージ@頭痛 @koji_hunter

ラーが椅子に腰掛けてココアでひと心地着くのを見計らって、王子様は飲んでいたカップをソーサーの上に置いて口を開きました。 「俺は匕ュンケルという。良ければヒュンと呼んでくれ」 「ヒュン」 王子様改めヒュンは想い人に名を呼ばれた喜びに思わず笑みをこぼしました。

2021-07-06 23:06:47
コージ@頭痛 @koji_hunter

「よければきみの名前も聞かせてくれないか」 「ラーハル卜だ。検索よけにラーと呼ばれている」 「ラー」 ヒュンは愛しい人の名前を嬉しそうに呼ぶと、一転、肩を落としました。 「本当に従者がこんな真似をしてすまなかった。ただもう一度きみと会って、話してみたかっただけなんだ…」

2021-07-21 20:23:35
コージ@頭痛 @koji_hunter

ヒュンは耳まで真っ赤にして言いました。 「信じてもらえないかもしれないが…ひ…一目惚れなんだ…」 「…奇遇だな。俺もだ」 同じく耳の先を染めながらラーがそう言うと、ヒュンはぱあっと顔を明るくしました。 「そうか。両想いというやつだな!」 ヒュンはもじもじしながら言いました。

2021-08-05 18:26:58
コージ@頭痛 @koji_hunter

「その…お互いを知るために、まずは交換日記から…」 「本当に奥手なんだな…」 ラーももじもじしながら言いました。 「あの、そろそろ俺の服を返してもらえないだろうか…」 「もちろん綺麗に洗ってお返しする」 「いやあのそうじゃなくてだな、下着を…」 「えっ今ノーパンなのか!?」

2021-08-05 18:29:21
コージ@頭痛 @koji_hunter

ヒュンの瞳孔がカッと開きました。 「そうだが…」 ラーが答えるが早いか、ヒュンはラーを腕を掴むと、病床とは思えないほど強い力でラーをベッドに引きずりこみました。 「ま、待て!今は食わないんじゃなかったのか!?」 「据え膳食わねばなんとやらだ!」 「バカ!やめろ!バカ!」

2021-08-15 21:42:49
コージ@頭痛 @koji_hunter

ヒュンはラーの夜着の裾をめくりました。そうしてラーの茂みに顔を近づけると…… 枕元に生けてあった椿の花がぽとりと落ちました。

2021-08-15 21:47:14
コージ@頭痛 @koji_hunter

翌朝のことです。 ラーはなぜか裸でヒュンの頭をぽかすかと叩いています。 「バカ!このバカ!食べないって言ったのに!!バカ!!」 「すまない!ほんとうにすまない!興奮してしまって…」 額をこすりつけて謝るヒュン王子もなぜか裸です。何があったのでしょうか。 「バカバカ!!」

2021-08-16 20:31:11
コージ@頭痛 @koji_hunter

両親の墓前に“結婚するまで貞操は守り抜く”と誓ったラーは面目丸潰れでした。 「交換日記なんて絶対しないからな!」 ラーがそう叫ぶと、ヒュンは叱られた仔犬のようにきゅうと鳴きながら小さくなりました。 「交換日記…してくれないのか…そうだよな…」

2021-08-16 20:32:37
コージ@頭痛 @koji_hunter

あまりにヒュンがしょげるので、ラーはヒュンのふわふわの髪を撫でながら言いました。 「まあ…交換日記くらいなら…」 「してくれるのか!」 ヒュンはぱっと顔を上げてラーの手に頬を擦り寄せました。

2021-08-17 20:20:00
コージ@頭痛 @koji_hunter

「交換日記が好きだなぁ…」 「憧れだったんだ!好きな人と交換日記!」 「はいはい王子様ノートをお持ちしましたよ〜。キャンパスとムジルシどっちがお好みですかな?」 「モルグは!下がって!いろ!!!!」

2021-08-17 20:23:26
コージ@頭痛 @koji_hunter

いっぽうその頃ラーの家では。 「ばかばかばかばかポプのばか!兄さんちゃんと返してって言ったのに!!」 「おれじゃなくて王子サンに言ってくれよぉ」 「ばか!責任とってポプおれと結婚して!!」 「えっ!?ま、まぁ…いいけどよ」 「やったぁ!」 弟のダィは棚ぼたでした。

2021-09-01 21:59:57
コージ@頭痛 @koji_hunter

そしてフェアリ〜・ゴッドブラザーズといえば。 「やー、やっとループ地獄が終わったな!これで俺はまたルードと一緒だぜ!ボラ、お前は?」 「北極で静かに暮らしたい」 「あっそう…」

2021-09-01 22:01:15
コージ@頭痛 @koji_hunter

そして、交換日記(キャンパス)が3冊終わる頃、王子様ご結婚の報が城下町に流れました。めでたしめでたし。 <ラーデレラ・完>

2021-09-01 22:02:10
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まとめたひと
コージ@頭痛 @koji_hunter

BLGLHL同軸リバ男性妊娠成人腐。ジャムプ。橙ラーとヒュ、HHヒソとクロ。早バレと学級会が嫌。アニメマンガのスクショを載せる方はごめんなさい。マシマロmarshmallow-qa.com/koji_hunter