昭和30年代の半ばまで、といった頃の話らしい。とある船が門司を出航してまもなく、船尾からガタンゴトンという異音が聞こえだした。どうもこの音、舵のあたりからするようだ。
2021-06-27 22:52:34調べてみると、ラダーポスト(舵柱)の上のブッシュにガタがあるらしい。太平洋を渡ってバンクーバーに着いたところで、機関部が鍛冶作業で修理した。これでよし、と復航で日本に向かったところ、十日を経ずして再び異音がし始めた。
2021-06-27 22:57:27ラダートランクを開けると、先のブッシュは跡形もなく流れ去り、隙間から吹き上がる海水の中でラダーポストがガタガタ揺れている。時は1月、荒れる北太平洋の冷たい海水の中で、木と金具を使った固定作業が始まった。
2021-06-27 22:59:45ラダーポストには亀裂が入って、動揺に合わせて生き物のように動いている。それだけならまだしも、傷はだんだん深くなって、次第に口を開けてくる。幸いにして積み荷固定用の角材が大量にあったので、材料には困らなかった。補強作業はどうやら無事に終わり、本船は再び日本に入港できた。
2021-06-27 23:03:37本船の名は第十六多聞丸(八馬汽船)。一見して分かるとおり(?)、戦時標準船2A改である。 pic.twitter.com/7RbvpXaXrH
2021-06-27 23:05:07この逸話から10年ほどさかのぼった同船の姿。七尾港で終戦直前の8月13日に触雷沈没している。 google.co.jp/maps/@37.11234… pic.twitter.com/9IhXZgwfKs
2021-06-27 23:06:49修理不可能とも見られていたが1949(昭和24)年7月、真っ二つになりかけていたのを二つに切り離し、舞鶴まで曳航して繋ぎなおした記録が残っている。 jstage.jst.go.jp/article/kansai… pic.twitter.com/je6wy1k563
2021-06-27 23:07:57修理後にAB船級を取得して臨んだ処女航海、バシー海峡で漂流して曳航され、その後北米からの復航途上にアリューシャン沖で主機関の故障を起こし、洋上で主機解放をする羽目になって10日余を漂流する羽目になっている。
2021-06-27 23:11:47本船がようやくお役御免となったのは1962(昭和37)年7月、翌63年に解体されている。 searcharchives.vancouver.ca/s-s-tamon-maru… pic.twitter.com/WnAB4Q8Yqc
2021-06-27 23:13:34