ニンゲンの弟がいるおうちねこのニャーハルトさん🐈‍⬛
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コージ@頭痛 @koji_hunter

ニンゲンの弟がいるおうちねこのニャーハルトさん🐈‍⬛

2023-09-04 14:16:30
コージ@頭痛 @koji_hunter

弟の名前はディ−ノ。やっとハイハイできるようになり、ニャーハルトさんはカギしっぽでよく遊んであげている。

2023-09-04 14:23:03
コージ@頭痛 @koji_hunter

おうちねこのニャーハルトさんはほんの幼い頃に実母と死に別れ、バラソア夫妻のお家の庭で風邪をひいてぐったりしているところを保護された。それ以降、ニャーハルトさんは夫妻に育てられることになり、夫妻を父母と慕い穏やかに暮らしている。

2023-09-04 20:29:03
コージ@頭痛 @koji_hunter

日に日にお腹が大きくなっていく母の姿に、母さん太ったなあ、と呑気に構えていたニャーハルトさん。ある日、母さんが真っ青な顔でうずくまり、父さんに電話をかけていた。ニャーハルトさんは母の周りでウロウロすることしかできなかった。血相を変えた父が帰ってきて車に母を乗せて飛び出して行った。

2023-09-04 20:35:18
コージ@頭痛 @koji_hunter

数日後、父と母は何かを抱えて帰ってきた。「ハルちゃん、弟のディ−ノよ。仲良くしてあげてね」そう言った母に見せられたのはなにやらふにゃふにゃで弱そうな生き物。こんなにふにゃふにゃな生き物は俺の手で守ってやらなねばならない。ニャーハルトさんが決意した瞬間だった。

2023-09-04 20:38:17
コージ@頭痛 @koji_hunter

赤さんのディ−ノくんが口にタオルを詰め込んで目を白黒させていたときには、急いでキッチンの母を呼びに行った。ソア母さんは真っ青になって悲鳴を上げて、タオルを引き抜いた。ディ−ノくんの泣き声の中で、母はニャーハルトさんを抱きしめ、「ありがとう、ありがとうハルちゃん」と泣いた。

2023-09-05 21:28:41
コージ@頭痛 @koji_hunter

ニャーハルトさんは家出をした。年に1回、誕生日の時だけに食べられるねこ用ケーキを、乳児のディノくんがぐちゃぐちゃにしてしまったからだ。「また買ってあげるから」父と母はそう言ったが、ケーキとは誕生日に食べることに意義があるのだ。ニャーハルトさんは人知れず枕を濡らした。

2023-09-13 13:20:01
コージ@頭痛 @koji_hunter

ディノくんはしっぽを掴むしニャーハルトさんのおもちゃを取り上げるし、ニャーハルトさんは我慢の限界だった。ある日母が玄関先で宅配便の対応をしている横からスルリとドアを抜けて外に出た。部屋と廊下を隔てるバリケードも、本気のニャーハルトさんの前では無意味なのだ。

2023-09-13 13:27:09
コージ@頭痛 @koji_hunter

ニャーハルトは夜の闇の中を走った。家族の声を振り切るように走った。やがて雨がぽつりぽつりと鼻先を濡らしたが、走って走って走り続けた。どれくらい走っただろうか。本降りになった雨を避けるために近くの茂みに入り込み。ブルブルと体を揺らして水を払った。 「誰だ」 茂みの奥から声がした。

2023-09-16 16:00:18
コージ@頭痛 @koji_hunter

現れたのはしなやかな肢体をした白いねこだった。そとねこだというのに、その毛皮は真っ白で汚れひとつない。 「誰だ。ここは俺の寝床だ」 白いねこは再びそう尋ねた。 「俺はニャーハルトだ。お前は?」 「ニャンケル」 ニャンケルはニャーハルトをひと通り眺めて言った。 「お前、おうちねこか」

2023-09-16 19:10:03
コージ@頭痛 @koji_hunter

「な…なぜ分かった…」 じりじりとニャーハルトは後退った。 「そういうところだ。おうちねこは隙が多い」 ニャンケルの痛烈なひと言にニャーハルトはうつむいた。 「迷いねこなら朝になったら家を探すのを手伝ってやる。家出ねこなら今すぐ帰れ」 「俺は…俺は帰らない…!」 「家出のほうか…」

2023-09-21 14:10:50
コージ@頭痛 @koji_hunter

「帰れ!」 「いやだ!」 「帰れ!!」 「いやだ!!」 「なぜだ!?」 「なぜって!!」 ニャーハルトは悲鳴のような声をあげた。 「父さんと母さんは弟にかかりきりだし弟は俺のヒゲも耳もしっぽも引っ張るしおもちゃは壊すしケーキはぐちゃぐちゃにするしそういうところぜんぶぜんぶぜんぶだ!!」

2023-09-27 13:12:12
コージ@頭痛 @koji_hunter

ニャーハルトはひと息でそう叫ぶと、一転がっくりと肩を落とした。 「俺はもう…いらないんだ…」 ニャーハルトの話を黙って聞いていたニャンケルがぽつんとつぶやいた。 「そうか、お前、寂しかったんだな」 その言葉を聞いた瞬間、ニャーハルトの目から水がこぼれた。

2023-09-30 16:04:35
コージ@頭痛 @koji_hunter

「にゃあ…ふにゃ…」 水があとからあとから出てきて拭っても間に合わない。 「んにゃあー!ナァー!フニャッ!にゃあー!」 ニャーハルトは目を拭うのをやめ、声を上げて泣き始めた。 そうだ、俺は、寂しかったんだ。 慰めるようにニャーハルトの肩をさり…さり…と撫でる舌の感触が心地よかった。

2023-09-30 21:04:11
コージ@頭痛 @koji_hunter

差し込む太陽の光で目が覚めた。 「起きたか」 ニャーハルトが顔を洗っていると、ニャンケルが茂みの奥からやってきた。 「朝食を獲ってきた。大サービスだ」 どさりとニャーハルトの足元に投げられたのは、ニンゲンの食べ残しの魚の頭とネズミだった。ギョッとしてニャーハルトは後退った。

2023-10-02 17:12:30
コージ@頭痛 @koji_hunter

「そとねこになるとはこういうものを食べるということだ」 そう言うとニャンケルはネズミにかぶりついた。ニャーハルトは魚の頭をもそもそと口にした。思えばニャーハルトは生まれてこのかた実母の乳とカリカリしか食べたことがなかった。 「帰る決心はついたな?」 沈黙がニャーハルトの答えだった。

2023-10-02 17:18:20
コージ@頭痛 @koji_hunter

「ここらにはわるいねこがいるから途中まで送ってやる」とついてきたニャンケルは優しくていいねこだと思う。 にひきでねこねこ歩いていると、公園の茂みをガサガサと調べているニンゲンがいた。ニャーハルトの父だった。 父はびしょぬれでいつもの威厳のある姿から想像できないほど憔悴しきっていた。

2023-10-05 20:52:42
コージ@頭痛 @koji_hunter

“ねこねこ”はねこが歩くときの擬音です。“どんぶらこどんぶらこ”と似たようなやつです。

2023-10-05 20:54:49
コージ@頭痛 @koji_hunter

「父さん!」 思わずそう叫んで駆け出した。こちらに気付いた父にみるみるうちに顔色が戻ってくる。 「ハルト!」 両手を広げた父の胸に飛び込んだ。父はニャーハルトを強く抱きしめた。ぽつりぽつりとニャーハルトの上から水が降ってきた。涙だった。

2023-10-06 20:47:42
コージ@頭痛 @koji_hunter

ニャーハルトは父が泣くところを初めて見た。 「すまない…お前が我慢強いことに私たちは甘えて…本当に、本当にすまない…」 父はニャーハルトの目を真っ直ぐに見た。 「一緒に帰ってくれるか…?」 ニャーハルトは父の顔をペロリと舐めた。それが答えだった。 「ありがとう…ありがとうハルト…」

2023-10-06 20:48:52
コージ@頭痛 @koji_hunter

さらにきつく抱きしめられた腕越しに振り返ると、もう白いねこの姿はなかった。 お礼も言えていない。 また会えるだろうか。 ……また、会いたい。

2023-10-07 12:17:58
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まとめたひと
コージ@頭痛 @koji_hunter

BLGLHL同軸リバ男性妊娠成人腐。ジャムプ。橙ラーとヒュ、HHヒソとクロ。早バレと学級会が嫌。アニメマンガのスクショを載せる方はごめんなさい。マシマロmarshmallow-qa.com/koji_hunter