第60回深夜の真剣140字60分一本勝負

王子@第一種怠惰無責任者 @ojitw

僕はリュウグウノツカイ。不老不死研究のため人に飼われている。仲間がカルフォルニアのビーチで打ち上げられたらしい。僕の知らない、海底の静寂、暗闇、潮流、塩の味。彼が陸で見た走馬灯は、深海魚の終幕を彩るに相応しい、幸せな群青色に煌めいていただろうか。僕はただ、今日も培養液の海を泳ぐ。

RAY/※※※ @growler_ray

「そ…それ、本当なの…？」 ふふ、食いついた。「私は深海魚みたいに根暗で日陰者で容姿も醜い…」なんて言ってたあの子が、ついに食いついた。 「…知りたい？」 覚悟しなさい、私は根気強いの。食いついた以上、あなたがどれほどの深海にいようと必ずこの手で釣り上げてみせるんだからね！

花滝ちかる @chikaru_toka

純粋培養の少女は、無防備に俺に懐いた。 「懐いたんじゃないわ！貴方に恋をしたの」 ふくれた彼女に俺は苦笑した。 「俺は、怖い男だよ」 「怖くないわ。だって、貴方の目はとても澄んでいて綺麗だもの」 綺麗なのはお前だ。汚したくないと思うのに、彼女にくちづけた俺も恋に落ちたか。 #140字小説

悠井すみれ @Veilchenfeld

培養した深海魚を展示する水槽です。環境を再現して、岩場なんかを作ってやって。生きたのを捕まえるのは難しいですからね。もちろん人口の箱庭なんですが、それなりに生態系ができてるかと。 今横切ったのは――人魚、みたいですよねえ。入れた記憶も記録もないんですが。いつの間にか、いたんですよ。

竜虎 @btbticc_org

フラスコの中、赤い培地の海で細胞が育っていた。スクレイパーで優しく擦ってやれば、フラスコの壁面から細胞がほろほろと剥がれ落ちていく。「細胞っていうから、皮膚みたいなのを想像してたんすけど」「そんなもん三日で育つか」この何も知らない後輩を育てあげるのは、細胞の培養よりも難しそうだ。

にゃん @nyan_kotonoha

目の前の展示用の水槽。深海魚か何か知らないが、綺麗な魚だ。でも、連日イベントで人間に見られて、こんな中で培養みたいに飼われて本当に幸せなのか。珍しく真剣に考えかけたが、注文した物が届いたのを見て、やめた。カルフォルニア巻と迷った末に普通の寿司を頼んでおいて、魚の心配もないもんだ。 pic.twitter.com/tMaIL08uPx

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宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

報告。 カリフォルニア沖で捕獲された極秘検体である深海人魚が、補助した職員と共に逃走。 両名の拿捕は特別重要事項に区分されました。 人魚の涙から抽出後に培養される大型真珠は当施設の重要な財源です。 両名を補助する職員が後を断ちませんが、該当職員は…… #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/KEBFuPDMgG

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掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

遺灰を海に撒いたのは、彼の最期の願いだからだ。潮風に吹かれ、手元を離れていく彼を見ながら、私は少し涙ぐむ。彼は深海に行きたいと話していたが、今ならきっと行けるだろう。でも、私は行けそうにないから、せめて深海魚になって、たまには逢いに来てほしいと思う。私は、ずっと待っているから。

掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

病室から彼を盗んだ私は、さっそく彼を培養した。部屋に置かれた培養槽の全てに、培養した彼が一人ずつ沈んでいる。その中から比較的よく出来た彼を取り出した私は、勢いよく彼を刺し殺す。私は、彼に復讐するためだけに生きてきた。だから彼を造る。何度でも彼を殺し、私が生きる意味を作るために。

つぶあんぱん @2222anpan

#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) ①カルフォルニア ②培養 ③深海魚 pic.twitter.com/IgiQNHlovh

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鴉月 @UZUKI_inisie

人を見て学べ 同じような事をしろと言われても、私は彼らじゃないから上手くできない 『深海魚』 #言ノ葉箱庭 #深夜の真剣140字60分一本勝負 【 @140onewrite 】 pic.twitter.com/1mu99ZdnHh

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秋月蓮華 @akirenge

魚の培養技術があれば魚が沢山食えると誰かが言った。 「なんで培養した魚が深海魚なんだよ」 俺は大学の一室に魚料理を並べる助教授の姉に聴いた。 「Ｒｏｍａｎよ」 作られた料理食べるのは俺と他のゼミ生。 「これは」 「カルフォルニアロール」 俺は言う。 「違うだろ。これただの海苔巻き！？」