同僚パイロットの晴道、空港ですれ違う度に愛想笑い浮かべて👎ってやり合うくらい仲悪いところからスタートしてほしい 先輩パイロットに長様もいるよ 顕殿は管制室勤務かなぁ
2021-06-03 13:52:17晴殿は海外線あしやは国内線メインに搭乗してたらいいな あまり会わないけどたまにすれ違った時にバチバチしてほしい 誰にでもいい顔するあしやが唯一👎ってする相手が晴殿 晴殿も他人に興味無いけどあしやにだけは感情むき出しにして👎ってする CA鬼さんがそんな二人を見てかんらからからって笑ってる
2021-06-03 14:29:15疲れた身体を引きずってようやく長いフライトが終わり明日は休み その休みはきっと寝て終わるだろうと思いながらもそれはそれでいいと思う ロッカーで制服を脱ぎ私服へと着替えていれば見知った姿が目に入る 嫌でも目に入るその黒と白の髪とでかい身体 そしてどこか色気を含んだその姿にため息が出る
2021-06-03 14:42:27その溜め息が聞こえたのかその人物はこちらに視線を向ける 心底嫌そうな顔、それはこちらも同じだけれど 「おや、あなたも今お帰りで?」 「えぇ、おまえもですか」 「ンンン、まだ余力はあるんですが本日の儂の役目は終わりましたので、ええ」 余力があるとは羨ましいですねと心底思う
2021-06-03 14:42:27こちらはもうさっさと帰って寝たいくらい疲弊しているのだから 「おまえも海外線に乗れば良いのに」 「え、嫌です」 「国内線では体力が余るのでしょう?海外線なら疲弊するくらいまで飛べますよ」 「あなたが国内線メインになるのなら考えます」 あぁ、そういうことか私がいるから海外線は嫌だと
2021-06-03 14:42:27何となく腹立った、自分でもこの感情はよく分からない 「晴明殿は明日はオフで?」 「ええ、おまえは?」 「儂は明日もフライトがあります」 着替えが終わるとロッカーをパタリと閉めて荷物を持つと彼はではお先にと帰っていった 「私もたまには国内線乗りたいですね…」
2021-06-03 14:42:28だがしかし国際線の方が稼げるのは確かだ 時差ボケとの戦いはあるもののフライト時間を稼げるのでまぁまぁ休みも多い 「はぁ……あれもオフだったら飲みに誘おうかと思ったんですけどね」 初めて会った時彼とは気が合うことは無いと瞬時に思った相手もそれを思ったのか私と彼は社内でも有名なくらい
2021-06-03 14:55:12仲が悪いと言われるようになった 初めてだった、こんなにも他人に感情を動かされるのは そして楽しかった、彼とフライトについて語る時間が 気付いた時にはもう手遅れなところに来ていて 思わず告白したのは先月の話だ 「やっぱり私も国内線メインにしようかな……」 すれ違うスケジュールのせいで
2021-06-03 14:55:12アプローチも出来やしない スーパーで買った缶ビールを持ちながらソファーに寝転ぶ スマホのどこを探しても彼の連絡先はない 「段々腹立ってきましたね…こんなにも優良物件の私を受け入れないんだあいつは」 ぐいっとビールを飲み干して空き缶をそのままテーブルに放置して寝室のベッドへとダイブした
2021-06-03 14:55:13誰にも興味ありませんみたいな澄ました顔が何となく気に入らなかったけど気付けば目で追っていて 愛想の良さには自信がある自分がこうも悪態つける相手がいるのかと驚いた国際線メインにフライトをする彼と国内線メインの自分とはスケジュールの違いもあり重なることはあまりない それでも空港で
2021-06-03 17:00:42すれ違えば互いに悪態をついていた 唯一彼と話が合うのはフライトの話だけだった この関係がとても心地よいなど、決して言わないが 「おまえが好きです、私と付き合ってください」 そう想いを告げられたのはひと月ほど前 なんの冗談かと思ったが彼の瞳は真剣で 思わず 「振り向かせてごらんなさい」
2021-06-03 17:00:42なんて言ってしまった 素直になれない自分にがっくりと項垂れて自宅のベッドに潜り込んだのは記憶に新しい それから彼とはすれ違うだけでまともに話せず宙ぶらりんの関係だ 「というかあれは儂を振り向かせる気あるんですかね」 なんで自分ばかりがあれのことを気にかけなければならないのかと
2021-06-03 17:00:43段々と腹が立って来て 明日のフライトが終わればオフだから顕殿でも誘って飲みに行こう そう心に決めてアラームをセットする 「そういえば儂は彼奴の連絡先すら知らないんでしたな」 告ってきたなら連絡先くらい寄越せ莫迦と思いながら今度こそ目を閉じた
2021-06-03 17:00:43昨日は飲みすぎた 痛む頭をおさえながらキッチンで水を飲む 窓から見える空は快晴でフライト日和だ 小さく浮かぶ機体を見つめて今頃あれは空の上だろうかだなんて考えながらスマホを弄る 確か明日はオフだと言っていたから夜に食事にでも誘うととある人物に連絡をする 「あ、もしもし…」
2021-06-03 18:44:29今日のフライトを終えて着替えを済ませる その足で管制室に向かおうとする途中にオフであろう男が目の前にいた 「お疲れ様」 「晴、何故ここに?」 「おまえスマホ見てないね」 「はて?」 呆れたような彼奴の言葉にスマホを確認すれば鬼さんからのLINE、だがどう見ても文面がいつもと違う
2021-06-03 18:44:29「おまえの連絡先、知らなかったから鬼さんに頼んで送ってもらった」 少し恥ずかしそうに視線を逸らしながら言う 文面には今夜のおまえの予定を私にくださいの一言 「は〜〜〜……なってませんねぇ他人を介して誘うなど」 「な!?私だって本当は直接っ」 「今なら直接誘えますぞ?」
2021-06-03 18:44:29他人を介してではなく彼奴の口から直接聞きたい、なんて めんどくさい彼女かと思う 「あ……あの、今夜おまえの予定を、私に、くれる、かい?」 「ふふ、仕方ありませんなぁ」 顕殿をお誘いするのはまたにして今日はこの真っ赤な顔したクソ優秀パイロットの誘いに乗ってあげるとしましょう
2021-06-03 18:44:30夢心地、まさに夢心地だ フライトの準備をしながら昨日の出来事を思い出す 2人きりで、いつもの嫌味の応酬などもなく今日のフライトでどこに行ったとか国内線は滞在時間が短いとかそんな話をした あの子はとても愛らしく笑う子だった その笑みにまた、惚れ直してしまった 「ご機嫌だな晴」
2021-06-03 18:57:39「分かります?」 「気色悪いほどだ」 機長を務める長さんが眉を寄せて言うがそんなことも気にならないくらい私は夢心地 「愛らしい子の連絡先を手に入れたんです」 スマホの連絡帳の1番上にある名前を指でなぞる これでいつでも連絡できる 「それは良いが、フライトに集中しろ」 「ええ、もちろん!」
2021-06-03 18:57:39「何だか嬉しそうだね」 顕殿の言葉にハッとする無意識にスマホの画面を撫でていたようだ 「そう、ですかな?」 「道もとうとう親離れか〜」 顕殿は1口コーヒーを飲むとけらけらと笑った 「ま、まだ付き合ってるわけでは」 「そうなの?好きあっているのに?」 「そういう顕殿は長殿とは?」
2021-06-03 21:22:01「あれと私はそういうんじゃないってば!」 ただの従兄弟だよって顔を真っ赤にしながら言うからなんとも可愛い この人には昔から世話になっている 親を早くに亡くした儂を助けてくれていた 「儂としては顕殿にも早く春が来てほしいのですが」 「そういうのはちゃんと晴くんと恋人になってから言って」
2021-06-03 21:22:01はむっとホットサンドを頬張る姿に年上だが愛らしさを感じる ほっこりとしていればスマホが震える 画面を見れば彼奴からのLINE どうやらフライトを終えたようだ 「晴くんでしょ」 「え、えぇなぜわかったのです?」 「だって」 道、幸せそうな顔してるから そう言われて顔が熱くなった
2021-06-03 21:22:01国際線のパイロットに欠員が出た そう晴に聞かされたのは3日ほど前の事 長さんにおまえの事を推薦しておいたなど勝手を言いやがったと知ったのも3日ほど前の事だった 「全く乗ったことがないわけじゃないでしょう?」 「ええ、まぁ……」 「なら問題ありません、それに機長は私ですし」
2021-06-03 21:51:36キシリと胸が軋む 同期であるはずなのに此奴はいつもそうだったいつも自分の前を歩く 素直に気持ちに応えず、吐露出来ないのはきっと此奴への嫉妬心が強いから 「おまえと共にフライト出来るの、実は結構夢だったんですよね」 「………左様で」 儂は国際線のパイロットとしてフライトすることになった
2021-06-03 21:51:37機長晴、自分は副操縦士で搭乗する日がやってきた 国際線に乗るのは初めてではないが少しばかり緊張する 「珍しい、緊張してるのかい」 「ま、まぁ」 「大丈夫、おまえならしっかりやれる行っておいで道」 ぽんと顕殿に背中を押され頷き機内へと向かえば晴が笑みを浮かべて振り返る
2021-06-04 12:15:10「こんなにも心躍るフライトは初めて乗った時以来だ」 「よろしくお願いいたします機長殿」 あぁ、なんて自分は嫌な奴だろう いつもなら大好きな笑顔が 今はとても憎らしい 「向こうに着いたら、1度話をしよう」 「……そうですね」 フライトの時間がやってくる オペレーターが繋がると
2021-06-04 12:15:10晴はもうパイロットの顔だ 自分もしっかりしなくてはと機長である晴をフォローする ゆっくりと機体は空へと向かう あとは無事にお客様を目的地までお連れするだけだ 「ふぅ、久しぶりに緊張しました」 「あなたでも緊張するんですね」 「そりゃしますよ、好きな人が隣に乗ってるなら尚更ね」
2021-06-04 12:15:11改めて言われればかっと顔が赤くなる 「ほ、ほらしっかりフライトに集中しなされ機長殿!」 「はは、ラジャー」 自分達が乗る飛行機はどこまでも続く空を進んでいく
2021-06-04 12:15:11同じスケジュールであったこともあり道とオフが重なった デート名目で食事に誘えば了承の答えを貰えた 「真面目にファッションセンス磨くんだった」 仕事はだいたい制服だし通勤は車なので簡単な服しか着ていない こういう時に着ていく服がないというかオシャレが分からない 「道はオシャレそうだな」
2021-06-06 20:42:05ロッカーで私服の彼とすれ違うこともあったが私服はオシャレだったような気がする こうなったらもう背に腹はかえられぬ 「それで儂に全身コーデをしてほしいと」 「はい!」 「何もかも完璧なあなたにも、苦手なことはあるのですね」 くふふっと笑う道に心臓がぎゅっとした
2021-06-06 20:42:05