意識の低い就活生の会合

意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

…帰りてー。まだ終わんねぇのか。 爆音にイライラする。ちびちび飲んでいた酒(クソ高い。ぼったくりもいいとこ)も残り僅か。就活etcの帰りに寄ってやったからフロアの隅にいてもスーツで浮きまくりだ。クソッ… クラブなんか来んじゃなかった！

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「カズヤお疲れー♡」「ヤバ盛り上がったー！」 原の演奏？が終わるやいなや7,8人の女がステージに群がっていく。原ってマジでモテてたのか。マジかよ… 今オレはSEKAI NO OWARIを見た。呆気にとられて声をかけるタイミングを逃した。出直すか。残りの酒を一気に煽った。

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空のグラスはどーすりゃいいんだ。キョロキョロしていると肩を叩かれた。 「どしたの、一人？ 一緒に踊ろ？」 「もう帰るところなので…って、原！」 「なんちって。ステージから花宮見えて驚いてMIXミスったわw」 原は取り巻きを追い払いながら流れるようにオレのグラスをスタッフに渡した。

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「折角だし一曲踊ってこ？」 原に肩を抱かれフロアの中心へ連れていかれる。 「は？ この格好で？」 「スーツのがモテっからおkおk。オレも就活中よくスーツで来てたし。そしたら、もっと良いの買ってあげるって新しいの貰っちったw 花宮はオッサンに買わせたんだっけ？」 「うるせぇ。死ね」

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原は楽しそうに周囲と目配せしているが、冷やかすような視線が居心地悪ぃ。 「オレ踊れねぇよ」 「大丈夫ダイジョブ、振り付けとかないし。リズムにのってテキトーに腰ふって。そ、そ。上手上手」 音楽が盛り上がったところで肩を引き寄せられた。原の顔が耳元に近づいてくる。 「オレに合わせて」

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「マジどしたの。オレのプレイ見に来てくれたってわけじゃなさそーだけど」 「…話したいことあって」 「何？聞こえなーい」 コイツ女にも同じことやってんだろ。原のパーカーの紐を引っ張る。 「お前と話したくて！ あークソ！ うるせーから静かなとこ行こうぜ」 「ヒュー積極的ィ」 「死ね」

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やっとバカの密集地から出られた。火照った体を夜風が冷やす。 「どっか入ってもいいけど、もう11時だし終電ヤバいっしょ。花宮、明日予定ある？」 「…特に」 「ウチおいでよ、こっから近いし」 コイツ普段女にも(以下略 「……(ゴミを見る目)」 「んな顔しないでよw 何もしないってw」

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「座って。髪乾かしたげるよ。オレけっこー上手いんだわw」 お前それ女にも(以下略。原の指が地肌を撫でる。ふはー。気持ち良くて何もかもどーでも良くなってきた。就活も将来も今もヤマもあの人も。このオレも出した舌を巻くほどのテイクアウトスキルだ。会ったその日に足開く女がいるのも頷ける。

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@8 「髪w伸びて良かったねw」 「次その話題に触れたら殺す」

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おしまい、と原はドライヤーの電源を切った。ワンルームから音が消えた。 「アイツがいなくなって、もう一ヶ月だ」togetter.com/li/769292 「ベッドサイドで他のオトコの話〜？」 「原」 「んな顔しないでよ。…ジッサイもっと前からっしょ」 「…うん。今更な話だが、」

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togetter.com/li/784029 「どう思う」 原は風船ガムを口に放り込んだ。 「花宮をウザいと思うかな」 「・・・は？」 オレが？ ウザい？ 「ザキは自分で出てった。ほっときなって」 「何言ってんだ、お前が一番…」 「ザキと親しかったって？ 花宮、頭ダイジョブ？」

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「優秀だった脳みそ、知らない間にババロアにでもすり変えられちゃったんじゃないのー？」 ふはっ、甘ったるいもん飲みすぎたか。思考が余剰な糖に侵食される。動作が重い。 「その友情ゴッコはいったい誰に習ったの、リーダー？」

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「いいね。朝、何事も無かったようにネクタイ締めて出てくの。そそる」 外から原が一本勧めてきたがムシして着替えを続行した。 「ヘンタイ。死ね」 ぴしゃりとベランダの戸を閉める。 「４回も死ねないよ〜w…って花宮？ ちょw 開けて！ 自分家のベランダに閉じ込められるとかマジないわw」

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「もいーじゃん。花宮もイジられキャラが板に付いてきたし。高校の頃は花宮からかうとか考えられなかったもんねー。あんなにツッコミどころ満載なのに」 「最後のセリフは聞かなかったことにしてやる。カンシャシロハラ」 オレは山崎の穴を埋めていた？んなワケねぇだろ。 「変わっても回ってくよ」

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背後から原が玄関の戸を開ける。 「それでも気になんなら、このコんとこ行くといいよ。イロイロ知ってると思う」 原はスウェットのポケットから桃色の名刺を取り出した。“メイ”とだけ書かれている。 「コレ、キャバクラ…？」 「アレ、花宮キャバ行ったことない？ なら一緒に行ったげよっか？」

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「勘違いすんなバカ！ オレはキャバクラくれぇいくらでも行ったことあんだよ!!」 原ん家のドアを乱暴に閉めた。 クソッ！ クラブの次はキャバクラかよ！

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キャバクラ　初めて　[検索] 初めての接客…って、違ぇよ！ オレが働くんじゃねぇよ、バァカ！ キャバクラ　入店　流れ　[検索] 体験入店？って何だ？ レッスン…って、だからオレが働くんじゃねぇよ!!

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服は…とりあえずスーツでいいよな。ヒゲ(ほとんど無いけど)も剃ったし、ハンカチも持った。金も持った。名刺も持った。連絡先を交換しやすいようBluetoothで送受信できるAppもDL済だ。よし…大丈夫だ。何も問題ない。大丈夫…あー。クソッ！ やっぱ原に付いてこさせりゃ良かったか。

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つ０あwけだ、cじょいキャバクエアいてtくるわ。 >>twitter.com/Entry2Hurt/lis…

意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

店の前に着いた。地下へ続く階段の前にボーイが立っている。アイツを潰せば先に進めるってワケか。…ってんなワケねぇだろ！ バカかオレは。話しかけるだけ。話しかけるだけだ。話しかけるだけでいい。…あー。ちょ、ちょっとそこのコンビニ寄ってからにしてやるぜ。ガム、ガム噛んでからにするか！

意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

クチャクチャ。クチャクチャ。一番ミントがキツいものを買ったが、一向に気分が晴れる気配がない。原のようになれる気もしない。クチャクチャ。クチャクチャ。ふはっ、やっぱ爽やかな味はオレには合わねぇな。クチャクチャ。クチャクチャ。ケアルをくらったアンデッドの気分だ。クチャクチャ。クチャk

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味のなくなったガムを路傍に吐き捨て、入り口へと歩を進める。ボーイと目を合わせると、特に話しかける必要も無く引く程の笑顔で迎えられた。 問1 本日はいかがなさいますか あ！ この質問、ネットで見たやつだ！ すかさずクールに答える。 「1セットで（パチン」 キマった。予習の成果だ。

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ギラついた内装(ダーツバーよりエグい)のフロアに通され、ソファ席に案内された。周りを見渡すと踊り子みてぇな女がウヨウヨいる。…やべ、指名しねぇと！ 「こ、この店はイイ女が多いな」 「申し訳ございません。初回でのご指名はご遠慮頂いております」 はぁ!? 何のために来たと思ってんだ！

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…そうだ、原から貰った名刺！ 胸元のポケットから件の名刺を取り出しボーイを無言で見上げる。男は「大変失礼致しました！」と慌てて奥へと消えていった。ふん。 まだ何も始まってないがヤケに喉が渇いた。テーブルに置かれた焼酎を一口含む。…薄ッ！ ほぼ水道水じゃねぇか！ まさに水商売だ。

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「ご指名ありがとうございます。初めまして、メイでーす♡」 ついに指名の嬢が席に着いた…って、桃井さつきじゃねぇか！ 「こんなとこで何してるんだ、桃(ぐえっ 言い終わる前に水道水のボトルを口に突っ込まれた。 「メイです♡(威圧)」 May=皐月…桃井さつきじゃねぇか!!(２度目)

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「花宮さん、私のファンってワケじゃなさそうですよねー？」 「(んなワケねぇだろ、バァカ)今日は情報交換の方で^^」 「そーゆーことなら場所を変えましょっか。一名様、個室にご案内でー！」 桃井に腕を組まれ奥へと連れて行かれた。ジャケット越しに胸が当たる。ジャケット越しに胸が当たる。

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分厚いカーテンで区切られた小部屋に入る。個室って風営法に引っ掛かんじゃねーの。 桃井はオレの隣に腰掛けた。 「赤司Co.,について知ってることを聞きたい」 「交換条件次第ですねー」 桃井が食いつきそうな情報…真っ先に黒子の居場所が浮かんだがやめた。アイツは会うことを望んでいない。

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「…解剖した企業情報でどうだ？ 就活だろ、今年」 「花宮さんこそ他に欲しい情報ないんですか？ …今吉さんの交友関係とか」 「マニアッテマス」 「彼だけじゃないとしても？」 「ヤケに引き下がるな」 「花宮さんはもっとスゴい情報を隠している気がして」 「…へぇ？」 「女のカンです♡」

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コエー。やっぱオレはもっとバカな女がいい。 「今回は就活情報で手を打ちましょう。日本一内定を持つ学生の情報なら確かでしょうし…内定収集家として噂になってますよー？…さて、話し始めましょうか。と、その前に。一杯いただいてもいいですかー？」 「…ボトルは開けねぇぞ」 「やったぁ♡」

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ピーチリキュールが運ばれてきた。 「私達の世代が大学になる…大ちゃんときーちゃんがプロになるのと同時に赤司Co.,はプロリーグの運営権を買い取りました。そして、赤司君は大学一年生にして運営を一任された。私がプロバスケに関われたのも彼の口添えがあったからです」 #カンシャシロモモイ

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赤司君のプロデュースでプロバスケ会は大いに盛り上がり、アメリカ側との交渉で、２人の莫大な移籍金を取ることにも成功しました」 「ふはっ。バカだな、ほとんど税金で持ってかれんだろ」 「そう、赤司君は優秀だから短期間で一気に稼ぎすぎてしまったんですよね。それで会社側は…」 …まさか、

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「経費の水増しを考えた…？」 「さすが花宮さん。話が早くて助かります。ええ、こうして焼酎を薄めるみたいに」 桃井はオレのグラスを手に取り縁に口付けた。 「もっと美味しいモノ頼みませんー？」 「じゃあ、グラスワインを」 やっと見えてきた。ヤマの奴、なんつー面倒に巻き込まれてやがる。

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「最近、倒産した子会社は事実上のペーパーカンパニーってワケか？」 「捨て駒があると何かと便利なんだそうです」 “かなり給料もいいトコで” 給料は架空人件費込＋小規模の会社では設立から一定期間は免税される特例を狙って、作っては潰してを繰り返して資金のプールにしてるっつーとこか。

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山崎は１年程度でクビ確定じゃねーか。結婚するとかほざいてたのにどーすんだよ、バァカ。 「お友達を助けるんですか？」 「…そんなんじゃねぇ」 シガレットケースを取り出すと、すかさず桃井が笑顔で火を添えた。 「花宮さん、高校生の頃より丸くなりましたー？」 至近距離で目を覗き込まれる。

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「WCでは桐皇(ウチ)に能力を貸してくれましたし。きっと評価していると思いますよー、今吉さんも」 桃井は更に笑みを深めた。 「大ちゃんには逆立ちしてもできませんから」

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「20400円になります」 「・・・ほわぁっ!?」 にまんよん…2万!?!? レジで思わず財布を落とした。 「1セット5000円、指名料3000円、個室代5000円、ドリンク代2000円x2にTAX20%を乗せまして、20400円になります」 日本の消費税は8%だろ!? 欧米か！

意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

店を出た。冷たい風が寂しい懐を煽る。クソォ〜！ 山崎(ヤマ)が戻ってきたらぜってー払わせてやる！ …戻ってきたら？ オレが山崎の内定を何とかしてやったらアイツは戻ってくるのか？ “やっぱ悪いことすんのは良くねーと思うし” そうだ。アイツは出てったんだ。悪から。足を洗ったんだ。

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オレはいったい何をやっているんだ…？ 何をやってる気になっていたんだ？ 原の言う通りじゃねーか。これじゃ本当に、 独りよがりな友情ゴッコだ。

意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

畜生、もう花粉が飛んでやがんのか。鼻の奥がツンとする。目が痛い。