お題「彼岸」「夜」「運輸業」
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うたこ💉 @utako_st

おばあ様が亡くなられたのは、去年の暮れ。そのおばあ様が、枕元に立ち明日は春分の日、だから私がお彼岸に行けるようにお祈りしてね、と頼んだのだ。あんまり私が泣くので、成仏できずにいたらしい。あぁ、だから私はあなたの死を乗り越えられたのですね。私は空に祈る。ありがとうございました、と。

2020-03-21 22:00:29
夢夜 @ruya_reve

夕刻の空は昨日よりも鮮やかな青だった。日が長くなってきた証だ。 季節が更に進めばこの時間の空は淡い紫からピンクにかけて見事なグラデーションを見せるのだろう。 そしてまた、緑から青へと表情を変えていく季節がやってくる。 ──こうして、夜の色の深さで季節の移ろいを知る

2020-03-21 22:01:53
夢夜 @ruya_reve

夜空と同じ色をした髪に夜の星を宿したような瞳、雪を欺く肌と花弁のような唇。 『夜の佳人』なんて表されるお前を国王も大層気に入っているようだけど、いくら大好きな従兄でもお前だけは絶対に渡さない。 お前を誰かに奪われるんじゃないか……って、想いが通じ合った今でも心配なんだ。

2020-03-21 22:02:16
夢夜 @ruya_reve

ふと目が覚めた。 窓の外は月もなく星もない夜が広がっている。 怖くなって自分で自分を抱き締める。 と、後ろから温かいものに包み込まれた。 「……ん」 耳許で貴方の声がする。 私を抱く力強い腕に安心してほっと息を吐いた。 震えながら朝を待つ夜を独りで耐えることは、今はないのだ。

2020-03-21 22:02:31
花滝ちかる @chikaru_toka

手術は手遅れだった。癌は私の体中に転移して、切除したら何の臓器も残らない。 大量のモルヒネに、痛みが和らぎ私は深い眠りに落ちた。 河原に咲き誇る深紅。彼の岸には、恋しい貴方。 頑張って生きたねって、褒めてくれる?もう、貴方を追いかけてもいい? 私は、幸せに微笑みを返して、川を渡った。

2020-03-21 22:03:33
秋月蓮華 @akirenge

運輸業の仕事を終えて、夜気を吸いながら アパートへと帰る途中、俺の目の前で彼女が笑っていた。 体を大事に、元気でね、大好きと言って去っていく。 疲れたもたらした光景か。 そこまで考えて気づいたのは今日は、 「彼岸だったか」 来てくれたのか。お前は。 あの日、去った彼岸の向こうから。

2020-03-21 22:06:18
RAY/※※※ @growler_ray

平坦な私にとっての昼夜の概念は、日が昇っている時は明るい時間、日が沈んだ時は暗い時間。そんなくらいだった。明るいだけ、暗いだけ…そこに何があるわけでもない でもある日、あなたは私を連れて星を見に行ってくれた。暗い世界に瞬く煌めきに、私は新しい世界を認知した あなたは私に、夜をくれた

2020-03-21 22:06:26
KTQ @wholiveo

「お仕事、大変なの?」「春の繁忙期だね」 俺は魂の運輸業。死神と呼ばれたりもするが、双方向に走るのが仕事だ。 「彼岸参りをする人が減って、運んだ魂が帰省先なくて嘆いてたりする」「どうするの?」「毎年困ってる。今年はカエルを大発生させて仮宿にしてるよ。夜には季節外れの大合唱らしいわ」

2020-03-21 22:16:44
母親 @A_ru1329

向こう岸にいる彼は、いつも私に気付かない。でも、仕方ないと思う。その向こう岸を渡ることは困難だし、私が彼を見に行けるのは夜だけだから。 でも、今日は特別。1日中、彼に会える日。 にこりと彼に微笑み、私は彼に挨拶する。 よかった。彼は今年も嬉しそうに泣いてくれた。

2020-03-21 22:36:59