「こんな色だよ」 「へー、綺麗」 人の色を見れる特殊体質。そんな私に色を見てもらおうと、学校ではよく机に人がやって来る 「ねね、私の色はどう?」 今日来たのは、優しい人気者さん。きっと人気者らしく、綺麗で彩やかな色が見えて…あれ… 「ア…」 「んー?」 アイスグレー…?
2019-03-02 22:01:10春は嫌いだ。桜筏が浮かぶ春の川縁で夜桜を一緒に見たのも昔の話。「さようなら。幸せだった」アイスグレーの無機質な病室で最期に言った彼女の言葉。桜のように綺麗でほんの一瞬だけ咲いて散ってしまった。「今年も散るな」薄ピンクの花弁らが黒いスーツに落ちる。触るとどこか彼女の温もりを感じた。
2019-03-02 22:01:12年上でも、可愛い人だと思っていた。 そのピンクのカーディガンが似合うような。 でも、アイスグレーのスカートは程よく甘さを裏切って、貴女は大人の女性なのだと思い知る。 「僕で、良かったんですか」 「もう、初デートなのに。当たり前でしょ?」 笑った貴女が眩しくて、好きなんだ。 #140字小説
2019-03-02 22:03:11滔々と流れる春の川に灰色の雨が降る。卒業式後の畦道で「大人だって所詮は人間だろ」と豪語した君。僕はその巨躯を見上げて「天麩羅かもね」と笑う。君は曖昧に「あぁそうだろ」とアイスグレーの空に視線を泳がせた。君のことだよ。体に似合わず小心者で、物知らず。大人なんかに負けるな。死ぬなよ。
2019-03-02 22:03:37#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) お題 ①春の川 ②天麩羅 ③アイスグレー pic.twitter.com/RpVDvFmy62
2019-03-02 22:04:52水はまだ冷たいが春の川面は陽にキラキラと輝いている。季節の変わり目の空気にはどことなく、アイスグレー色ののうな曖昧な居心地があるものだが、春先に関しては「孵化する前の卵」めいた高揚感がある。川端に鍋を持ち込んでお独り様天ぷら。セリ、タケノコの揚げたてを、口に火傷する勢いで食う。
2019-03-02 22:05:15○うどん店 ソフトのユニ姿で座る結衣と恵。 結衣「打てなかったね。主将」 恵「結衣に足りないもの頼んだから」 店主、来て餅の天ぷら入りうどんを置く。頬張る結衣。 結衣「うま!打席でも腰と粘りが出そう」 ○校庭 打席に結衣、ファールを打つ。 結衣「よし」 恵「いや前に飛ばそう」
2019-03-02 22:07:26アイスグレーをすんなりと。薄手の生地が柔くなぞる背が美しい。制服を脱ぐことを君は待ち構えてたように、大人になってしまった。ささやかながら、乾杯を。見届けることの叶わぬその行先をただ祈る。春の川を撫でた夜風。天麩羅を頬張って幸せって、幼く解けた顔にほっとしてしまう僕だ。おめでとう。
2019-03-02 22:07:45お題/春の川・天麩羅 古都の観光案内ssになりました。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) #140字ss #140字小説 #小説 pic.twitter.com/VsnyVGQRNM
2019-03-02 22:12:50まだ寒い風が薄い彩の川をなぞる。花までは遠い三月、ダウンコートの上から君の温かさを求めて背中に張り付いてみたけど、モコモコした衣のせいで何も教えてくれない。 空は薄曇り、二人乗りの自転車ももうすぐ終わり。 卒業後は一人で進むこの道を涙で染める。 君は暑いねと言い、私は寒いと言う…。
2019-03-02 22:44:08「何がめでたいの?卒業なんて怖いだけよ」俯く私の手を、彼女が強引に引く。「だからこそ、盛大に祝って目を逸らすんじゃない」アイスグレーの髪を揺らして歩く彼女は、卒業したら髪を染めると言っていた。卒業すれば、きっと彼女は変わってしまう。それでも、私を置いて行かないでとは言えなかった。
2019-03-02 22:59:18