続・ちいさな恋のメロディ（ラーヒュン）

コージ＠頭痛 @koji_hunter

中堅バンドってネタとしてそんなに美味しくないからパパラッチされ難いんだけど、お相手が大物女優でラーと腕を組んでいるところをパパラッチされてしまい、「あの大物女優の密会デート、お相手は既婚ベーシスト！？」と金曜日に載ってしまい、それを見たヒュンがですね。

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「…なんだこれは」 「いや俺らのファンだっていうから食事しただけだって」 「腕を組む必要が？」 「たまたま、たまたま」 「彼女いつも関係者席にいるな」 「よく見てるな。だからただのファンなんだってば」 「…いつからだ？」 「…何が？」 「…いつから浮気してたんだ」 「待て待て待て」

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「昔からお前が女遊び激しいのは知ってるんだぞ！ だいたい俺と初めて寝たときだってやけに手慣れてたし！」 「そんなの大昔の話だろ！？ お前だって俺が初めてじゃなかったよなアレ！？」 「ミストさんが拾ってくれるまで神待ちして凌いでたんだから仕方ないだろ！」 「…え？」

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「…そうだよな。そんなやつ嫌だよな。お前は俺と一緒になるなんて早まったんだ。別れよう」 「すまん、今のは俺が悪かった。アバンお義父さんに誓って浮気なんてしていない。本当だ」 ふたりは生活ペースが違うから寝室は別で、それから数日すれ違いながら過ごしてラーは夜はもやもやしながら眠った。

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ケンカしてから６日目の昼前にラーが起きてリビングに行ったら、テーブルの上にヒュンの名前が書かれた離婚届が置いてあった。ヒュンは学会用のスーツケースごといなくなってた。

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ラーは慌ててアバンお義父さんに電話した。「え？ こっちには来ていませんよ？ 今日から学会のはずで…そのあとしばらく休暇取るって総務と話してたみたいですけど…。えっ？ まさかあの子また失踪したんですか？？」 とりあえずアバンお義父さんから学会の場所と会場を聞き出した。

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「もしこっちに来たら必ず連絡しますから。あと子ちょっと思い込みが激しいところがあるので、あまり気にしないでくださいね」そう言ってアバンお義父さんは電話を切った。 ラーはすぐに学会会場に駆けつけたかったけど、新曲を発表したばかりで明後日まで番組収録や雑誌取材の仕事が詰まっていた。

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仕事をブッチするわけにもいかず、気もそぞろで午後に全ての取材を終えると（寡黙キャラなのでなんとかなった）、即空港へ向かうと身ひとつで学会のある九州へと飛んだ。

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雑誌取材の控え室で「やばいんだよパートナーがいなくなったんだよやばいんだよ早く探しに行かなきゃ」と繰り返すラーに向かって、ガルが「ヒュンさんついにお前に愛想つかしたか〜。今度は俺がもらってやるよ」と言ったときが過去最大級のバンド解散の危機だったとボラは後に回顧している。

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瞳孔の開いた目で予備のパイプ椅子に手をかけるラー。「お前のとこのルードちゃん（インコ）が逃げちゃったときにラーも必死で探してくれたんだからそういうこと言うな！」とたしなめるボラ。「そうだった…ルードのことラーが見つけてくれたんだよな…ごめんな…」と謝るガル。

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ラーが会場に着いた時にはもう学会は終わってて、懇親会に移動中であろうグループが歩いてた。その人達を捕まえて聞いた。 「ヒュン知りませんか？」 「ヒュンくん？ 学会終わってすぐ帰ったみたいだけど…」 「ヒュンさんならこのあと沖縄行くって言ってましたよ」 「沖縄！？ 本島ですか？」

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「ちょっとそこまでは…」 ありがとうございますと礼を述べると、ラーは空港にとんぼ帰りして沖縄行きの空いてるチケットを適当に取った。 とにかく早くヒュンに会わなくちゃと思った。離婚届はラーのデニムのポケットの中でぐしゃぐしゃになっていた。

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ヒュンはオフシーズンの宮古島のビーチでぼうっと海を眺めてた。海は泣きたくなるくらい綺麗で、本当はいつかラーとふたりで来れたらな、と思っていたけど、こんなことになってしまった。 「ヒュン」 そんなヒュンの丸まった背中に聞き慣れた声がかかった。ヒュンは振り返る。ラーだ。

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「離婚届は出したのか？」 冷たい声でヒュンが言った。出してたらここにいるわけないだろう、と言いかけて、こういう物言いがいつもヒュンとの諍いの元になるのだ、とラーは思い直した。 「出してない。別れたくない」 「…いいのか？ 俺で」 「お前“が”いい」 そう言ってラーはヒュンと並んで座った。

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「綺麗だな」 「本当はお前と来たかった」 「来てるじゃないか。今」 「うん。そうだな」 ふと思い出してラーはデニムのポケットを探った。ぐしゃぐしゃの離婚届を取り出す。 「これもう要らないよな」 ラーは離婚届を破って、海に捨てようとした。その手をヒュンが止めた。

コージ＠頭痛 @koji_hunter

「海洋汚染ダメ絶対。ゴミはゴミ箱に」 「…ハイ」 おしまい。リコンしなかった…。