あばん保育園で、ヒュンくんはいじめっこと名高いフレイザードクンが花壇のところで誰かをいじめているのを見かけた。正義の心にあふれたヒュンくんは「やめろ! ぶらっでぃーすくらいど!」と必殺のパンチを放ってフレイザードクンを撃退した。
2020-11-10 11:34:05「…ありがとう…」そうか細い声でヒュンくんに言ったのは、いじめられていた子だ。左右対象の顔、サラサラの金髪、ビー玉みたいに透き通った金色の目、変わった顔の文様、まぞくのお友だちと同じ色の肌、枯れ枝みたいに細い手足。あまりにもかわいいのでヒュンくんは息をのんだ。
2020-11-10 11:40:10「なにしてたんだ?」ヒュンくんも花壇にしゃがんでその子に尋ねた。 「あのね、ここにてんとう虫さんがいるの」 「本当だな」 「かわいいの」 「本当だ。かわいいな」 ヒュンくんは胸をドキドキさせてかわいいのはてんとう虫じゃなくてきみだよと思いながらたくさんお話しした。
2020-11-10 11:45:17そろそろおひるねの時間だ。先生のところに戻らないと。 「おれはひまわり組のヒュンケル。きみは?」 「どらごん組のラーハルト…」 「よかったらまた遊ぼう」 「…うん」 それからふたりは一緒によく遊んだけど、卒園のときが来てしまった。卒園式では抱き合って泣いた。
2020-11-10 11:50:10別々の小学校に行ってそれ以来会うことがなかったふたりは、ひょんなことから15年後に再会して、ヒュンは薄幸の美少女のようだと思っていた初恋の君が自分と同じくらいムキムキマッチョの偉そうマンになっていてショックでちょっと寝込んだ。
2020-11-10 11:53:19なんで可憐なラーちゃんから屈強なラーくんに転職したのかというと、小学校高学年のときに「男のくせになよなよしてる」っていじめられたからです。いじめた野郎許すまじ。
2020-11-10 21:36:48ラーちゃん小学校でいじめられてな、たくさん泣いて「昔いじめっこから助けてくれたヒュンくんみたいになりたい」って思って自己改造がんばったんだょ…。
2020-11-11 17:28:13再会はヒュンが数合わせ(と釣り餌)に呼ばれた合コン。 「誰が来るんだ?」 「えーと俺とこいつと(中略)あとラーって人」 「…!? ラー…という人ははもしかして金髪か?」 「そうらしいぜ」 合コンなんて今まで飯食って帰るだけだったけど初めて胸が高鳴るヒュンなのであった。
2020-11-11 17:36:58成長後に再会してお付き合いを始めたヒュンとラー。ちょっとしたことで口論になった。 「俺はヒュンちゃんのそういうとこが本当に…」 ハッと口を噤むラー。聞き逃さなかったヒュン。 「なんだって? よく聞こえなかった。もう1度大きな声で言ってくれ」 「お前のそういうとこ本当に大ッ嫌い!!」
2020-11-13 14:13:28あばん保育園時代のヒュンちゃんとラーちゃんのおはなし。 ある春の日、ヒュンちゃんは決意した。ラーちゃんにぷろぽぉずをしようと。早くけっこんのやくそくをしないと、あんなにかわいいラーちゃんはいつ誰に取られてもおかしくない。剣道家のバルトスお父さんも「先の先を取れ」と良く言っている。
2020-11-13 21:12:01保育園への道すがら、ヒュンちゃんは道端に咲いているきれいなお花を摘んでいった。 ラーちゃんはお花や虫や鳥が好きだ。いつものように保育園の花壇のところにひとりでいたラーちゃんに、ヒュンちゃんは摘んできたお花を差し出した。花壇の花よりは見劣りをするが、きれいな花を選んできたつもりだ。
2020-11-13 21:17:26そしてヒュンちゃんはこう言った。 「おおきくなったらおれとけっこんしてほしい」 ラーちゃんは花を受け取ることもせずに、困ったように眉をハの字に下げて、目を泳がせてからか細い声でこう言った。 「…できない」 「え?」 予想外の回答にヒュンちゃんは固まった。
2020-11-13 21:24:49「ラーはヒュンちゃんとはけっこんできないの…」 「お…おれのことが嫌いなのか?」 ヒュンちゃんはうろたえた。だってあんなに楽しくおしゃべりして、たくさん遊んだのに。 「ヒュンちゃんのことはすき…」 「だったら…」 「でも、ラーはヒュンちゃんとはけっこんできないの…」
2020-11-16 20:52:53「なんで!?」 「なんでって…そんなのラーわかんない! ラーだってヒュンちゃんとけっこんしたい! でもできないの!」 ついにラーちゃんはわんわん泣き出してしまった。泣かせたくてお花を用意してぷろぽぉずしたわけじゃないのに。 ヒュンちゃんはわんわん泣くラーちゃんをギュッと抱きしめた。
2020-11-16 20:54:22ラーちゃんはあったかくて、おひさまみたいないい匂いがした。ヒュンちゃんはそれだけですごくドキドキした。 やっとラーちゃんが泣き止むと、ヒュンちゃんはずっと握りしめていたお花をラーちゃんに差し出した。 「おはなだけでももらってくれる?」 「…うん」
2020-11-16 20:57:32ラーちゃんはお花を受け取ってそれを見つめた。 「…きれい。ありがとう」 ラーちゃんは泣き腫らした目でヒュンちゃんに笑いかけた。その笑顔を見たヒュンちゃんは、こうしてラーちゃんが笑いかけてくれるなら、ラーちゃんが誰とけっこんしたっていい。ラーちゃんがしあわせならそれでいいと思った。
2020-11-16 21:00:48ラーちゃんちのバランパパは海自勤務でなかなかおうちに帰ってこられないんだけど、たまに帰ってきたら、夕飯の席で息子がか細い声で「ラー、おおきくなったらおんなのこになりたいな…」って言うから箸を取り落とした。
2020-11-20 22:16:29「あのね、きのうね、ヒュンちゃんに『おおきくなったらけっこんしよう』っていわれたの」「あら❤️」ママはニヤつきを隠せず口元に手を当てた。パパは茶碗を取り落とした。「もう、パパ。もっと静かにご飯食べて」ママはそう言ったが、パパはすでに心ここにあらずだ。
2020-11-20 22:34:49繊細でおっとりしててかわいらしいものが好きだとは思ってたけど、ラーはえ…える…LCACじゃなくてえーとなんだっけ…とにかくえるなんとかなのか!? 内心動揺するバランパパを尻目にソアラママはサラッと「あら? なんで?」とラーちゃんに尋ねた。
2020-11-20 22:22:35「ラーはおとこのこだから、ヒュンちゃんとはけっこんできないから…」「だから女の子になりたいの?」「うん…」ママは「最近はヒュンちゃんのお話ばっかりだもんねぇ」と笑ってから続けた。「大丈夫。女の子にならなくてもヒュンちゃんとは結婚できるよ」「ほんとう?」
2020-11-20 22:50:18「本当よ。だけどラーが女の子になりたくなったら、いつでもなっていいんだからね」ママはラーちゃんの頭を撫でた。ラーちゃんは頬を染めて顔を綻ばせた。 「ヒュンちゃんとけっこんできたらいいなぁ…」
2020-11-20 22:52:10「ヒュンちゃんて誰!? パパにも教えて!?!?」蚊帳の200海里外にいたバランパパはついにクールな外聞を捨てて叫んだ。 パパはまだ知らない。ママもまだ知らない。20年後、このラーちゃんが絵本から抜け出てきた王子様のような美形で礼儀正しいヒュンちゃんを婚約者として家に連れてくることを。
2020-11-20 22:53:53ラーちゃんはそのときヒュンちゃんからもらったお花はぜんぶ押し花にした。 成長して再会したヒュンがラーの家に初めて行ったら、壁の一面に押し花がいくつも飾ってあった。どことなく見覚えのある花で、首を傾げながら眺めた。ラーはキッチンでカフェオレを用意しながら「隠し忘れた」と焦った。
2020-11-16 21:07:58ラーちゃんはバランパパとソアラママの実子。パパが竜魔人という珍しい種族なので、ラーちゃんは魔族の血が濃く出ました。ラーちゃんの弟のディーノちゃんは竜の血が強め。 ヒュンちゃんは物心つく前に両親を亡くして、遠縁だけど近所に住んでて家によく遊びに来てたバルトスパパに引き取られました。
2020-11-24 20:12:53ある日ヒュンちゃんは保育園に向かう途中で道端にきれいな青いお花を見つけた。ラーちゃんに似合いそうだなぁ…と思ってそのお花を摘んだ。保育園に着くとさっそくラーちゃんのところに向かった。 「ラーちゃん、こっちむいて」
2020-11-29 17:14:24ラーちゃんがヒュンちゃんの方を向くと、ヒュンちゃんはラーちゃんの髪に摘んできたばかりの青いお花を挿した。「やっぱりにあう。ラーちゃん、かわいい」直球の褒め言葉にラーちゃんの頬はどんどん熱くなり、「み…見ないで…恥ずかしいよぉ…」と、ラーちゃんは顔を覆ってうつむいてしまいました。
2020-11-29 17:19:37「なんで? ラーちゃんおはなにあってる。すごくかわいい。もっとみせて?」ヒュンちゃんはラーちゃんの顔を覗き込んで、また「かわいいよ」と言いました。「うぅ…ううぅ…」恥ずかしさが頂点に達したラーちゃんはばっと立ち上がると「ヒュンちゃんのバカァ!」と言ってどこかへ行ってしまいました。
2020-11-29 17:27:01時は流れて再会後に同居(同棲?)しているふたりのお話。珍しく早く終わった仕事の帰りに、ヒュンは花屋の店先である花が目についた。「すみません。これ1輪ください」 家に帰ると、珍しくラーがリビングのソファでテレビを見ていた。
2020-11-29 17:32:08ラーは振り返りもせずに「カレーあるから食べたかったら食べていいぞ」と言った。「ありがとう」ヒュンはありがたく頂戴することにした。テーブルの上に花屋で買った花をとりあえず置いて、まずは手洗いうがいを済ませた。またリビングに戻り花を包んでいたフィルムを剥く。
2020-11-29 17:54:48それを片手にソファのラーの前に傅いた。ザッピングをしていたラーはリモコンを押す手を止め、「なんだ? 花を買ってきたのか? 珍しいな。今花瓶を出すから…」立ち上がろうとしたラーを押しとどめて、ヒュンはラーの髪に花を挿した。「やっぱり似合う。思った通りだ」ヒュンは微笑んだ。
2020-11-29 17:57:19ラーはリモコンを取り落とすと、両手で顔を覆って天を仰いだ。「お前…そういうとこ…ホント…お前さぁ…」そう呟くとラーは突然立ち上がり、テレビも付けっぱなしで自室に篭ってしまった。不快な思いをさせてしまっただろうか…とヒュンは俯いた。
2020-11-29 17:57:19ラーは自室のベッドに寝転びながら、ヒュンにもらった花を眺めていた。薄いブルーの花弁。アガパンサスだ。植物学を修めたラーにはすぐ分かる。花言葉は「ラブレター」。 ラーは起き上がると、サイドチェストの奥の奥の奥に、ヒュンに見つからないように厳重に隠してあるアルバムを取り出した。
2020-11-29 17:59:10“ひゆんちやんにもらつたおはな” 表紙にはかろうじて判読可能な文字でそう書いてある。 あの頃ヒュンから貰った花は、全て押し花にしていた。ページをめくっていくと、あるところで手が止まった。あのときヒュンから貰った花も、アガパンサスだった。
2020-11-29 18:03:32アルバムと手元の花を見比べる。「あいつ分かっててやってんのかなぁ…」ため息混じりに独りごちると、花を生けるための花瓶を取りにベッドから降りた。
2020-11-29 18:03:33あばん保育園のヒュンちゃんとラーちゃん、初恋を拗らせに拗らせてるので、再会後に付き合い始めてからの進捗が遅そう。 手を繋ぐまで3ヶ月… 初チッスまで1年半… その先は… 「その先は結婚してからだ!!!!」 グーでテーブルをカチ割る剣道5段のヒュンちゃん。
2020-11-18 12:09:33「俺は別に結婚まで待たなくていいというか待てないんだがヒュンちゃん」 「その呼び方は卑怯だ。ダメ。絶対ダメ」 「俺がボトムでもダメか?」 「うっ…」 「俺がボトムなら結婚前でもいい?」 「いい…いやよくな…いい…よくな…」 「そこのラブホ入るか?」 「ハイラナイ…」
2020-11-24 20:15:14今気付いたんですがあばん保育園のヒュンちゃんとラーちゃんはヒュンラーなのか? 書いている本人も分からないんだお。まぁいいかリバです。
2020-11-24 20:16:45