お題「いちご」「野原」「春風」
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王子@第一種怠惰無責任者 @ojitw

灰色の雲が空を塞ぎ、野原には花ひとつありません。空っぽの季節です。最近巣穴の前にいちごがぽつんと置かれます。毎朝必ず。人の子が置くのです。この目はそれゆえの赤ではないし、好物でもないのですが。でもあの子が風邪をひいては寝覚めが悪くなりそうですし、早く春風が来るよう願っています。

2020-05-23 22:00:51
竜泉寺成田 @ryusenji_narita

ある朝、窓を見ると苺が空を飛んでいた。急いで外に出ると野原に苺が散らばっている。全部ヘタを地面に向けて立っていた。まずい。そう思った時には遅かった。苺が次々と空に向けて発射されていく。旬が過ぎたのだ。苺は最後の春風に乗り、彼方へ飛んでいく。冬の苺はこの時採られたものかもしれない。

2020-05-23 22:01:28
掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

春風が風見鶏と踊る頃、少女は小屋を抜け出して、小さな森の大きな野原へ駆け出した。そこには真っ赤なへびいちごが、たわわに実っている。少女はその実を摘み取ると、パクリと食べた。口内で弾ける酸っぱさに、少女の目が潤む。それでも少女は食べ続けた。へびいちごには毒性があると信じていたから。

2020-05-23 22:01:58
缶詰みかん @Zhs686CSzE02Dl1

冬が終わり、春が来た。 暖かい日差し。優しい色の若葉。 山も森も野原も、自然のすべてが喜んでいる。 春は恋の季節。 恋をしている時は夢中で、辛いときもたくさんある。 でも終わってみるとすべてが幸せだったと思う。 「おーい」 遠くで呼ぶ彼のもとへ駆けて行く。 新しい春風を感じて。

2020-05-23 22:04:26
掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

はらぺこ春風が野いちごを摘み取ると、どうどう様が野原を駆けてくる。どうどう様は大層怖い顔をしているので、春は逃げ出し、空は泣きだし、世界はちょっとブルーになっちゃう。すると、夏が励ましに来てくれるんだ。でも、ハメを外しすぎると、またどうどう様が来る。そうして四季が生まれたんだよ。

2020-05-23 22:06:55
母親 @A_ru1329

野原といえばきっと皆は太陽の日差しに当てられた野原を思い浮かべるだろう。 でも、私は違う。 月の日差しに当てられた野原を思い浮かべる。 そこには、黒猫がいるのだ。今にも闇に溶けてしまいそうな黒猫が。 私はいつもソイツを見るたびに抱きしめて野原に寝転ぶ。ソイツを一人ぼっちにしないように

2020-05-23 22:08:03
繭美 @140mayumi

からからの田んぼ横で、熟した野いちごを見つけた。つやつや光る野いちごは、野原の宝石だ。 よし食べようと手を伸ばすと、大きな白ヘビと目があった。 「お前は蛙かヘビイチゴでも食べてろ」とにらみあったが、結局、野いちごは変なヘビにゆずった。 翌日に雨が降ったのは、きっとヘビからのお礼。

2020-05-23 22:10:10
うたこ💉 @utako_st

甘い香りの果実をどうするか。ビニールハウスの中に並ぶ赤い実は食べ頃だ。ただし、いちご摘みを楽しみにやってくる孫娘は疫病のせいで来られない。忙しく蜂がいちごの花の間を飛び回る。春は来る。季節は回る。人間の騒ぎなど、どこ吹く風で。一粒摘んで口に入れる。それは、いつもの通りに甘かった。

2020-05-23 22:10:22
RAY/※※※ @growler_ray

「いちごみたいに爽やかで、一緒にいると楽しいし」 これが、私の告白をOKしたあなたの言葉だった。それからというもの、甘酸っぱさとか、頬とか、私の色んなことをいちごに例えてきたね。 気づけば、それから2年か…ねえ、ところで知ってる?熟しすぎたいちごって、すごくドロッドロになるって事を…

2020-05-23 22:10:30
ゆきやまイマ@鶏林書笈 @keirin_syokyu

#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題: ①いちご ②野原 ③春風 #木槿国の物語 「夫人は上得意なので贈物は欠かせません(笑)」少年談 pic.twitter.com/TeUYBti4Wq

2020-05-23 22:27:42
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花滝ちかる @chikaru_toka

終了間近のイチゴ狩りは、閑散どころかビニールハウスに2人きりで、何だか気まずい。 「冷えていないいちごって、すっごく甘いね」 君が嬉しそうに笑ってくれたから、 よしとするか。 「貴方も甘いわ」 「え?」 「詰めが甘いわ」 悪戯っぽく笑う君。僕はいちごみたいに赤くなって 「君が、好きです」

2020-05-23 22:32:40
はみどり@木製3秒間 @tyaboka1

出会いは貴女の柔らかな髪を束ねるリボンが春風にほどかれて、私の手に届いたこと。貴女の春は野原を駆けて、誕生日ケーキのクリームが頬についてるはずだった。なのにもう、月もない夜に粗末な小屋で『食事』を終えた口元から零す赤色だけがいちごのよう。拭ってあげると、無邪気に笑って牙が覗いた。

2020-05-23 22:33:42
秋月蓮華 @akirenge

春風が吹いた。 冬が終わり春が来たのだ。野原には春の花が咲き乱れている。 「春が……来た」 彼女が着ているものは防護服。そして置いてあるのは虫取り網やら籠などだ。 春風が吹いた。 大量のいちごが飛んでくる。いちごはすでに凶器だった。 彼女はいちごをキープする。 冬が終わり春が来たのだ。

2020-05-23 22:48:02