蚕族の蚕(ツァン)くん

えびしま @abcMaaaaa

今日の昆虫系ヤンデレは蚕族です 真っ白でもふもふの髪と翅、肌も真っ白！ 黒いぱっちりお目々がとってもチャーミング！ 飛べないから地面をぽてぽて歩くよ！ でも蚕族は人間に依存しないと生きていけないんだ……目をつけられたが最後、4本の腕と2本の足で絡みついてきて、死ぬまで死ぬほど愛されるよ

えびしま @abcMaaaaa

声帯が退化していて喋れない あの人が手伝ってあげないとご飯も食べない 自発的に何かをしようとはしないが、あの人が楽しそうにしているモノに対しては興味を抱く こんなふうに、あの人がいないと生きることを放棄してしまうので、見初められたら大事に大事に保護してあげてね

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾はメスのフェロモンを感知すると、羽をバタバタを羽ばたかせる習性がある 蚕蛾くん、あの人のことを好きになると常にベッタリついて回るし、更に好きになると真っ白な羽をしきりに羽ばたかせる だけど喋れないし意思表示も上手く出来ないから、あの人は「どうしたのかな？」と不思議がるだけ twitter.com/abcMaaaaa/stat…

えびしま @abcMaaaaa

あの人は、違i法ブリーダーの元から救出された蚕蛾くんを一時保護している ある日、帰宅すると蚕蛾くんが部屋の隅に蹲っていた 異様なまでに羽をばたつかせている姿を見て、慌てて駆け寄るあの人 蚕蛾くんはあの人の服を山ほど抱え込み、匂いを嗅ぎながら「♡♡♡…♡♡…♡」と瞳を蕩けさせていた

えびしま @abcMaaaaa

あの人は今朝、洗濯していない衣類をカゴに放置して出かけてしまったのだ 蚕族のようなフェロモンを感知しやすい種族にとって、肌着や下着類はそうしたトリガーになりやすいものだった あの人は己の迂闊さを呪い、急いで鎮静剤を飲ませた 蚕蛾くんの羽の動きは次第に緩慢になり、やがて眠ってしまった

えびしま @abcMaaaaa

実は蚕族を保護するとこういった事はよく起こるし、そのために全員予め鎮静剤を渡されている しかし、問題はこの蚕蛾くんに「服を漁る癖」がついてしまったことだ どんなに隠しても必ず引っ張り出してしまうし、興奮状態が長引くようになってしまった あの人は仕方なく、クローゼットに鍵をかけた

えびしま @abcMaaaaa

あの人は蚕族保護課を通じて、医師にそのことを相談した 医師によると、蚕族は感情が希薄なため、他者に好意を寄せるまでにかなりの時間を要するという そのため、一時的な保護担当者にそういった行動を起こすのは、極めて珍しい 「急だけど、保護担当からすぐに外れてもらうしかないな。危ないしね」

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんは、1週間後に別の担当者のもとへ送られることになった あの人は普段通りに接することを心がけたものの、蚕蛾くんには気付かれてしまったらしい 以前よりもベッタリとくっつき、少しでも離れると翅をバタバタと暴れさせ、家の中であの人を探し回ることが増えた 蚕族にあるまじき凶暴性だった

えびしま @abcMaaaaa

あの人は医師に「安全のために、担当変更日を蚕蛾くんに教えないこと」と念押しされていた だから蚕蛾くんは「あの人とのお別れが近い」ということは悟っていたが、いつなのかは知らされていない しかし最終日、あの人は致命的なミスを犯してしまった 夕飯が普段より、ほんの少しだけ豪華だったのだ

えびしま @abcMaaaaa

豪華といっても気付くのが難しいほどのものだったし、現にあの人も無意識に行った事だった だが、蚕蛾くんはその差異に気付いてしまった 気付いてしまったから、あの人に「ずっと一緒にいるための行為」をした 服を裂く音がする あの人の悲鳴が聞こえる か細い声に変わっていく 夕飯が冷めて乾いていく

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くん、生存本能が希薄すぎて睡眠という概念すら理解してなさそう ベッドに寝かせても、仰向けになってじっと天井を見つめるだけ 違i法ブリーダーのもとに居た頃は、毎日2時間ほど気絶みたいに眠っていた あの人が毎日一生懸命寝かしつけて、ようやく規則正しく眠れるようになった

えびしま @abcMaaaaa

あの人は蚕族が好む桑の葉でお茶を煎じたり、寝室に焚いたりして、安眠できるような環境を整える そして蚕蛾くんに添い寝して、背中をとんとん叩いてあげたり、翅を撫でてあげたりする 蚕蛾くんの瞬きは次第に緩慢になり、眠りに落ちていく 初めて寝かしつけに成功した時、あの人はとても嬉しかった

えびしま @abcMaaaaa

数ヶ月後「そろそろ大丈夫かな」と思ったあの人は、蚕蛾くんの寝かしつけをやめた 一人でもきちんと寝られるようにするのが目標だったからだ しかし、それは失敗に終わった 朝起こしに行くと、蚕蛾くんは以前のように天井をぼーっと見つめていた 表情を見るに、一睡もできていないようだった

えびしま @abcMaaaaa

あの人が「ごめんね」と謝って頭を撫でると、蚕蛾くんはその手を抱きしめて眠ってしまう 昼過ぎに目覚めた彼に食事を摂らせようとするが、その日はスプーンを握ろうともしない 「使い方、覚えたはずなのに…」そう思いながらあの人が食事を掬って口元に運ぶと、蚕蛾くんはようやく食べてくれる

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんは髪も肌も真っ白だけど、瞳は真っ黒 日本人みたいな茶色じゃなくて、本当に真っ黒だから不思議な雰囲気がある そして爪も真っ黒 個体差はあるけど、うなじ〜背中、翅にふわふわな毛が生えている もさもさな触覚にブラシをかけてあげると、どことなく気持ちよさそうな顔をする

えびしま @abcMaaaaa

異国の違i法ブリーダーに「蚕（ツァン）」だの「无名（ウーミン）」だの呼ばれて、劣悪な環境下で飼育されていた 「オスは利用価値がない」と殺されるところだったが、摘i発によって国の蚕族保護課に保護された 保護される蚕族の数は年々増加傾向にあり、あの人はボランティアで一時保護担当者となった

えびしま @abcMaaaaa

一時保護だと戸i籍は準備段階のため、正式な名前は決まっていない 蚕族くんは「蚕（ツァン）」と呼ばれると反応する それは嬉しいからではなく、かつてのブリーダーが「反応を示さない個体の翅を乱暴に掴んでいた（弱ったり死んだりしている可能性が高いので、痛めつけて確認していた）」からである

えびしま @abcMaaaaa

あの人と暮らし始めた頃の蚕蛾くんは、何を言われても全く反応を示さなかった だからあの人は仕方なく「蚕（ツァン）」と呼んだ そうでもしないと、全く動こうとしなかったからだ あの人は彼のなけなしの生存本能・恐怖心を利用する形で、“生きるためのトレーニング”を開始した それが心苦しかった

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんが生活に馴染んだ頃、蚕族保護課の職員が視察に来た その時、うっかり「ツァンくん」と呼んでしまったあの人に対し、職員はひどく激怒した 何故そんな呼び方をしているんだ、彼の境遇を忘れたのか、これだから自覚の足りないボランティアは……全て正論で、あの人は言い返すことができなかった

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんはそのやり取りをぼーっと見つめていたが、職員が尚もあの人に激しく詰め寄ると、もたもたとした動きで二人の間に割って入った そしてあの人の腕にしがみつき、翅をぱたぱたと動かした 二人の間に不穏な空気を感じ取ったのだろう あの人を守ろうとするかのような、か弱い威嚇行為だった

えびしま @abcMaaaaa

翌朝、何とか蚕蛾くんに鎮静剤を飲ませたあの人は、弄ばれてぐちゃぐちゃになった自身の身体を抱きしめて泣いた そして医師に電話をして、これからどうすべきかを相談した 「残念だけど、番になるのが最良の選択だ。現状ではね」 医師から言われたのは、あの人には到底受け入れがたいことばかりだった twitter.com/abcMaaaaa/stat…

えびしま @abcMaaaaa

「一時保護という短期間でこういう事が起こるのは、初めてかもしれないね。人間が蚕族と交配しても、妊i娠する可能性は極めて低い。だが、もし妊i娠した場合、母体への影響が不明だから中i絶は不可能だ。…とはいえ君には君の人生がある。彼と離れて暮らすという選択肢もあるが…」

えびしま @abcMaaaaa

「彼の行動を鑑みるに、その場合…君も気付いているだろうが、彼は生きることを放棄してしまうだろう。君が正式な“保護担当者”になるという手段もあるが、審査を受けて“番”になった方が行i政から手厚いサポートを受けることができるよ。特に、補i助i金の額は桁違いだ。将来を見据えて決めるといい」

えびしま @abcMaaaaa

電話を切った後、あの人はぼんやりと考えた 私の身に起こった“あれ”は、本当は大したことじゃないのかもしれない きっとそうだ、きっとそんな、ショックを受けるほど酷いことじゃないはずだ それに、だってもし、私が逃げたら、彼は生きていけないじゃないか ご飯も睡眠も、私がいないとだめだった

えびしま @abcMaaaaa

これを機に、保護担当者になろうかな いや、無理だな、だって私はただの「自覚の足りないボランティア」だもん じゃあ“番”になるしかないのかな 番って何をするのかな 今まで通り、彼が社会で生きていけるようにサポートすればいいのかな でもそれは“保護担当者”の仕事だよね 番って、何をするのかなあ

えびしま @abcMaaaaa

今までの様々な出来事が、あの人の脳裏を掠めては消えていく いつの間にか、あの人の身体には蚕蛾くんの腕が絡みついていた 鎮静剤の効果が切れたらしい ぱっちりと開いた瞳に、疲れきったあの人の顔が映っている 蚕蛾くんは労るように身体を撫で、頬に鼻をすり寄せ、くうくうと微かに喉を鳴らした

えびしま @abcMaaaaa

それから数ヶ月の記憶は、どこか遠くて曖昧だった あの人は蚕族保護課のサポートを受け、勧められるがままに“番”申請をした 『桑母会のみなさまへ〜蚕族と生きるために〜』 『会報　桑の実』 『【蚕族保護課】補i助i金制度のお知らせ』 パステルカラーのパンフレットが、テーブルを埋め尽くしていた

えびしま @abcMaaaaa

「桑母会（そうぼかい）」は、オスの蚕族と番になった人のための会だよ！ 会員のほとんどが、蚕族との間に子供ができた人・作りたい人だよ 「会報　桑の実」は、番になった人や保護担当者になった人のための情報誌だよ！ 蚕族と暮らす人々はまだ少数だから、上記2つを通して交流を深めているよ twitter.com/abcMaaaaa/stat…

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんの翅の付け根のもふもふに顔を埋めるあの人 「なんかすごく良い匂いがする〜」 あの人に触ってもらえて蚕蛾くんも嬉しそう！

えびしま @abcMaaaaa

蚕族は唾液腺の脇に吐糸腺があり、成虫になっても機能が残る場合がある 蚕蛾くんにもその機能が残っていた 時々少量の糸が出てしまい、喉奥に絡まって「けほ…けほ…」と咳き込んでしまう あの人は蚕蛾くんの背中を擦って「苦しいね、もう少しだからね〜」と宥めつつ、口に指を入れて糸を取り出す

えびしま @abcMaaaaa

あの人が心配してくれるのが嬉しくて、最近ではわざと糸を出して咳き込んでいる 「指苦しいよね、ごめんね、もう少しで取れるからね〜。終わったらおやつにしようね」 あの人は懸命に糸を手繰っていて気付かないが、蚕蛾くんは「…♡♡」と目をトロンとさせて、あの人の指をちろちろ舐めてるよ

えびしま @abcMaaaaa

蚕族の自我は個体差があり、一生ボーッとしてる個体もいれば、社会に馴染んで筆談できるくらいになった個体もいる 後者は極めて稀だけど、環境による変化が自我に大きな影響を及ぼすのは確かである だからあの人は「ツァン君も、いつかあんなふうに感情豊かになれるかもしれない」と希望を抱いている

えびしま @abcMaaaaa

でも感情豊かになった結果ヤンデレ化したから、あの人は「私がやってきたことは人間のエゴだった」と心も身体もボロボロになりながら泣いちゃう そんなことを知らない蚕蛾くんは、いっぱいいっぱいあの人を抱きしめてキスしてご満悦だね

えびしま @abcMaaaaa

感情豊かになった蚕蛾くん、あの人と一緒に出かけて、街で色んなものを見て「……！？……！！！」ってビックリしてほしい ショーウィンドウにべったり張り付いて、目を輝かせて翅をパタパタ動かしてほしい

えびしま @abcMaaaaa

お小遣い渡されて「好きなもの買っていいよ」って言われて喜んでほしい そのまま物凄い勢いで走り去って迷子になってほしい あの人が迎えに来て「……！……、…………。」って喜んだり謝ったりシュンとしたりしてほしい お小遣いで買ったのがあの人へプレゼントするアクセサリーであってほしい

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くん、中肉中背の儚い系をイメージしてたけど、逆にデカくてゴツくて「え…蚕…？」ってドン引く感じもいいな　どっちがいいんだろう悩むね

えびしま @abcMaaaaa

ブリーダーのところで繁殖用のオスとして飼育されてたから、大柄で丈夫そうな方が説得力ある気がしないでもない

えびしま @abcMaaaaa

『モスモスブランケット』¥5,980 蚕族の背中、特に翅の付け根のもふもふ感を再現しました。 シルク製の翅つき・ケープ型なので、羽織ればあなたも蚕族気分を味わえちゃう！ ※近くに蚕族がいる場合は使用しないでください。同族と間違われ、繁殖行動を誘発するおそれがあります。

えびしま @abcMaaaaa

蚕族の翅の付け根に顔を埋めると、蚕族は状況がよく分からずに翅をゆっくり動かすよ 翅が耳にぱすぱす当たって気持ちいいよ みんなもやってみてね

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くん、グレーのスウェットの上下を着て積み木で遊んでる姿が似合いすぎるし、疲れたらこてりと寝転んでお昼寝しちゃいそう あの人はその姿を見て、嬉しくて泣いちゃうんだ 仰向けのまま天井を見つめてるだけだった蚕蛾くんが、自発的に遊んだり寝たりするようになったのが嬉しいんだよね

えびしま @abcMaaaaa

感情豊かになった蚕蛾くん 壁に貼ってある平仮名表を使って、あの人の名前を何度も何度も指差すようになるんだよね あの人が驚いて「たくさん言葉を覚えようね」ってニコニコしても、他の言葉には興味を示さないね 今日もあの人の名前を指差しているね 指差しすぎて、その平仮名だけ色褪せているね

えびしま @abcMaaaaa

眠っている蚕蛾くんが寝返りをうって、羽をぱた…ぱた…と微かに動かしているのを見て「何の夢見てるんだろ〜？」としばらく観察してしまうあの人 蚕蛾くんは夢の中であの人と一緒にお出かけしているよ お散歩楽しいね、よかったね

えびしま @abcMaaaaa

ある程度感情豊かになった蚕蛾くん、飛んでるちょうちょ見て「自分も飛べるかも」って思ってベランダから落ちそう あの人が部屋に行くと、蚕蛾くんがいない 窓辺では、蚕蛾くんの翅よりも大きくて白いレースカーテンがはためいている 階下がなんだか騒がしい

えびしま @abcMaaaaa

高層階じゃない＆下に植え込みがあって助かるんだろうけど、その後が大変 あの人は病室でワーワー泣くし、蚕蛾くんは心配してもらえるのが嬉しくて「♡♡、♡♡」ってなる 怪我すると心配してもらえる（＝愛される）と勘違いして、危ないことをするようになる 構ってあげないと特にそれが顕著になる

えびしま @abcMaaaaa

そういう癖がついてしまうと、あの人は一時保護担当を外れることになる 蚕蛾くんは、鎮静剤で眠ってる間に次の担当者のもとに連れて行かれる 目を覚ました時にはあの人はいない すぐに脱走するけど、身体が弱いから日焼けで酷い炎症を起こし、翅は色んな所に引っ掛けて穴だらけ あてもなく歩き続ける

えびしま @abcMaaaaa

飛ぼうとした理由は、「あの人と色んな場所に行きたいから」というものだった 飛べなかったけど、心配するあの人を見て「大事にされている」という実感もあった それなのに何故あの人と引き離されてしまったのか、蚕蛾くんには分からない そうして歩き続けて、ボロ雑巾みたいになった頃に保護される

えびしま @abcMaaaaa

スーパーでお買い物中のあの人と蚕蛾くん あの人は蚕蛾くんがジッと見つめるものを取って「食べたい？」って聞いたり、袋詰め中に翅をぱたぱたさせるのを見て「手伝ってくれるの？」って嬉しそうにしたり、下手くそな詰め方を見て「わぁ！上手だねえ〜！すっごく助かっちゃったぁ！」って褒めちぎる

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんは帰りにアイス買ってもらって、公園のベンチで食べる 一口が小さくて食べるのが遅いから、コーンじゃなくてカップのアイス どのフレーバーを食べても表情が変わらないから、あの人は蚕蛾くんを見ながら「何が好きなのかなあ」と呟く そんなあの人に、蚕蛾くんはアイスを一匙すくって差し出す

えびしま @abcMaaaaa

「くれるの？…うん！おいしい！」 溶けかけのチョコアイスを食べ、あの人は蚕蛾くんに笑顔を向ける 「…んー…チョコが好きなのかなあ…それともバニラ…でも、先週食べた期間限定の…」 「……♡♡♡」 ブツブツと呟くあの人の横で、蚕蛾くんはあの人がアイスを食べた後のスプーンをべろりと舐めた

えびしま @abcMaaaaa

蚕蛾くんとお散歩する時、あの人はいつも大きなトートバッグを持つ 中には日焼け止めや水筒、蚕族用の応急処置道具などがぎっしり詰まっている 数年後、感情豊かになった蚕蛾くんは、ボロボロになったバッグを見て「いつも守ってもらっていたんだ」と気付く そしてそのバッグを自分で持つようになる