#天香詩歌部 個人のまとめ

いかないで探し求めた姉の声　目を塞げば聞こえたから

「いかないで」は「逝かないで」と「行かないで」がかかっている。
姉が亡くなってしまったことを理解したくない鎌治の気持ちがあるので本来の「逝かないで」をひらがなにひらいた。ひらがなであれば「行かないで」とも読める。生きていると信じられる。

姉は亡くなってしまったのでもう声を聞くことができない。しかし現実さえ見なければ姉の声が聞こえた。姉が生きていると信じられた。

目を塞ぐことは現実逃避と、墓守の衣装を身につけることを意味している。墓守の衣装で目隠しされているのは鎌治だけ。
(そもそも衣装があるのが鎌治だけなのだが……)

墓守の衣装を着て目を塞ぎ、現実逃避すれば姉が生きていると信じられ、声を聞くことができた。だから墓守の衣装を身につけた。
姉さんが死んでしまったなんて認めたくなくて、ただ、姉さんの声が聞きたかったから。

手探りで姉を捜した目隠しの鬼さんこちら鍵の鳴る方へ

墓守の衣装、目を隠した姿が「目隠し鬼」に似ているなと浮かんだ。

塞がれた両目、両手には刻まれたホルスの目。まるでこの世ならざるものを捜し求めているみたいだと。
捜し求めているのは言うまでもない、喪ってしまった姉の姿だ。

姉が死んでしまったことを直視したくなくて、墓守となり目を塞いだ。
それでも姉を捜し求めずにはいられなかった。
もうこの世にはいない姉の幻影を求め、夜を彷徨い、生徒を粛正し、精気を喰らう。
その姿は鬼のようではないか？

姉の弾く鍵盤の音に惹かれ彷徨う哀れな鬼、そんな姿になることを彼は望んでいたのだろうか。
彼が望んでいたのはもっとささやかな幸せだったはずなのに。

幼き日に、姉と共に遊んだ目隠し鬼。
手を叩く代わりに姉が戯れに鳴らした鍵盤の音。楽しかった遠い日の記憶。
そんな音はもう聞こえるはずがない。

姉がいなくなってしまったこの學園に、夜を彷徨う鬼がひとり。彼を夜の帳から連れ出してくれる者は現れるのだろうか……。

あげますの乙女心を詰め込んだフリルで飾る時限爆弾

乙女心は爆発物。扱い次第では危険な代物になる。
一見かわいらしく見えても、中に詰まった想いの熱さ。放置すれば大変なことになるし、まっすぐ受け止めれば対処もできるだろう。
時間の経過とともに彼女の魅力に気付いてしまう。タイマーはもう動き出している。

玉の緒よ絶えなば絶えね代わりなど用意しますのねぇそうでしょう？

『命なんて絶えるのであれば絶えてしまいなさい』その傲慢さと無邪気さがリカちゃんに似合うと感じた。
「ねぇそうでしょう？」と問いかけの言葉に対して、葉佩が返すのは否定か肯定か。

赤い薔薇　花言葉は『愛・美・情熱』つまりアタシを意味しているの

朱堂のこういうとことが好き。
花言葉を使うのはベタだけど、語感よく57577の枠に当てはめられると嬉しい。

花の色は移りにけりな幾度でも　ながめせしまに咲き誇るわよ

小野小町の句から。
「桜の花は長雨が降る間に散っていってしまった。私の美貌もいつしか衰えてしまった」という句を、朱堂の色で染めた。
「花は幾度も散り、また咲き誇る。私の美貌も幾度でも咲き誇る。眺めていてごらんなさい！」

ノートのy書き直すようにxに　なれはしないから答えを見せて

男や女という文字を入れずに性別を表現したくて考えていたらxとyが浮かんだ。染色体だ。
そしてxとyといえば数学である。

数学のノートに間違えて書いたyの字を消してxに書き直す。こんな風に簡単にy染色体をx染色体に書き換えることができたら。
女生徒の艶やかな肌、しなやかな肢体。それらに憧れを抱けども、男である朱堂にはそれを得ることができない。
簡単に書き換えられたら試しに女生徒になってみて、艶やかな肌の秘密を知ることもできるだろうに、そんな魔法など存在しない。
だから女生徒の秘密を覗かせて。あなたたちの美しさの答えを見せて。

女性になりたいわけではないけど、女生徒を体験してみたい気持ちはあるんじゃないかと思って。

高校生らしく勉強している姿、自分の持たないものへの憧れ、諦め、女子寮への覗き行為。
そんなものを混ぜ込んだ句です。

権限も欲しいが葉佩も欲しい気付けば葉佩に魂盗られ

感情がストレートな夷澤らしさが出ているのではないかと。
葉佩はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの魂(ｺｺﾛ)です。

自らを投げ打ち愛す　すくうでしゅ　セミナー全ては隣人のため

タイゾーちゃんらしさを入れたかった。
「隣人を救う」「アイスを掬う」「セミナーに巣食う」をかけたつもり。背景をアイスにしたのは気付いてほしかったから。

相棒がいない罠に暗闇こんなの嫌　心撃ち抜く月よ魅せん

ひとりの戦いがあまりに嫌すぎた記憶をぶつけた。「嫌」が「矢」にかかっているのでは、と感想を頂いたのでそういうことにします。感謝。
トレハンの心をボロボロにした月読戦、と真理野の心を撃ち抜いた月魅、というふたつがかけてある。

両腕に黒板消しを山と積み「はっちゃんの真似」と微笑んだ君

地味ハロウィンをよく理解していないけれど、可愛いかまちが表現できたので満足している。
かまちかわいいね……。

然るべき粛清銃声射貫く視線どうして避けない自分ヲ見ルナ

語感良くできた。粛清銃声射貫く視線、のテンポで銃の勢いと畳みかけるような展開を感じたら嬉しい。
しかるべき、には叱ってほしい墨木の想いをのせた。

隊長の横で漂う煙なら銃口からのものだけでいい

皆守に対抗心を燃やす墨木。アロマの煙なんかより、自分を隊長の傍らに置いてほしいと。

太陽の欠けた異国は寒すぎて居場所求めた月光の底

トトの孤独を表現したかった。

ヘリオスは互いに尊敬しあえる友人のこと。日本にきたトトは心を開ける友人を見つけることができなかった。ひとりきりでは寂しくて、居場所が欲しくて、生徒会執行部へと踏み入れた。行きついた墓守としての役目、それは月光だけが降り注ぐような寒々しい場所。
それでも太陽を失ったトトには月光でさえ暖かかった。……嘘だ。冷たい月光に晒されて、心までが冷えていく。ずっと求めていたのはただ、太陽の光。トトはこの寒々しい異国の墓所で太陽と出会えるのだろうか。

幻惑の香で隠した籠の幽花　かすかな記憶巡れ時計台

籠の鳥のように隠された白岐さん。かすかと幽花をかけた。

もっとうまく詠めたのでは？と思ってやきもきしている。
でもLast. Discoveryまで投稿を続けたい気持ちを優先した。

ちんとんしゃん　かんざし失くした後ろ髪　引かれぬ意図は爪弾く糸に

妹の髪からかんざしが失われ、長髪がほどける。
神鳳の手の中から、預かっていた妹のかんざしが失われる。
ふたりの長髪の揺れる後ろ姿。その後ろ髪が引かれる気持ちはないの？ねえ、兄さん。
そんなものはない。その意図は全て、この爪弾く弓の糸に込めて。

ちんとんしゃんは「3の糸、2の糸、2と1の糸」を弾いた音のことなのでカウントダウンにも似ていていいな、と思った。

※神鳳さんの妹の姿は妄想。かんざしを挿していたなら長髪だったのでは、と思っている。

寒月が荒唐無稽に身を枯らす　怨嗟言告ぐないのか希望

夕薙の孤独を表現したかった。

冬の寒々しい月光を浴びて、枯れ果てていく己の身体のなんと荒唐無稽なことか。
皓々と照らしくる月光から顔を背けようと、容赦なく降り注いでくる怨嗟の声。逃がさないと告げるように。
どこかにこの呪いを解くことのできる術はないのだろうか。そんな一縷の希望。この月光を素直に仰げるようになる日がきっとくるはずだと、ただそれだけを信じて。

文中に『つぐない』の言葉を隠した。

11th. Discoveryです。
あまりにも直球ストレートすぎるのでワンクッション。

……と思ったら『ぼかしったー』がサービス終了した影響でリンク先が見えなくなっていたため再投稿したものが以下になります。

學園の秘宝に夜明けはまだ来ない「何者だッ？」俺？「葉佩九龍で～す！」

だいぶお気に入り。ここのやりとりが好きなのでうまく語感よく組み立てられてよかった。
≪秘宝の夜明け（レリックドーン）≫に秘宝を渡すか！という気持ちと、夜明け（決着）はまだだという思い、葉佩のコミカルな雰囲気を込めた。

踏みにじる蟻から滲んだ鮮血が夕映えに混じる「君は優劣だい？」

つまらない蟻を踏み潰す。ぐちゅりと靴底から滲む鮮血。鮮やかな夕映えは鮮血のように世界を赤に染め上げていく。やがて、夜が全てを黒に塗りつぶすだろう。
目の前に立つ宝探し屋は、つまらない蟻なのか、それとも。

この曲を君に贈るよ弾き終えたゆびさき握られ「連れてくからね」

弊トレハンはかまちを最終戦まで連れていったので。

ピアノの演奏を葉佩に向けて弾いてくれる君の気持ちは十二分に嬉しい。
だけど見送るようなその想いはなんだ。有無を言わせず君の手をとるよ。
だけど弾きかけのその手を止めるだなんて無粋なことをするもんか。
素敵な曲をありがとう。とても嬉しいよ。でも、何を言おうが連れてくからね！

受け止める相棒達の想いひとりずつ　≪宝探し屋≫だから全部もらうよ

クリスマスにひとりずつ告げてくる相棒達の言葉を取捨選択なんてするものか！君たちの言葉の全てが『秘宝』だ！俺はトレジャーハンター！『秘宝』は全部残らず受け止めてみせる！！！

欲張りです。

暁はぎんいろ俺に残された　この使いかけの心臓ひとつ

全てが終わったあと、皆守視点。
使い果たすはずが残ってしまったもの。使いかけの心臓が、身勝手にも鼓動を刻み続けている。

指先に伝わる鼓動　言葉など意味をなさない今はいらない

全てが終わったあと、葉佩視点。
皆守を抱きしめたい！と思ったトレハンなので彼を思いっきり抱きしめました。
どんな言葉も聞きたくないし言わなくていい。ただ抱きしめさせて。君の鼓動を指先に感じる、それだけでいい。今は、それだけで。