展覧会・ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)
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先月の東京国立近代美術館のゲルハルト・リヒター展。リヒターといえば「アブストラクト・ペインティング」シリーズに見られるこの独特な抽象表現でしょう。スキージと呼ばれる巨大なへら状の道具を用いて、画面のうえの絵の具を引き延ばし、或いは削り取ることで製作される偶然性の高い絵画。 twitter.com/lousism/status… pic.twitter.com/k5z46eBGai

2022-10-04 16:01:44
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東京国立近代美術館のゲルハルト・リヒター展に来ております。 pic.twitter.com/17yXQZfCbE

2022-09-19 16:02:49
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この「削れ」が、まるで自動車の塗装が擦れて内側を晒しているような、金属的なギラギラした色彩を醸しているのが面白い。画面は混沌としているけれど、自然が産み出した無秩序な混沌ではなく、人工的な操作が秩序の表面を不用意にひっぺ剥がしてしまったような、何処か後ろめたい混沌なのである。 pic.twitter.com/pmb0rQenUD

2022-10-04 16:08:50
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今回の展示の眼玉、ビルケナウ。すなわちアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で密かに撮影された四枚の写真をモチーフに描かれているのだが……最早モチーフの痕跡は完全に塗り込められ、黒、赤、銀を基調にした画面一杯の悲惨で生々しい「擦り傷」が、複製写真と合わせて計八枚並ぶだけだ。 pic.twitter.com/Czi4aDkxsd

2022-10-04 16:17:28
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リヒターが得意とするもう一つの技法がフォト・ペインティング。文字通り、写真をそのまま正確に油彩で描き写す。ちょっと加工を施しただけの写真のようにしか見えない油彩画……しかも四枚目の作品に到っては、それを更に写真で複製して展示している。「絵画の写実性」を相対化してしまう作品群だ。 twitter.com/lousism/status… pic.twitter.com/bDnRSDlxnV

2022-10-04 16:31:48
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元々の絵をデジタル加工してカラフルな縞模様として還元してしまう「ストリップ」や、カラフルなパネルをランダムに並べた「カラーチャート」や、画面いっぱいに灰色を強調した「グレイ・ペインティング」などの個性的な技法を用いた作品も展示。加えて硝子や鏡が重要なモチーフとして度々登場する。 pic.twitter.com/6QeO1PObJF

2022-10-04 16:48:11
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「アラジン」は板のうえで掻き混ぜたラッカー塗料にガラス板を押し付けたもの。やはり偶然性が強い作品。「オイル・オン・フォト」は文字通り写真に油絵具を直に塗りつけたもので、グロテスクなイメージのものが多い。最後のほうには繊細で浮遊感のある奇妙な世界を描いたドローイングが並んでいる。 pic.twitter.com/OTsFP1hRrF

2022-10-04 16:56:42
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全体的な感想を述べると、ああ、とても真面目な画家なんだな、と思った。前衛的で抽象的だけど、軽率でも軽薄でもないし、雑然さや荒廃感などにも傾かず、偶然性を重視しつつもその構成には何処か律儀さを感じる。ビルケナウのあの無言の重厚さは、安易な「現代芸術」とはやはり一線を画している。 twitter.com/lousism/status…

2022-10-04 17:05:13
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リヒターのアブストラクト・ペインティングは、意地の悪い感想を述べるならジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングのバリエーションの一つでしかない。けれど混沌たる画面をさらにスキージで削り、悲惨な「擦り傷」を晒そうとする「真面目さ」がある。 ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8…

2022-10-04 17:14:04
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フォト・ペインティングだって、マリリン・モンローのスチル写真を加工して芸術作品にしてしまったアンディ・ウォーホルから、一体何処まで遠ざかれているというのだろう? けれど確かに、リヒターの作品はポップでない。ポップ・アートにしては手間を掛け過ぎている。 ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2…

2022-10-04 17:24:11
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今回は現代芸術が苦手と明言してる千葉の友人と一緒に観覧したのだけど、やはり友人はいまいち展示にピンと来なかったようだ。僕はリヒターの「真面目さ」を肯定的に鑑賞したけど、現代芸術が苦手な友人からすれば「挑発されてるけど取っ組み合う気にならない現代芸術」の枠を越えるものではなかった。 twitter.com/lousism/status…

2022-10-04 17:40:53
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友人の指摘は色々と面白い。リヒターの作品は大いに偶然性を重視していた。けれど「偶然性を重視した現代芸術」は、仮に何か気に入った部分があったとしても、それはただ「偶然に」自分に噛み合っただけに過ぎない。そんな個々人の嗜好に依拠する「偶然」を芸術として評価していいのだろうか?

2022-10-04 17:46:09
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これは常設展にあった瀧口修造のデカルコマニー。絵の具が「偶然に」産み出す独特の模様を得る技法であり、シュルレアリスト達に好まれたのだという。さてこの技法と、リヒターが「アラジン」で用いた技法との根本的な違いは何処にある? リヒターの制作でなければならない必然性は何処にある? pic.twitter.com/l2FG1vnfuc

2022-10-04 17:55:13
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リヒターの「真面目さ」は、社会主義リアリズムが主流であった東ドイツの出身でありながら、ポロックらの西側の自由な芸術に触れて西ドイツに移住したという経歴に関係があるのかもしれない。ポロックやウォーホルなどを想起するような技法を選びながら、アメリカ的な軽さとはまた別の道を歩んでいる。 twitter.com/lousism/status…

2022-10-04 18:17:22
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ビルケナウは、収容所で撮られた写真をフォト・ペインティングして、そのうえから絵の具を塗り重ねているのだという。当然フォト・ペインティングは完全に隠されて痕跡すらない。まるで儀式めいた無駄な行程である。けれどその無駄な「真面目さ」が、この銀と黒と赤の「擦り傷」に意味を与えている。

2022-10-04 18:30:30
lousism @lousism

とはいえ、制作過程まで含めて作品の意味を読め、という風潮を友人が嫌っていたのも理解出来るところではある。現代の芸術は時間的・空間的な広さを持つものなのかもしれないけれど、とはいえ作品の評価は完成品の出来で決まるべき、ここに到る制作背景なんて言い訳でしかないという意見もまぁ分かる。

2022-10-04 18:35:24
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リヒターのアブストラクト・ペインティングは、偶然性の高い抽象画でありながら何処か風景画のような印象すらある。ただの混沌じゃない。自然と人工、無秩序と秩序、その合間をストイックに削り出していくような絵画。ただし僕はこの「真面目さ」を友人に説明出来なかった。だから、僕の敗けである。 twitter.com/lousism/status… pic.twitter.com/9ObZyPGVMJ

2022-10-05 00:23:14
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さて友人とのお喋りで、偶然性の高い芸術に二つの問題点が見出だされた。一つは先に述べたように、鑑賞者の嗜好に「偶然」にバリエーションの一つが噛み合ったとして、そんな個々の「偶然」を芸術と評価して良いのかという問題。そしてもう一つは、個人の芸術家では試行回数か限られるという問題だ。

2022-10-05 00:32:47
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それこそ最近流行りのAI作成イラスト。あの「偶然に」産み出された奇怪で不自然で独創的な画面は、人間がわざわざ「想像力」「前衛的」という言葉で特権化していた芸術の一部分を侵害しかねないものようにすら思える。そしてAI作成イラストは、個人では到底なし得ない程の圧倒的な試行回数が可能だ。

2022-10-05 00:38:06
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「偶然に」産み出された無数のAI作成イラストがSNSに放流され、そして「偶然に」誰かに届いて面白がられる。AI作成イラストに限らず、SNSには無数の面白い「偶然性」がやり取りされている。最早「偶然性」は芸術家のトライアル&エラーを必要とせず、世に蔓延る物好き達の遊びのなかで完結してしまう。 twitter.com/lousism/status…

2022-10-05 00:42:10
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ここで面白かったのが、僕はこの現代芸術じみた「偶然性の試行回数」にこそAI作成イラストの特徴を見たけれど、友人はAI作成イラストの特徴を「技術の機械化」に見ていたことだ。友人はむしろ、技術として体系化可能な近代以前の絵画技法こそ機械化されて人間の手を離れるのでは? と予想していた。

2022-10-05 00:47:55
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だから、AI作成小説に対する反応も僕と友人では違っていた。絵画は秩序が破綻した画面でも作品になるが、小説は秩序が破綻しているとそもそも言語として読めない。だから僕はAI作成小説が「偶然性」から逃れられない限りまだ人間が有意だと考えるけど、友人は小説も機械化可能な技術だろう、と考える。

2022-10-05 00:52:07
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さて、近美といえば充実した近現代日本絵画の充実した常設コレクションだ。しかも前回訪れた時とはかなりラインナップが変わっていて見応えたっぷり。どうしてもお金や時間の関係で有名どころの展覧会ばかりを優先してしまうので、未知の国内の近現代芸術家に触れられる機会は大事にしていかねば。 twitter.com/lousism/status… pic.twitter.com/Eacyh04klO

2022-10-05 01:04:38
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因みに常設展のほうでもリヒター。それぞれフォト・ペインティング、ストリップ、アブストラクト・ペインティングと全く異なるアプローチの作品で、この三作品だけをこうやって並べると同じ画家の作品とは思えない。でもやっぱり僕はアブストラクト・ペインティングの「擦り傷」の輝きが好きだな…… pic.twitter.com/AJLq7Lh7gw

2022-10-05 01:11:01
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陶器は芸術品である一方で実用品でもある。僕達は美術館に並んだ陶器を、純粋な芸術品として観るべきか、それとも美しい実用品として観るべきか掴みかねているところがある。なので、完全に観賞用に傾いてしまった陶器(というかこれはもう彫刻)はかえって面白味がない、と友人と意気投合していた。 pic.twitter.com/ZylHVIQ71t

2022-10-05 01:16:34
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まとめたひと
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ああ、地滑りだね、私達だけが生き残るのか、私達だけが死に絶えるのか、賭けてみようか? min.togetter.com/id/lousism