クダノボかもしれないしそうじゃないかもしれない。
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六角(ろっかく) @Bpq2Mw

一緒に実は翡翠に落ちていたんだけど、内臓損傷でもはや数分も生きていられなかった▽さんが、最後の意地で▲さんを真珠の人々の傍に運んだはいいものの、川へ落ちて流され、流され、人としての輪郭を失い、やがて翡翠ゾロアへ転生し、化け狐と忌み嫌われながらも、おぼろげな記憶で▲さんを見守る話

2023-01-23 19:22:07
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

ゾロア▽さんも川に流れて海へと下る過程で記憶はほとんど洗い流されたので、基本的に▲さんへ積極的にかかわることはない。ただどうしても気になるので、一緒にいてみたいけれど、忌狐であり化け狐としてムラを追われた経験から、朧げにきっと自分は近くにいてはならないと考えている。

2023-01-23 19:24:16
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

一方の▲さんには記憶の残留に変化がある。暗闇を通ると懐かしく思い出すものと共に、川へ来ると自分をここまで運んでくれた顔のよく似た男を思い出す。しかし、川という立地と自分を運んでいたという記憶から、力尽きてしまい、川に流れたのだろうという推論の方が先立っている。

2023-01-23 19:25:37
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

時は流れ、一人の存在がムラに来る。力を貸す過程で、▲さんはバトルのことを思い出す。そしてその一人は、あちこちに散らばった『ふるいポエム』の中から、一つの神話を取り出した。曰く、古は死した肉体を川へと流し、やがて骨にまた肉を纏って戻ってくると。もしや、顔の似た男もそうではないか。

2023-01-23 19:27:30
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

やがて裂け目は閉じ、ムラでは化け狐もごく普通に人々と生活するようになった。里の人々へ、▲さんは暇を申し出る。訓練所の留守居役も見つかった。裂け目を閉じた張本人だ。広い広い翡翠の大地を、時にオオニューラの力を借りて、▲さんは骨にまた肉を纏って戻ってきた男の面影を探しに行く。

2023-01-23 19:30:15
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

しかし。幾年が過ぎても、見つからなかった。時折ムラにも里にも立ち寄ったが、よく似た人間など見つからない。むしろ「見つかればこちらから知らせる」と言われる始末だった。 諦めきれずにいた、ある夜のことだった。 流れ流れて、翡翠にたどり着いた家族が、生きるために寝入りばなの▲さんを襲った

2023-01-23 19:32:19
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

その家族とて「生きるためには仕方ない」と己に言い聞かせての凶事だった。ゆえに刃には迷いが生じた。▲さんは素直に脅しに応じ、幾ばくかの金銭と食料と、里とムラへの紹介をした。 これを、人と人の対話と理解できずにいた存在があった。つかず、離れず、姿を見せず、▲さんを見守っていた存在。

2023-01-23 19:34:56
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

流れ、流れるうちに、人の理論と倫理を欠き、翡翠ゾロアークへと進化した▽さんは、片割れへ危害を加えようとした人間を見て、恨み呪いに意識が持っていかれた。 一家はムラにも里にもたどり着けなかった。 骨は川の底へと沈められた。真夜中の翡翠の森に、紫の炎が揺れる。

2023-01-23 19:37:52
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

数日後、▲さんはムラに立ち寄った。あの家族はいなかった。里にも向かった。どこぞで、オヤブンに襲われたか。どちらにせよついていかなかったことを悔やみつつ、▲さんは川辺にいた。自分が見つかったというそこでたたずんでいると、川の真向かいに翡翠ゾロアークが立っていた。

2023-01-23 19:40:46
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

スーパーシングルから降りた時、正面にダブルから降りた▽さんが見えることがあった。人混みとか、ダイヤとか、いろいろな事情を踏まえて、ごくまれに。 ▲さんは名前を呼んだ。川の向こうから。翡翠ゾロアークは、▽さんは何度か瞬きをして、一歩二歩と、ふらふらと歩きだした。そうして思い出した。

2023-01-23 19:46:25
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

川の向こうに立つ▲さんのために、自分はこの川へ何を沈めただろうか。▽さんは考えて、川を渡るのをやめた。もとより、人と化け狐だ。ともに生きる道を選ぶことはできない。 しかし。▲さんは容赦しなかった。やっと思い出した弟を、置いていく気はなかったし、川は紛れもなく、川だった。

2023-01-23 19:50:17
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

冷たい水に膝を濡らして、▲さんは駆け抜けた。川は激流ではなかった。ただ冷たいだけだった。そして▲さんは知らなかった。▽さんが自分を見ていて、あの家族を手にかけたことなど。 それから。▲さんはたまにムラにも帰るし、里にも帰るが、そばにいつも翡翠ゾロアークを連れるようになった。

2023-01-23 19:52:51
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

翡翠ゾロアークは器用で、人々は「▲さんの手持ちだからだろう」と噂した。崖上りもできる個体だった。 噂では、オオニューラとその翡翠ゾロアークは三日三晩の死闘を繰り広げたと言うが、真偽は誰にもわからない。 訓練所に行くと、翡翠ゾロアークと並ぶ▲さんに会えるようになったという。

2023-01-23 19:54:08
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

と、いうところまでで終わっておけばこれは再会する双子の話ですが川を▲さんが渡ることを選ばず▽さんが引きずり込む方になるとそこから先は黄泉路なので後はもう異類婚姻譚でございます。

2023-01-23 19:55:18
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

雨が上がるころには嫁入りは完了しているという寸法でして。

2023-01-23 19:57:29
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まとめたひと
六角(ろっかく) @Bpq2Mw

20↑字書き、主に二次と自我関連。詳しくはプロフカードから。▽▲以外にも▲右が生成されてて大変な騒ぎ。「鍵について」凍結祭り中に鍵状態だったのですが、気になったので一度解除しております。感想フォーム(forms.gle/MM9Yzr1WB3YiDq…