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にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

カント兄様はU作さんに恋をしていて、けど一生手に入らないと思っているしU作さんも自分を男で兄としか思ってないと諦めている尾。けどU作さんが婚約していると知り、一服盛って眠るU作さんに跨り致す。序に精子を冷凍保存用に採取する。致して出来たなら僥倖、だめなら人工的に、と言う作戦。

2023-08-26 09:03:32
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

運良く一発的中。妊娠が分かると誰にも何も言わず失踪、と言うか引っ越しする。幸い歯科医としての稼ぎは悪くなかったから蓄えはある。子を産んだらシングルとして働けば良い。子一人くらい何とかなるはずだ。家永には冷凍保存した精子を保管してもらうことにした。代わりに胎盤を寄越せと言われた。

2023-08-26 09:06:36
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

家永の元で産むつもりはない。U作さんに居場所を知られたら困る、と考えたがそもそもU作さんは俺を探すだろうか、と疑問を持つ。これから結婚に向けて忙しくなるだろう。さほど親しくなかった異母兄など探している余裕は無いはずだと思い、引っ越し先に来てくれるなら、と了承した。

2023-08-26 09:10:10
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

U作さんとは週に一度会うくらいの仲だ。食事を共にして別れるのが大体のパターン。たったそれだけなのに尾は惹かれてしまった。どうしようもなく彼の子を孕みたいと本能が訴える。だから、彼の意識を奪い、彼の童貞を貰った。U作さんが認識していなくてもあのキラキラした弟の初めては自分なのだ。

2023-08-26 09:13:00
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

そう思うと嬉しさと罪悪感で涙がでた。きっとU作さんがこの事を知ったら軽蔑するだろう。しかし優しいU作さんはそれを許そうとして苦しむはずだ。なら端からU作さんの前から姿を消せば、彼の人生にもう関わらなければ、U作さんはずっとキラキラ美しく、完璧な人生を歩むはずだ。

2023-08-26 09:15:04
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

そしてそれは父親も願っているはずだ。二人の父親は、二人が会っていることにいい顔をしなかった。直接、もうU作と関わるな、その方がお前のためだ、と脅されたこともある。きっと彼の子を孕んだとしられたら、子を殺されてしまうかもしれない。だからもう関わらないようにしないといけない。

2023-08-26 09:17:22
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

少なくとももう物理的に距離をとれば父親は尾がもうU作さんと関わるつもりはないと察してくれるだろう。だから、せめてU作さんのたった一つの精子からなされたこの命だけは、この世に存在することを許してあげたい。まだ膨らみのない腹を撫でて、俺はお前を祝福する、と尾は毎日話しかけた。

2023-08-26 09:20:06
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

引っ越しは北海道のとある市だ。さほど大きくはないが、札幌へのアクセスは悪くない。特養があり、そこの経歴の歯科に席をおいた。引っ越しした頃にはつわりが酷く、吐きながら泣いて、それでも無理やり食べ物を口に押し込んだ。胎児の成長に良いと言われたものを片っ端から口に入れた。

2023-08-26 09:24:25
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

口に入れ、飲み込んで、暫くしたら吐いた。多少でも吸収くらいはできているだろう。家永は系列の婦人科に非常勤としていつの間にか席を置いていた。開業医は身軽だ。尾の食事事情を知って、無理に口に入れなくてよい、食べられるものだけで良いと言った。だがあのU作さんから貰った子。

2023-08-26 09:27:32
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

例え胎児だとしても飢えさせたく無かった。なのに胃は食べ物を受け付けずゲーゲーと吐いた。何度も点滴の世話になった。家永ももう何も言わなかった。早く安定期になれば良いですね、とだけ尾に言った。U作さんの子を異物と勘違いするなんて、やはり自分には過ぎたることなのだろうと自嘲した。

2023-08-26 09:29:52
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

洗面器に吐いていると、偶に妄想する。U作さんが優しく背中を撫でてくれるのだ。U作さんがどうやって背中を撫でるかなんて知らない。けどあの大きな手はきっと安寧をもたらしてくれるだろう。もしかしたら既に結婚相手にしているのかもしれない。だが尾にはその妄想で充分だ。だって腹に子がいるから

2023-08-26 10:07:18
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

時折吐いた疲れで倒れるときもあった。ある日吐いたものが逆流し、喉に詰まった。死ぬかもしれないと感じた。家永には自分が危なくなったら子供諸共、にしてくれと言ってある。親無しは可哀想だ。誰にも祝福されない子は哀れだ。自分と同じ道を歩ませては行けない。薄れゆく意識の中覚悟を決めた

2023-08-26 10:36:35
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

尾が目を開けるとそこは病院だった。腹には、多分まだいる、多分…と腹を撫でた。家永から話しを聞くと、どうやらたまたま現れた近所の柔道家が異変に気づいてドアをぶち破ったらしい。救急救命講習を受けたばかりの柔道家は救急車を呼びながら救急救命措置を施したらしい。母子共に一命は取り留めた。

2023-08-26 11:07:53
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

お礼はちゃんとしてくださいね、あ、暫く入院です。もう無茶な摂食はさせませんから、と。ちょっと家永が怖い。入院生活は暇だったが、自分の拘りで大事なU作さんの子を殺しかけたのは大いに反省した。病院スタッフは尾の事を矢鱈と気にかけてくれる。矢鱈と見舞いに来る柔道家目当てかもしれない。

2023-08-26 11:12:18
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

柔道家は顔が良かった。杉元と言うらしい。昔事故にあって家族を亡くし、顔に大きな傷を負った。しかし柔道を極めて次の五輪を目指している。前の大会の時は暴力事件を起こして謹慎中だったようだ。だが杉元自体は明るく気さくな青年だ。そしてどこか顔立ちがU作さんに似ていた。

2023-08-26 11:14:42
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

U作さんと似てはいるが、共通点は少ない杉元。尾が好きな男を眠らせ勝手に精を使って妊娠したことを知ると、最低だな、と言った。正当な評価だと思った。だが杉元はそれから何かと尾を気にかけた。壊した扉を知り合いに頼んで直してくれたり、尾の体調を気にかけたりしてくれた。

2023-08-26 11:39:41
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

どうして最低な俺を気にかける?と尋ねると、お前は最低だけど赤ちゃんはそうじゃないだろ、一回助けたんだから無事に生まれてほしい、としれっと言った。動けるようになった尾のために買い出しを手伝ってくれたりと、何かと気にかけてくれる。竹を割ったような性格の杉元は尾には気に食わない人間だ

2023-08-27 00:13:56
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

だけどその分気楽だった。明確に自分を嫌う人間の方が正常で、分かりやすいと思った。腹の子は、U作さんの子だから愛されるのは当たり前だ。だがある日、尾の下に封書が届く。それは弁護士からの内容証明だ。中身は尾の腹の子がU作さんの子であること、そしてその親権は花沢家にもあるという事だった

2023-08-27 00:18:04
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

汗が噴き出す。子を奪われる恐怖、そして花沢家に知られた恐怖。何よりU作さんに嫌悪される恐怖。それが正常な反応とはいえ、分かっていても恐ろしくて体震えた。だけど今は落ちつかなければ。必死に息を吸った。吸って、吐いてを繰り返した。大丈夫、また逃げれば良い。次は南に行こう。

2023-08-27 22:00:04
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

家永には念を押さなければ行けない、いや、知らせないほうが良いのかもしれない。だが迷っている暇はない。尾は慌てて荷物をまとめる。日頃からものを少なくしていて良かった。大きな腹を抱えて荷物をかき集める。赤ん坊の御包み、靴下、布おむつ。気付けば小さな鞄の中は赤ん坊の物でパンパンになった

2023-08-27 22:08:04
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

入れ忘れた手製の母子手帳。子供のための預金通帳。まだまだ入れたいのに鞄はパンパンだ。いつの間にかこんなに大切な物が増えていたのかと実感する。腹を撫でると、応える様にポコンと腹を蹴ってくる。次の瞬間、ピンポンと呼び鈴がなった。ギクリと身体が強張る。だめだ、開けてはいけない。

2023-08-27 22:15:30
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本能が告げる。杉元でも、家永でもない人間が来た。ガチャ、とドアノブが下がるが、鍵がそれを阻んだ。何度か繰り返されるそれ。鍵は訪問者を拒み続ける。尾が息をつく。だが次の瞬間、がちゃん、と鍵が回る音がした。なんで、と目を見開く。合鍵を持っている人間は大家以外にはいないのに。

2023-08-27 22:18:41
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ゆっくりと、本当にゆっくりとだったのか、尾の脳がそう思わせただけなのかは分からない。しかしゆっくりとドアノブが下がり、扉が開く。そしてそこには星屑の綺麗な部分だけを集めたような人間がいた。きらきらとした瞳が瞬きもせずに尾を見つめる。 「お久しぶりですね、兄様」

2023-08-28 20:01:04
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安アパートの床が、ぎ、ぎ、と音を立てる。それはU作さんの足音だった。U作さんは固まる尾に片膝を立てて目線を合わせてくる。そしてその目が一度だけ瞬きをした。長い睫毛がまるで簾のようにU作さんの瞳を覆い隠していく。それを尾は息を止めて見守っていた。そしてU作さんの大きな手が尾の頬を包んだ

2023-08-28 20:08:20
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「ずいぶんと、お痩せになられましたね」 あくまでもU作さんの声は穏やかだった。でも、普段はとても温かかった手が、随分と冷たく感じた。U作は何度も、何度も尾の頬骨を撫でた。 「ああ、憎らしいです。ですが、愛おしいのです。この腹の子は私の子だというのに、貴方をこんなにも苦しめたのですね」

2023-08-28 20:14:12
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U作さんは頬を撫で、唇をなで、瞼をなぞった。少しばかり指先がかさついていて、尾の肉が薄くなった瞼に引っかかる。 「それに、兄様はあまりにも無防備です」 U作さんは杉元のことを話し始めた。あの男は尾が引っ越してきてしばらくずっと尾に付きまとっていたらしい。まるで獣が獲物を狙うようだった

2023-08-28 20:17:39
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虎視眈々と、昼夜問わず尾を見つづけていた杉元。だがその杉元だからこそあの時尾の命を救ってくれたのだ。尾がそう言おうとすると、それを察したのかU作さんは首を横に振る。 「私以外の男を褒めないでください」 そういうU作さんの目は、見たことのないような闇がどろりと広がっていた。

2023-08-28 20:23:32
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「兄様が書類をじっくりとお読みになってからお迎えに上がろうかと思ったのですが……良かった」 U作さんの目が細められ、唇が弧を描く。白く形の良い前歯がちらりと見えた。 「それに私もそろそろ父になりたいのです」 U作さんのその言葉は希望であり、決定事項だったのだ。

2023-08-28 20:31:18
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

「知って、いたのですか?」 そう言った尾の声は酷く震えていた。知らないはずだ。だって家永でさえ知らないのだ。尾は杉元にすら、腹の子が異母弟の子だとは話していない。とある男とは言ったが。だけど、U作さんは人形のような笑みで言う。 「兄様のことで知らぬことはありません」

2023-08-28 20:32:53
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そう言い切るU作さん。彼の言葉ならば、そうか、としか言えなかった。 「口惜しかったですよ、兄様の中に私が入れて頂いたのに私はそれを認識できていないのは」 優しくU作さんは腹を撫でた。それはとてもやさしいのにまるでその場にピン止めにでもされるような心地だった。 U作さんは恭しく手を取る。

2023-08-28 20:38:54
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さぁ、まいりましょう、と言われて尾は重たい腹を抱えて歩く。鞄を手に取ると、U作さんがその鞄を尾から当たり前のように受け取った。 「兄様のものは、何も入っていないのですね」 そうU作さんが言うと、尾はうつむいた。 「俺の宝は、この子ですから」

2023-08-28 20:42:40
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尾がそう言うと、U作さんは温度の無い目でその腹の中を見透かすように見下ろした。だが尾がとっさに腹を守る様に抱えると、途端ににこりとほほ笑んだ。 「兄様は、もう母なのですね」 そう言って肩を抱き寄せた。質のいいスーツの生地が尾の頬を柔らかく撫でた。

2023-08-28 20:53:22
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U作さんは尾を札幌のマンションに連れて行った。本当は東京に戻りたかったようだが、身重の尾では飛行機も船にも乗れなかったのだ。出産し、しばらく落ち着くまでは札幌に居を構えるつもりで買ったのだという。尾は昨今新幹線沿線で高騰するこの土地のマンションをこうも簡単に購入するとは、と呆れた

2023-08-28 20:57:49
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U作さんは東京と札幌を行き来したりリモートで仕事をしている。U作さんがいなくても、いつも尾の周りには人がいた。それは使用人だったり、U作さんの部下だったり。中でもU作さんの運転手である菊田は尾と多くの時間を過ごした。なんでもあの杉元のことも知っている様だ。あいつらは執念深いからな

2023-08-28 21:00:49
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その言葉が妙に心に落ちた。U作さんも、杉元もどうして自分に執着するのかは分からない。だけど何かに執着する気持ちは分かる。自分の何かが彼らを惹きつけたのかは分からない。だけど、第三者の菊田がそういうという事は、何かがあるのだろう。例えU作さんがそう言わせているとしても。

2023-08-28 21:11:14
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菊田は嘘が下手だ。だから少し揶揄ってやった。あまりU作さんがここに居ないと、近所で菊田が腹の子の父親では、と言われていると嘘を吐いた。すると何食わぬ顔でU作さんは全ての仕事を札幌で行う様になった。他人に見張らせるくらいなら初めからそうすればいいのだ。

2023-08-28 21:17:44
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尾は毎日散歩にでる。マンションの床よりも、ふかふかとした草の上を歩くのが良かった。近くにある大学の構内は近所の憩いの場になっており、そこには人工的な川もあり、近隣の幼稚園や保育園の子供たちが散歩している。中には母子の存在もあって、自分もああなれるのだろうかと、思う。

2023-08-28 21:35:24
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妊娠してからすっかり薄くなった髭があった顎を撫でる。だがその次の瞬間、大きくて硬い手が尾の手を取った。驚いて顔を上げると、そこには杉元がいた。今にも人を殺めそうな、そんな目をしていた。今までどこにいたんだ、と言う声は本能的に恐怖を感じた。とっさに腕を引けば、ぎろりと睨まれる。

2023-08-28 21:41:49
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「お前は、あのアパートが居場所だろ」 それがまるでゆるぎない事実のように杉元は言う。尾からしたら自分の居場所など、尾が一番分からない。けど、この世の全てに祝福されたU作さんが言うなら、そこが尾の居場所だと思っていた。けど、杉元は違うのだという。

2023-08-28 21:55:37
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「U作さんは、俺の居場所はここだ、って」 「U作?誰だよ……その、腹の子の父親か?」 尾が頷くと、杉元の眉間にしわが寄る。 「……そいつ、お前のこと好きなのかよ」 そう言われて思い出せば、U作さんにそう言ったことを言われたことがない。子を愛おしいとは言われたが、尾には言われていない。

2023-08-28 21:58:01
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尾は想像以上に自分がその事実にショックを受けていることに気づいた。かくんと膝から力が抜ける。杉元はそれが分かったのだろう。尾の背中を優しく撫でた。 「俺はお前を愛してる」 その言葉は尾にとって、今とても欲しい言葉だった。ずるい、と尾は絞り出すような声を出すことしかできない。

2023-08-28 22:02:11
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尾が杉元に握られた手に力を籠めようとした瞬間 「兄様、なりません」 尾の肩を大きな手が抱いた。抱き寄せられたせいで、くんっと腕が伸びる。杉元はまるで獲物を狙う羆のような目でU作さんを見ている。だがU作さんもそれに怯むような男では無いようだ。二人の男に挟まれて、身体が緊張で重い。

2023-08-29 20:19:56
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うぅ、と尾は呻きながら掴まれていない方の手で腹を抱える。痛い、腹が痛い。兄様?!とか尾形?!とか声が聞こえる。うるさい、頭が痛いし、腹が痛い。腹が痛い、そう言えば二人の慌てた声が聞こえる。まだ臨月ではないはずだ。だから、と言おうとして声が出ない。尾はそのままうずくまって動けない

2023-08-29 20:28:27
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そのまま尾は二人の手によってU作さんが札幌に呼び寄せた家永の下に運ばれた。文句を言う家永曰く、U作さんの提示した好条件に更に吹っ掛けたらしい。内容は知りたくないが。そして尾は切迫早産で要入院。原因は強いストレスを立て続けに受けたことらしい。U作さんと杉元は出禁になった。

2023-08-29 20:40:50
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

会うのは禁止です、と言われて、少し寂しかった。一度は子が受けられると思った父からの愛情を、奪ってしまうのではないかと思った。尾は腹の子のために、U作さんの声だけでも聴きたい、と言った。そうしないとU作さんは腹の子のことを愛してくれないかもしれない。だって尾の血を半分受け継いでいる。

2023-08-29 20:53:36
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愛されることのない尾の血だから、尾は不安なのだ。これで自分の遺伝子が入っていなければきっと無条件にこの世の全てから愛されていたはずなのに、そう尾は信じて疑わなかった。だけど、家永に会うことを一時間だけ許可されたU作さんは、不思議なことを言う。兄様の子だからきっと可愛い

2023-08-29 21:04:04
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

兄様の子だからきっといい子になる、兄様の子だから、 と。尾の血が入っていることが何よりも尊いのだというのだ。だけど、時折家永の許可をとって堂々と会いに来る杉元も、お前の子だから可愛いと思う、なんていうのだ。自分よりもU作さんに似た方が可愛いと思う、と言うと二人とも否定する。

2023-08-29 21:06:20
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

ところでどうしてU作さんと杉元が一緒にいるのだろうか。いつの間にか仲良くなった二人に尾は眉間にしわが寄る。こいつらばっかり仲良くしやがって、と言う気持ちなのだろうか。ベッドにいる尾を両端から挟んでいる。U作さんは撫でる様に尾の手を触り、杉元はしっかりと腰を抱く。

2023-08-29 21:15:00
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

両端をそっくりの、でも少し雰囲気の違ういい顔にサンドされている。待ってほしい、目がつぶれそうだ。そもそも、なんで杉元が「次は俺の子産んで?」なのか。U作さんはU作さんで「だめです、次はきちんと愛し合って子を作りましょう」なんて返しているのか。尾の頭上を飛び交う会話に眩暈がする。

2023-08-29 21:20:11
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

怖い、なんでこんなことになっているのか、と尾はぐるぐるとうまく回らない頭で考える。でも、この腹の子を一人でも多くの人が愛してくれるのなら、良いのかもしれないなんて思い始めた。彼らが帰るといけない、とは思うのだが二人に挟まれるとあっという間に揺らいでしまう。

2023-08-29 21:34:58
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まとめたひと
にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

かれーの二次垢。krad/🐰🐉/勇尾/源頼光推し推し FGO/チェリまほ/特撮/金カム 女体化好き ネタバレは容赦なく フォロバ希望の方はリプください 昭和と平成をまたいで令和で生きる年齢18↑ 鍵垢→@kastukare