文字書きではないですが、初めて同人誌を作った時から下手な文章を書き散らかしています お目汚し失礼いたします
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津籠りお🌙修行中 @picmajureon

拾った紙片を開いてみた。角ばった文字列が右上がりに斜めにつながっている。彼はこれをわざと落としたのだろうか。書かれた字は彼が書いたもののように見えたが、似た字を書く他人の字と言われればそうとも思える。 『944 イ 3』 『16:00』 図書室の背表紙にある記号。 俺は教室の時計を見遣った。

2020-04-11 15:20:10
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2. 「峻厳の騎士から報告は」 視線を向けられた側の人間が背を凍らせたように見えた。冷たい目だ、とルーベンは思ったが、彼女がこの可哀想なしもべを毛嫌いしているわけでも、侮蔑しているわけでもないことも知っていた。単に、生まれつき、そういう目を持って生まれただけなのだ、この王は。

2020-04-11 15:36:36
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3. 夜遅くまで勤務して、そのあと飲みに行く習慣は元々ない。誘われても断ってしまう。そのうち無理な誘い自体がなくなった。院長の息子だから、というのもあるだろう。 しかし今日は、その院長自身から命じられたのだ。そんなことを言われたのは初めてで、雨竜は頬の筋肉が緊張するのを感じた。

2020-04-11 15:41:33
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4. くそみたいな鈍重な尻に、無言で蹴りを入れた。こいつはいつもそうだ。余計な一言、余計な一歩、余計で目障りで、それでも可愛い私の末弟。 「姐ちゃん、おれ」 情けない声だ。蹴られて膝をついた弟の頭上を相手が投げつけたナイフが通過していった。引き攣れた左頬の傷が疼く。私は笑っていた。

2020-04-11 15:49:02
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5. そこには全てがあるように思えた。祖母は目を細めて私達を眺めている。 手を伸ばすと、掴もうとした背表紙が上のほうへ逃げた。 「あんたにはその本はまだ早い。手が届く本を読みな」 架空空間にある書庫には、古今の日本のコミックが溢れかえっている。祖母は他の大人のように問いをはぐらかさない

2020-04-11 16:13:10
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6. 女神とは普遍性のかけらである。或いは総体である。 あらゆる女性性を切り分け、役割を縦に割って煮詰めたような存在が、享の頭に割って入る。 あのひとを愛している あのひとを憎んでいる あのひとのそばに あのひとから離れて 拓弥への気持ちが、乱されて混乱する。触れたい。触れたくない。

2020-04-11 16:21:03
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7. 砂織は、授業で発言を求められると、もともと白い肌がピンク色になる。鼻の上にうっすらとそばかすがあるのを気にしているが、僕にはそれさえ魅力的に思えた。顔まわりの髪を頭の高い位置で結んでいる。ハーフアップというらしい。瞳を覗き込むとオリーブ色に茶を混ぜた不思議な色だった。

2020-04-11 18:43:38
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8. その、濃い色の肌をただ、美しいと思った自分に迦緑は戸惑いを覚える。想い人とは重なるところのないそのひとの目が、あまりに優しかったからだろうか。憐憫でも支配でもない感情を向けられることに迦緑は慣れていない。 朝陽が皇子の瞳を橘の色に染めている。大きな体躯は陽光の化身のように見えた

2020-04-11 20:37:45
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9. 「アロウの神よ、アロウスクへ!ニイルの神よ、ニイルスクへ!」 青年の背から大きな二対の翼を持つ何かが飛びたった。白い翅の方が先に魔物の頸に喰らいつく。遅れて黒い翅のそれが尾を突いた。猛禽のように見えるが、見ている二人にはそれが何なのかうまく認識出来ない。魔物はみるみる形を失う

2020-04-11 22:09:13
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10. #雨・僕・嘘で文を作ると性癖がバレる 雨は嫌いだ。あの日も雨だった。 世界中で最後の一人になったあの日。でも今朝は、僕の隣には君がいる。 古いアパートから湿った雨の匂いがするような気がした。寝返りをうつと、その背中を大きな体が包み込んでくれる。 これから君に嘘をつく、僕の背中を。

2020-04-12 05:49:51
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11. 「君のからだは確かに君だけのものなんだけど」 「君の存在を知ってしまった全部の人間のものでもあるんだよ 勝手に消さないでくれ」 無慈悲で慈悲深い言葉。

2020-05-31 00:39:30