徹夜してまでWC観に来た結果がコレかよ。
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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「そして、」 花宮の方を振り向いた。 「オレ達のヒロインは…2階のスタンド席。あのメガネのコかな。(ばちん」

2014-12-29 11:45:03

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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「試合に先立ちまして両チームの紹介を行います。初めに黒のユニフォーム、桐皇学園高校」 きたぞ!会場中の女の子の視線を独り占めにするとき! 「監督、花宮真」 さあ次だ! 花宮の名に観客がざわつく中、オレは意気揚々とベンチから立ち上がった。なかなか静かにならない。あ…れ…?

2014-12-29 12:00:06
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「試合に先立ちまして両チームの紹介を行います。初めに黒のユニフォーム、桐皇学園高校。引率教諭、原澤克徳」 監督おらん!? それに引率教諭ってどないなっとんの。 代わりに座っとる奴、アレ誰…ちょお待てや。なんでお前がそんなトコおんねん… 「監督(コーチ)、花宮真」 花宮──!?

2014-12-29 12:00:12
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「監督が大学生ってアリなの!?」「花宮ってあの花宮?」と、開場内が一気にざわつく。「アシスタントコーチ、森山由孝」というアナウンスが聞こえたのはワシだけやと思う。 「きっとアイツが原澤監督に何かしたんすよ」 若松の意味不明な予想を遮った。 「ほんなら何で花宮があそこ座っとんの」

2014-12-29 12:05:03
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「アシスタントコーチ、森山由孝」というアナウンスは周囲のどよめきに完全に掻き消された。 これじゃ運命の相手がオレに気付かないじゃないかー!!(泣) せっかく森山由孝至上初の大舞台に立ってるのに、こんなのあんまりだ!

2014-12-29 12:05:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「何かあったんやろ。代理頼むにしても即効で全データを頭に入れれんのは花宮くらいやろうし悪くない選択やと思うで」 花宮と目が合う。 「安心せぇ。今日はアイツやる気みたいや」 ダーツで負けたのurx2.nu/fHtLチャラにするとかゆうしょーもない理由やろうけど。

2014-12-29 12:10:09
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

曲がりなりにも、今、オレ、WC決勝戦の舞台に立ってる! いかん、まだ試合始まってもないのに涙腺が緩んできた。 高校生の頃のオレ、就活してた頃のオレに伝えたい。何も落ち込むことはない。ムダなことなんて何もない。その過去が今のオレを最高の場所に連れて来てくれた。 TIP OFF!!

2014-12-29 12:15:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

勢いで来たはええが、WC決勝戦の舞台に他人が立っとるのを見てまうと、次第に気持ちが冷めてくのを感じた。こんなん他人事やん。座ったせいかどっと疲れが出る。あかん、まだ試合始まってもおらんのに目ぇかすんできたわ。 高校生の頃のワシはなーんも変わらんやん。 試合開始のブザーが鳴った。

2014-12-29 12:15:06

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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

8点リードを許し迎えたハーフタイム。首から右腕を釣った原澤監督がコートに現れた。「焦りましたよ」と言いつつも冷静に左手で髪を捻っている。 「森山君。私がいない間、ありがとうございます」 「いえ、オレは何も…!」 「ピンクのジャージ、今日も可愛らしいですね」 「は、はい…////」

2014-12-29 13:30:03
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「また会いましたね、花宮真」 監督は輪から外れて一人ベンチに座っている花宮の前に立った。 「3時間で今までのデータ入れて監督やれとか無茶言ってくれますね」 「洛山相手に一桁差、上々です。よくやってくれました」 「監督交代、ですね」 花宮は笑顔で右手を挙げハイタッチをしようとした。

2014-12-29 13:35:02
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「この腕を見てそういうことをしてくるあたり、やはり君は問題児ですね」 原澤監督は顔をしかめた。 「ふはっ。すみません、うっかりしちゃって!」

2014-12-29 13:40:05
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

ブザーと同時、祈るように放たれた最後の3Pは、危なっかしく宙を漂った末にゴールに吸い込まれた。 「試合終了──!! ウィンターカップ優勝は桐皇学園高校──!!」

2014-12-29 15:00:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「試合終了──!! ウィンターカップ優勝は桐皇学園高校──!!」 最後の最後、意地のブザービーターが勝敗を決した。なかなかおもろい試合ではあったわ。 ……ちょお、原澤監督泣いとる…!? キャラ違うやろw 目をこらしたけど、ここからだと遠くてよお見えん。 ほんま、遠すぎるわ。

2014-12-29 15:00:16
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

ブザービーターを決めた選手をオレも監督も一緒になって抱きしめる。 「ケガ人なんですから手加減して下さいよ」 そう言いながらも原澤監督は嬉しそうだ。この人もこんなふうに笑うのか。 “あの萎びた昆布が潤いを取り戻したら、親友と教え子、夢の共演だと思わんか” 見てますか、武内監督?

2014-12-29 15:05:03

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

赤司が選手達一人ひとりの首にメダルをかけていく。 「そろそろ行きませんか」 隣の桜井が絞るように声を出した。 「…せやな」 「表彰式、最後まで見てかねーんすか」 「監督に挨拶くらい…」 「もうワシ眠くて眠くて適わんのや〜」 若松と諏佐に引き止められたが、もう限界やった。何もかも。

2014-12-29 15:30:08
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

@tos 2階のスタンド席を見上げると、今吉は帰るところだった。隣にいるのは誰だ…? 遠ざかる後ろ姿があまりに哀愁に満ちていたから、気付いてしまった。去年、オレに散々いじわるを言ってきた真意に。説明会で再開を果たしたとき、今吉に手を差し伸べてやれば良かった。オレはいつも遅すぎる。

2014-12-29 15:35:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「桜井、ありがとうな」 会場の外は風が冷たかった。 「スイマセン、ボクも感傷的な気分になっちゃって」 ポケットに手を入れようとしたら、いつの間にか中に入っていたはずのチケットの半券をなくしていたのに気付いた。もうあそこに戻ることもないからええか。 「あのときパスミスしなければ、」

2014-12-29 15:40:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「あそこに立っていたのはボクだったのかな、なんて後悔ばかり浮かんできて…もう5年も前の話なのに。ネガティブでスイマセン」 そのネガティブさに救われるときもあるんやで。 「ワシも。今さら監督に“7年前の約束、果たしましたよ”なーんてキメ顔で言われても、どんな顔してええかわからんわ」

2014-12-29 15:45:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「面倒事は諏佐に押し付けるに限るわw」 諏佐さんはいつも損な役回りですね、と桜井は笑った。 「…でもな桜井、徹夜明けで眠くて堪らんのはホンマやねん。ちゅーわけで、今晩泊めてくれへん?」 「わざわざ東京まで来てくれたんでいくらでも!夕食も付けます!あ、スイマセン言い忘れてました!」

2014-12-29 15:50:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「おかえりなさい、今吉さん」 これから桜井に話さなきゃならんことを考えると、“ただいま”とは返せへんかった。

2014-12-29 15:55:05

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ここどこや…? どこもかしこもぴんくい…女子の部屋? 「おはようございます、今吉さん」

2014-12-30 00:00:31
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「ウチに着くなり電池が切れたように寝ちゃったので、ベッドに移動させてもらいました、スイマセン!」 そうや、無理やり仕事納めして新幹線に飛び乗ってWC観て…走馬灯のように一気に記憶が流れこんできた。 「ごはんにしますか? お風呂にしますか?」 「ほな風呂で」 さすがに2択やんなw

2014-12-30 00:05:11
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

うっわw シャンプーごっつええ匂いw ボトルもくまさんのに詰め替えてあるし、スカルプDとはエラい違いやわw 桜井ん家の風呂入ると、彼女ん家泊まりきたようなヘンな気分なるなーw わっはっは。

2014-12-30 00:20:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「青峰サンも来れたら良かったんですけどね」 「大阪なら思いつきで来れるけどアメリカは遠すぎるわ。それにアイツこんなん興味ないやろ」 桜井がテーブルにお茶と料理を置く。うまそうやけど、ワンプレートランチっちゅーよりお子様ランチやなw 「…こんな時間にメシ作らせて悪いな」

2014-12-30 00:40:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「これから原稿やろうと思ってたんで大丈夫です!夜更かししてスイマセン!明日は早寝します!」 「ワシはお前のオカンやないしそこは好きにしたらええわ」 「スイマセン!」 「もう謝らんでええ」 「スイマセ…じゃなくて…」 「謝るのはワシの方や。ホンマは今日も店?出すつもりやったんやろ」

2014-12-30 00:45:06
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「来年はコミケの方に行き」 桜井は目を大きく見開いた。 「来年も、その次の年も。これから先ずっとや」 12月末だからやろうか、メシがみるみる冷めてくように感じた。 「すまんな。今まで付き合わせて」 「いえ…っ、ボクは好きで…」 「この言葉の意味がわからんほどお前はアホやないやろ」

2014-12-30 00:50:09
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「とっくに終わってたんやて」 本当はもっと早く言うべきだった。 ──ワシらも、もう終わりにしようや。

2014-12-30 00:55:07

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