モブがよく喋ります。 (ちょっと加筆修正したものを、まとめ本に収録)
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めしこ @mogmog_meshiko

燭へし書いてる20↑/まもなく脱走しそう https://t.co/PEdidAAvwW

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めしこ @mogmog_meshiko

高校三年の長谷部くんと光忠くんは同じクラスなのね。そろそろ文化祭の時期が近付いてきて、三年生は演劇をやることが決まっているから、何をやろうかってクラスで話し合うんだ。 その話し合いの日に、長谷部くんは親戚集まりの関係で行けなくって、光忠くんに「おまえに任せた」って託しました。 ↓

2019-09-10 23:07:27
めしこ @mogmog_meshiko

演目は『眠れる森の美女』にしようって前々から決まってたから、まぁ俺は大道具とかにさせられるかなって想定してたんだ。長谷部くんはね。 でも次の日、学校行ったらびっくりじゃん。配役表が模造紙に書かれて教室の後ろに張り出されてるんだけど、まず王子役は光忠くんなのよ。 ↓

2019-09-10 23:08:29
めしこ @mogmog_meshiko

分かる、きっと満場一致だったんだろうなって容易に想像できる。問題はなぜ主役である王女役が俺なんだ!?って長谷部くん大混乱。 まず教室入った時から、女子達の獲物を狩るような目線を感じていて、おかしいなとは思っていた。 「あ、長谷部くん…いや、ご機嫌いかがかな?マイプリンセス」 ↓

2019-09-10 23:10:06
めしこ @mogmog_meshiko

「誰が、誰のお姫様だ!一体どういうことだ、これ!」 その説明は、クラスの女子たちがしてくれた。なんでも光忠くんの王子役は、それこそ女子も男子も満場一致で決まったらしい。本人も快諾してくれた。 さて、じゃあ王女役はどうするか…となった時に女子の目は一斉に血走った。 ↓

2019-09-10 23:11:00
めしこ @mogmog_meshiko

血に塗れた女の戦いが始まる…かと思ったのだが、意外にもそうはならなかった。 「え、長船くんの横に並んで王女役?わたしには荷が重い」 「作画の画素数が合わない」 「正気を保っていられる自信がない」 あわや、このままじゃイマジナリー王女を元に光忠くんが一人芝居をするしかない… ↓

2019-09-10 23:11:58
めしこ @mogmog_meshiko

そんな時に誰かが呟いた一言。 「長谷部がやれば良いじゃん。長船の隣に立って、軽口叩けるのってあいつくらいだろ」 天の一声だった。満場一致だった。反対すべき男はその日いなかったのだから。 「な、んでおまえ反対しなかったんだよ!?」 「えぇ?だって反対する理由がなかったもん ↓

2019-09-10 23:12:59
めしこ @mogmog_meshiko

僕は長谷部くんとなら、最高の舞台を作り上げられるよ」 こいつに任した俺が馬鹿だった、嘆く長谷部くん。話し合いの日にいなかったのは自分なので、いまさら意見もできない。そして昨日の今日だと言うのに、クラスは早くも文化祭ムード一色。一刻も早く衣装制作に取り掛からなきゃいけないから ↓

2019-09-10 23:14:40
めしこ @mogmog_meshiko

長谷部くんは放課後に女子のメジャーの餌食になった。 「えっ…ほっそ、は?」 「何この細さ…コルセット巻く意味ある?」 「ちょっと衣装チーフ!これパニエでふんわりより、マーメイドラインでスリット深く入れた方が、長谷部くんの美脚を生かせると思うんだけど」 「うん、僕もそう思う」 ↓

2019-09-10 23:15:55
めしこ @mogmog_meshiko

いや、止めろよ、思ってるなよ。 王子のお墨付きをもらったことにより、デザイン案に修正が入る。 とんでもないドレスの作製が始まるのを止めたかったのだが、演者は出来ているところから、台本を読み合わせていかなくてはならない。あぁそういえばこんな話だったか…とぼんやり台本を読んだ。 ↓

2019-09-10 23:21:54
めしこ @mogmog_meshiko

一週間後、台本が出来上がったということで、読み合わせをする二人。 「長谷部くん、滑舌良いよね。ぜんぜん噛まない」 「おまえは覚えるのが早いよな。自分のセリフ以外も、ほとんど覚えてるだろ」 「まぁね、だって長谷部くんと高校最後の文化祭で演劇が出来るなんて、とっても楽しみで」 ↓

2019-09-10 23:22:59
めしこ @mogmog_meshiko

あぁ、そうだろう。なんたっておまえは王子役だもんな。そんなおまえの相手は女装の王女様なんだが、それで良いのか?…言ったところで、どうせ肯定の返事だろうと想像できたので、敢えて聞かなかった。 そして日にちは過ぎ、衣装のベースが出来たので、試着をしてみることに。 ↓

2019-09-10 23:23:50
めしこ @mogmog_meshiko

「ちょ、ちょっと待て…なんで王子の衣装が燕尾服なんだ!?もっとこう…かぼちゃパンツみたいなのに、白タイツとかじゃないのか!?」 「長船くんに似合う衣装を考えたときに、燕尾服が最高という話になりました。異論は認めません」 「いや僕も白タイツを覚悟したんだけど、嬉しい誤算だよね」 ↓

2019-09-10 23:24:29
めしこ @mogmog_meshiko

確かにとんでもなく足の長い光忠くんに、燕尾服がとてつもなく似合う。艶黒の王子の誕生である。一方の長谷部くんはというと 「やっぱりピンク薄めにして、紫強めにして良かったね。これ誰のアイデア?」 「カラーコーディネーター検定持ってる、美術部の先生に相談した」 「話が壮大すぎる」 ↓

2019-09-10 23:25:16
めしこ @mogmog_meshiko

ジャストサイズに仕立てられたドレスの胸元は、本来無いはずの膨らみがはっきりと主張していた 「これ何入れてるの?シリコンパッド?」 「揉むな、変態王子」 「最初は手芸用の綿にしようと思ったんだけど、リアリティは大事だよねって結論に至って、女子で募金を集めて奮発して買いました」 ↓

2019-09-10 23:33:51
めしこ @mogmog_meshiko

「なぜ誰も止めなかった。そこにリアリティは必要だったのか…?」 「さすがだね。ただ長谷部くんだったら、もう少し控えめなサイズのほうが良いかな?」 「だから揉むな」 「なるほど、王子の仰せのままに」 長谷部くんのドレスは、当初の予定の通りマーメイドラインのすらっとしたドレス。 ↓

2019-09-10 23:34:37
めしこ @mogmog_meshiko

確かにふんわりのレースごてごてよりは、こっちの方がマシかなって思った。思いはしたんだけど、このスリットは果たして誰のためのサービスなんだろうって長谷部くんは頭を抱えている。 当然、ウイッグも被らされるんだけど縦巻きロールなんて長谷部くんには似合わない!ってことで、 ↓

2019-09-10 23:35:15
めしこ @mogmog_meshiko

ストレートのセミロングの毛先だけ緩く内側に巻いたウイッグ。これがまた似合うもんで、メイク班も本気を出す 「まつげ、なっが…つけまつげいらない」 「ビューラーでめっちゃ上がる…感動」 メイク道具の中に、ところどころ高い化粧品が混ざってる気がするが、俺は知らない、知らないぞ… ↓

2019-09-10 23:36:21
めしこ @mogmog_meshiko

ちなみにリップとチークを、赤系かピンク系かオレンジ系かで女子たちの間で内乱が起こりそうだったけど、王子の一声で即決したから、世界の平和が保たれた。 「うん、やっぱりこの色が似合うね」 なんて長谷部くんの顎を持ち上げて、光忠くんがにっこり笑うから、教室は黄色い声援で沸いた。 ↓

2019-09-10 23:36:49
めしこ @mogmog_meshiko

いよいよ本番。一体どこのツテを使ったのか、とても学校の演劇とは思えないフライヤーに誘われて、長谷部くんたちのクラスの演劇は満席どころか、立ち見客でもいっぱいとなった。 長かった、今日まで長かったけど、ようやくお披露目だ。みんなハイになっていて目が血走ってる。 ↓

2019-09-10 23:47:13
めしこ @mogmog_meshiko

そんな全員を最後に鼓舞したのは王子の一声だった 「みんな今日までお疲れさま。本当にありがとう…僕は長谷部くんと、幸せになってくるよ」 歓喜で咽び泣く女子、祝福の声を上げる男子。一人ただ冷静になって緊張もどこかに行った長谷部くん。舞台の幕が静かに上がった。 ↓

2019-09-10 23:47:52
めしこ @mogmog_meshiko

王子が一人、茨に包まれた城へ乗り込む姿に会場は静まり返った。剣を振るう王子、燕尾服の裾がまるで踊るように揺れる。あぁ、このシーンだけをずっと見ていたい…会場の誰もがそう思っていた。実際、ここのシーンはかなり尺を伸ばした。光忠くんはアクションシーンばりに、ここのシーンを練習した ↓

2019-09-10 23:48:24
めしこ @mogmog_meshiko

そして王子は眠る王女のもとへと辿り着く。舞台上の照明は限りなく落とされて、スポットライトが二人を包み込む。会場を緊張と期待(?)が満ちる。天幕付きのベッドに横たわる王女、長谷部くんにそっと近付く王子、光忠くん。そう、ここはあの有名なキスシーンである。誰もが知っているキスシーン ↓

2019-09-10 23:55:04
めしこ @mogmog_meshiko

当然、ここのシーンを外すわけにはいかない。客席からあたかも「している」ように見えるように、ということで練習を重ねてきた。 唇と唇が触れ合っていなくても、角度によってはそう見えるものだ。しかし今日の長谷部くんには考えがあった。この本番で光忠くんを、ぎゃふんと言わせたい。 ↓

2019-09-10 23:55:35
めしこ @mogmog_meshiko

王子光忠くんが、ベッドを覗き込む。軋むスプリングの音がやけにリアルで、会場はごくりと喉を鳴らす。何度も練習を見ているクラスメイトも、同様に。長谷部くんはこの時、目を閉じているから知らないけど、光忠くんはとっても優しい目で見ているんだ。客席の大人たちは思わず、子供の目を覆った。 ↓

2019-09-10 23:56:23
めしこ @mogmog_meshiko

そして近付く二人の唇…練習では位置をずらして、頬のあたりに唇が触れないくらいの距離で、長谷部くんが目を覚ますって段取りだった。 自身に覆い被さるように近付く、光忠くんの燕尾服のネクタイを、長谷部くんが引っ張る。もちろん、セットに隠れて見えないように、上手くだ。 ↓

2019-09-11 00:06:09
めしこ @mogmog_meshiko

急に引っ張られる上体に、光忠くんの腕に力が入り、スプリングが大きく軋んだ。 目を覚ましていないはずの王女は、誰にも見えないように王子のネクタイを引き寄せて、その唇を奪った。思わず目を見開く王子、だけどそんな悪戯っ子で大胆な王女も、彼にとっては魅力的にしか映らない。 ↓

2019-09-11 00:06:50
めしこ @mogmog_meshiko

ゆっくりと目を覚まし、起き上がる王女。にやりと口角を上げて、見せ付けるようにぺろりと唇を舐める。王子は緩んだ目尻で、にっこりと笑った。さぁ、物語はハッピーエンド!大団円だ! ざわつく舞台裏、嗚咽の混ざった歓喜に包まれた会場、スタンディングオベーションと鳴り止まらない拍手。 ↓

2019-09-11 00:09:07
めしこ @mogmog_meshiko

「いま…した?」 「したよね…絶対に」 「しかも王女のほうから…?奪っちゃったってか?」 「っ…むり…さいこう…ありがとう文化祭」 舞台裏で息絶えた男女問わずのクラスメイトのせいで、カーテンコールに時間が掛かったが、演劇は無事に終わりを迎えた。 ↓

2019-09-11 00:10:07
めしこ @mogmog_meshiko

言うまでもない、出し物投票のグランプリはこのクラスだ。 以降、この学校では『眠れる森の美女』の演目をやると、その王女と王子役は結ばれると、噂になったとか、ならないとか。 そんな、眠れる森の美女の燭へし! ↓【参考にしたもの】

2019-09-11 00:11:29
めしこ @mogmog_meshiko

診断メーカーより めしこの燭へし のBL本のタイトルは「ソルティラヴァーズ」で、帯のフレーズは【 誰が誰のお姫様だ! 】です。 #あなたのBL本 shindanmaker.com/670596

2019-09-11 00:11:57
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まとめたひと
@mogmog_meshiko

今日も、明日も、燭へし書くよ。