DK尾の男子校パロ

にじかれー🦄🦛🐰🐉🌸🐈 @nijikare2

【杉勇尾DKパロ】男子校に通う三人。全寮制なんだけど、入寮の際に三つの寮に別れることになる。（くじ引き）沈丁花（赤）、梔子（白）、金木犀（黄）の三つ。尾は金木犀で学ランの詰襟に黄色いラインが入ってる。二年生になった尾はちょっと憂鬱。なぜかと言うと新入生として異母弟が入学するから。

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尾の父親は国会議員の花沢幸次郎で旧財閥の花沢家の入り婿。家で肩身が狭かったのか女遊びが悪癖だった。銀座の高級クラブのホステスをしていた尾の母親を孕ませ手切れ金を渡して下ろそうとした。でも尾の母親は下ろすことはせず、腹の子がいたらもしかしたら、と言う希望があったのかもしれない。

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尾が生まれても父親は母親の下に戻ることはなかった。何故なら、本妻との間に男児が生まれたのだから。本来ならもう一人くらい子供が欲しい所だが、そうは上手くいかなかったのだろう。そもそも花沢の血は本妻のほうなのだから、尾には何の権利も無いのだ。その事実を母親は受け入れられなかった。

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日々狂っていく母親を幼い尾は見ている事しかできなかった。10の時に母親は自ら命を絶った。その時に本来であれば祖父母に育てられるはずだったが、父親に縁のあるという男が現れた。鶴見という男は父親の後援会をしているらしいが、正直父親の指示とは思えなかった。しかし尾を進学させたのはこの男だ

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尾は成績優秀だったため、また鶴見のコネがあるらしく入学金、授業料、寮の費用などが免除されていた。尾は弓道部に入り優秀な成績を修めたこともあり、教師からの評判はそこそこだった。同級生の宇佐美や野間などとは親しくしている。ちなみに宇佐美も鶴見に誘われて入学した口だ。柔道部に入っている

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そしてこの学院の特徴は兄弟制度だ。兄弟と言っても血の繋がりをさすわけでは無く、上級生が下級生を特別な存在として認めている、というものだ。必ずしも恋愛感情とは言えないが、それに近い感情を持っているらしい。兄弟の契約を結んだ二人はそれぞれの大切なものを彫ったタイピンを送り合う。

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なぜ学ランなのにタイピンかと言うと、大人への一歩を踏み出したねﾆｯｺﾘという事らしい。尾は一年の時から話題の学生だった。成績もよいし、見目も良い。弟に、と言う話は何度もあった。ちなみに宇佐美は「僕は篤四郎さんの弟（仮）だから！」と兄も弟も作る気はないらしい。

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尾も兄を作る気はないので、かぐや姫よろしく無理難題吹っ掛けて断り続けた。そんな折、鶴見から異母弟の入学を知らされたのは年度末の話だ。なんでも異母弟立っての希望らしい。一応学院自体は日本トップクラスの進学校ではあるが、彼にはもっとふさわしい学校があるだろう、と尾は舌打ちする。

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とりあえず金木犀にだけは入るな、と願う。宇佐美は梔子、野間は沈丁花。玉井先生は金木犀の寮監督だ。割と甘い先生なので、生活しやすい。そして入寮日は新入生の寮分けを見るのだ。今年の新入生は90人ほどだ。その中で一際目立つ新入生がいた。身長は既に175以上はあるだろう。小柄な尾より大きい。

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ちなみに尾は170（自称）だ。宇佐美は168（養護教諭家永調べ）まだまだ伸びるはず。そしてその新入生はえらく顔が良かったそしてその顔が良い新入生は二人いる。あれは双子か？と周りも噂する。だがふとそのうちの一人と目が合った。その瞬間尾は察した。異母弟だと。異母弟は双子だった？と混乱。

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「お前の弟って双子？」っと宇佐美も言う。一人目は杉元佐一、二人目は花沢勇作、どうやら他人の空似の様だ。血の繋がりのある尾よりも、他人の方が似ているなど、皮肉にもほどがある。尾は杉と楽しそうに話している勇を見て、これなら接点を持たなくて済みそうだとほっとする。

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あの顔なら早々に兄もできるだろう。同級生では兄弟にはなれないが、それでも特別なつながりを持つのも少なくない。あの二人もそうなるだろう、と尾は思っている。そして杉は梔子、勇は沈丁花になった。尾は知らず詰めていた息をほっと吐いた。尾は興味を無くして野間の背中に凭れて寝始める。

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良かった良かったーって寮に戻ってご飯食べて風呂入って課題やってたら、内線電話が入る。他寮の人間とはこの電話でやり取りできるが、スマホが普及した昨今では過去の遺物と化している。その内線がかかってきた。沈丁花からで、ランプが赤く光っている。梔子だとランプは白、同じ金木犀なら黄色だ。

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はい、と出ると受話器からは何も聞こえない。いたずらか？こんにゃろう、と思っていると兄様、と小さな声が聞こえた。ぞわぞわ、となにか良くない予感がして尾は電話を切り、電話線を抜いた。バクバクと心臓が破裂しそうだ。尾は荒くなった息を整えて、再び机に向かうが、課題は一向に進まなかった。

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課題は野間か宇佐美に見せてもらう（同じクラスだし）ことにして尾は早々にベッドに入るが、一向に眠れなかった。次の日教室に行くと、宇佐美が聞いて！とくる。何でも昨日の課題は三年の範囲らしく、教師が間違って出したらしい。時間無駄にした！と宇佐美は憤っている。

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尾は良かった、と一息つく。ちなみに尾の担任は門倉（地学）だ。宇なんかは門倉にお仕置きする！と怒っている。はは、と尾は笑うがどうにも昨日の電話が気になってしまう。まさか、異母弟が？と思うが電話をかけるには寮と部屋番号を知らないといけない。入寮した日に聞き出すことなど可能なのだろうか

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少なくとも尾にはできない。しかも兄様など、兄弟制度でも呼んでるやつはいない。まさかな……と思いながら一日を過ごしていると昼休みにランチルームに向かおうとすると、急に野が尾の腕を引く。なんだ？と聞くが、野はちょっと来いしか言わない。日本語不自由かよ、と思いながらついていく。

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そして少人数用ミーティングルームまでやってくると嫌な予感しかしない。その中に入ると、そこにはあの高身長の新入生、勇がいた。お前……と野を睨みつける。そう言えば同じ寮だったな、絶対尾の寮と部屋番号教えたのこいつだ、と確信を持つ。とりあえず腹いせに野の足を踏んでやった。

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いてえと呻く野に、つんとそっぽを向く尾。なぜか着いてきた宇はめちゃくちゃ笑っている。そんな様子を伺いながら、勇は兄様、と話しかける。勇作は兄様の弟になりたいのです、と。それはどういう意味なのだろうかと尾は眉をひそめた。兄弟制度の弟になりたいのか、それとも異母兄弟の弟になりたいのか

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尾がそう聞くと、勇は少し考えたようにした後、両方です、と言い切った。随分と強欲だ、無欲そうな顔をしているくせに、と尾は笑う。勇は泣きそうな顔をして、こんなにも何かを望んだのは初めてです、と言う。尾は再び鼻で笑う。それは渇望しなくても何もかも与えられてきた人間の言葉だと思った。

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渇望しても何も得られなかった尾とは大違いだと思った。その恵まれた体躯も、美しく光を称えた瞳も、まるで太陽と影の様だと。幼少のネグレで肉が付きにくい体、ほとんどものを映さぬ右目、そして肉親。尾には持たぬものを勇はもっている。しかも望まぬともだ。なのにまだ尾から望むというのか。

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尾は冷たい目で勇を見た。その冷たさに勇は硬直する。野が、おいと尾の肩を叩いた。だが次の瞬間、部屋のドアが勢いよく開く。勇作君！ご飯食べようぜ！と来たのは、もう一人の方、杉である。あれ？と勇の様子がおかしいことに気づく。なんだよ、あんたら、と尾たちを睨む。やはり勇とにている。

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杉はおそらく尾たちが勇を虐めているとでも思ったのだろう。鼻で尾は笑う。良いオトモダチがいるなら、意地悪な兄は要らんでしょう、と。髪を撫でつけて、杉が開けっ放しにしたドアから部屋を出た。むかむかと煮えたぎるような感情が胸の中を蠢いている。後ろから着いてきた宇があいつ嫌い、と言った。

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野は遠ざかる尾を見ながら、勇に話しかける。あいつは与えられなかったんだ、だからあんたは随分と酷なことを言ったんだよ、と。それを聞いた勇は目を見開いた。聡い彼ならそれで全てを察してくれるだろう。どうせ尾のことなど調べているはずだから。野は他の二人よりも勇を知る機会があった。

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勇は望まぬものを与えられてきた人間であると。だったらもう少し賢く振舞うべきだと野は思った。そんな野を杉は睨み続ける。野ははぁ、と息を吐いた。そして杉を睨み返す。野も結構いかついし迫力がある。何より尾に対しての態度は気に入らなかった。野は尾を気に入っている。懐かぬ野良猫の様だから。

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杉は少し不貞腐れたような顔をするが、自分がいきなり喧嘩を吹っ掛けた自覚もあるのだろう。杉はごめん、と言ったがそれは尾に言えと言って野は尾たちを追いかけた。杉は気まずそうに勇を見る。お兄さん、なんだって？と聞くと、勇はうつむいた。私は兄様から奪おうとしてしまった、と

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杉はあまり勇と尾のことは分からないけど、なんとなく尾が自分と似たような状況の生徒なのかな、と思った。まぁ、だったら勇作くんから色々してあげたら？って何となくいう。勇はそれを聞いて、うん、と頷いて笑った。一方尾は学院名物キャベツメンチカツパンを食べてもむしゃくしゃしていた。

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一発やってくる、そう言って尾は弓道場に行く。本来であれば授業中は使用禁止だが、尾はそんなことどうでもよかった。さっさと道着に着替える。尾は競技中は右目に眼帯をしていた。ほとんど見えていないので、眼帯をすることは認められていた。自分の弓をとり、先日整えた矢を手に取った。

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ゆっくりと腰を下ろし、まっすぐに的を見る。集中している時は何も聞こえない。静寂の世界で、尾は的を見つめ続けた。そして弓を構え、勢いよく弦を引いて矢を放った。尾はその正確さと速さが強みだった。構えてからの放ちまで異様な速さでもって射抜くのだ。タンッと矢がど真ん中を射抜いた。

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尾はふぅ、と息を吐く。もう一本、と思った瞬間道場のドアが勢いよく開いた。尾が驚いて振り返ると、月島（数学）がいる。額に青筋が浮いていた。時計を見るととっくに５時間目が始まっている。そう言えば５時間目は月島の授業だった。尾は首根っこ掴まれて道着のまま教室に連れ戻された。

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お前は成績優秀だから色々免除なんだからな！と月島にめっちゃ叱られて課題しこたま出される。ぐぬぬ、ってなってる尾をめっちゃ宇と野が笑ってる。でもなんやかんや一緒にやってくれるから、三人とも成績上位。放課後尾は弓道部、宇は柔道部、野は山岳部に出席。弓道部にいくと勇がいた。

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剣道部に行けよ、と尾は内心思う。勇のことは宇が調べて剣道がしこたま強いことを教えられたから。勇は尾を見て、見学を、というのだ。尾は拒む理由はないが、入ってほしいわけでは無い。あなたは剣道の方が実績があるでしょう、これまでの経験を無碍にしてはいけない、と言うと勇は何度か目を瞬かせる

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勇作の心配をしてくださるのですね！と嬉しそう。ちげえと言うが、勇はニコニコしている。邪魔したら殺す、と呟いて尾は的に向かう。集中すれば尾の世界には何人もいない。一人きりの空間だ。ひたすらに的を射抜く。どれもど真ん中に命中する。兄様、そんな時尾の世界に一つの声が響いた。

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その瞬間尾の矢は真ん中から少しずれる。尾はざわめく周囲と、事態を理解していない勇。尾は青筋を立てて勇を道場から追い出した。剣道部に入れ！！と怒鳴りつけた。勇は分からないながらも、申し訳ありません！兄様！兄様ぁ！！と叫んでいた。勇は結局剣道部に入った。滅茶苦茶強く、即戦力になる。

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部活が終わって風呂の時間。寮監督の玉井に呼び止められる。今日真ん中を外したんだってな、って言われてむすっとする。弟とは仲良くしなくてもいい、だが弟という存在位は受け入れてやれ、と頭を撫でられる。どういうことか、と聞けば自分の拠り所になるかもしれないだろう？と言われた。

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そんなもの必要ありません、と言えば玉井はそれでも良い、良い、と言っていなくなる。尾はむすっとしたまま今日は大浴場ではなく手っ取り早く部屋のシャワーで済ませることにした。夕食前に汗を流してしまいたい。夕食は寮の食堂で食べる事になっている。食堂に行くと大分人は少なくなっていた

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腹ペコの男子高校生は夕食の時間に駆け込むことがおおい。今日の夕食は焼き魚、ほうれん草のお浸し、水菜のサラダ、ご飯に豆腐とわかめの味噌汁だ。尾がトレイに食事をとっていると、やあ、と声をかけられた。それは三年の鯉登平之丞だった。全校生徒のあこがれと言っても過言ではないその人だ。

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平は尾を何かと気にかけてくれていた。そのせいでいらぬ因縁を吹っ掛けられることもあるが、それ以上に平といると居心地が良いと思う。剣道部の主将である彼が話しかけてきたという事は、おそらく勇のことだろう。勇が半泣きで剣道部に入部してきたことを話した。

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鯉登家と花沢家に交流があることは予め知っていた。平は勇の太刀筋が良いとか、筋肉も良いバランスで付いているなどを話す。そして最後に、彼の声で的を外したんだって？と聞く。その瞬間尾は苦虫を噛みつぶしたような顔になる。平はくつくつと笑う。やはり兄は弟に弱いよなぁ、なんていう。

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俺も弟の音には弱い、と平は笑う。そういうもんなんですか、と尾は呟く。兄弟として誰かと暮らしたことも無いから、その気持ちも分からない。向かい合って平と座り食事をする。食事に集中するタイプなので、二人とも無言だ。ちなみに尾は米は普通、平は丼山盛り。

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食事を先に追えた平はにこにことしながら食事をする尾を見ている。同じタイミングで食事をするときはいつもそうだ。いつも平は尾を見ているのだ。そして尾が食事を終えると満足そうに笑って、その肩をぽん、と一度叩いて帰るのだ。大きなその手が、尾の心をざわつかせる。

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ちなみに平も尾の兄になりたいけど断りまくってる尾を見て、そういうポリシーかな……って思って遠慮してる。平には兄もいない。尾は自室に戻って課題に手をつける。ちなみに課題が分からない時に良く平に助けてもらったりしている。その課題の答えを映している宇と野もいるから、感謝しろよ！！

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新学期初めての行事は体育祭。クラスの団結を強めようってことでね！普段の行事は基本寮対抗戦だけど、体育祭だけはクラス対抗戦。特にクラス対抗リレーと学年対抗リレーが人気。野は脚が遅い（スキーは速い）宇と尾はリレーの選手。去年はぶっちぎりで平が速かった。今年はどうなるか。

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尾のクラスは第二位だったが、クラス対抗リレーに勝てば一位になれる点差。リレーの番になると自分の弟が出走しているのか、三年の応援にも熱が入っている。その中で「兄様！！頑張ってください！！」という一際通る声が聞こえる。尾は舌打ちする。宇がにやにや見てるし。「お兄ちゃん頑張らないとね」

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尾は勇に応援されたから、という訳ではないけど一応ね、期待されたら頑張っちゃう子。尾はスタートダッシュは良いけど後半バテることもある。一方で宇は後半でスパートをかけるタイプだから、序盤での引き離しが大事。宇が珍しく真剣な顔で「転ぶなよ」って肩を叩く。尾もうん、と頷く。

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スタートの合図で選手が走り出す。尾は４番手、宇はアンカーだ。３番手の選手は二位で走っていく。尾はバトンを受け取り、スタートダッシュを決める。最初の直線を駆け抜け、カーブに差し掛かる。走っている間は周りの喧騒も聞こえない。カーブの段階で一位の背中はとらえた。最後の直線が勝負だ。

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最後の直線、一位とはほぼ僅差。「よくやった！百之助！」そう言って宇が走り出す。相手のアンカーも当然速い。宇は最後のカーブまでは僅差での二位をキープする。そして最後の直線で一気に巻き返して一位を奪取した。得意げに笑う宇に、三年生の中にいる宇へ片思いしている先輩たちが歓声を上げた

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やった〜！と宇が抱きついてくる。これで鶴見さんに褒めてもらえる！ってはぁはぁしてる。パオパオする前に尾は引き剥がす。けどこの逆転勝ちは気分が良かった。すると駆け寄ってくる大きな影。兄様！！！とクソデカボイス。宇も、ゲッと声を漏らす。素晴らしかったです！さすが兄様です！と称賛する。

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兄様の走りは本当にしなやかでまるで猫科の動物の様で～！などと称賛するが、尾は聞いてない。一年のリレーで三人抜きで一位ゴールした勇に何を言われても響かない、はずだが引くりと口角が震える。ふい、と顔をそむけると、フィールドには平がウォーミングアップをしている。

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目の良い尾は平がほほ笑んで手を振ったのが見えたので、ちょっとだけ小さく手を振る。ぺかーっと嬉しそうに笑う平が見えて、ちょっと恥ずかしくなる。勇がそれを見て、すっと目を細める。兄様、と尾の手を取る。「学年対抗でもし一年生が一位になったら、私と一緒にお茶をしてくださいませんか？」