元ツィート
SNIPED-off
2020/08/10(月)【1/3】https://twitter.com/tsuiyotsuitaro/status/1292736862432321546
2020/08/12(水)【2/3】https://twitter.com/tsuiyotsuitaro/status/1293348699666407425
2020/08/14(金)【3/3】https://twitter.com/tsuiyotsuitaro/status/1294181312941576192
CM
ID:INVADED イド:インヴェイデッド
2020年冬アニメ
監督・あおきえい×脚本・舞城王太郎
https://ch.nicovideo.jp/id-invaded(ニコニコチャンネル・コメントOFF推奨)
https://gyao.yahoo.co.jp/store/title/204711(GYAO!)
第一話無料公開中(2020.09.17時点)
ID:INVADED イド:インヴェイデッド #BRAKE-BROKEN
ヤングエース連載中
漫画・小玉有起×原作・舞城王太郎
https://seiga.nicovideo.jp/comic/45740(ニコニコ漫画・アカウント必要)
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS02201410010000_68/(コミックウォーカー)
第一話・最新話無料公開中(2020.09.17時点)
イドの世界が君を待ち受ける
月曜日分(1/3)
小説版『龍の歯医者』準備中。
#idinvaded #イド #イドインヴェイデッド #VSvirus #第2話 #第3話 #ATX #月曜夜18時から #水曜朝10時から #金曜深夜26時から #IDOFF #スピンオフのようなもの #世界観の繋がり不明 #SNIPEDoff #月曜は最初の三分の一 #非公式 『SNIPED-off』
2020-08-10 17:17:40伯父は俺のことをマークスマンと呼んだ。優秀な狙撃手のことだ。実際俺は仲間の中では一番のキジ撃ちだったし鹿撃ちだったし熊撃ちだった。
2020-08-10 17:18:15「なんかコツとかあんのかよ」 と俺に銃を教えた伯父自身が訊いてきたとき、俺はとっておきの極意を教えてやった。 「息は吸って吐くんじゃないんだ。入れて、消すんだ」
2020-08-10 17:18:33消す、としか言いようがなかった。俺は狩りのとき、息を吐いた覚えがない。口と鼻の穴を通して俺の中に入った空気が俺の中のどこかで消えてしまうのだ。
2020-08-10 17:19:12どんなスポーツでも競技でも格闘でもそうだろうけれど、最終的には呼吸が大元だ。呼吸が整えば脈拍もそれに従うし、血の流れがコントロールできれば筋肉も神経も自在になる。
2020-08-10 17:19:28俺は氷点下20度でも息を凍らさずに呼吸できるし、砂漠の真ん中の屋根すらない瓦礫の中で汗もかかずに半日ただ待つことができる。ただできるんだ。やり方を分解して説明できたり誰かに教えたりはできないだけで。
2020-08-10 17:19:43痛みというのは地面に倒れ、最初のショックが去り、なんだかわからないままとりあえずこの場を離れよう、逃げ出そう、とするその瞬間の身動ぎから始まる。弾丸が筋肉の繊維をゴリゴリとやるからだ。
2020-08-10 17:20:48この最初の痛みを狙撃された相手が避けることはほとんどできない。不意を突かれたことでアドレナリンの適用が間に合わないのだ。 体も脳もクリアなまま、この最初のバイトを味わう他ない。
2020-08-10 17:21:05バイト、というのは言葉のまま俺の弾丸が獲物を噛みつくことであり、そのとき俺の感覚では俺が噛み付いている。弾丸は俺の歯で、随分な出っ歯ってことになるが、俺はその飛ぶ歯で獲物をガブリとやるのだ。
2020-08-10 17:21:20俺は軍隊に入る。そこで虐められる。 最初それに気づかなかった。俺はずっと仲間に囲まれていたし友人も多かった。正直誰かと怒鳴り合うような喧嘩をしたこともなかったし暴力なんて自分とは遠い存在だった。
2020-08-10 17:21:31なのに俺のことを変な名前で呼んだりどんなことにせよ俺のやることをからかったり囃し立てたりしていて、それからすぐに俺の尻を蹴ったりするようになった。
2020-08-10 17:21:46喧嘩というのは不思議な営みだ。 それは怒りの激突などではないのだ。 簡単な気まぐれ、いわゆるちょっかいからぼんやりと始まる。大抵ちょっかいをかける側は笑っていて、かけられた側が怒った時点で大体終わる。
2020-08-10 17:22:06「おいおいふざけてただけだよ、カッとするんじゃねえよ」 と言って相手は俺の首の後ろに腕を回す。 俺の怒りはどこかに消える。尻を蹴られたという恥と悔しさは霧散することがないが、でもどこにも出すことができない。
2020-08-10 17:22:29「わりいわりい」 「なんでお前そんなとこ突っ立ってんだよアハハごめんごめん怪我ない?」 「えっ、ちょ、お前、何怖い顔してんのよわざとじゃねえよ」
2020-08-10 17:22:42俺のことを殴り、そんな台詞でケムに巻きながら最後は銃床で俺のこめかみをえぐってきた。倒れ込んだ俺は信じがたい思いだった。今何が起こったのか、全く理解できなかった。
2020-08-10 17:23:39実際脳が揺さぶられて何も考えられなかったし、左耳を濡らす温かい液体が血であることに気がついて完全パニックになっていた。 でも、俺は気づく。
2020-08-10 17:24:07俺が森で撃っていた獲物たちも、地面に倒れてじっとしてる間はただパニックなだけで自分が狙撃され、その一発ですでに仕留められていること、あるいは少し逃げたとしてもとどめを刺される運命にあることを理解できないものなのだ。
2020-08-10 17:24:29そしてその動物たちと今の俺は同じだ。 やられてることを理解できていない。 俺はライフルを握って俺を見下ろし、いつも通りにニヤつこうとしている男の目を見る。
2020-08-10 17:25:00目元まではニヤニヤできているが、瞳には冷たい殺意がある。 そりゃそうだ。ライフルの銃床で人の頭をぶん殴ってきたのだ。
2020-08-10 17:25:12それも急所を。 でも、と俺は思う。撃たれたわけじゃない。俺の中に銃弾はない。左のこめかみはそこに心臓がワープしてきたみたいにバックンバックンいっているし視界がぼやけ、ぐらついているが、致命傷ではない。
2020-08-10 17:25:33本気で俺を仕留めるつもりだったら俺の顔面の左側は陥没していたはずだ。 つまり相手はまだ殺意でチラチラ火遊びをしている段階だ。 でも俺は? 俺の銃が遊び道具だったことは一度もない。 そうだ。
2020-08-10 17:25:49俺は随分ぼけっとしていたが、ここは森なのだ。いつの間にか撃たれる側に立っていたが、マークスマン、起きろ。 お前は寝るんじゃない。お前は撃つんだ。
2020-08-10 17:26:34とは言え実弾を入れてないライフルを構えても仕方がないので銃床で殴り返し、確実に頭部を平らに伸ばしてやろうと思ったが、それに取り掛かる寸前相手が
2020-08-10 17:26:59「そんなつもりなかったんだ。やめてくれ。本当に、俺にそんなつもりはないんだ」 と突然の涙目で言って後退り、そんな言葉俺は全然聞こえてもいなかったけれど、脇から教官たちが突っ込んできて、俺は取り押さえられ、バカは引き離される。
2020-08-10 17:27:39そいつはその五分後に除隊届を出して消える。 おそらく俺が本気になったのを察知したんだろうが、まじで風のように自分の荷物をまとめ、俺が教官たちによって床に押さえ込まれているうちに呼んでもらった車に飛び乗ったらしい。
2020-08-10 17:28:09水曜日分(2/3)
小説版『龍の歯医者』準備中。
#idinvaded #イド #イドインヴェイデッド #VSvirus #第2話 #第3話 #ATX #月曜夜18時から #水曜朝10時から #金曜深夜26時から #IDOFF #スピンオフのようなもの #世界観の繋がり不明 #SNIPEDoff #水曜は次の三分の一 #非公式 2
2020-08-12 09:48:53俺は戦場で撃ちまくる。と言っても狙撃兵になった俺の出番は上からの命令待ちばかりだし、そもそも狙撃の本質は隠れて待つことで撃つことはおまけとかご褒美みたいなものだ。
2020-08-12 09:49:12(当たらなくても相手の足が止まれば成功、みたいな仕事なのだ)。でも俺は結構撃てばちゃんと当てるので重宝されるし、出番は多めだ。
2020-08-12 09:49:33それで呼ばれるままに敵を撃つ。男も女も子供も関係ない。二百メートル、五百メートル、七百メートル、千二百メートル。距離も関係ない。弾は当たる。
2020-08-12 09:49:45俺は銃弾を自作する。弾頭と薬莢と雷管と火薬をそれぞれ自分好みのものを取り寄せて組み合わせる。そうやっているとたまに不良品があるのを見つけることがある。俺は思う。これで撃ってたらこの弾は当たらなかっただろうか?
2020-08-12 09:50:11そんな気がしない。これでも当ててみせただろう。それくらい俺は俺のライフリングに確信があった。もちろん百発百中ってわけじゃなかったのだが、当てると思って撃ったときには当たるものだった。
2020-08-12 09:50:22「凄えな。風やら気温やらで弾丸の飛び方は変わってくるだろう?それをどうやって計算してるんだ?」 別に難しい計算なんてしていない。
2020-08-12 09:50:33そもそも距離のある狙撃の場合、銃弾はまっすぐには飛ばない。初速が落ちれば重力や風に流されることになる。だから基本的には程よく落ちて相手にバーンと当たるように弓形に撃ち上げるのだが、キャッチボールと同じだ。
2020-08-12 09:50:47遠くにいる誰かの胸元に球を投げるとき、高く投げ上げる感覚。あれだ。 「野球か。キャッチボールなんてやったことねえなあ」 野球は道具に金がかかるから、皆サッカーばかりやっている。
2020-08-12 09:51:03俺は父親が野球が好きだったからキャッチボールの相手をさせられていて、子供の頃には何のためにこれをやるのかわからなかったけど父親と遊ぶのは楽しかったし、今こうやって人を撃つのに役に立っていると思う。
2020-08-12 09:51:15あと弾を自作するようになって、弾丸が俺の手足の切り離された一部みたいな感覚になったことも命中率を上げた気がするけれど、それとは別に妙な現象に気付くようになる。 俺の(ほぼ)百発百中って狙撃が、たまに当たらなくなったのだ。
2020-08-12 09:51:29俺は相手に噛みつくようにして銃弾を撃ち込むし、当たるときには当たる前に当たるとわかるしその感覚は完全にリアルで外したことがないのだけれど、弾丸が標的の手前で魔法のようにシュウッと消えるようになる。
2020-08-12 09:51:51