お題「北極星」「初夏」「砕ける」
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小虎丸@短文垢 @kotora_140

キスの味を知った日。夏が先走った様な湿気、裏の竹林から運ばれる咽返る様な青臭い匂い、余韻の様に尾を引く苦味。纏わり付くそれらの中でジッと擦れる音が響く。紙が焼ける音、紫煙の香り、そしてあの人の横顔を、あの日を未だに夢に見る。包み込まれるという感覚を知った、あの日はまだ初夏だった。

2019-05-18 22:00:14
水城弥生 @mizukiyayoi8484

温度差が激しくなり始め、涼しくなった初夏の夜。日付も変わった後に河川敷に寝転がり星をみあげる。一際輝く北極星が夜空を彩っていた。「ん?」しかしその北極星が徐々にこちらへ向かってきて僕の前で砕ける。「な、なに?」草の上に散る粉々になった星の欠片。なんとなく瓶に入れて持ち帰ってみた。

2019-05-18 22:01:12
RAY/※※※ @growler_ray

「見てあれ、北極星だよ!」 「ほんと、明るいね」 無邪気に指した先にあったのは、無数の星の中に煌々と輝く一つの星だった。その光はまさに北極星、そう言って差し支えない 「でも、あれは…」 そっか、君は知らないんだったね。輝くあの星は、何千年も前に私達が逃げ出した故郷という事を

2019-05-18 22:01:24
にゃん @nyan_kotonoha

「外に出ないか」旅の宿で仲間が酔い潰れて退屈したのか、彼が誘う。ずっと気になっていた相手に平静を装い過ぎ、初夏の山の夜は冷える事を忘れていた。「ハックション!」しまった、上着…と思うと同時に、背中から回る温かい腕。「…風邪引くぞ」甘く低い囁きに砕ける私に、北極星の光は優しかった。

2019-05-18 22:03:00
葵 惟 @LsfRim

初夏は嫌いだ。 「もう夏だね〜」 半袖のシャツを着た君が、太陽に手をかざして言う。 袖の隙間からチラリと見える細い二の腕に、僕は無理やり視線を逸らす。 「…あのさ、何か羽織れば」 「いいじゃない。それとも何か不都合が?」 ほら見ろ。 振り返りニヤリと笑って、君は不意に核心をつくのだ。

2019-05-18 22:04:37
夢夜 @ruya_reve

#深夜の真剣140字60分一本勝負(@140onewrite ) #140字小説 『海の星』とはカトリック教会でマリア様を指す呼び名の一つ。そういう聖歌もあります。 pic.twitter.com/SFiDl4peDz

2019-05-18 22:06:22
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秋月蓮華 @akirenge

初夏、私は着物を着て、洋服の彼女と二人で天体観測。 「北極星なら分かる」 「……あの星が」 彼女は星が好き。私はそんな彼女が好きで、 「もしもさ、北極星が砕けたりしたら私、迷うだろうな」 突拍子も無いことを言ってしまう。そんな私に 「なら導いてやる」 凜々しく言うんだから、貴方は。

2019-05-18 22:08:19
じらこ @jirako

愛してるよ。 背に腕をまわし、お姫様抱っこ。 あ! 体を持ち上げようとした瞬間、違和感があったが勢いをつけたから止められない。 腰の骨が砕ける音がした。 あなたの重力に耐えられず崩れ落ちる。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite )

2019-05-18 22:09:21
荻野千影 @ChikageOgino

妙見山の神馬の前、戌の刻 瑠璃色から、紺に落ちていく空の いつもそこに輝いている貴方を探す 何かを掴もうと そっと掲げた右腕から 麻の袖がするすると落ちる くすぐったさと こんな時間に出歩く私を 静かに諫める木の葉のざわめきが 私を包む ーーオン ソヂリシュタ ソワカ どうかあの方の無事を

2019-05-18 22:11:15
@aI_mOOn_fumi

北極星を探した凍てつく夜は瞼の裏にしまってある。君が忘れてしまってもとけて無くならないように、しまってあるから大丈夫。重い上着を脱ぎ捨てて僕ら、初夏を行こう。うかれた素足、木洩れ日の波間を渡ろう。心の砕ける音を知った夜を置いていく。真夏を指して歩こう、二度と追いつかれないように。

2019-05-18 22:13:52
柚峰 @yuzu01mine

真っ暗の空に、光の穴みたいな満月が輝いている。僕らはゆらゆら船を漕いでいるけど、暗い水面は永遠のように広がっていて、とうにどっちが前だか後ろだかわからなくなってしまった。「北極星を探そう」「月が明るすぎて見つからないよ」ガリガリと氷を噛み砕く音がした。君がカクテルを覗き込む。

2019-05-18 22:15:48
花滝ちかる @chikaru_toka

1年前、花飾りの白い帽子を似合うと勧めた俺に、貴女は泣きそうな顔で「嘘は嫌い」と言った。 自分は女らしくないし可愛くもないと俯く貴女に、俺にとって一番可愛らしいのは貴女だと言い続けた。 今、俺の隣には、はにかんだ笑顔の白い帽子の恋人。胸元まで伸びた髪を、初夏の風にふわりと揺らして。

2019-05-18 22:18:38
KTQ @wholiveo

「お兄、北極星ってどれだっけ?」 従妹が来ていた。この辺りはやっと信号機が立ったくらいの僻地で、街と星空が違うのだ。 北斗七星とカシオペアを指し示した。 「そうだ! 昔も教わったよね!」 年頃になった従妹を相手に、内心で俺の心は砕けそうだった…接し方がわからない。初夏の夜風が涼しい。

2019-05-18 22:19:43
春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

最悪な失恋になった初夏。この夏、私の居場所はどこにも無いのかな… 夜空、道標の星さえ何も言わない。 「また、星見てるんですね」 最近、よく見かける人。 そうだ、この人を生贄にしよう。 「彼と…別れたの」 その人はすぐに食いついた。 モラルを砕かれた私のこと、ずっと愛して下さいね……

2019-05-18 22:40:00
孔雀山まゆ子 @soukasouka_emil

君の「ごめん」というたった三文字で、私の十五年以上にも及ぶ片想いは長袖のパーカーの中で初夏の気温に肘から垂れた汗と一緒に地面に落ちて砕けた。幼馴染なんて大抵こんなものだ、そう分かってはいた。あの北極星だって回りあって一つに見えているだけで一個の星じゃないのに、ましてや私たちは、

2019-05-18 22:45:19