「私と付き合ったの、貴女が19人目」 そう彼女は言う。知っている。彼女は酷い浮気性で、ふらふらしては消える猫だってよく言われてる でも構わない。だってわたしも19人目だ。独占されそうで怖いと18人に別れられたわたしの、19人目 「じゃ、これから大事な1人目にしてあげる」 …あなたは離さない
2019-12-21 22:01:42「いつ、む、なな、や」彼女は眉間にしわを寄せた。「『九』の言い方は」「『ここの』」感嘆の声とともにまた前を向く。「とお、次」「じゅういち」「普通か」彼女は伸ばしていた首をマフラーにうずめる。「前に十八人」「さすが人気店」ガラス越しの店内の四人席に、湯気の上がるうどんが置かれた。
2019-12-21 22:02:54「忘れないでよね!私は絶対!モデルになってやるんだから!」 別れ際の君の言葉。覚えているよ。ひと目で判ったよ。雑誌の表紙は10年分成長した君。 インタビュー記事を見て、黙る僕。君の好みの男性は『背の低い男』 ファンレターを書いた。『君よりチビだった僕だけど、176cmの男でもいいですか?』
2019-12-21 22:03:09がさりと雑誌が落ちたので、十九人目の君ともお別れだと知った。また消えてしまうのと尋ねれば、心外ねと眉をつり上げる。「貴方が追い出すのでしょ。少し気に入らない所があるからって」 「先生、原稿を頂きに参りました」 玄関からの声に、僕はため息をつく。ファム・ファタール、未だ筆に宿らず。
2019-12-21 22:03:35いつもの雑誌を開いて、巻頭の記事に絶句する。この国の19人目の女王様が退位された、と。 「あら、発表よりも早く来ようと思ったのに」 頭上に落ちる影──飛竜に乗って、現れたのは──二度と会うはずがなかった美しい笑顔。 「王位は弟に譲ったの。これで身分を別れの理由にさせないわ」
2019-12-21 22:08:20読者モデル20人企画の19人目として雑誌に載ったの。その時ある狂人に目を付けられて20人全員何かの被害に遭った。 犯人?見つかるわけない。私たちの計画だもの。 おかげでほら、みんな有名になった。 でももう話題も下火でしょ、何かもっと大きな事件が要る。 そろそろ誰か一人くらい…ね?
2019-12-21 22:14:54雑誌モデルの同級生と会食する。色気より食い気の私達多数。だが彼女だけは、光を放つようなオーラがあった。彼と別れたの。十九人目よ。もういい加減、サヨナラ飽きちゃった。絹のような髪を揺らせて笑う彼女。美しすぎることは、やはり罪なのか。陳腐な言葉しか浮かばない私は、自分の短い爪を見た。 pic.twitter.com/kZzUHXhe3v
2019-12-21 22:15:44◯露天風呂・外 男、来る。その先に女将。 女将「自慢の身も心もゆずになる露天風呂、ご堪能下さい」 男「ゆず湯いいね」 ◯露天風呂 浸かる男。 男「ゆず湯最高!ん?」 男の意識遠のく。来る女将。男の姿はない。 女将「今日19人目いや19個目の獲物ね」 女将、ゆず湯をかき混ぜる。
2019-12-21 22:19:29僕は読みふるした雑誌を閉じる。 「準備が出来たの。19人目の私ともお別れね」 宇宙を進む箱船。僕は彼女と共に箱舟の管理をしている。 彼女の身体は定期的に変えないと行けない。今日はその日だ。 「速い」 「そう?」 「……そうだよ」 また別れる。別ればかりだ。 この船だって、地球と別れたのに。
2019-12-21 22:39:58冬の鴨川にもカップルは並ぶ…律儀に等間隔に。彼女は雑誌から顔を上げた。「バス降りて、あたし達も座ってみよっか?」「今日はやめておこう、ちょっと気分じゃない」「何よそれー!」口を尖らせる彼女。「カップルを数えてたら、19人目が一人で座ってた…気になって座ってられなさそうなんだ」
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