他に説明文考え憑かないんか? ネタバレするから今はかけないだけだ
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takaya@⚠️フォロ前に一番下のリンク必読! @der_takaya0723

「宗主、仙督がいらっしゃいました…」 「は?! きさま、なんて言った」 「だ、だから仙督が、」 吊り上がった眦がまた指一本分上がった気がする、大きな体を目いっぱい縮ませて師弟の一人が首をすくめて言い直す途中、目の前で紫の小さな雷が爆ぜる ひぃ……!!1

2024-04-20 21:53:58
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「…いい。いれてやれ」 「はいぃ!!」 脱兎のごとく逃げ出した師弟を尻目に江晩吟は自分の脇に掛けられた三毒片腕一本分の距離に身を詰めた 「先ぶれも出さずに失礼した」 扉に入ってすぐ殊勝に拱手をよこす男がなんでこんなとこに来るのかなんておおよそ予想がつく

2024-04-20 21:54:46
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「これはこれは!お忙しい仙督がわざわざ雲夢までいらっしゃるとは!何用で?」 まったく、相変わらず無表情でいけすかん! 江晩吟とて宗主業は長い。 口と態度は悪いが言葉の使い方だけは完璧だ。ただし、感情は出しまくりだが。

2024-04-20 22:02:34
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「江宗主には折り入ってお願いがあってきた」 「ほう? 貴殿が私にお願いだと?」 「魏嬰が、寝込んだ時に食べられたものを教えて欲しい」 「は?」 奴が寝込んだ?食べられるものだ? 「なんの冗談だ」 「冗談ではない」 「……酒でも与えておけ」 「病人に酒は毒だ」

2024-04-20 22:07:33
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「奴に言わせれば良薬は口に苦し、でなく酒は百薬の長だろうよ!」 「普段からその百薬の長を飲んでいて寝込んでいる」 「二日酔いか!」 「違う」 とことん会話が成り立たない それは二人とも同じことを思ったようだ

2024-04-20 22:15:05
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数舜、二人に沈黙が落ちる。 沈黙が苦でないのは忘機、だがここは蓮花塢。 早く忘機を追い出したい江晩吟が舌打ちをして先に口を開く。 「なんでそういうことになってるんだ」 「…夜狩に立て続けに付き添って」 「は?詭道の使い過ぎか?!」 「……霊力の不足でだ」

2024-04-21 09:22:17
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魏無羨の金丹は江晩吟の内にある。 無尽蔵に生み出す源がない体なのに無茶をすれば倒れるのは当たり前だ。 魏無羨から金丹がなくなった理由、それは自分のせいではないが、自分のせいでもある。 願ったわけでも望んだわけでもないが自分へと移されたそれのおかげで約二十年、矜持を保っていられた

2024-04-21 09:22:17
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「いっそのこと、俺の中にある金丹を返せと言えばいいものを」 「彼はそれを望まない」 涼しい顔で言ってのける忘機に江晩吟は何度目かの舌打ちをし、眉間の皺がさらに深く刻まれた。 「ふぅ……」 深く息を吐いた江晩吟が顎をくいと反らしてついてこいという仕草をしてよこす。

2024-04-21 09:46:20
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意味を汲んだ忘機はその後ろをついて部屋を出て、私室の一つに通された。 「ちょっと待て」 そうして部屋を出ていく江晩吟を目で見送ると、忘機は開いた窓から望む蓮花塢を遠く眺める。 彩衣鎮とも違う水の匂い、微かに泥と青臭い植物の匂い。

2024-04-21 09:51:03
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ハスの花の時期はまだ先だが、雲深不知処とは違う緑の匂いが身を包む。 雲深不知処の緑は静かに流れるような匂いだが、ここはなんとも力強い生命の匂いを感じさせる。 暫くすると江晩吟が一人の女性を伴って戻ってきた。 女性はどうやら古参の厨の者らしい。 「詳しくはこのものに訊けばいい」

2024-04-21 09:55:46
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「母から同じ料理を教わりました」 頭を下げる女性は物柔らかな物腰でなんとなくかつての金夫人ー江厭離ーに似ている 「半分一緒に育ったからな」 江晩吟がそう補足すれば女性は横で笑って 「女の子と男の子、遊びが違うのは仕方ありません。ましてや江宗主は大師兄たちと…」 「うるさい」

2024-04-22 07:24:44
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仙督さまを厨に案内するんですか? そう訝られたが料理を教えてもらうのだからと彼女に案内された江氏の厨は立派なものだった 雲深不知処と違い、朝採った野菜が主というわけではないからそうなのだろうが、大量の干し肉が一角に干してあり、驚くのは生簀があって魚がいたことだ

2024-04-22 07:37:53
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彼女はころころと笑って 「驚かれましたか? でも肉も魚も朝採りにいくわけにはいかないんですよ。昔は子弟たちの訓練だといって早朝から蓮花塢に潜って魚を採ったりしたみたいですけど」 「訓練?」 「泳ぐ?」

2024-04-22 07:42:09
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「いいえ、野営?っていうんですか?名目はね。でも遊びですよ。でも遊びから鍛えられれば儲けものだろうって、大師兄が」 「……」 「仙督、大師兄はお元気ではないのですか?」 「普段は元気だ。だが今は…」 「そうですか…。なら、これを覚えていってください」

2024-04-22 07:44:32
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そういって彼女が教えてくれたのは蓮根排骨湯。 不知処でも彼のために作るようになった料理だが作り方、調味料の配分次第で味は変わってくる 肉を煮込むところは時間がかかるからと割愛されたが注意点は教えてもらった

2024-04-22 07:49:00
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今夜のためにと作られていた蓮根排骨湯を味見させてもらい、調味料をお裾分けだと手渡される 「たかが調味料ですが、同じように見えて味が変わるんです。ぜひあの方に食べさせてあげてください」

2024-04-22 07:50:16
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見送りのための桟橋には彼女と江晩吟がいた。 「これも持っていくといい」 袋いっぱいに束ねられた蓮の花托 「花托の季節ではないはずだが?」 「…」 江晩吟が人の悪い笑みを浮かべる。 「なんだ、貴殿は知らなかったか。これは奴が以前私に押し付けていったものだ」 「江宗主、嘘はいけませんよ」

2024-04-22 08:59:14
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「これは大師兄が厨に置いて行ったものです。傷みやすい食材の保存にって。器用ですね、相変わらず」 花托を束ねてある紐に一枚の紙が挟まれている。 「ただ単にあいつが食い意地が張ってるだけだ。毎回毎回、蓮の花托を送れとうるさいったらない」 「それを喜んで送っているのは宗主でしょうに」

2024-04-22 09:04:52
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そっぽを向いた江晩吟に彼女は笑って、少しでも食事がとれるようなら食べさせてあげてくださいと言ってくる。 それを聞いて江晩吟がふと、思い出したように嫌な笑いを浮かべて忘機を見ると忘機も片方の眉をくいっとあげて江晩吟を見返した。多少身構えるのは日頃からの態度に他ならない。

2024-04-22 09:08:55
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「あの馬鹿に絶対食べさせられる方法があるぞ」 忘機がもう片方の眉を上げて先を促す。 「あの甘ったれの三歳児はな、手ずから食べさせてもらうのがクセなんだ。姉が甘やかしたからな」 「…」

2024-04-22 09:16:41
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「子どもの頃の話だと思うなよ、奴は姉が一緒にある間は始終べったりで鳥の雛よろしく口をあけて食わせてもらっていたからな。羨羨は三歳だって言ってな!」 流石に目を丸くした忘機に気を良くしたのか、それをみた江晩吟はさっさと踵を返し戻って行ってしまう。 笑いをかみ殺した彼女が本当の事ですと

2024-04-22 09:18:38
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言うので忘機も、やっと質の悪い冗談じゃないのだと忘れていた瞬きを取り戻した。 その日の夜、戻った忘機が蓮根排骨湯を持って静室に戻り、魏無羨に口を空けろと迫るのは此処だけの話。

2024-04-22 09:24:45
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なんだよ、自分で食えるよと形ばかりの抵抗をしてみせた魏無羨が一口食べた途端おとなしくなり蓮根排骨湯だけは完食した。 師姉、と呟いて丸めた体を忘機にゆっくりと撫でられて魏無羨は久しぶりに子どもの時の夢を見た。

2024-04-22 09:29:23
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青い空に蓮花塢の蓮が光り輝き、三人で舟遊びを興じている夢だ。 姉の笑い声、江澄の怒鳴り声。 懐かしい波の揺れ、蓮花の匂い。 まだ小さかった手に全部がつかめた頃の夢。 目覚めた時、夢でつかんでいたものが忘機の手だと知って真っ赤になる朝がくるのだが、それはまた今度。

2024-04-22 09:32:22