スイーツ男子尾。食べる方ではなく作る方。むしろ甘いの苦手だから作ったのを食べられない。そんなある日今まで避けていた異母弟が食べる方のスイーツ男子と知り……
2023-05-14 17:32:12鼻息荒く手作りチョコチップシフォンケーキを持って行く尾。「貴方のためではありませんよ。これが俺のストレス解消法なのです!さぁ、食べてください!次はイチゴマフィンもありますよ!」と基本焼き菓子だけど、暑い日はプリンとかも作る。ドーナツも作る。冬には小豆を煮てあんこも作る。
2023-05-14 17:39:58冬至の日には尾がくつくつ煮た小豆にかぼちゃを入れたのを食べる。旭川での、寒さに震えながら食べたことを思い出す。秘密ですよ、と勇の椀に一つだけ白玉を分けてくれたのだ。兄様、白玉が食べたいです、と強請ると尾はぱちくりと目を瞬かせた後に、仕方ないですね、とニヤリと笑って白玉を取り出した
2023-05-15 16:12:14スイーツ男子たる尾はかぼちゃを練り込んだ白玉を用意していた。わぁ、と嬉しそうに目を輝かせる勇に尾も優しい笑みを密かに浮かべた。もちもちとした食感と、小豆とかぼちゃの甘味が二人の密やかな、温かな一時の記憶だった。その後尾はクッキーとマドレーヌとフィナンシェを取り出した。
2023-05-15 16:19:12スイーツ男子勇尾。今日も今日とて尾形のストレスはマッハ。「今日はスコーンを作ります」と言ってキッチンへ。作るのは勇作さんが大好きなチョコチップスコーン。生地にもチョコが練り込まれたやつ。あま〜いチョコの匂いがする部屋で、尾形はスコーンを焼く。オーブンからは更に熱く甘い香り。
2023-05-23 17:14:12小麦粉の香ばしい香りに勇作さんはウキウキ。すると尾形は冷蔵庫からマーマレードを取り出す。それは果肉もたっぷり使った紅ま○んなのマーマレードだ。美味しいけど貴重なので少しずつ食べていたジャム。兄様……!と勇作さんはさらに目をキラキラ。そろそろ食べてしまわないといかんでしょう…と
2023-05-23 17:17:09オーブンから取り出したホカホカのスコーン。チョコチップがとろりと溶けていて、それだけで美味しそう。勇作さんは紅茶を入れてウキウキ。尾形も珈琲をいれる。スコーンはさっくりとした歯ざわりで、カカオ多めのチョコを使った生地はほろ苦い。しかしチョコチップは甘く、舌にからみつく。
2023-05-23 17:19:04はふはふとアツアツスコーンを食べたあとは、ひんやりと冷えたマーマレードとクリームを乗せる。紅ま○んなのマーマレードは爽やかな酸味とアクセントの苦味。それがカカオの苦味とチョコの甘味、クリームのまろやかさと合わさり舌を楽しませる。このマーマレードを無糖ヨーグルトに入れるのが好きだ
2023-05-23 17:21:27このマーマレードは兄様みたいですね、と勇作さんが言うと、尾形は苦笑する。マーマレードだけじゃ美味くないし飽きてしまいますからな、メインがないと……と意味深に笑った。勇作さんが途端に口の中から水分を失ったのは気の所為ではないはずだ。
2023-05-23 17:23:22スイーツ男子尾。「今日のおやつはアクティビティ付きです。」と言ってホットプレートを取り出した。ベージュ色のとろりとした生地と、つやつやの特製あんこがボールに入っている。U作さんは、はて?と首を傾げた。尾はいつもの笑みを浮かべて「どら焼きを作ります」と宣言した。 twitter.com/nijikare2/stat…
2023-06-16 20:41:28U作さんは何度か瞬きをしたあと、目をキラキラと輝かせた。「兄様のあんこでどら焼きですか!?」「ははぁ、ホイップクリームもありますよ」それはU作さんにとって何よりも尊い誘いだった。尾はホットプレートを200℃に温める。生地は小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、卵、牛乳、みりんを入れている
2023-06-16 20:45:39大事なのはみりんだと言う。そして尾はU作さんにホットプレートに生地を入れさせた。「どら焼きですから、小さく丸く、ですよ」だかU作さんが流し入れた生地はどれも歪な形だ。しょんぼりとするU作さんに尾は楽しそうだ。「形は味に関係ありませんよ」と言ってU作さんを慰めた。
2023-06-16 20:47:53生地の表面がふつふつとしてきたのを見計らって生地をひっくり返した。焼いた面はきつね色で、真ん中からふんわりと持ち上がる。「ふわふわです!」さっき泣いたなんとやら、だ。パタパタと生地をひっくり返しおわると、甘い香りがする。どこか懐かしい、甘い香りだ。それはよく尾から香る。
2023-06-16 20:50:42「兄様の香りですね…」「はぁ?いや、ないでしょ、それは…」「いえ、このこうばしく、甘い香りは兄様の香りです」すん、とU作さんは尾のうなじの香りを嗅ぐ。甘くて、こうばしくて、優しい香り。「生地が焦げます」そう言って身をよじる尾。尾を堪能したい気持ちもあるが、どら焼きの抗いがたい魅力
2023-06-16 20:54:32U作さんは尾を解放した。尾は焼き上がった生地を皿に移した。ホットプレートのスイッチを切り、「さぁ、あんこをのせますよ」と。つやつやの粒あんはU作さんの大好物だ。最近のあんこは甘さ控えめで、さらりとしているが、尾のあんこは違う。もったりと重たく、舌に絡み付くような舌触りだ。
2023-06-16 20:56:48これを丹念に練って濾して、こしあんにしたものを羊羹にしたこともある。そうすると不思議とするすると滑らかに舌の上で踊るように溶けていったのを思い出す。しかし、U作さんは今日のような粒あんも大好きだった。「あんこは好きに挟んでください」尾は手際よくあんこを生地に乗せていく。
2023-06-16 20:59:12U作さん用の少し大きめの生地にあんこを乗せた。そしてそのあんこにホイップクリームを乗せた。「美味しそうです……」「旨いですよ、俺がつくりましたから」「ふふ、そうでしたね」ぽとり、と生地を落とす。ラップで形を整える。茶を淹れますか、と尾が立ち上がる。洗い物はU作さんが買って出た。
2023-06-16 21:02:18茶を淹れて、皿にどら焼きを乗せる。尾にはU作さんの半分くらいの大きさだ。甘いものを創るのが大好きなくせに、甘いものが苦手な尾には珍しかった。「貴方が焼いた生地ですからね」と呟く尾の耳が、少し赤かった。
2023-06-16 21:04:09