#いいねした人が1冊の本だとしたら最初の1行には何と書いてあるか考える 相互さんじゃなくても全然構いませんが、よく存じ上げない方だと、アイコンやヘッダをネタにするだけになると思います。それでもよろしければ。 原稿の隙間にのんびり消化するつもりですので。
2017-05-29 23:52:30#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @moriyuu_ 空に、落ちてしまう。 視界一杯に広がるは、白砂を散りばめたような満天の星。夜空の深さに天と地を見失い、ぐらり、と足元が揺らいだ次の瞬間、逞しい手が彼の肩を支えた。 「大丈夫か、少年」
2017-05-30 22:55:12#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @Ch_yukima この海の向こうには、神さまが住む国があるんだって。灰色の空を背に、彼女がそう微笑んだのは、一体いつのことだったろう。マントのフードを深くかぶり直しながら、彼は、白く波立つ海原を睨みつけた。
2017-05-30 23:00:53#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @nemu_tatibana 扉の向こうから、重い物を引きずる音が聞こえてくる。宵闇に沈む教室の、教卓の下で、僕は必死に息を殺していた。見つかったら、最後だ。スプーン曲げ検定三級の僕が、アレに勝てるはずがない。
2017-05-31 20:23:58#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @noyu_bh 「ちょっと休憩ー」 誰が聞いているわけでもなかったが、彼女は声に出して宣言すると、絵筆を置いて草の上に寝転がった。見渡す限りの空の青と、描きかけのカンバスとを見比べ、「うん」と満足そうに頷く。
2017-05-31 21:21:04#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @isuzu_tkm 炊飯器の蓋をあければ、湯気がほわりと顔面を舐めた。釜の中には、はちきれんばかりに水を含み、つんと粒が立った瑞々しいご飯。彼はほんの一瞬目を細めてから、しゃもじをゆっくりと中へ沈めていった。
2017-05-31 21:23:22#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @sk_hollyhall 影が、跳んだ。しなやかに。音もなく。 「待って」 やっとの思いで絞り出した声は影には届かず、少年の足元にぽつりと落ちる。 彼は唇を噛んだ。少女が去った方角を、ただじっと見つめた。
2017-06-01 20:14:35#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @wanwan_majin 〈読み取る者〉――それが彼の呼び名だ。誰一人として彼の本名を知る者はいない。少なくとも、この町には。 彼が読み取るのは、鉱石の持つ〈記録〉だった。或は〈声〉と言うべきかもしれない。
2017-06-01 20:29:20#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @watako_twi カラン、とドアベルが鳴るのを聞いて、彼女はティーポットを拭く手を止めた。「いらっしゃいませ」と振り返り、思わず目をしばたたかせる。 扉の前には小さな男の子が、ぽつんと一人、立っていた。
2017-06-01 22:27:24#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @rowazou 「特別なのはペンではない。インクだよ」 少女にそう語りかけて、師は空中にペンを走らせた。おおらかに弧を描き、入り組んだ線を重ね、最後に輪を閉じた瞬間、描かれた蝶がふるりと羽を動かし宙を舞った。
2017-06-01 23:14:09#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @yoshi_roushi 確かに聞こえた。空耳なんかなじゃない。少女はきょろきょろと辺りを見回した。 一面の小麦畑が、風に揺れる。 「お届け物ですよ」 さっきと同じ優しい声が、再び彼女の耳元をくすぐった。
2017-06-02 21:54:39#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @miz_na_ri 「私ね、この実験が終わったら、家に帰って…」 疲れ果てた彼女の声を、友人が慌てて遮った。 「それ死亡フラグ!」 「お風呂に浸かりたい、もダメ?」 でも本当は、彼に会いに行きたいんだけど。
2017-06-02 22:25:23#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @al_730 1 気がつけば君は、石造りの狭い部屋の中央に立っている。窓も扉も無く、灯りは壁にかかった松明一つ。 初めてここに来たのなら 9 へ 二度目なら 267 へ 三度目なら 14 へ行け。
2017-06-02 22:38:00#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @fuyukiyoko 「じゃ、どの薬から作ってみる?」 昼休みの図書室で、図書委員長にして誉れ高き東向小学校(非公認)探検隊隊長が、ファンタジィ小説を片手に問う。 残る二人が勢いよく「はいっ」と手を上げた。
2017-06-05 22:09:07#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @hamaco_555 羽ばたきの音とともに、風が降ってきた。 足元の石畳を大きな影がよぎり、少女は驚いて顔を空へ向けた。 碧一色で塗りつぶされた天穹を背景に、赤銅色の大きな翼が鐘楼にとまる。――火の竜だ。
2017-06-05 22:42:03#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @WH_hiromi それは、祈りだった。或は、声なき慟哭だった。少年はぬかるみに膝をつくと、雨が降りしきる天を振り仰いだ。 染み一つ無かった白い服を、みるみるうちに雨の飛沫が濁らせていく。 「気が済んだか」
2017-06-05 22:51:13#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @minila00 可愛い書体で書かれた「仕立て直し」の看板に、可愛い店構えときたら、店員さんも可愛い人なんだろうな、って思うじゃない。 まさか見るからに体育会系なお兄さんが、エプロン姿で店番しているなんて。
2017-06-06 22:16:25#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @sensitive_blue 夜空を映した水面は、丁寧に磨いた黒曜石のようだ。 そっと指をひたした途端、月影がひずみ、幾つもの断片に千切れて揺らぐ。 満月の夜にこの泉で拾った石が、導きの護符になるという。
2017-06-06 22:28:14#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @hitoebito ころん、かろん。 夕焼けと夕闇の隙間から、下駄の音が聞こえてくる。 かろん、ころん。 僕は我慢できずに背後を振り返った。 狐のお面を頭に飾った女の子が、はにかみながら足を止めた。
2017-06-06 22:39:54#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @sansa_Q 「待ちなさい!」 追い縋る憲兵の手が、外套のフードを剥ぎ取った。月の光を集めたような銀髪が夜陰に零れ、少女の怯えた表情があらわになる。 青年は咄嗟に憲兵の前に飛び出した。守らなければ。俺が。
2017-06-07 21:28:34#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @aogiriyuu14 これは烙印なのだ。薬師としてあるまじきわざを使ったという、消せない証拠。彼は左手の手袋をそっとめくると、手の甲に目を落とした。そこには、砂時計の形をした緋色の模様が浮かび上がっていた。
2017-06-07 21:36:23#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @YukiNamiya 恋はするものではなく落ちるもの、って誰の台詞だっただろう。 文学部棟の脇、「落としましたよ」と呼び止められた彼女は、慌てて背後を振り返った。 一人の男子学生が新巻鮭を手に佇んでいた。
2017-06-07 21:47:16#いいねした人が1冊の本だとしたら冒頭には何と書いてあるか考える @tatsu_yakumo 男は、歌を探していた。 正確には歌声だ。昔聞いた、幼馴染みの少女の歌声を。 山道を往きながら男は唇を噛み締める。あの時自分は何もできなかった。だから今度こそ、彼女を助け出すのだ。
2017-06-07 21:50:17