#twnovel で書いてた猫ついのべまとめ。猫になって行方をくらました妻を追う夫のおはなし。猫写真使ってお話書きたかった。
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みお @miobott

#twnovel 私の妻が突如猫になり、そして行方知らずとなってから、そろそろ一年が経とうとしている。差し出した私の掌に甘えながらも、挑発的に見上げるグリーンの瞳、柔らかな口元。 彼女が去って数日後、私も旅に出た。それは、彼女を探す旅である。 pic.twitter.com/kE4CGCGa8t

2017-01-07 23:21:01
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みお @miobott

#twnovel 「人が猫になってしまえば、まず大抵は人に戻れない。きっと貴方の奥さんは、すっかり夫のことなど忘れて猫の恋に生きているに違い無い」白い猫はそう言ってせせら笑う。彼女の背の向こうから彼女によく似た子猫が顔を出す。「…私も元は人間でね」彼女は切なそうにそう笑った。 pic.twitter.com/ultel04j0Y

2017-01-07 23:24:17
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みお @miobott

#twnovel 果たして人が猫になるなどということがあるのだろうか。重なり眠る猫に尋ねれば彼は眠そうに答えた。「猫など大半、人のなれの果て。俺の下に居るこいつもつい先日猫になったばかりの新米だ」怖くはないのかと尋ねれば「だからこうしてひっついているのさ」と彼はニヒルに笑う。 pic.twitter.com/bDMQ0O8emR

2017-01-07 23:38:35
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みお @miobott

#twnovel 「人が猫になってしまえば、過去など忘れてしまうのだろうか」猫となった妻が消えて数ヶ月。私が涙ながらに訴えれば「そうだね」と、穏やかな顔の白猫が切なく目を閉じる。「忘れてしまうさ…きっと君の愛した人も、君のことを忘れたはずだ。そうでなければ悲しさに潰れてしまう」 pic.twitter.com/FIn04nyNiW

2017-01-08 22:36:09
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みお @miobott

#twnovel 猫となった人間が元に戻れないのならばいっそ私も猫になってしまいたい。私は悶える。妻と同じになってしまいたい。享楽的な猫の恋に生きてしまえば、それはそれで幸せなことだろう。「本当に?」と、しなやかに寝転がる一匹の猫が私を誘うように視た。「君にその覚悟はおあり?」 pic.twitter.com/gx51VBdimh

2017-01-08 22:39:57
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みお @miobott

#twnovel いっそ猫となり妻を探す方が良いのではないか。考え込む私に野良が嗤う。「何を言う。既にお前さん、猫になりかけているじゃないか」彼の言葉に私は冷や汗を流し、慌てて鏡を見る。そこにいるのはやはり人間の私だ。「勇気も無い癖に」とキジ猫は心底馬鹿にする目で私を見た。 pic.twitter.com/aUbe3tlPiU

2017-01-08 23:33:00
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みお @miobott

#twnovel 「そんなに愛した女に会いたいかい」通りすがりの黒猫が尾を丸めて私を見る。頷けば彼は苦い顔をして私を誘った。「おいで、ならば見せてあげよう」黒い道を付いて歩けば、そこにあったのは柔らかく盛られた土。「猫の命は短いのだ。特に野良となればね」黒猫は憐れむように呟いた。 pic.twitter.com/HFrJ8nbBXm

2017-01-09 19:16:30
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みお @miobott

#twnovel 「彼女は自らの命の短さを知り、行方をくらましたのか」妻が眠るその場所で散々泣いた後、私はようやく腰を上げる。黒猫は私をじっと見つめた。「そうだ。だから猫は死に際に姿を消すのだ」そしてやがて小さな息を吐く。「本当にお前さんはあの人を愛していたのだな」 pic.twitter.com/vZwxOUNAoP

2017-01-09 19:19:22
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みお @miobott

#twnovel 「黒いのに聞いたよ」キジ猫が目を細めて私を見つめる。「猫になった者を愛するなどなるほど奇特な人間だ」しかし。と、彼は私を手招いた。「特別に、会わせてあげよう」抜け殻のようになった私を誘った先は猫の島。数え切れないほどの猫の内から一匹を、彼は私の前に押し出した。 pic.twitter.com/Yc1AGtvy0u

2017-01-09 19:21:43
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みお @miobott

#twnovel おずおずと出て来たその猫は、若い白斑。「馬鹿な人」しかしその猫はかつての妻の声でそう言って、私に頭を押しつける。見た目こそ異なるが美しいグリーンの目はいつか見たあの猫と同じだった。「猫の命は短いものだから」彼女は泣きそうな顔で笑う。「毛皮を変えて戻ってきたのよ」 pic.twitter.com/7QO2cHVoLY

2017-01-09 19:23:58
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みお @miobott

#twnovel それから私は4回妻を見送って、5回新しい毛皮の妻に出会った。やがて私の命が尽きる頃、まだ子猫ほどの彼女は私の額をそっと舐める。ざらりと優しい感触だ。見えなくなった目に、涙が溢れる。「次は貴方が私を探す番ね」「ああ。きっと探しに行くよ」身を包むのは暖かな光だった。

2017-01-09 19:35:02
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まとめたひと
みお @miobott

食べたり飲んだり書いたり。 書籍化📖 「上島さんの思い出晩ごはん」「極彩色の食卓シリーズ」「深川花街たつみ屋のお料理番」「彼女は食べて除霊する」 ヘッダーは@moshio_tsumuriさんthx お仕事依頼等は m.miobott@gmail.comまでお気軽に。 BOOTHで同人誌通販もしてます。