健太郎に相談した結果がコレかよ。
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「それ。なんて書いてあるんですか」 「ふひゃあ! 驚かすなバカ!」 バスケ雑誌を立ち読みしていると、黒子が後ろから小さな記事を指差した。 「花宮君こそ気色悪い声を出さないでください。他のお客様にご迷惑です。…それ、黄瀬君のことですよね。翻訳してくれたら立ち読みも見逃しましょう」

2014-10-16 19:00:28
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

黒子が指した記事に目を通す。 「良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」 「…良い知らせから」 「黄瀬が脚を痛めて長期休養に入るってさ。ふはっ、オレが壊すまでもなかったな」 「!」 黒子は大きく目を見開いた後、眉間に皺を寄せた。 「…それのどこが良いニュースなんですか」

2014-10-16 19:05:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「次に悪いニュースだ。たった数ヶ月で復帰予定だとよ」 「キミの感性は理解しかねます」 黒子はオレへの嫌悪と黄瀬への安心が混ざった複雑な表情を浮かべた。うん、いつもの飄々とした無表情よりずっといい。 「なら何故だ。オレがよく来ると知って、どうしてお前はこの本屋のバイトを辞めない?」

2014-10-16 19:10:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「お前はオレのことをどう思ってんだ…?」 無表情が崩れるほどオレを嫌悪してるくせに、黒子はオレが来る度に話しかけるのをやめない。オレの方はイイコちゃんを揶揄うのを愉しんでいるが、あっちは同じ空気を吸うのも御免なはずだ。 黒子のでかい目が僅かに揺れた。 「ボクは…花宮君のことを、」

2014-10-16 19:15:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「おい、旧型!」 突然、黒子のエプロンが後ろに引っ張っられた。 ソイツが真後ろにいたのに気付かなかった。 「何ですか、廉価普及版」 「…ハイハイすみません黒子様。嫁を迎えにきたに決まってんだろ」 黒子はクスリと笑うとレジに向かい、アニメポスターに貼ってある完売シールをを剥がした。

2014-10-16 19:20:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「こんなことで良ければお安い御用ですよ」 黒子がソイツにくじ箱を差し出す。 「お前はラストワン賞の価値を知らないから、そんなことが言えるんだ」 「えっ、それなら前のお客様に渡してしまいました」 「はぁ〜!? オイ、話が違うだろ。オレが去年、何賭けたと思ってる」 ああ、思い出した。

2014-10-16 19:25:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

黒子に何やら文句をつけるソイツに笑顔で話しかけた。 「元・洛山の黛さんですよね?」 「! お前、無冠の残りの… オレのこと覚えてるなんて珍しいな」 「そんな、忘れるわけないですよ! 5年前の洛山戦であんなに“目立って”たじゃないですか」 「…オイ黒子。本当にこのゲスがいいのか?」

2014-10-16 19:30:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「ボクが知る限りで一番見込みがあるのが花宮さんですから」 「意外と能力にシビアだな」 「キミでダメだったので。花宮さんはこれで頭が良い」 「…まぁ、いい。成功報酬じゃないだけマシってことにしとくわ。次はラスワン確保しとけよ」 黛はでかい林檎のクッションetcを抱えて去っていった。

2014-10-16 19:35:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「次回から他のお客様に秘密で取り置きする方法を考えないとですね。花宮君、何か思いつきませんか?」 黒子がオレを見上げた。 「はぐらかすな。黛と何を企んでやがる」 あの妖怪とは別の意味で黒子の思考も読み取れない。 「…全く。黛さんは相変わらず詰めが甘いですね。のったボクもですが」

2014-10-16 19:40:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「ボクと黛さんが言ってたのはですね…あ! 花宮君、あの本見て下さい。あんな感じのことがやりたくて」 黒子は頭上の棚を指差した。 「…ハァ? どれだよ」 と言いながら隣に視線を下げると、黒子の姿は影も形もなかった。 クソッ、古典的な手にハメられた。

2014-10-16 19:45:03

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

わからない。黒子はオレに何をさせようとしているのか。去年、黛が挑戦し失敗した“何か”。 わからない。黒子はなぜ黄瀬自身に怪我について尋ねないのか。 思い出せない。黒子はいつから近所の本屋で働いていたのか。いつの間にか黒子の無表情はオレの生活に溶け込んでいた。今吉の笑みの代わりに。

2014-10-16 19:50:07

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「…花宮。もう黒子には関わらない方がいい。あの本屋にも行くな」 瀬戸に昨日のことを話した。電話口で押し黙る健太郎に寝てんじゃねぇかと疑いかけた頃、ようやく声が聞こえた。 「あそこ近くて品揃えいいからムリ。それにオレから近づいてんじゃねぇよ。あっちから絡んでくんだよ」 「花宮…!」

2014-10-17 18:00:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

瀬戸の声は明らかに苛立ちを含んでいた。 「んなマジになんなよ。アニメのグッズ賭けるようなことだぜ? 大したことじゃねぇだろ」 「…花宮ってさ。ガンバったことないでしょ。まぁ、オレもないけど」 「何だよ突然、薮から棒に」 「花宮には理由が無いから。それを知る人はその空白を欲しがる」

2014-10-17 18:05:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「オレは人の不幸が好きだ。それが理由でそれが全てだ」 「それは花宮の世界での話だろ。普通の人間は努力しなくちゃ生きてけない。そして、そのモチベーションを保つために理由を求める。花宮にはそれがいらない。要らないまま、知らないまま、ここまで来てしまった」 「ふはっ。説教かよ、健太郎」

2014-10-17 18:10:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「忠告、かな。花宮にはスペースがうんと残されている。だが、花宮はそれを埋めようとしない。だから、皆その隙を狙ってくる。ギフトのおこぼれにあずかるべく。気をつけなよ。高校の頃はオレ達がいたからいいけど。イイコちゃんのコスプレ、簡単に解くなよ」 「お前らは今もいるだろ」 「どうかな」

2014-10-17 18:15:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「古橋から聞いたよ。実際、使われてんじゃん。古橋は、久しぶり見る悔しがる花宮は趣深かったとか悠長なこと言ってたけど」 「あ、アレは…っ! あのオッサンの能力が予想外だっただけで…次は負けねーし」 「言い訳しないの。ま、暇ならザキの面倒でも見てやんなよ。アイツだけまだNNTだしさ」

2014-10-17 18:20:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

NNTの山崎をどうにかしてやる会の日取りを決めて、瀬戸との電話を切った。(最近ザキの奴、彼女がどうとか言って付き合い悪ぃから、どうだろうな。) 健太郎の言うことは解る。が、問題には思わなかった。 目的がある奴のフリをするのなんて簡単だ。意識の高い学生のフリをするのなんて簡単だ。

2014-10-17 18:25:06
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ずっとそうやって生きてきたんだ。そして、どーせこれからも。手持ちの内定のどっか大企業に就職して、面倒事に巻き込まれないよう手を抜き、好青年を演じ妬まれることなく出世。本当の自分を見せるのは信用できる(世間的にはできない)奴にだけ。それでいい。 それでいい。オレは誰にも壊せない。

2014-10-17 18:30:07

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