世界の中心には荒ぶる祖神が眠っている。それが動けば大地は尽く崩れ泥に還る。 祖を鎮め世の均衡を保つために国はそれぞれのカミを祀り、その力を借りて国を守っている。 結界の外は未知の領域、人の住めぬ妖物の世界。だが、そんな場所に好き好んで住む者もいる。凡そそれらは人に似たナニカであるが
2019-12-28 02:21:37「あいも変わらずこの国は、狭っ苦しくてやンなるなぁ。世直しなんざ柄じゃねぇが、下を向いてる連中の目を引く花火の一つや二つ、派手に鳴らしてやろうじゃねぇか」 カジカ:辰の国の若者。神官一族による支配体制に異を唱え、打破せんとする活動家。 相棒に白い肌と髪をした異人の男がいる。
2019-12-28 02:29:00どこまでも続く枯れ葦の原に、犬の吠え声。泥に足を取られる。腰まで水に浸かり、体は冷え切っている。 追手が近い。ここまでか。我が命、もはやここまで。これ以上は助からない。 「誰だ?」 子供の声だった。 氷雨:カジカの相棒。白い髪をしているため年寄りと思われがち。面頬で顔を隠す。
2019-12-28 02:34:59「ここはあたしの国なんだから、あたしの言うこと聞いてよね!!」 寅の国の神子。この国では彼女自体がカミとして扱われる。宮の奥深くに住う世間知らず。 神職以外で立ち入ることができるのは、芸妓を捧げる御役を担う者たちのみ。
2019-12-28 02:40:36「お前、武人をするには難儀な面だな」 「安心しろ。カミにはそれぞれ犯すことのできない両分があるが、人にはない。カミさえ守れば世はこともなし。俺たちがその証明だ」 子丑の国の武人。他国を攻め領土を広げた最初の例を作ったのが丑の国である。更なる領土拡大を狙っている。
2019-12-28 12:00:13「こんばんは、いい夜ですね。こんな所でお散歩ですか?」 地に足のつかぬ学徒。 夜空の色をしたインバネスに裏地がカボチャ色のキャスケット帽を羽織る。常に地面から2メートル程浮いた青年。 本人曰く人だが、到底人とは思えない。森と里との境目によく出る。
2019-12-28 12:03:39なんか、旅人になってそれぞれの国を散歩しようかな。護衛隊か人間ではないから安全に旅をできるか。 国と国の間は概ね沼地か深き森で異形が多いので、只人は越えようとは思わないとかそんなの。
2019-12-28 12:10:20動物の相棒を連れた旅芸人と飛脚(メッセンジャー)で生計を立てつつ己を高めるために諸国漫遊する修験者(歩き巫女) 芸妓と神事は通じるのでなんら問題はない。あと旅芸人と歩き巫女の性質が通うのでまとめようかしら。
2019-12-28 22:07:01春楡(ハルニレ) 妖物の領域を超えて国から国へと旅する修験者。それぞれの国のカミを巡る巡礼者でもある。 相棒はカイツブリのナナカマド。 道すがら他所の国への文を預かる事もある。
2019-12-29 01:33:08春楡(ニレ科の樹木)は初めて用いられた道具。天地創造の最初の一本。 人に火を与えたもの。その木屑から人のためのモノ生まれたというアイヌの神話より。 アイヌ以外でも丈夫な樹皮や水に強い材は、広く道具として用いられる。 薬としての利用もあり、人に文明の火をもたらす放浪の賢者でもある。
2019-12-29 01:33:10古く人と関わってきたため、与えられたイメージも数多い。実を結ばない、棺の木などといった死のイメージも持つ。相手によって相を変える。 相対したカミによって面を変えて舞う神楽の担い手でもある。
2019-12-29 01:33:10カイツブリはこの世を作った最初の泥を掴み取ってきた唯一の生き物。我々の生きる世界は、カイツブリの足の間にあったひとつまみの泥である。 祖神が目覚めれば全てが泥に還る世界で、それは創世神話の相棒である。
2019-12-29 01:35:37ナナカマドは七度かまどに入れて焼いても燃えない木である。しかしそうして作られた炭は最上の物となる。 世界を回る巡礼者でもある春楡は、己の旅路にある苦難をナナカマドが炭になるための幾度も身を焼く火に例え、相方の名前にした。
2019-12-29 01:38:59春楡とナナカマドは、祖神の後継者である。世界の中心に眠る祖神を起こし、いつか全てを泥に還して、世界を一から作り直す。 この世界が脱皮をするためのシステム。この世は祖神の皮の内側に張り付いた夢である。
2019-12-29 01:42:41カポ、と水の面を叩く音がした。池に波紋が広がり、しばらく経ってから少し離れた場所に水鳥の黒い頭が出た。 縦に長いシルエットの鳥は、チャポと音を立ててまた水面下に潜り込んで行った。 「ナナカマドに引っ掛けないで欲しい」 横合いから声をかけられて、飛び上がった。
2020-01-02 02:30:46目元に朱色を指した、長い髪の男が隣に座っていた。ひと一人入りそうな大荷物を担いだ、派手ななりをした男だった。 「かまどが、なんだって?」 貴様さては化け物か、と誰何したいのをぐっと堪えてそう問うた。 「いや、だからな。あんたのその」 と男は手にした釣竿を指差した。
2020-01-02 02:30:46「釣り針を、私の相棒に引っ掛けないように気をつけてくれ、といったんだ」 相棒の姿など見えない。男は一人でそこにいる。 「相棒なんて、どこにいる。流石に俺も人は釣らんよ」 もしや人を惑わす妖物か、あるいは気狂いか。 薄気味悪く思いながら返事をした。
2020-01-02 02:30:47「いや、相棒は人でない、鳥だ。あのカイツブリが私の相棒、ナナカマドだ」 指差した先には、先ほどの水鳥が浮かんでいる。 「そうかい」 それは自由気ままに池を泳いで回っており、たまたまそこに居合わせた野鳥にしか見えなかった。やはりこの男、どこかおかしいに違いない。
2020-01-02 02:30:47「なら、引っ掛けないように今日は仕舞いにしとこうか」 「良いのだろうか。折角獲物がかかりそうなのに」 「仕方がないさ、今日は坊主だ」 「そもそも、この池に魚なんていやしない」 ピタリと帰り支度をしていた手が止まった。
2020-01-02 02:30:47「人は釣らないというのは、嘘だろう。ここで通りがかる旅人から荷物を奪うのを生業をしている」 「へぇ、だったらどうする旅人さん」 男は荷物の中から日本刀を取り出すと、それを構えた。 「殺される前におさらばするか、そうでなければ首でも刎ねよう」 「首、はねられんなァあんたの方だぜ」
2020-01-02 02:30:48この男、武器の扱いは素人だ。刀の持ち方一つなっちゃいない。 釣竿の根元で払い、男の手から日本刀を弾き飛ばす。弧を描いて宙を舞い、池の方に飛んで行った。 仕込み刀を抜き放つ。こんな魚も釣れない国の縁の池までわざわざ見に来るやつはいない。殺して池に投げ込んでしまえばそれで仕舞いだ
2020-01-02 02:30:48丸腰になった男は両手を広げてなだめる仕草をする。 「やれやれ、物騒な御仁だな。そう思うだろう、ナナカマド」 背後で水音。 日本刀の落ちた音か。 いや、あれは水の中から何かが出てきたように聞こえなかったか。 振り向こうとした首が、水の中にぼちゃんと落ちた。
2020-01-02 02:30:48「ぽぉんと、景気良く首が飛んだ」 春楡は首を切られた男をみて笑った。 「少しは気が晴れたかな?」 「晴れるものか。七度身を焼かれてもなお、腹の底に溜まった炎が燃え尽きぬ」 首なしの後ろで陰気な声がする。 カポと水面を叩く音がした。
2020-01-02 02:30:48水に沈んだ日本刀を拾い上げる。都合よく血は池の水で洗われたようだ。 「こんなに濡らしたら錆びてしまうな。街に腕のいい研ぎ師でもいるといいんだが」 春楡の言葉は全くの独り言で、どこまでも続く枯れ葦の原に人の影などありはしないのだ。
2020-01-02 02:30:49「なあ、あんたカミの声が聞こえるのか?」 「カミの声が聞きたいのなら、いたこでも呼んで口寄せの術を頼むといい。カミに贈り物をするのが、私の仕事だな」 「つまり聞こえないんだな」 「不明は不明のままにしておいた方が、神秘的でいいだろう」 「本当に神職だかも怪しいもんだ」
2020-01-04 16:52:39男は愉快そうにいう。 縄をかけられた春楡は、ため息をついた。 子丑の国、その気性は荒いと聞いていたがまさかいきなり縄をかけられるとは思わなんだ。 ナナカマドの姿はない。
2020-01-04 16:52:39あの気まぐれな水鳥は、そもそも水のない場所では滅多にそばに寄ってこないが、この国の死体の浮いて汚れた川では全く姿を見ていない。 「どうしてそう思ったのかな」 「カミはそれぞれ違うだろう。祀る作法だけじゃない。その“在り方”が丸ごと違う」
2020-01-04 16:52:39「一つのカミに祈った人間が、他に祈りを捧げるなんてできるわけがない」 意外に道理をわかったことをいうので、春楡は驚いた。 「どうやらカミに詳しいようで」 「伊達に他国を攻めちゃいねぇよ。領土を手に入れた。それは向こうのカミもこっちに取り入れたってことだ」
2020-01-04 16:52:40そういって馬上の男、朝日 雅嗣は笑った。 「ならば知っているだろう。作法さえ守れば異なるカミを崇め奉るのも消して不可能ではないんだ」 「それもそうだ。お前は、あらゆるカミに祈るんだろう」 「そういうことになるのかもしれない」 「中にはまぐわいを神事とするカミもあるというが」
2020-01-04 16:52:40「下世話な御仁だ。そんなことよりナナカマドをみなかったか?」 「ナナカマド?」 「私の相棒の」 「ああ、カイツブリか。どこにもいやしない。そりゃ、お前が飼い慣らしていると思っているだけじゃないのか」 「そんなことはない。私の相棒なんだ」
2020-01-04 16:52:40@MayoNaka_tbr 寅の国にて香を商う南蛮商人。 いつも紫煙をくゆらせており、店内は霧がかかったようだ。扱う香は我儘な神子の機嫌を直すのに最適で、「虎酔香」とも呼ばれて重用される。 香りだけでなく入れ物の美しさから、贈物として人気が高い。入れ物も香も全て手ずから造っているのだとか。
2020-01-12 19:15:07@MayoNaka_tbr 商い物である香と煙草の匂いがしみたような、華やかな香りの中に僅かにスモーキーな味わいのある肉。素材の味を損なわないように、味付けは薄めにしよう。 食べたことが知れると、寅の国の御子がひどく怒りなさる。秘密にしてくださいよ……。
2020-01-12 19:15:07@Raise_a_Native 子丑の国の客将。元々はキシサマとやらだったらしいが、彼自身は多くを語らない。異国の者ということで疑いの目を向けるものも多く、死地に向かわされることも多かった。それが武功を上げるのに一役買ったらしい。今となってはその実力を疑うものはおらず功績を認められて客商となった
2020-01-12 19:21:29@Raise_a_Native 武人というだけあって引き締まったいい肉質だ。赤身がちで脂が少ないので、揚げ物にした時にあっさりとした仕上がりになる。塩を中心に味付けをして、肉は厚めにしっかりと切っておかないと火を通した時にパサパサになる。 確かに元はこの店の客だったんだが……、残念だね。
2020-01-12 19:21:30@kirisimoreiya 辰の国の獣医。愛玩動物から家畜までなんでも診療する。小柄な体には大きすぎる白衣を纏い、ガラクタを積み上げたような辰の国の複雑で雑多な街のどこかに居を構えている。時には表の医者にかかれない人間の診療もしてくれるという。 報酬は格安だが、ただより高いものはない……。
2020-01-12 19:30:15@kirisimoreiya 薬品じみた匂いの刺激的な肉。玄人向けの味わいなので、ハマる人はこれしか食べないともいう。味噌系の味付けが合う。味を奥まで染み込ませたいので、肉は小さめに切るといいだろう。衣は薄めでカリッと焼き上げ、香りと食感を楽しもう。 まあ本人か可哀想な身代わりかは知りませんがね
2020-01-12 19:30:15@ReipumA_ 辰の国にて、女衒をしている。唐揚げ屋さんの店の常連客。 提供される肉がどこで手にいれたなんであるかを知っている数少ない客。 時折持ってきてくださる肉、柔らかくて美味しいと好評ですよ。そういえば最近、辰の国で街で女の腹の中身をとっていく殺人鬼が出るっていうんです、怖いですね
2020-01-12 19:36:17