桜の季節に

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桜の季節に|たちかわ #wtプラス 珍しく大学に来ているたちかわを見つけ、声をかけるもなんだか体調が悪そう「風邪？珍しいね」「いや…花粉症」ボソ、と呟いた彼の目は充血している「薬は？」「飲んだ。頭がぼーっとする」いつも以上に何も考えてなさそうな、正確には何も考えられない彼の視線は

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虚ろだ。そんなに辛いのに大学にきているのはよっぽど何か用事があるのだろう「その体調で何しに来たの？」「会いたくなって」「誰に」「おまえ」「はい？」この男ついにここまで頭がおかしくなってしまったのか。意味がわからない回答に素っ頓狂な声が出る「何度も言わせるなよ、

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お前に会いに来たんだ」目は虚ろだがその真意は見えない。本当なのか嘘なのか、いやもし本当だとして、それって期待しちゃうよ？「飲んでる薬、副作用に虚言とかある？」「しらね〜」これ以上やり取りを続けても押し問答にしかならない「とりあえず帰ったら？私には会えたわけだし？」「おう」

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ゆらりと立ち上がったたちかわがこちらを見る、真っ赤に充血した瞳はぼうっとしている「一緒に帰るぞ」「え゙？」表情とは裏腹に掴まれた腕は強い「ちょっと、たちかわ、ねえ」「黙ってついてこい」喋るのもだるいと声色で悟る。多分きっと想像は確信に、春の陽気に誘われてみることにする。

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桜の季節に|にのみや #wtプラス 「何食ってる」頭上から声がして見上げれば、腕組みしたにのみや。夢ちゃんとつじが口に咥えているもののことを聞いているらしく「はくらふぉち」「飲み込んでから言え」「さくら餅です」先に食べ終わったつじが口元を拭きながら答える。テーブルには

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まだ手をつけていないさくら餅がいくらか「にのみやくんも食べる？」あまり甘いものを好んで食べるタイプじゃないかな、と思いつつ聞いてみるが「いや…」「わ、さくら餅おいしそ！俺もーらい」にのみやの声を掻き消し、横からいぬかいが掻っ攫っていく。思わず苦笑いをこぼすも、気にしていない彼は

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そのまま自分のデスクに座り、作業を始める「関東のさくら餅と関西のさくら餅って違うんだって」「どう違うんですか？」「知らない、みずかみが言ってた」つじといぬかいの会話を横目に、ひとつ余ったさくら餅をにのみやの方へ持っていく「はい、どうぞ」「…いや俺は」顔を上げたにのみやが

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拒否するので「一口食べない？美味しいよ」にのみやは少し考えて「手が汚れるだろう」何か書類を書いている彼の手元を見て「確かに。じゃあはい、口開けて」「おまえ…」夢ちゃんが半分に割ったさくら餅をにのみやの口元に近づける。さすがにこれは、とにのみやが難しい顔をしているが、夢ちゃんは何も

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気にしていないようで「一口でいけるでしょ？」ニコニコと100%善意を向けてくる。悩みに悩んで遠慮がちにそのさくら餅をはむ、と口に入れる。餡子の甘さとさくらの葉の塩気の塩梅がちょうどいい「ね、おいしいでしょ？」「あぁ…」「あー！にのみやさん今、夢さんにアーンされてましたよね？！」

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「え゙っ？！」後ろからいぬかいとつじの声が聞こえる「うるさい、いぬかい」もぐもぐと口を動かしながら、目を逸らすにのみや「残りも食べさせてあげよっか」「お前も調子に乗るな」満更でもない顔しちゃって、かわいいんだから。

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桜の季節に|ゆば #wtプラス ぼえ任務中に敵に囲まれゆばに応援を頼む。すぐさま駆けつけてくれ、一緒に敵を一掃する「ゆばちゃんありがとう助かった」「よく耐えたな」ようやく落ち着き一息つけば、肩からはらりと落ちる桜の花びらに気づく「桜だ」「もうそんな時期か…」ゆばと二人、空を見上げれば

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青空に映えるピンク色の雨が降る「ってゆばちゃん頭、あはは」「なんだァ」隣のゆばの頭がピンクに染まっているので思わず頬が緩む。手を伸ばしてももちろん届くわけがないので、自分の頭をはらってみせれば同じように真似て頭をはらうゆば「それにしても、桜が似合うね」「どういう意味だァ」

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改めて桜とゆばを画角に収めれば、妙に似合う組み合わせにさらに頬が緩む「なんというか…はんしゃのにおいが」腕を組み、眉を顰めたゆばの視線が鋭くなる「そしたらオメエはなんだってんだ」「うーん、構成員？『オヤジ、お疲れ様です！』って感じ？」舎弟のように腰を折り曲げ90度でお辞儀なんて

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してみたのに「どっちかっつーと姐御だろォ」えーっと姐御って組長の嫁だよね？と考えたところでゆばの顔も同じように赤くなっていく「わ、わリィそういうつもりじゃ」「ど、どういうつもり…？」言葉にしてもらおうとして食い気味になる夢ちゃんの頭をチョップしてめちゃくちゃ照れて欲しい

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桜の季節に|きくちはら #wtプラス 「ふあ…」小さなあくびに隣のきくちはらが嫌味な目で見てくる。これから言われるであろうセリフをいくつか考える「寝不足？体調管理もできないわけ？」「昨日もたくさん寝たのにな〜」眠気を飛ばそうと窓の外に視線を動かせば朗らかな春の陽気が漂う「春だから

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だね」「春だから眠いってバカじゃないの？」「桜も咲いてるね」きくちはらの減らず口なんて今に始まったことじゃない、適当にスルーしながら青空に咲く桜を眺める「もうすぐ春休みだね」「たった2週間だけどね」「きくちはらはボーダーがあるから休みもないんだっけ」「まぁね」ついこの間三年生が

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卒業した、もうあと数週間で学年が急にひとつあがる、なんだか不思議な季節だ「春休みが終わったら、きくちはらと別のクラスかもかぁ」クラス替えはドキドキとソワソワが入り混じる「次も同じクラスがいいなぁ、ね？」「僕は君みたいなお喋りとは少し距離を置きたいけど」「またまたそんなこと言って」

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話しかければこうして話してくれるし、眠そうな私に気づくのはきくちはらだけなのに「ね、春休みに会おうよ」「なんで」「クラス変わっちゃうかもだから、クラスメイトの思い出作りしよう」「なにそれ、大体そういうのって二人でするもんでもないでしょ」「え、みんな誘うつもりだけど」目を丸くした

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私に過去一不機嫌な顔をしたきくちはらが舌打ちをしてくる「…カマかけたわけ？」そんなこと微塵もない、首を横にふればまた舌打ち「君との思い出作りなら付き合ってやらないこともないけど」仕方ない、私が折れてあなたに伝えるよ、恋をしようよ。

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桜の季節に|ほかり #wtプラス 指定されたエリアに到着して時間を確認していると後ろから声がかかる「あれ、ひとり？」「逆ナンみたいな声かけだな」「おにーさん、ひとり？」わざとらしく上擦った声で言い直す夢ちゃんがケラケラと笑いながらほかりの隣に立つ「お前とだったな、任務」「そうだよ、

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今日すごい風強いよね、弾流れると思うよ」同じスナイパー仲間の夢ちゃんが遠くを見ながら舌打ちをして悪態をつく「で、なんでお前は換装解いてるんだ」「デート帰りなもんで、おしゃれした私をポカリに見てもらおうと」「彼氏いるのか、お前」心の中で焦りまくっているのに声にも顔にも無表情なほかり

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に「痛いところをつくね、あいたた」お腹のあたりを抑え蹲る彼女はすぐに苦笑いをこぼして「片思いの先輩とお出かけだったんだけど、彼女いるんだって」諦めたような声は泣きそうに震えたのに「彼女いるくせに他の女と二人で出かけるとか、不誠実だよね！あんな男、こっちから願い下げよー！」

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どこかに叫ぶように大きな声を出す「失恋明けの任務か」「仕事サボらず来たの、偉いでしょ」「ﾄｯｷｭｳｾﾝｺｳものだな」強がりながらも顔に張り付いた悲しそうな色は消えていなくて、思わず肩を抱き寄せそうになる手を抑える「かげうらで飯食うか、このあと」「ポカリ、ありがと」ほかりが励まして

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くれていることに気づいたのも束の間「さて、お仕事頑張りますか！」ﾄﾘｶﾞｰｵﾝと同時に強い風が吹く。なびく彼女の姿を頼もしく思うと同時に、誰かのものになる前に、と腕を掴む「え、なに」「いるからな、俺も」「？」今は解らなくていい、って意味深く笑うほかりの攻撃はこれから。

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桜の季節に|あらふね #wtプラス 今日は大好きな先輩の卒業式、今日が来ないで欲しいと思っていたのに、結局何も行動に起こせないまま今日がきた「あらふね先輩！卒業おめでとうございます」「あぁ、ナマエか。ありがとう」卒業式が終わったら会えないかもしれない、と思って朝のうちにあらふねの

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クラスに顔を出す。3年生のクラスに初めてきた日は相当緊張したはずなのに、今や平気な顔で彼を呼び出せるまでになった「先輩が卒業しちゃうの、本当に嫌です…」「まだ言ってんのか。仕方ねえだろ」小さく笑うあらふねが困ったように夢ちゃんの頭を撫でる。困らせたくないのに涙がジワリと

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出てきてしまう「うぅ…先輩、ボタンください」月並みだが乙女心とはそういうもの「ボタン？」「第二ボタンじゃなくてもいいので」モテるあらふねのことだから、どうせ第二ボタンは誰か別の人が予約してるんだろうし、と彼のブレザーを確認する。もちろんまだ、取れているものはない「あらふね先輩と

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の思い出が欲しいです」涙声になりながらあらふねを見上げる夢ちゃんを不思議そうにみながらポツリ「俺たち、付き合うんじゃねぇのか」「………え」目に溜まった涙がスッと引っ込んでいく。そんな夢ちゃんのことなんて気にせず、ブチと自分のブレザーのボタンをちぎるあらふね「ほら、ボタンもやるよ」

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「いや、え、まって」「なんだよ、やっぱいらねぇってか？」「い、いります！」「受け取ったな？今日から彼女、よろしく」卒業式サプライズ、人生で1番幸せな日になりました。

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桜の季節に|すわ #wtプラス 誰が言い出したのか、深夜の麻雀を中断し桜を見に行くことに。ダラダラと人気のない道を缶ビール片手に歩く複数の影、そうこうしているうちに公園に着き、遠慮がちに照らされた夜桜に圧倒される「思ったよりきれいだな」「ですね」各々感想をこぼしていると、たちかわが

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おもむろに口を開く「桜は幻を見せるらしい」急に変なことを言い出す「葉には毒があるしな」東が続ける「え、なに、怖い話？」夢ちゃんの反応に一瞬間が空いてケラケラと笑い声に変わる。何で笑われているのかわからず隣のすわを不安そうに見上げれば「心配すんな」そういって夢ちゃんの手をキュ、と

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握る「え？」「付き合うか、そろそろ」「は？」わけのわからないことが続き困惑していると「桜には興奮作用もあるらしいぜ」まだ向こうで笑っている三人の影に聞こえないように、耳元で囁くすわの声にドキリと胸が鳴る。

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夜桜を背に背負って余裕そうな顔で笑うので、繋がれた手の力を強めることで返事をしてみる三月の夜。