ある日、アンティークショップで見つけた小さな箱。それは、来世で愛しい人と再び逢えるという、不思議な箱。
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ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

#金カ夢 #ogt 「再逢の匣(さいあいのはこ)」別バージョン (支部参照)

2020-09-02 16:51:58
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主はお見合いで結婚して一年。夫となったogtは寡黙だが優しい男。夢主は幸せな日々を送っていた。ある日彼女は、近所の商店街にあるアンティークショップのウィンドゥの中に、白木を彫り抜いた小さな小箱を見つける。蓋に一対の鳳凰が向かい合う図柄が彫り抜かれた、とても美しいものだった。

2020-09-02 16:51:58
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普段は骨董品になど興味はないのに、懐かしいような気持ちとともに、急に欲しくなり、値段もそれほど高くなかったこともあって、夢主はその場で衝動買いしてしまう。店員の説明によると、箱は香木から作られているという。年月を重ねたせいか、匂いは薄くなっていたが、確かにそれからは甘く、不思議に

2020-09-02 16:51:59
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

懐かしいような芳香があった。「なんでも、大昔にまじない師が作ったものだそうですよ。仲の良い夫婦が、来世も共にありますように、また出会えますようにと願って、中にその願いを入れておくと叶うとか……。まあ、この箱の中に入っていた、手書きの説明文なので真偽の程は分からないですけど」

2020-09-02 16:51:59
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「そんな大事なもの、どうして手放したんでしょう?」 「前の持ち主の方は裁縫箱になさっていたそうです。御年寄の方でしたが、あいにく、旦那様とは“今生の付き合いで十分”とかおっしゃって」店員は、買い取った時のことを思い出したのか、口元に手を当てて吹き出した。「そもそも、こちらはご結婚の

2020-09-02 16:52:00
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

お祝いに旦那様のご友人から贈られたものとか。説明文も、その時のものだそうですよ。でも、素敵でしょう?鳳凰は鳳が雄、凰が雌で滅ぶことのない男女の絆を表しているんですって……」

2020-09-02 16:52:00
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

滅ぶことのない愛か。素敵かも…。私は何を入れようかな。夢主は小箱を手に帰路に着いた。細工が美しいので、とりあえずリビングに飾ると、会社から帰宅した夫が、微かな匂いから箱の存在にすぐに気付いた。「この箱…」「素敵でしょう?アンティークだけど、お手頃だったから、買っちゃった」

2020-09-02 16:52:00
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「この匂い、いいな」「うん、なんだか懐かしいような匂いがするのよね。香木からできてるんだって」「祖母ちゃんの持ってた匂い袋みたいだな」ふと、夢主の脳裏に、古い和風の鏡台に向かう女の姿がよぎる。黒髪を結い、和服姿で、顔にお白粉を叩く見知らぬ女性。貝殻に入った紅を右の小指につけて、

2020-09-02 16:52:01
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

形良い唇に艶やかにひく…。鏡の隅に、映るのは和室で、時代映画で見るような和簞笥が置かれ、その前に男が寝そべって、女の化粧を眺めていた。…夫に似ている……? そんな妄想とも幻ともつかぬ、頭に浮かんだ絵に夢主は苦笑した。ドラマの見すぎ。そんな想像をするなんて。

2020-09-02 16:52:01
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「お店では、あまり匂いはしなかったのに」「空調が効いてて匂いが飛んでたんだろ。芳香剤がいらないな」「大丈夫?臭くない?」以前、焚いてみたアロマオイルは、彼に鼻にキツいと言われ不評だったことを夢主は今更ながら思い出した。「そんなに強くないし、好きな匂いだから構わねえよ」「良かった」

2020-09-02 16:52:02
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その甘い芳香は、空気に乗って家の中を漂った。寝室にまで。そのせいか、夢主は不思議な幻の続きを見る。自分が、あの美しい女となってogtと夫婦として暮らしている。子供も生まれ、その子が就学する頃、病が憑いた。家にいたかったが、夫は奇跡を願い、彼女を療養所へ入れた。大部屋の隣の寝台にいた

2020-09-02 16:52:02
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

老婆が、自分も先が長くないからと、小匣をくれた。“再逢の匣”と彼女は言う。「来世も旦那に会いたきゃ、これに名前を書いて入れておきな。きっと叶うから」「お婆さんはいいの?」歯のない口元が、ふしゃ、と笑み崩れた。「三度も添い遂げりゃ十分さね」

2020-09-02 16:52:02
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

死の近いことを悟った女は、震える手で、看護婦から筆を借り、夫と自分の名を書いた……。「次も。次の世もきっと」「hyknskさん…」 目が覚めると泣いていた。不思議な夢を見てしまった。あの箱の謂れのせいね。隣を見ると、夫はもう起きていて、簡単な朝食を作って、ダイニングで彼女を待っていた。

2020-09-02 16:52:03
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「うわ、美味しそう」「変な夢を見て目が覚めたら、もう眠れなくてな…。早いけど、そのまま起きちまった」「変な夢って?」「うん…まあ、変な夢だった」何それ。夢主は笑った。「エ|ッチな夢でも見たの?」「外れ」 夢主も、話せばからかわれそうだと思い、自分の見た夢を口にしなかった。

2020-09-02 16:52:03
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

しばらくして、夫の仕事が急に忙しくなり、出張が増えた。残業時も、どんなに遅くなっても家に戻ってきたのに、よほど忙しいのか会社の仮眠室に泊まるように。会社の近くにランドリーやネカフェもあり、生活に問題ないという。“繁忙期が明けるまでの辛抱だから”夢主は広すぎるベッドで眠る…。

2020-09-02 16:52:04
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ogtが出張中、ふと油断して、風邪を引いてしまった。薬を飲んで休んでいると、ogtからL|IN|Eが届いた。今日帰る予定が、少し伸びそうだという。こちらも体調を崩したことを知らせると、大事にするようにと返事が来た。家に戻っても、食事の用意ができないからちょうど良かった。食材はまだ

2020-09-02 16:52:04
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

十分ある。とにかく休んで、早く治さないと。でも、次の日も熱は下がらず、かえって酷くなるだけだった。症状がいつもより重いと知った時には、もう体が思うように動かなくなっていた。夫に、震える指先で「いつ戻る?」と打つ。しばらく眠っていると、返信の通知音が鳴り、夢主は安堵して布団から手を

2020-09-02 16:52:04
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

伸ばした。スマホを開くと、いきなり画像が飛び込んでくる。裸の胸を毛布に隠した女。その女の顔。あの夢に見た、鏡に映っていた。彼女そっくりの人間が微笑んでいた。写真の角度からベッドの中からの自撮りと分かった。「え?」……その隣に眠る、裸の男。(百――?)目の前が、暗くなった。

2020-09-02 16:52:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「いい気味だよ。ちょっと別嬪に生まれたからって、男前の亭主捕まえてさ。でもお気の毒様。そろそろ年増な上に病持ち。あんた、捨てられたんだよ。この療養所にさ」新しく病室に来た女が、久しぶりに見舞いに来た夫を見てからうるさかった。「散々いい思いしたんだろうねぇ。男にチヤホヤされてさ」

2020-09-02 16:52:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

そういう女も、それほど醜いという訳ではなかった。だがあまり幸せな人生ではなかったらしく、ことある事に症状の重い彼女に突っかかる。匣をくれた老婆が何度も諌めるうち、しくしくと泣き出した。「美人に生まれてたらさぁ。もう少しいい思いができただろうに、不幸な生まれの上、病が憑くなんて」

2020-09-02 16:52:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「何も夫は、私を顔で選んだわけじゃありませんよ。もっと美人は周りにおりましたしね。縁ですよ、縁」「縁があれば、あんな亭主と夫婦になれるの」「そうですよ」「そうさね。縁だよ」老婆も頷いた。「なら、後妻は私が狙おうか」「これ、なんてこと言うんだい?!」

2020-09-02 16:52:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「どうせあんたは助からないんだ。私が後釜に入ってやるよ。あんたよりずっと若いんだ。病だってきっと良くなろう」老婆も、ogtの妻も呆れてしまった。「そうしたら、あんたの持ってるもの、全部貰ってやるよ。着物、宝石、あの、男前の亭主も」

2020-09-02 16:52:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

女は死んだ。ogtの妻よりもずっと早く。本人の思うより、病状がずっと良くなかったらしい。この世を、ひときわ美しく生まれなかった自分を、自分の欲しかったもの全てを持っていたogtの妻を「あんたはずるい」と逆恨みしながら。「良くないね。あれじゃ、来世までよこしまな思いを持っていく」

2020-09-02 16:52:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

老婆は、実は自分はまじない師なのだと告げた。「あの箱のことも知ってたからね。多分影響を受けるだろう。ケチがついちまった。残念だが匣は燃した方が良いだろう。」「でも、それじゃ」あの人に、次の世も逢えないじゃないの。 「ああ、あたしも余計なことをした。いいかい燃やすんだよ」

2020-09-02 16:52:07
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

そういうと、老婆も直ぐに亡くなった。「後の世にやり残しを作っちまうなんて、あたたしも焼きが回ったね」そう言い遺して。やがて、ogtの妻も最期のときを迎えた。匣は……燃やせなかった。 来世でも、来世でも、どうか あなたと……。

2020-09-02 16:52:07
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ああ、彼女は彼を見つけてしまったんだ。前世の彼女の思いが、あの匣に彼に連なる私を引き寄せ、匣の力で、彼もまた、あの人を見つけてしまった……。目覚めるとまた熱に浮かされ、身体から水分が抜けていく。ベッドの中で夢主は啜り泣いた。ああ、暑い。なのに、とても寒い気がする。お水が欲しい。

2020-09-02 17:02:04
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「あの匣を燃やすんだよ」耳元で、夢の中で聞いた老婆の声が響いた。あの匣……。

2020-09-02 17:02:05
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

熱に喘ぎながら、夢主はベッドから這い出した。リビングにようやっとたどり着くと、匣は飾っていたキャビネットの上から影も形もなくなっていた。何でなの?熱から来る脱力感に彼女は床の上に倒れた。ああ、あの匣。……hyknskさん……。

2020-09-02 17:07:42
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主はどうにか起き上がった。(探さなきゃ……)汗の滲みたパジャマのままマンションの廊下に出ると、後ろから風が吹いてきて、彼女の身体を真上に持ち上げた。

2020-09-02 17:10:59
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

(ああ、死んだのか)夢主はあの熱と息苦しさから解放され、街を見下ろしながら、風に運ばれるタンポポの綿毛のように空を飛んでいた。(どうして匣を燃やさないといけないんだろう……私は、死んだ。あの人は、本当の運命の人と結ばれる……)辛いけど、仕方ないじゃない……。

2020-09-02 17:15:40
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

(そうはいかない。あれは人を呪いながら死んで、良くないものになった。あの匣がこの世にある限り、次も同じことの繰り返しさね)私みたいに、あの二人が結ばれるための礎になる人間が現れる、そういうことなのね。そんなのは悲しい。今だって、こんなにも辛い。なのに、今も恋しいのはあの人のこと。

2020-09-02 17:19:06
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

(匣を見つけな。後は私が) どうやって?(今も惚れ抜いてるなら、会いたい思うだけでいい)彼は、私に会いたいかなぁ…?傍に本当の奥さんがいるのに。(馬鹿なこと言ってないで、言う通りにおし)老婆の声に、夢主は目を閉じた。(幸せな思い出とかあるだろ)テ|ィ|ンカ|ーベ|ルの粉を

2020-09-02 17:26:54
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

かけて、空を飛ぶみたいに…? 出会った頃、好きな食べ物や嫌いなものを教えあった。会う度に好きになっていく。強面だけど、椎茸が嫌いなのよね。結婚式の時、意外にもケーキ入刀の手が震えてた……。

2020-09-02 17:27:24
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ああ、死にたくなかったなぁ。もっと一緒に生きたかった。でも、彼にはもう……。 ……あれ? 気が付くと、見知らぬ家の廊下にいた。「奥さんには、いつ話すの?」誰かの会話が聞こえる。「…ねぇ。迷うことないじゃない。私たちは、前世から結ばれる運命なの。あの匣が、その証じゃない。

2020-09-02 17:33:42
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

会った時から分かってた。私は、あなたと結ばれるために生まれてきたんだって」あの人の声だ。夢主はひたひたと裸足で廊下から、その部屋に入った。……寝室だった。

2020-09-02 17:35:29
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ベッドの上で、ogtが頭を抱えていた。「なんで、なんでこんな。あいつが、俺を待っているのに」「あなたが私を見つけてくれて嬉しかった。ずっとあなたを待ってた。互いに同じ姿で会えたのは奇跡なの。あなたと来たら、名前まで」聞いていて、胸が痛かった。私は、あなたにとってなんだったの。

2020-09-02 17:48:55
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ここは、彼女の家なのだと気が付いた。急に多くなった出張、増えた残業。彼女のところにいたの?彼の裸の肩にしなだれかかる女が、こちらを向いて悲鳴を上げた。 あれ? 私の事見えてる? 幽霊のはずなのに。 (あった!!)

2020-09-02 17:48:56
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

耳元で、老婆が声を張り上げた。ベッドボードに、何故かあの箱があった。ルームフレグランスの匂いがキツくて気が付かなかった。でも、何故ここに、あの箱が……。謎の使命感に夢主はベッドの上に飛び乗った。ひい、と引きつった声を上げて、女が飛び退いた。「急になんだよ…?」 「ゆ、幽霊……!」

2020-09-02 18:00:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「…え?」匣を掴んで、胸に抱き抱えた。夫には、夢主の姿は見えないらしい。 (hyknskさん、元気でね。その人とお幸せに)聞こえないにしろ、せめてそう言おうとしたのに、背中にロープでもくくりつけてあったかのように、強い力で急に後ろに引っ張られた。踵が床から離れていく。このまま成仏…?

2020-09-02 18:05:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

そんな。ひとことくらい良いじゃない。(ああ良かった。取り戻せた)良くない!! 「さようなら!hyknskさん!!」風が部屋の中を巻き起こり、女が部屋の隅に蹲っていた。ぐんぐん高みへ持ち上げられ、夜空の中に夢主は放り投げられた。天国って、 こんなに乱暴に連れていかれるの? そう思った途端

2020-09-02 18:12:28
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

どすんと身体が……いきなりどこか柔らかい所へ落ちた。 熱と重だるさと、喉の激しい乾き。あれ?まだ生きてる……? ベッドに横たわる胸に、何故かあの匣をしっかりと抱えていた。

2020-09-02 18:12:28
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢か現か分からぬまま、夢主はしばらく呆然としていた。匣の中をそっと開くと、古びた筆書きの説明書。読みにくいそれを解読すると、どうやら匣は二重底になっているようだった。そこを開いて、中にある黄ばんだ4つ折りの紙を取り出す。そこには、震える文字で女の名と、夫の名が書かれていた。

2020-09-02 18:20:56
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

生まれ変わってもと思うほど好きなら、もう彼女の入る余地はない……。「もう一枚ある……」あきらめと共に、それも開く。そこには、別の筆跡で二人の名が記されていた。“どれほど姿が変わろうと”字は途中から滲んでいて、読めなかった。

2020-09-02 18:20:57
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

もうひとつの紙は、彼女が亡くなったあと、夫が入れたものだろう。…この匣を、二人の大切な思いを、燃やすのか……。でも、自分は動けないし、彼はきっと、もうこの家には戻らない。スマホに手を伸ばすと、充電が切れていた。

2020-09-02 18:25:37
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

燃やさないと……。また 来世で彼に会っても、同じことが起こってしまう。巻き込まれるのはもう、私ではないかもしれないけど、こんな辛いこと、止めなくちゃ……。呼びかけても、老婆の声はもうしなかった。

2020-09-02 18:33:25
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ガシャン、とベランダの方で音がした……気がする。 「待たせたね。これは貰っておくよ」どこかで聞いた気のする子供の声が、朦朧とする夢主の頭に響いた……。

2020-09-02 18:47:12
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

目をこじ開けると、隣の部屋に住む老夫婦のところに時々遊びに来る、彼らの孫娘。それが大人びた…老成した物言いで、にやりとこちらに笑いかけた。「ああ、嬉しい。これで思い残すことはない」そういうと匣をかかえて、ほっほっほと年寄り臭い笑い声をあげながら部屋から出ていった。

2020-09-03 12:37:11
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

その子供の姿を時々見かけたことはあっても、今まで言葉を交わしたこともなかった。だが、夢主は彼女のことを知っているような、不思議な心持ちがした。あの匣が手を離れて、一抹の寂しさと安堵に、夢主は熱の中でほうっと息をついた。彼と彼女を引き合せる、私の役目は終わったのかな……。

2020-09-03 12:43:48
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

それから、しばらくしてどたどたと足音がした。そして。「夢主……?! ドアに鍵もかけずに……? なんだこれ?! ベランダのガラス割れ……?! 夢主?!」声が寝室に近くなってくる。あ!れ…あなた帰ってきたんだ…?

2020-09-03 12:49:30
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

私の、最期を看取りに来てくれた……。 「うわっ?! 熱?! いつから……?!」 その声に懐かしく胸を温められながら、夢主の意識は遠くなっていった。

2020-09-03 12:49:30
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まとめたひと
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

アホ夢書き。昭和の女で金カ夢の人。腐と夢のいろんなのを見たり書いたり用の垢。最近は本人よりよりほぜ尾が好きになってきた感。いや、今でも推しなのは変わらないんだ……。 まろ marshmallow-qa.com/yumejodego?utm…